執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
そもそもなぜペニスは硬くなるのか?
健康な男性であれば性的興奮を感じるとペニスは大きく、硬くなります。
勃起と呼ばれる現象です。
ペニスが十分に勃起することで女性の腟内に挿入することができるようになるので、正常な勃起は性行為が成功するために必要不可欠です。
では、なぜ普段は柔らかいペニスが勃起時に硬くなるのでしょうか?
理由はペニスに血液が送り込まれるためです。
性的興奮を感じると性欲に関わる男性ホルモンであるテストステロンが分泌されます。テストステロンは血管拡張因子であるNO(一酸化窒素)を増やすことで血管を拡張し、ペニスに血液を送り込むことで勃起を引き起こします。
何らかの原因でテストステロンや血流に悪影響が出てしまうとペニスに流れ込む血液量が減ってしまい、勃起しても硬さが不十分であったり、そもそも勃起できなくなったりしてしまうのです。
勃起時のペニスが柔らかい原因10選
勃起時のペニスがしっかりと硬く、大きくなることは満足度の高い性生活を送る上で必要不可欠です。
何らかの原因でテストステロンが低下したり、血流が悪くなったりすると、不完全な勃起となり、ペニスは柔らかいままです。
勃起時のペニスが柔らかくなってしまう原因を10個紹介します。
1.加齢
1つ目は加齢です。
2001年に慶応大学の研究グループが発表した論文では、年齢とともにEDの有病率が高まることが報告されています出典[1]。
理由は勃起にとって重要な「テストステロン」と「血流」の状態が、加齢によって悪化してしまうからです。
体内での酸化ストレスが増え、精巣がダメージを受けてしまうことなどが原因で、テストステロンは20代をピークに年1%ずつ低下してしまいます出典[2]。
また、歳をとると血管の筋肉が衰えたり、代謝が落ちたりすることで血管が詰まりやすくなることで血流も悪化してしまうのです出典[3]。血管は40歳以降に顕著に衰えることが2011年に資生堂のグループの研究で明らかにされています出典[4]。
加齢によるテストステロンや血流の悪化は40代を過ぎると起こりやすくなるので、中高年の方は特に注意が必要になります。
2.太りすぎ
2つは太りすぎであることです。
肥満(太りすぎ)は体に脂肪が過剰に蓄積した状態で、BMI(体格指数)が25以上が肥満と定義されます。
肥満とED(勃起不全)の関係は深く、EDの男性の79%は肥満であることや、肥満になるとEDなどの性機能障害のリスクが1.5倍増加することが知られています出典[5]。
理由は主に2つあり、1つは悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が血管に溜まることで血管が狭くなり、血流が阻害されることです。
もう1つはテストステロンが低下することです。
2013年にニューヨーク州立大学バッファロー校が行った研究で、肥満者のテストステロンは健常者の半分以下であることが示されました。また、BMIとテストステロンには負の相関関係があることも明らかにされています出典[6]。
テストステロンが低下してしまうのは、体脂肪が増えることでテストステロンを女性ホルモンに変換する酵素(アロマターゼ)が増えたり、炎症性のホルモンの分泌が増え、精巣がダメージを受けてしまったりするからです。
3.ジャンクフードをよく食べる
3つ目はジャンクフードをよく食べることです。
ハンバーガーやカップラーメンなどのジャンクフードに含まれる糖質や脂質は酸化ストレスや炎症を引き起こし、血流を阻害するため、食べ過ぎはよくありません。
2022年に中国の汕頭大学医学院第一附属医院の研究グループは、アメリカにおける2001~2004年の国民健康栄養調査の横断的分析を行い、食事性炎症と勃起不全に関連があることを明らかにしました出典[7]。
また、ジャンクフードはテストステロンを低下させてしまう大きな要因の一つでもあります。
2019年にオーストラリアのフリンダース大学の研究で、ジャンクフードを摂取して1時間後にはテストステロンが25%も低下してしまうことが示されています出典[8]。
ジャンクフードに多く含まれる飽和脂肪酸などの質の悪い脂質が、テストステロンを合成する精巣にダメージを与えてしまうことが原因です。
4.座っている時間が長い
4つ目は座っている時間が長いことです。
2022年にブラジルのIIEPAEの研究グループは、20789人の男性を対象に身体活動と勃起不全の関連性について調査しました。その結果、勃起不全の患者は勃起不全のない患者と比較して、有意に運動不足であることが示されています出典[9]。
座っている時間が長いと、血流が滞ってしまうため勃起の際にペニスに流れ込む血液が減ってしまいます。
また、座っている時間が長いと消費エネルギーが減ってしまうので肥満を促進してしまう恐れもあるのです。
5.1日に2杯以上お酒を飲んでいる
5つ目は1日に2杯以上お酒を飲んでいることです。
気分転換やリフレッシュ、付き合いなどでお酒を飲む人もいるでしょう。少量であれば問題ないですが、飲み過ぎると勃起機能に悪影響が出ます。
なぜなら、お酒に含まれるアルコールの作用により精巣がダメージを受けてテストステロンが低下してしまったり、脳や神経機能を麻痺させる作用により、ペニスに血液を送り込む指示を出しにくくしてしまったりするからです。
