執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
マグロが精力に与えるよい影響とは?
精力とは体力や気力を含む意味合いでも使われますが、今回は男性の性的能力についての意味で取り上げます。精力増強に役立つとして、にんにくをはじめさまざまな食品が、メディアでは度々話題に挙がっていますね。
なかでも今回注目したいのがマグロ。トロや赤身、マグロの缶詰などを食べることで、精力にどのような影響があるのかを説明します。
テストステロンの分泌を支える成分を効率摂取
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マグロからは、男性ホルモンであるテストステロンに関わる栄養素を効率的に摂ることができます。テストステロンは性欲や勃起力、精子の製造能力など、性機能全般を支える重要なホルモン。精力増強を考える際には重視したいホルモンと言えるでしょう。
そもそもマグロに限らず、魚の摂取自体がテストステロンによい影響を与えるようです。ブルガリアの男性を対象とした調査では、週に1回以上、魚を食べる男性のテストステロン濃度は、月に1回食べると回答した男性よりも有意に高かったとのデータが得られています出典[1]。魚を取り入れること自体が精力には有意義であることが読み取れますね。
週1回以上の摂取でテストステロン濃度が高く計測されたことについては、論文では亜鉛、マグネシウム、多価不飽和脂肪酸の摂取を理由として考察されています出典[1]。
- 亜鉛:テストステロンの分泌を支持するホルモンの合成をサポート出典[2]
- マグネシウム:活性の高い遊離テストステロンの割合を増やす可能性出典[2]
- 多価不飽和脂肪酸:魚油のDHAやEPAの継続摂取によりテストステロンが増加出典[3]
いずれもテストステロンを増やすため、積極的に摂りたい栄養素であることが分かりますね。
さらにクロマグロからは、ビタミンDをはじめとする脂溶性ビタミンも効率よく摂取できます出典[4]。ビタミンDの充足もテストステロンの分泌には重要であるため出典[5]、マグロから効率よく摂れることには意義があると言えるでしょう。
DHAやEPAが精子の運動率を改善

マグロから摂取できる栄養素にはもうひとつ見逃せないメリットがあります。それは多様な抗酸化物質により精巣を保護して、精子の状態を良好に保てるようになるということ。
魚の摂取量が多いと精子の質が高まることが分かっており、先ほどのブルガリアの男性の調査でも、週1回以上魚を食べる男性は、月1回の男性よりも運動率が有意に高かったとの結果が得られています出典[1]。
同様に魚介類の摂取量が多いと、精子の運動率が極端に低い状態を示す「精子無力症」のリスクが下がることが、複数の調査により確認されています出典[6]出典[7]。
精子の質の維持において重要なのは、やはり抗酸化物質です。精子の製造場所である精巣は、酸化ストレスにとくに弱い組織出典[8]。そのため抗酸化物質を積極的に取り、酸化ストレスを減らして精巣を保護できれば、精子の質も高まると考えられているのです。
マグロから摂れる優秀な抗酸化物質といえば、ω-3系脂肪酸のDHAとEPA。これら魚油由来の栄養素が精巣を保護することで、精子の質を改善できる可能性があるのです。
実際に不妊男性が魚油由来のDHAとEPAを摂取したところ、精子の運動性が有意に改善したとのデータも存在します出典[9]。
自然妊娠においては精子濃度に加え、精子の運動能力も重要です。精子無力症の状態では妊娠も難しくなるでしょう。精子の運動率に悩む男性において、DHAとEPAを効率よく摂れる魚の活用は有意義と言えそうですね。
アルギニンや抗酸化物質が勃起力をサポート
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勃起力を高める意味で精力増強を考えている方にも、マグロは役立つ可能性があります。なぜならマグロには、勃起において重要な血管の拡張をサポートする栄養素、アルギニンが豊富だから。
アルギニンとはヒトの体内で血中にそのまま存在する遊離アミノ酸の一種です。アルギニンは体内で酵素と反応し、血管拡張物質である一酸化窒素(NO)を生成。勃起においては陰茎の血管をスムーズに拡張させる必要があるため、血管拡張能力を高めるアルギニンは非常に重要と言えるでしょう。
ED患者122名を対象とした調査では、EDが重症化している男性は軽度EDの男性に比べ、アルギニンの血中濃度が17%低かったことが明らかになっています出典[10]。アルギニンの不足はNOの生成効率を落とし、EDのリスクを高めるかもしれません。マグロのようなアルギニンが豊富な食品を摂ることで、NOを増やしやすくなるでしょう。
