執筆者
管理栄養士
鈴木 亜子
大学卒業後、主に医療機関に勤務。チーム医療の一端を担い、生活習慣病や腎疾患(透析療法や腎移植後)などさまざまな疾患の栄養管理に取り組む。得意分野は糖尿病で、糖尿病透析予防や特定保健指導(糖尿病重症化予防)なども担当。現在は豊富な栄養相談経験を活かし、健康に関わる分野のライターとして活動中。「なるほど!」と思っていただける、分かりやすい記事執筆を心がけている。
オキシストームとは
オキシストームとは、赤ほうれん草(レッドスピナッチ)から抽出されたエキス末のことです。ここではオキシストームの特徴や、体にどんな影響を与えるのかなどについて見ていきましょう。
1.どんな成分?
オキシストームを開発したのは、インドの企業Arjuna Natural社。Arjuna Natural社は、医薬品やサプリメント向けの素材の研究開発及び製造・輸出をする企業で、1990年の設立以降さまざまな注目素材を生み出しています。
原料となる赤ほうれん草(レッドスピナッチ)は、運動パフォーマンスを高める効果が期待できる「硝酸塩(NO3)」が豊富な野菜です。硝酸塩含有量の多い野菜にはビートルートが挙げられます。しかし赤ほうれん草にはビートルートの5倍、ビートルートジュースの50倍もの硝酸塩が含まれています(赤ほうれん草の硝酸塩含有量は100gあたり9,000mg)。
赤ほうれん草エキス末100%のオキシストームは、硝酸塩を9%以上と高い割合で含有している他、体に必須のミネラルであるカリウムも13%以上含んでいます。
また、原料となる赤ほうれん草は非遺伝子組み換え(非GMO)。安心・安全に使用できる点もオキシストームの特徴です。
それではこの後、オキシストームに含まれる有用成分とその働きについて見ていきましょう。
2.体の中でどんな働きをする?
オキシストームの効果は含まれる有効成分、硝酸塩によるものです。硝酸塩には、血管を拡張させ血流を促す作用を持つ物質「一酸化窒素(NO)」を産生する作用のあることが最近の研究で明らかにされています。
赤ほうれん草抽出物1,000mg(硝酸塩約90mg)を摂取した場合、摂取後30分の血中NOレベルは54%上昇し、65~75分後でもベースラインおよびプラセボと比較して有意に高かったことが確認されています出典[1]。
また硝酸塩の豊富な穀物アマランサスの抽出物(抽出物で2g)を摂取すると、少なくとも8時間血中NOレベルを増加させることが確認されました出典[2]。
硝酸塩を摂取することで血中NOレベルが上昇すれば、血流改善につながります。そして血流がスムーズになればNOの産生はますます増え、より血管および健康に好影響を与えるでしょう。このような効果が期待できる硝酸塩の補給につながるのが、オキシストームなのです。
それではこの後オキシストームに期待できる効果を確認していきましょう。
オキシストームに確認されている作用や効果
オキシストームの有効成分は硝酸塩です。硝酸塩を補給することは血管拡張、血流促進が期待でき、体にとってさまざまな好影響を与えるでしょう。ここでは調査・研究の結果を踏まえ、オキシストームに確認されている効果について見ていきましょう。
1.運動パフォーマンスの向上
オキシストームの補給で血中NOレベルが高まると、期待できるのが血流促進です。運動中に筋肉への血流が促される、つまり筋肉への酸素供給が保たれることで運動パフォーマンスの向上も期待できるでしょう。
11名の健康な男性に、赤ほうれん草抽出物を1日あたり4g(硝酸塩6mol)を15日間摂取させたところ、プラセボと比較して血中NOレベルが高まり、高強度の運動の持続時間が19%延長したことが確認されました出典[3]。
レクリエーション活動中の9名の男性(22.2±3.8歳)および8名の女性(22.8±3.5歳)に、運動7日前から1時間前まで、毎日1gの赤ほうれん草エキスを摂取させました。その結果、プラセボと比較して運動後の拡張期血圧の改善および運動パフォーマンスの向上(タイムの短縮やスピードの増加など)をもたらしました出典[4]。
2.運動後の疲労を軽減
オキシストームの有効成分である硝酸塩を摂取すると、体内の亜硝酸塩濃度が上昇することが知られています。オキシストームの摂取によって亜硝酸塩濃度が上昇したことで、筋疲労の軽減につながった可能性が報告されています。