2021年に中国の安徽医科大学が発表した総説では、アルコール摂取量とEDリスクにはJカーブの関係があり、適量以上の飲酒はEDのリスクを高めることが報告されています出典[10]。具体的には、1週間のアルコール量が10ドリンク(1ドリンクはアルコール12gで計算)が分かれ目です。1日平均だとアルコール20g以下になり、ビール500mlやワイン2杯分(200ml)などがアルコール20gの目安となります。
勃起のことを考えるとお酒は飲むにしても1日に2杯以内に留めておくのがよいでしょう。
6.ヘビースモーカー
6つ目はヘビースモーカーであることです。
タバコは健康にとってよくないものの代表格です。
もちろん勃起などの男性機能にも悪影響を与えます。
2015年にアメリカのベイラー医科大学の研究グループがまとめた喫煙とEDに関する総説では、喫煙によりEDの発症リスクが上がることや、喫煙の頻度とEDの発症しやすさには相関関係があることが示されています出典[11]。
タバコに含まれるニコチンによって、交感神経が活性化することで血管が収縮してしまったり、NOの産生が抑えられてしまったりすることで血流が阻害されてしまうことで、EDになりやすくなるのです。
7.眠りが浅い
7つ目は眠りが浅いことです。
勃起にとって重要な役割を担うテストステロンは睡眠中に分泌されるホルモンです。そのため、睡眠の質が低いとテストステロンが十分に合成されず減少してしまうため、勃起力が低下します。
2023年にペルーのリカルド パルマ大学が行った研究では、18~30歳の男性381人を対象にして、睡眠の質と勃起機能の関係が調査されました。その結果、睡眠の質が低い人の90%以上で勃起不全が認められることが報告されています出典[12]。
睡眠の質が悪いと年齢に関係なくEDになりやすくなるので、しっかりと睡眠をとるようにしましょう。
8.性行為に対して不安を抱えている
8つ目は性行為に対して不安を抱えていることです。
「上手くできるかわからない」、「相手を満足させられるか自信がない」など、性行為に対して不安を抱えていると、心理的ストレスとなり自律神経を乱れさせてしまいます。そうすると、脳が上手くはたらかず、ペニスに血液を送り込み指令を出せなくなってしまうのです。
2004年にアメリカのケース・ウェスタン・リザーブ大学が発表した総説では、性行為に対する不安などの心理的要因を解消することがEDの改善につながることが明らかにされています出典[13]。
心理的不安がペニスが柔らかくなってしまう原因に当てはまるのは朝立ちの時は硬くなるが、性行為の時だけ柔らかい人です。
まずは朝立ちの時のペニスの状態を確認してみましょう。
9.その他の病気の影響
9個目はED以外の他の病気を抱えている場合です。
具体的には、糖尿病やうつ病、高血圧などの病気です。
2022年にイタリアのバイオメディコ大学が発表した論文では糖尿病患者はEDの有病率が3.5倍も高いことが示されています出典[14]。
また、うつ病の場合はED発症率が1.5倍も高くなることや、高血圧の場合も3倍以上も高まることが明らかにされています出典[15]出典[16]。
糖尿病や高血圧などでは体内で慢性的に炎症が発生することで血管機能やテストステロンが低下し、勃起不全が起こりやすくなるのです。
これらの病気が原因として考えられる場合は、まずは病気の治療から始めましょう。
10.常備薬の影響
10個目は常備薬の影響です。
健康に生活を送るために欠かせない薬ですが、中には血流阻害やテストステロンを低下させる副作用があり、薬の服用により勃ちが弱くなってしまう場合があります。
2022年にアメリカのメイモナイズ・メディカル・センターの研究グループは、2010年から2020年までのED有害事象報告の頻度が最も高い薬剤を調査したところ、20の薬物で合計6,142例のED報告がありました。このうち5-α還元酵素阻害薬(5-ARI)が2,823例(46%)、抗精神病薬が2,442例(40%)が頻度として高くなっています出典[17]。
5-α還元酵素阻害薬は前立腺肥大症や頭皮脱毛症(AGA)の治療に使われる薬です。テストステロンからジヒドロテストステロへの変換を阻害するため血管拡張因子であるNOが十分に合成されなくなり、勃起に影響がでます。
また、抗精神病薬はドーパミン受容体を阻害して興奮を感じにくくしたり、中枢神経系に作用し、脳からのテストステロンの合成を促すための司令に影響を与えたりすることで勃起に悪影響を与えます。
気になる方は勝手に服用をやめるのではなく副作用の低い薬に変更可能であるかなど、まずは主治医に相談してみましょう。
まとめ
今回は勃起時にペニスが柔らかくなってしまう原因を紹介しました。
男女ともに満足度の高い性生活を送る上で、ペニスがしっかりと硬く、大きく勃起することは必要不可欠です。
正常な勃起の鍵を握るのは血流とテストステロンです。
多くの場合は食事や睡眠などの生活習慣の影響を受けるので、自分の勃起具合が気になる方はまずは生活習慣を見直すことから始めてみましょう。
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