また、NOは酸化されやすい物質であるため、酸化ストレスが多いとNOの利用効率が落ち、十分に血管を拡張できなくなる可能性があります。そのため勃起のためには、酸化ストレスを減らす抗酸化物質の摂取も重要。
マグロから摂れるDHAには血流促進効果もあるため出典[4]、勃起力を上げたい場合には積極的に摂りたいものです。
また、クロマグロからはビタミンAやEなど、脂溶性の抗酸化ビタミンも効率よく摂取できます出典[4]。酸化ストレスを減らし、NOの利用効率を上げるために役立ちそうですね。
メタボ予防で性機能低下のリスクを下げる
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魚が体によい、とは現代のメディアでも盛んに言われていることです。さまざまな理由がありますが、とくに肥満、高血圧、脂質異常症などのリスクを下げ、メタボを予防、改善する効果が注目されていますね。
肥満は性欲出典[11]、勃起力出典[12]、精子の質など出典[13]、精力全般に悪影響を与えます。また高血圧や脂質異常症の状態では、EDのリスクが高まることも分かっています出典[14]出典[15]。
精力増強を考える場合には、メタボの予防はとくに重要と言えるでしょう。
魚を食べることによるメタボへの影響は、複数の論文により確認されています。
- 魚の摂取量が多いほど、中性脂肪が少なくHDLコレステロールが高い(血中脂質の状態が良好)出典[4]
- 魚の摂取量が多いほど、血圧が低い出典[16]
- 週1回魚を摂る方はより低頻度の方よりもメタボ発症リスクが36%低い出典[17]
魚の摂取が、メタボの予防や改善に役立つことが分かりますね。
肥満やメタボを改善し、性機能低下のリスクを下げるための栄養素として、やはり魚油のDHAとEPAの効果が指摘されています出典[4]。マグロから効率よく魚油を摂取できれば、精力増強にも役立つでしょう。
精力をつけるためのマグロの食べ方とは?
このように、マグロからは男性機能を高めるために役立つ栄養素を効率よく摂れることが分かりました。精力増強を考える男性は、マグロをはじめ、魚を積極的に摂るとよいと言えそうですね。
ここからは精力増強を目的にマグロを食べようと考えている方向けの、おすすめのマグロの食べ方について解説します。
週に1回以上の摂取を目指そう

精力をつけるためのマグロの食べ方として「週1回以上」をおすすめします。ほかの魚を食べる機会も週1回以上作り、少なくとも週2回は魚料理を食べる機会を設けるとより効果的と言えるでしょう。
魚を週1回以上摂る方と、週1回未満の方とでは、テストステロンや精子の質、メタボのリスクなど、精力に関わるさまざまな点で差が生じていました出典[1]出典[17]。魚の摂取不足による精力の低下を防ぐためにも、魚を週1回以上摂ることは最低ラインとして目指した方がよいでしょう。
さらに多くの魚を摂ることによるメリットは、主に勃起に関わる血流の分野で生じるようです出典[4]。
- 少なくとも週に2回魚を(うち1回は脂肪分の多い魚)摂取すると、魚を食べない人より冠動脈性心疾患による死亡リスクが25%減少
- 魚の摂取量を週あたり100~700gまで増やすと、脳卒中リスクが2~12%低下
冠動脈性心疾患も脳卒中も、血流の悪化による血管の詰まりにより生じるものです。とくに肥満かつ冠動脈疾患の男性では、EDの有病率が90%を超えるとのデータもあり出典[18]、勃起力の維持のため、冠動脈疾患のリスクを下げることはとくに重要と考えられるでしょう。
普段から魚を食べる習慣がない方は、最低ラインとしてマグロを週に1回。勃起力を高めたい方であれば、ほかの魚を食べる機会をあと1回設け、魚料理を週に2回食べる習慣を付けるとよいかもしれませんね。
刺身での摂取がおすすめ

マグロの栄養素、とくに精力へのさまざまな効果が期待できるDHAやEPAを効率よく摂るためには、生での摂取がおすすめです。というのもDHAやEPAのような、抗酸化物質として機能するタイプの脂質は熱に弱く、加熱により一部が失われてしまうから。
同じくDHAやEPAが豊富な魚類であるサンマを異なる調理法で加熱したときの、各脂質の残存量を比較したデータが存在します出典[19]。
DHA | EPA | |
|---|---|---|
グリル焼き | 84% | 87% |
フライパン調理 | 85% | 77% |
揚げ調理 | 58% | 51% |
揚げ調理でのDHAやEPAの減少が目立ちますが、グリルやフライパンを用いた加熱においても、1~2割の損失があることが分かります。
