肥満とEDとの関係とは?両方を改善する7つの取り組み
2025年9月23日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

肥満とEDの関係とは?

一般に肥満、および肥満に追随するメタボリックシンドロームは、勃起不全(ED)と密接な関係があると言われています。

肥満とEDの関係を調べた論文では、EDに悩まされている男性の約79%がBMI25kg/m²以上の肥満体型であったとの統計が確認できます。肥満が重度になるほど、バイアグラやタダラフィルのようなEDの治療薬が効きづらくもなるため出典[1]肥満の解消はEDの解決にも重要であることが分かるでしょう。

まずは肥満においてEDのリスクが上がる理由として、考えられる点を2つ説明します。

 

肥満がテストステロンを減らす

勃起において重要な要素のひとつがテストステロン。男性ホルモンの一種であり、性機能全般をサポートする働きがあることで知られていますね。

とくに性的刺激と勃起を連動させる役目をテストステロンが担っているため、テストステロンが不足するとスムーズに勃起できなかったり、硬さを維持できなかったりといった問題が生じることも出典[2]

そんなテストステロンは肥満により減りやすくなると言われています。原因のひとつに、脂肪組織の炎症による活性酸素の大量発生が挙げられるでしょう出典[3]

増えすぎた活性酸素は酸化ストレスとして体にダメージを与えます。テストステロンの分泌場所である精巣は酸化ストレスにとくに弱いため出典[4]、ダメージを受けやすく、テストステロンの分泌能力が落ち込む可能性があるでしょう。

BMI35~40kg/m²を超える重度の肥満者では、痩せ型の男性よりもテストステロンが50%以上低いとのデータも出典[5]。肥満がテストステロンに与える影響がいかに大きいかが分かるでしょう。

また、テストステロンにはエネルギー消費を増やす働きもあるため、テストステロンが減ることでさらに太りやすくなる可能性も出典[6]

肥満とテストステロンの減少の悪循環を断ち切るためにはやはり減量あるのみです。食事量や運動量を見直してカロリー収支を調整し、体重を少しずつ落としていきましょう。

 

肥満に関連する生活習慣病が血流を悪くする

勃起において重要な要素にはもうひとつ、血流があります。

勃起では陰茎の血管が拡張し、そこへ大量の血液が流れ込むことにより硬くなります。そのため血流が悪い状態では十分な量の血液を集められません。勃起時の大きさや硬さに物足りなさを感じたり、中折れしたりする可能性もあるでしょう。

さて、肥満を放置すると、血糖値や血中脂質、血圧に問題が起きるメタボ状態となり、さらに悪化すると糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病を生じます。これらの病気はすべて血流を悪くするため、EDのリスクも高まるのです。

たとえば糖尿病や脂質異常症では血液が大量の糖や脂質でドロドロになり、血流が低下します。また高血圧では血管の拡張能力が失われており、勃起時の血管拡張に対応できない可能性も高まるでしょう。

血液と血管の状態を悪くするこれらの病態では、次のようにEDのリスクが跳ね上がるため注意が必要です。

糖尿病男性のEDの有病率は、糖尿病でない男性の約3.5倍出典[7]

総コレステロールが240mg/dL以上の男性のEDリスクは、180mg/dL未満の男性の1.83倍出典[8]

高血圧の男性グループではEDの有病率61.79%に対し、正常血圧の男性グループでは20.28%出典[9]

肥満を解消してこれらの生活習慣病のリスクを抑えることは、EDの予防や改善にもつながると言えそうですね。

肥満とED両方を改善できるおすすめ習慣7選

肥満はEDのリスクを高めるため、減量に成功できれば勃起力も回復できるでしょう。

減量のアプローチは無数にありますが、どうせならよりEDの解決が期待できそうなやり方をしたいところです。

そこでここからは、肥満とED、両方に効果的な方法について解説します。ぜひ今から紹介する取り組みを習慣化して、肥満とED、両方の悩みを一気に解決しましょう

 

甘いお菓子とジュースは封印

肥満の解消のために最も重要なのは、やはり余分なカロリー摂取を減らすこと。今回は間食としてよく食べられがちな甘いお菓子やジュースに注目してみましょう

1日あたり1杯以上のソフトドリンクを消費する人は、1日あたり1杯未満のソフトドリンクを消費する人よりもメタボリックシンドロームの有病率が高いというデータがあります出典[10]。甘いものを食べる習慣がある方ほど、肥満やメタボになりやすいと言えそうですね。

また甘いものに含まれる多量の糖質が、血糖値を急激に上げてしまうことにも注意が必要です。糖質の摂りすぎによる血糖値の急変動は血糖値スパイクと呼ばれ、大量の活性酸素を発生させて酸化ストレスを増やしてしまうのです。

テストステロンの分泌場所である精巣や、陰茎の細い血管は、酸化ストレスのダメージを受けやすい場所。テストステロンの分泌量が減ったり、血流が悪化したりする可能性があるでしょう。

