執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
高麗人参ってどういうもの?
高麗人参と聞いて、特殊なニンジンを想像する方もいるかもしれません。しかし高麗人参の栄養価はニンジンとは大きく異なります。
まずは高麗人参の概要について解説します。
滋養強壮効果の高い生薬
高麗人参は、朝鮮人参やオタネニンジンとも呼ばれる植物です。根の見た目は白く、ニンジンよりも根の先の枝分かれが激しい点が特徴的です。
数千年の歴史を持つ高麗人参は、とくに中国、韓国、日本で、伝統的に多くの病気の予防や治療に効果があるとされてきました。体力をつけたり、老化を防いだりする効果が高いことでも知られており、生薬として用いる方法が一般的ですね出典[1]。
高麗人参は加工法により、畑から掘り出したそのままの生人参、皮を剥いて乾燥させた白人参、蒸したあとで乾燥させた紅人参の3種類に分けられます出典[2]。
とくに紅人参は有効成分の含有量が多いことから、より高い健康効果が期待できるとされているようですね。
生の高麗人参は家庭料理で煮たり焼いたりして食べられることもあるようですが、日本ではサプリメントや栄養ドリンクなどからの摂取が一般的。紅人参のエキスや粉末はさまざまな健康食品に使用されているため、一度は口にしたことがある方も多いでしょう。
特有のサポニン「ジンセノサイド」を含む
高麗人参の有効成分として知られているのが、サポニンの一種であるジンセノサイド。高麗人参のなかでもとくに根の皮部分に多く含まれるため、皮ごと蒸して乾燥させる紅人参がジンセノサイドを最も多く含むとされています。
高麗人参は栽培年数が長いほど、水分量が少なく、ジンセノサイドの含有量が多い特徴があるようです。そのため生人参は4年未満のものが、白人参は4~6年のものが、紅人参は6年のものが一般に使用されています出典[2]。
ジンセノサイドが豊富な紅人参には、抗酸化作用、抗炎症作用、血糖値の改善、抗がん作用など、さまざまな薬理治療効果があることが知られています。
とくに心血管疾患への予防効果が高く、血管機能や新機能を改善したり、心筋梗塞のリスクを下げたりする効果も期待されているのです出典[1]。
高麗人参が勃起をサポートする理由5つ
心血管疾患のリスクを減らしたり、体力を付けたりするために役立つとされている高麗人参。
とくに男性においては、性機能を高めて勃起をスムーズにする目的で、高麗人参を含む健康食品を摂ろうと考える方もいるかもしれませんね。
実際に高麗人参には、男性の勃起力をサポートする栄養素が複数確認されています。ここからは、高麗人参と勃起の関係について5つ解説します。
血流を改善して勃起しやすく
勃起の際には血液が一気に陰茎へ集まるため、粘性の低いサラサラの血液と、血管を速やかに拡張できる柔軟性が重要。高麗人参には血液をサラサラにしたり、血管の柔軟性を高めたりする効果が確認されているため、勃起をスムーズにしたり、硬さを維持したりするために役立つ可能性がありそうですね。
まず高麗人参が血液にもたらすよい影響について確認しましょう。高麗人参には、Ⅱ型糖尿病患者をはじめ、血糖値のコントロールに課題のある方の食後高血糖を抑える効果や出典[3]、血中のコレステロールや中性脂肪を減少させる効果が確認されています出典[4]。
血液中に糖や中性脂肪、コレステロールが多いと血液の粘性が高まりドロドロになるため、血糖値や血中脂質のコントロールは勃起力を高めるためにも重要です。
次に高麗人参が血管にもたらす効果として、アルギナーゼの阻害効果が挙げられます出典[5]。
アルギナーゼは、血管拡張作用のある一酸化窒素(NO)の合成に関わるアミノ酸、アルギニンをオルニチンと尿素へ分解する酵素。ジンセノサイドによりアルギナーゼが阻害されることでNOの産生効率が高まり、より血管が拡張しやすくなる効果が期待できるでしょう。
血液や血管の状態を良好に保てれば、勃起のしやすさや勃起時の硬さにも改善が見られるかもしれません。
精巣を保護してテストステロンの分泌能力UP
ジンセノサイドの強力な抗酸化作用は、精巣を保護するためにも役立ちます。精巣は性欲や性機能の向上に関わる男性ホルモン、テストステロンを合成する重要な組織。ジンセノサイドで精巣を保護できれば、勃起力の向上にもつながるでしょう。
また、高麗人参の血糖値をコントロールする効果は、精巣の保護にも役立ちます。血糖値スパイクは多量の活性酸素を発生させ、酸化ストレスとして精巣にダメージを与え、テストステロンを減らすことが分かっています出典[6]。
血糖値スパイクを防いで活性酸素の発生量を抑えられれば、より精巣へのダメージを軽減できるでしょう。