女性サッカー選手11名(18歳~24歳)を対象とし、赤ほうれん草エキスを運動の2時間前に摂取させて反復スプリント能力に及ぼす影響を調査したところ、運動パワーや心拍数に影響は与えませんでしたが、プラセボと比較して有意な血中亜硝酸塩濃度と乳酸濃度の上昇および疲労指数の低下がみられました。この結果により、硝酸塩が血液中の亜硝酸塩を上昇させることで筋肉中の乳酸を除去し、筋疲労を軽減させたことが示唆されます出典[5]。
筋疲労は、乳酸が生成される過程でつくられる水素イオンの影響により、筋肉のpHバランスが崩れることで起こると考えられています。オキシストームは、直接的ではないものの疲労の要因となる乳酸を筋肉から排除し、筋疲労を軽減させる可能性があるといえるでしょう。
3.勃起不全(ED)改善のサポート
勃起は、陰茎が血液で満たされることで起こる現象です。
副交感神経が優位に働き体がリラックスした状態で性的刺激を受けると、脳の指令により陰茎の血管内でNOの分泌が起こり、その量は徐々に増加します。増加したNOはcGMP(グアノシン1リン酸)という血管拡張物質の分泌を促して陰茎への血流を増やし、勃起を完全なものにするのです。
このメカニズムが何らかの原因により異常を来すと勃起できない、あるいは勃起が持続しないといった症状(ED)が生じます。
オキシストームに含まれる有効成分の硝酸塩にはNOの分泌を増加させる作用があります。血管内のNOを増やすことはcGMPの増加につながり、EDの改善につながるでしょう。
4.動脈硬化の予防
オキシストームの補給によってNOが増加し血流が促進されると、血管内のコレステロールの堆積や血栓の発生を予防する可能性があります。つまり、オキシストームは動脈硬化の予防にも役立つ成分であると言えるでしょう。
ラットを用いた実験では、体重1㎏あたり200mg、400mg、800mgの赤ほうれん草抽出物を66日間与えると同時に、8日目~66日目まで赤ほうれん草抽出物投与後2時間以内に高脂肪および高コレステロール食を与えました。
その結果、どの群もLDL(低比重リポタンパク質)に関して統計学的に有意な効果があったこと、また血管壁には脂肪やアテロームが存在しないことが確認されました出典[6]。
オキシストームの摂取方法や注意点
運動パフォーマンス向上やEDの改善など、オキシストームの効果を十分得るためには、どの程度摂取するのが良いのでしょうか。ここでは、オキシストームの適切な摂取量や効果的な摂取方法などについて確認していきましょう。
1.どのくらい摂取すればいい?
オキシストームを輸入しているメイプロインダストリーズ株式会社によると、1日の推奨摂取量が「500mg〜」と提示されています。
オキシストームは規格化された素材であるため摂取方法は基本的にサプリメントです。1日の推奨量が500mg以上である製品から摂取するとオキシストームの効果が得られるでしょう。
2.効果的な飲み方
運動パフォーマンス向上や筋疲労の緩和を目的としてオキシストームを摂取する場合、摂取タイミングが重要となりそうです。
研究論文によると、運動の65~75分前に摂取することで硝酸塩の血中濃度がピークに達し、パフォーマンスの向上が期待できます出典[1]。また筋疲労の緩和目的なら、2時間前の摂取で効果が表れていることが報告されています出典[5]。
これらの研究結果を踏まえると、運動前1~2時間前にオキシストームを摂取することで、好影響が期待できると言えるでしょう。
まとめ
赤ほうれん草(レッドスピナッチ)から抽出されるオキシストームは、インドの企業Arjuna Natural社が開発し製造・販売する成分です。オキシストームの有効成分は硝酸塩。硝酸塩には、運動パフォーマンスの向上やEDの改善などの効果が期待されています。
硝酸塩自体はほうれん草などの葉物やビートルートなどの野菜に含まれており、これらの野菜を食べることでも摂取可能です。通常食事で摂取する量では安全な成分ですが、サプリメントでオキシストームを摂取しようとする場合は、1日あたりの摂取目安量を守って摂取するようにしましょう。
出典
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