繊細なDHAやEPAを効率よく摂りたい場合には、熱を通さない刺身での摂取がおすすめと言えそうですね。
最もお手軽なのは週に一度、外食でマグロの刺身定食や海鮮丼を注文する方法です。スーパーでマグロの刺身を購入してもよいでしょう。
DHAやEPA、および脂溶性ビタミンであるビタミンDは、マグロのなかでも脂質の多いトロに豊富です。トロは赤身に比べ高カロリーですが、毎日食べるようなものではないため、摂取を警戒する必要性は薄いでしょう。価格とのバランスがよい中トロであれば、比較的続けやすいかもしれませんね。
マグロに偏りすぎない
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本記事ではマグロから摂取できる栄養素の、精力増強におけるメリットについて解説しましたが、マグロにばかり偏りすぎるやり方はおすすめできません。肉や卵など、ほかの動物性食品にも、精力をつけるために役立つ成分が含まれているためです。
たとえばラム肉や牛肉に豊富なL-カルニチンは、抗酸化作用を持つことで知られるアミノ酸です。酸化ストレスによるテストステロンの減少を抑える効果が動物実験により確認されており出典[20]、ヒトにおいてもテストステロンの維持に役立つ可能性があるでしょう。
また、卵はヒトが必要とする栄養素のうち、ビタミンCと食物繊維以外のすべてを含むことで知られる、非常に優秀な食材です。亜鉛やマグネシウム、ビタミンDなど、テストステロンに関わるミネラルの摂取減として活用できます。
さらに卵白由来のペプチドには、血圧を下げたり出典[21]、NOの合成を活性化したりする可能性も指摘されています出典[22]。血流を改善して勃起力を高めるためにも、卵の摂取が役立つかもしれませんね。
現状、魚料理ばかり食べることによる、体への目立った悪影響は報告されていませんが、マグロや他の魚のDHAやEPAの摂取にこだわり、ほかの食品を摂る機会を逃すのは実にもったいないことです。さまざまな食品から精力増強に役立つ栄養素を摂れるよう、メニューが偏らないよう調整することも重要ですね。
マグロの水銀は生殖機能に悪影響?

マグロのような大型の魚は、食物連鎖の関係で小型の魚より多くの水銀を含んでいます。
水銀の摂りすぎは人体、とくに生殖機能に悪影響をもたらすことは有名です。精子の運動性を低下させたり、精子のDNAの損傷を引き起こしたりすることが分かっており出典[23]、サルにおいては血中の水銀濃度の高い個体で、精子の運動性および正常形態率の低下が実際に確認されています出典[24]。このように、過剰な水銀が生殖機能に悪影響であることは間違いありません。
しかし一方で、魚類から摂取する水銀の量では精液の質への目立った悪影響は確認されていないことは、念頭に置いておくべきでしょう出典[25]。
むしろ、毛髪で測定した水銀濃度が高い男性では、低い男性よりも精子濃度が50%、総精子数が46%、精子の運動能力が31%、それぞれ高く測定されたとのデータも得られています出典[25]。
また近年の研究では、マグロのような水産物による水銀のリスクは低いとの見方が強く、欧州食品安全機関(EFSA)でも、水銀を理由に魚を制限する方が、健康リスクの増大につながるとも述べています出典[4]。
妊娠中の女性や小児では、大型の魚の摂りすぎに注意が必要と指導されることもありますが、男性が常識的な量を摂る分には問題ないとの見方が一般的であるようですね。
精力を高める最適な方法とは?
男性が精力をつけて男性機能を高めるために、マグロの摂取が役立つ場合があります。DHAやEPAをはじめ、亜鉛やビタミンDなど、男性機能に関わるさまざまな栄養素を摂れるため、魚の摂取に迷った際の選択肢としておすすめですね。
マグロのDHAやEPAを効率よく摂りたい場合には、刺身での摂取がおすすめです。週1回以上を目安に、血流改善による勃起力アップを期待したい場合には、週2回以上、魚料理を摂れるよう調整してみましょう。
なお、精力をつけるために役立つ食品はマグロのほかにも複数あります。また食生活のほか、睡眠や飲酒などのケアが重要になる場合もあるでしょう。
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テストステロンの減少や血流の悪化が加齢とともに見られる以上、放っておくと精力は悪化するばかりです。精力をつけるためにはいち早い取り組みが重要。ぜひナイトプロテイン公式LINEで相談のうえ、適切な取り組みで精力みなぎる体を目指しましょう。
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