ラットを用いた動物実験では、エサに5%の高麗人参を混ぜて60日間与えたところ、血清テストステロンが有意に上昇したとの結果が得られています出典[7]。
さらに精索静脈瘤をともなう精巣減少症の患者を対象とした臨床試験では、高麗人参の抽出物の摂取により、総テストステロンや遊離テストステロン、さらにはテストステロンの分泌を促すホルモンの黄体形成ホルモンが増えたとの報告も出典[8]。
このように、ジンセノサイドの強力な抗酸化作用は、テストステロンにもよい影響をもたらすことがわかっています。精巣を保護し、テストステロンの合成能力を高める効果が期待できるかもしれません。
エネルギー消費を促して肥満を抑制
高麗人参にはエネルギー消費を促す効果が確認されており、肥満を防ぐ効果がある可能性が指摘されています。
高麗人参、とくに有効成分のジンセノサイドは、脂肪細胞のAMPK経路を活性化するように働きます出典[9]。
AMPK経路は本来、エネルギーの不足により活性化して、脂肪細胞内の脂肪酸をエネルギーとして消費できるように機能するもの。高麗人参によりエネルギー消費が活性化すれば、体脂肪を効率よく減らせる可能性がありそうですね。
実際に肥満の中年女性10名が高麗人参エキスを8週間継続摂取したところ、約1.06kgの体重減少が認められたとのデータも存在します出典[10]。
肥満の防止は、テストステロンの減少を抑えたり、勃起不全のリスクを下げるためにも重要です。
重度の肥満では、テストステロンの分泌を促す脳からの指令が滞りやすくなり、テストステロンの合成能力が落ちてしまいます。テストステロンの量が減ることでさらに体脂肪が増えやすくなるため、テストステロンの減少と体脂肪の増加の悪循環が生じることも出典[11]。
また、2014年にポーランドから発表された論文では、勃起障害のある男性の約79%がBMI25以上の肥満体型であること、BMIが25~30では勃起不全のリスクが1.5倍に、30を超える場合にはリスクが3倍になるとも述べられています出典[12]。
体脂肪を減らして肥満を解消するためのサポートとして、高麗人参が役立つかもしれません。
睡眠の質を高めてテストステロンの減少を抑える
高麗人参には中途覚醒や早朝覚醒を改善する効果も期待できます。
十分な睡眠はテストステロンの維持や疲労の回復のために非常に重要です。若い男性が5時間睡眠を1週間続けたところ、血中テストステロンが10~15%も減少したとのデータからも出典[13]、性機能の維持には十分な睡眠が欠かせないことがわかるでしょう。
また、夜間の睡眠中には体の修復を促すための成長ホルモンが分泌されるため、睡眠不足では疲労が十分に取れず、体の怠さを感じることも。疲れのある状態では勃起もしづらくなるため、スムーズな勃起のためにも睡眠による疲労の回復は重要であることがわかりますね。
高麗人参の摂取により、深い眠りであるノンレム睡眠の時間が増加したとのデータは、ラットを用いた動物実験において確認できています出典[14]。
ヒトを対象とした研究では、夜間の総覚醒時間の減少や睡眠効率の増加が認められており、睡眠障害に有益な効果をもたらす可能性があると述べられています出典[15]。
ヒトにおけるノンレム睡眠が増加したというデータは現時点では確認できませんでしたが、夜中の目覚めや早朝覚醒に悩む方においては、高麗人参の摂取が助けとなる可能性がありそうですね。
気分の落ち込みを解消して性行為へのモチベーションUP
高麗人参の摂取により、ストレスの緩和や抑うつ状態を改善する効果が得られる可能性があります。
うつ病患者の25~75%で性欲減退の影響があること、うつ病において生じやすい覚醒障害が見られる患者のうち、約25%に勃起や潤滑の問題がある可能性があることが指摘されています出典[16]。
気分の落ち込みを解消できれば、性行為へのモチベーションが高まり、より興奮や勃起が起こりやすくなる可能性もありそうですね。
ジンセノサイドには、ホルモンの分泌場所である副腎の働きや、ホルモンの分泌を指示する脳の視床下部や下垂体などの働きを調節する機能があり、心的ストレスへの適応能力を高めるために役立つと考えられています出典[17]。
ラットを用いた動物実験では、ジンセノサイドが代謝されて生じる化合物の一種、20(S)-プロトパナキサジオールを経口投与したところ、脳の酸化ストレスが有意に軽減され、抗うつ薬の一種であるフルオキセチンと同等の活性を示したとのデータが得られました出典[18]。
心的ストレスに悩まされている方や、気分が落ち込みやすい方のための改善策として、高麗人参を摂ることには意義があるかもしれません。