さらに高血糖状態が続くと、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪くなります。インスリンは体内の血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の産生を刺激するため出典[11]、インスリンの効きが悪くなるとNOが不足し、血流も悪くなってしまうのです。

甘いものの摂取を減らせば、余分なカロリー摂取を減らしつつ、酸化ストレスを抑えられます。ジュースを無糖の炭酸水やお茶に切り替えるとともに、小腹が空いたときの間食はナッツや小魚のような甘くないものを試してみましょう。

 

加工肉よりも魚料理を選ぼう

肥満の方に多いのが、ベーコンやウインナーのような加工肉や、バラ肉のような脂身の多い肉を用いた高カロリーの食事です。

食事由来の脂質と肥満との関係を調べた研究では、飽和脂肪酸の摂取が増えるほど肥満のリスクが高まることが分かっているのです出典[12]。肥満を解消したい場合には、加工肉や脂身の多い肉を避けた方がよいと言えそうですね。

代わりのたんぱく質源として、サバ缶や鮭の塩焼きのような魚料理がおすすめ。魚から摂取できる多価不飽和脂肪酸は体重増加のリスクが少ない特徴があるため出典[12]、加工肉を中心とした食事よりも太るリスクを抑えやすいでしょう。

魚に豊富なDHAやEPAなどのω-3系脂肪酸には、継続摂取でテストステロンを増やしたり出典[13]高血圧、糖尿病、脂質異常症のリスクを減らしたりする効果も確認されています出典[14]出典[15]出典[16]テストステロンの増加と血流改善、勃起に関わるダブル効果が期待できそうですね。

EDと食習慣の関係性を調べた論文では、脂身の多い肉類や加工肉の摂取が少ないほど、またω-3系脂肪酸のような多価不飽和脂肪酸の摂取が多いほど、EDの発症率が少ないとも述べられています出典[17]

良質な脂質を摂れる魚料理を取り入れることで、体重増加を防ぎつつEDのリスクを下げましょう。

 

野菜や果物を積極的に取り入れよう

ジャンクフードやインスタント食品で自炊を済ませている方では、魚に加え、野菜や果物の摂取も減りがちです。しかし肥満やEDの問題を解決するためには、これらの植物性の生鮮食品は是非とも積極的に摂りたいところ。

野菜や果物は低カロリーなものが多いため、食事のボリュームを保ちつつ摂取カロリーを抑えるための食材として適しています。食べる量を減らすことによる物足りなさがストレスになりやすい方は、ぜひキャベツや玉ねぎなどを多めに入れて料理をかさ増ししてみましょう。

また野菜や果物に豊富な食物繊維には、食物中の糖、脂質、ナトリウムの吸収を抑える効果出典[18]。肥満や生活習慣病のリスクを下げるためには、ぜひ積極的に摂りたいものですね。

さらに見逃せないのが、抗酸化ビタミン、ポリフェノール、カロテノイドなど、抗酸化作用を発揮するさまざまな成分を含む点です。

食事性のポリフェノールには体脂肪の形成を抑える効果があることが知られており出典[19]、一部のポリフェノールにはエネルギー消費量を増やして体脂肪の燃焼を促す効果も確認されています出典[20]

トマトのリコピンのように、摂取量を増やすことでEDのリスクを下げられる成分も確認されています出典[21]

効率的に痩せつつ、EDのリスクを下げるための食材として、野菜や果物はよい選択肢と言えるでしょう。

 

お酒はウイスキーダブル1杯まで

お酒の飲みすぎを防ぐことも重要です。アルコールはエンプティカロリー(空のカロリー)と言われることもありますが、決して飲んでも太らないわけではありません。

本来のアルコールのカロリーは1gあたり7.1kcal。しかし体に蓄えられないカロリーが一部あるため少し減り、1gあたり5kal程度と考えられているのです出典[22]。飲みすぎればカロリーの摂りすぎにつながり、肥満の原因になることを覚えておきましょう。

また、アルコールはテストステロンを傷つける活性酸素を増やすことが知られております出典[23]

実際に大量飲酒はテストステロンを増やしづらくしたり出典[24]、血圧を上げて血流を阻害し、脳卒中のリスクを高めたりすることも分かっています出典[25]

大量飲酒が習慣化しているアルコール使用障害の患者におけるEDの割合は、なんと68.5%に及ぶとのデータも出典[26]。勃起力を保ちたい場合にも、飲みすぎは厳禁と言えそうですね。

飲酒量の「適量」については、アルコールと性機能の関係について調べた論文のデータが役立つでしょう。1日に純アルコール換算で20g未満であれば、性ホルモンへの影響が生じにくいと言われています出典[24]

アルコール度数5%のビールであれば500ml(ロング缶1本)、40%のウイスキーであれば役60ml(ダブル1杯)が1日の飲酒量の目安です。低カロリーかつ低糖質なおつまみを選ぶことも、ダイエットや勃起力の向上においては重要ですね。

 

1日7時間ぐっすり眠ろう

肥満とED、両方の問題の解決に、ぐっすり眠ることは欠かせないと言ってもよいでしょう。

睡眠と肥満との関連を調べた論文からは、1日7時間未満しか眠れていない方は、7時間以上眠る方よりも平均BMIおよび肥満の発症率が高いとの統計が確認できました。5時間未満の睡眠では7~8時間の睡眠の場合よりも肥満のリスクが40%高まるとも述べられています出典[27]

短時間睡眠により食欲をコントロールするホルモンのバランスが崩れ、脂質や糖質の多い高カロリー食品を求めやすくなることが原因と考えられているようですね出典[27]

また睡眠不足は勃起力にも影響を与えます。たとえばテストステロンは睡眠時に最も効率よく分泌されるため出典[28]、短時間睡眠ではテストステロンが不足しやすくなるでしょう。

また睡眠不足は血管拡張物質であるNOの利用効率を下げるため出典[29]、血管が拡張しづらくなり、勃起時の大きさや硬さを十分に維持できない可能性も。

7時間未満の睡眠が習慣化すると、生活習慣病のリスクも高まると言われています出典[30]

必要な睡眠時間には個人差が大きいとも言われていますが、肥満とED、両方のリスクを減らせる睡眠時間として「7時間」がベストと考えられるでしょう。夜更かしを避けるとともに、睡眠の質を下げるようなアルコールやカフェインの摂りすぎにも気を付けましょう。

 

こまめに立ち上がって歩く習慣を付けよう

運動不足もまた、肥満とED、両方のリスクを高めてしまいます。

デスクワーク中心の生活で歩数が極端にすくなかったり、運動習慣がなかったりする場合、消費エネルギーを十分に増やせないため太りやすくなることは想像しやすいでしょう。

また座りっぱなしの生活や歩数が極端に少ない生活ではテストステロンが下がりやすい可能性もあります出典[31]出典[32]勃起力を高めたい場合には、こまめに立ち上がって体を動かすことが重要と言えそうですね。

体を動かすことで勃起力が上がったケースを紹介しましょう。35~55歳の肥満男性55名が、食事管理と併せて身体活動時間を週48分から195分に伸ばす取り組みを2年間行いました。すると国際勃起機能指標(IIEF:6~30点満点で勃起機能を主観的に評価し、点数が高いほど勃起機能が高いことを示す)の平均スコアが13.9から17へと増加したのです出典[33]

週48分から195分への増加量は約150分。1日に換算すると20分程度と決して長くはありませんが、20分でも難しそうだと感じる方には10分からの挑戦もおすすめです。歩数とテストステロンの関係を調べた論文では、1日の歩数が1000歩増えると総テストステロンが7ng/dL増えると述べられているのです出典[32]

成人の歩行であれば1000歩の達成にかかる時間は約10分。まずは10分、外に出て足を動かすところから始めてみませんか?

 

高負荷の筋トレでダイエット効率UP

最後におすすめしたいのは筋トレです。エネルギーを消費して体脂肪の燃焼を促す有酸素運動とは異なり、無酸素運動(筋トレ)は筋肉に負荷をかけて筋肉量を増やす効果を発揮します。筋肉は脂肪よりも消費カロリーが多い組織のため、筋トレで筋肉量を増やせれば、基礎代謝が上がり痩せやすい体質になるでしょう。

また、筋トレはテストステロンを増やすためにも役立ちます。筋トレとテストステロンの関係を調べた論文では、次のようなことが述べられています出典[34]

  • 全身を用いるフリーウェイト運動の方が、腕や脚単体のマシン運動よりも効果的
  • 有酸素運動も無酸素運動も、肥満の方の減量およびテストステロンの向上に効果的
  • 「中程度の強度」で「広範囲の筋肉」を「セット間の短い休憩」と組み合わせる方法が効果的

テストステロンには筋肉の合成効率を高める効果があります。そのためこのような方法での筋トレを意識すれば、より筋肉量を増やすことができます。肥満を解消できれば、勃起力も自然と向上するでしょう。

また、筋トレには血圧を下げる効果もあることが複数の臨床研究で確認できます出典[35]出典[36]。血流の改善効果により、勃起力もより高まる可能性がありそうですね。

ウェイトリフティングのような本格的なものでなくとも構いません。スクワットや腹筋のような、器具なしでも手軽にできるものから始めてみましょう

EDを改善する最善策とは?

肥満とEDには密接な関連があり、肥満の状態を放置しておくと勃起力の低下リスクも高まります。EDを解決するためには肥満の解消が重要。食事や運動、睡眠、飲酒などを見直して体重を落とせば、勃起力も高まるでしょう。

ただし本記事で紹介した取り組みはいずれも即効性のないものです。1週間で5kgの減量が不可能なように、短期間で勃起力を劇的に高めることはできず、やはり継続が肝心

しかし効果が出るまでに時間がかかることから、今の取り組み方法は間違っていないか、ほかにできることはないかと、気になる方も多いはず。

より自身にあった解決策を知りたい方や、自身の取り組みについて確認したい方には、ナイトプロテイン公式LINEでの相談がおすすめです。

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