高麗人参を摂る際に気を付けたい3つのこと
高麗人参には勃起に関連するさまざまな効果が確認できることがわかりました。高麗人参の摂取で勃起力を高めたいと考える方もいることでしょう。
しかし日本では高麗人参を生で摂取する習慣がほぼないため、サプリメントや栄養ドリンクからの摂取が一般的です。
ここからは高麗人参の加工品の活用を前提に、取り方のポイントについて解説します。
副作用の報告があるため摂取は慎重に
高麗人参は食品ではありますが、いくつかの副作用が報告されています。
一般的な副作用は、頭痛、高血圧、下痢、不眠、皮膚の発疹など。さらに長期の使用では神経過敏や混乱、うつ病などを生じる可能性も指摘されています出典[19]。
サプリメントや栄養ドリンクの摂取目安量を超えないことはもちろん、量を守った摂取においてもこれらの症状が見られた場合には、速やかに摂取を中止し、病院で診てもらいましょう。
さらに高麗人参は、ワルファリンのような一部の薬剤の血中濃度を低下させる可能性もあります出典[19]。常に飲んでいる薬がある方や、基礎疾患のある方は、摂取にとくに慎重になるべきでしょう。事前に担当医や薬剤師に相談することをおすすめします。
栄養ドリンクの糖類やカフェインに注意
栄養ドリンクにも高麗人参が使用されているケースがあります。元気が出る感覚を手軽に得られることや、飲みやすいことなどから常用される方も多いかもしれません。
しかし勃起力の向上のために栄養ドリンクを飲む場合、高麗人参以外の成分に注意が必要です。
たとえば糖類の多い栄養ドリンクは血糖値を急激に上げる性質があります。高血糖により血液の粘性が高まり血流が阻害されたり、大量に発生した活性酸素により精巣がダメージを受け、テストステロンの合成に支障が出たりすることもあるでしょう。
また、カフェインの覚醒作用により夜の寝付きが悪くなると、睡眠時間が減少しやすく、テストステロンの減少や疲労の蓄積が起こるかもしれません。
糖類やカフェインのリスクを踏まえたうえで、飲む量やタイミングを調整する必要がありそうですね。
糖類による血糖値の上昇を抑えるため、栄養ドリンクは空腹時の摂取を避け、食事のタイミングにあわせて飲むことをおすすめします。またカフェインの覚醒作用が睡眠の妨げとならないよう、夕方以降の摂取は控えた方がよいでしょう。
6か月以上継続摂取する場合には休止期間を設ける
厚生労働省は、高麗人参を経口摂取する場合、目安量を守ったうえでの摂取は短期間、最大6か月で多くの方において安全であると説明しています。一方で長期摂取に対する安全性には疑問が生じるとも述べられていることから出典[20]、摂取にはより慎重になるべきでしょう。
また、高麗人参の摂取による生活の質の向上を調べた研究では、4週間後までは高い改善が見られたものの、同等の効果は摂取期間終了の8週間後まで持続せず、生活の質を評価するスコアが減少する傾向が見られたとも報告されています出典[21]。
安全性の面からも、効果の面からも、高麗人参を休まず摂取し続けることは避けた方がよいと言えそうです。
安全性を優先する場合には、高麗人参の継続摂取は6か月以内に留めた方がよいでしょう。中止後の体調の変化を観察したうえで、必要性があれば再度飲みはじめることをおすすめします。
高麗人参の勃起力向上効果は十分でない可能性がある
ここまで高麗人参が勃起の助けとなる可能性について説明してきましたが、実は高麗人参の効果は十分ではない可能性があります。
理由としては、有効成分であるジンセノサイドの含有量が商品により異なるため具体的な推奨量を明示できないこと、生殖機能におけるヒトへの有効性を確認できる論文が少ないこと、などが挙げられます。
たとえば2021年に韓国から発表された論文では、1800~3000mgの高麗人参を1日2~3回に分けて摂取した9件の結果が分析されたものの、勃起機能への効果は臨床的に重要でないわずかなものであったとの結論が出されています出典[22]。
もちろん、勃起に関わるテストステロン、血流、疲労、心理状態など、それぞれの要素の改善は期待できるため、勃起をサポートする効果が得られる可能性はあるでしょう。
しかし勃起力の向上に役立つ食品として、高麗人参が最善の選択肢とは言えないことを覚えておいたほうがよさそうです。
勃起力の向上効果が確認されている成分を探している場合には、血流改善効果の高いシトルリンや、テストステロン増大効果の高いトンカットアリなどのサプリメントも検討してみましょう。
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