執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
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アスパラギンとは
まずは、アスパラギンの概要や体内での働き、アスパラギンが豊富に含まれる食材についてご紹介します。また、アスパラギンとよく似た名前の成分として「アスパラギン酸」がよく知られています。アスパラギンとアスパラギン酸の違いについてもチェックしておきましょう。
1.どんな栄養素?
アスパラギンは、アスパラガスなどの植物タンパク質に含まれるアミノ酸の一種であり、世界で最初に単離されたアミノ酸です出典[5]出典[10]。
焼き菓子や揚げ物などの食品において、材料を加熱すると「アクリルアミド」と呼ばれる物質が生じることがあります。アクリルアミドは、アスパラギンと還元糖や反応性カルボニルとの間に起こる化学反応によって生成され、健康上のリスクをもたらすと考えられています出典[1]出典[3]。
アスパラギンは人体を正常に機能させるために必要ですが、他の化合物から合成が可能なアミノ酸であり、食事から摂取する必要はありません。そのため、アスパラギンは「非必須アミノ酸」と呼ばれることもあります出典[3]。
アスパラギンの歴史
「アスパラギン」という名前は、1806年にアスパラガスの汁から分離されたことが由来となっています出典[1]。
また、アスパラガスを摂取した後の尿からは特徴的な臭いがすることがあります。この現象は、アスパラギンのさまざまな代謝副産物によるものと考えられています出典[1]。
1891年にはアスパラガス摂取後の尿の臭い原因物質はメタンチオールであると報告され、1975 年の研究では、さまざまなチオエステルであることが示されました。さらに、遺伝的にこうした臭いを発しない場合があることも示唆されています出典[3]。
アスパラギンとアスパラギン酸の違いについて
アスパラギンとよく似た名前の物質として、「アスパラギン酸」が存在します。
この二つの物質には、アスパラギンは「アミノ酸」であるのに対し、アスパラギン酸は「アスパラギンが合成される前段階の物質」といった違いがあります。
まず、アスパラギンの前駆体であるオキサロ酢酸が、トランスアミナーゼ酵素によってアスパラギン酸に変換されます。これらは、酵素アスパラギンシンテターゼと呼ばれる酵素によって、アスパラギン酸とグルタミン、アデノシン三リン酸(ATP)を原料として、アスパラギンとアデノシン一リン酸(AMP)、グルタミン酸、ピロリン酸を生成するのです出典[3]。
ちなみに、アスパラギン酸はエネルギー代謝を高めたり、カルシウムやカリウムといったミネラルを全身に運んだりする作用があるため、どちらも人体の健康にとって重要な成分といえるでしょう。
2.体の中でどんな働きをする?
アスパラギンは、人体においてさまざまなタンパク質の合成に不可欠なアミノ酸です。また、アスパラギンには細胞内の有毒物質であるアンモニアの分解や、脳内で信号を伝達する神経伝達物質を構成するといった働きもあります出典[2]。
アスパラギン合成酵素の合成には、ASNSと呼ばれる遺伝子が関わっています。アスパラギン合成酵素は体中の細胞に見られ、タンパク質構成要素であるアスパラギン酸をアミノ酸のアスパラギンに変換する働きがあるのです出典[2]。
3.不足するとどんなリスクがある?
アスパラギンの不足は、アスパラギン合成酵素欠乏症と呼ばれる先天性疾患によって発生します。アスパラギン合成酵素欠乏症は、ASNSと呼ばれる遺伝子の欠損によって発生する病気です出典[2]。
アスパラギン合成酵素欠乏症は、出生した直後から頭のサイズが異常に小さい(小頭症)、脳組織が萎縮するといった症状がみられ、徐々に悪化していきます。アスパラギン合成酵素欠乏症を持つ人は重度の発達遅延を持っており、歩くことや座ることができず、コミュニケーションをとることも困難であることがほとんどです出典[2]。
さらに、筋肉のこわばりや制御不能な動き、腕と脚の麻痺 (痙性四肢麻痺) が起こり、てんかん発作を繰り返すことも少なくありません。視覚に関わる脳の領域の障害により失明してしまう場合もあります出典[2]。
健康な人の場合は、普段の食生活においてアスパラギンが不足する可能性はほとんどないといわれています。しかし、拒食症やタンパク質の摂取不足などの低栄養状態が起きていると、アスパラギンやほかのアミノ酸が不足することがあるため注意が必要です出典[9]。
4.どんな食材に含まれている?
アスパラギンは、アスパラガスや肉類、牛乳、じゃがいも、大豆製品に多く含まれています。また、もやしなどの発芽した豆類に豊富に含まれているのが特徴です出典[8]。
加工食品では、うま味成分や機能性成分としてアスパラギンなどのアミノ酸が使われていることもあります。
さらに、アスパラギンは栄養補助食品や、食品添加物医薬品としての使用も認められています。医薬品の場合は、低タンパク血症や低栄養状態に対するアミノ酸補給を目的として使われます出典[9]出典[11]。
アスパラギンに確認されている作用や効果
アスパラギンは、運動後の筋肉の疲労を遅らせる可能性があることが示唆されています。
筋肉を動かすには、筋肉に蓄えられる糖の一種であるグリコーゲンが必要です。
運動などで筋肉が収縮する際、筋肉内のグリコーゲンを分解してできるATPと、脂肪が分解してできた遊離脂肪酸によってエネルギーが作られます。グリコーゲンが分解されると生成される乳酸は、筋肉の収縮を阻害する働きをするため疲労物質とも呼ばれます。筋肉内のグリコーゲンが減少し、乳酸が増加すると、筋肉は収縮が困難になる筋肉疲労(筋肉痛)が現れます出典[7]。
サンパウロ大学は、水泳で運動させたラットにアスパラギンとアスパラギン酸を補給し、筋肉と肝臓のグリコーゲン、血糖、乳酸、アラニン、グルタミンの濃度を測定しました。その結果、より長く運動させたラットに対して血中乳酸濃度の有意な低下が見られました。さらに、アスパラギンとアスパラギン酸の補給は、筋肉のグリコーゲン分解速度を低下させることも分かっています出典[6]。
運動した後の筋肉の疲れを長引かせたくない方には、アスパラギンが含まれる食事や栄養補助食品の補給がおすすめです。
アスパラギンの摂取方法や注意点
アスパラギンの摂取が過剰になったとしても、細胞内タンパク質の代謝に利用され、体内に蓄積されることはありません出典[9]。
また、食品や食品添加物などにおいても、安全性に関する大きな問題は報告されていません出典[9]。これらの理由から、アスパラギンの過剰摂取において人体の健康を損なう可能性はほとんどないと考えられています。
まとめ
アスパラギンは、細胞のタンパク質や酵素、筋肉組織の生成に欠かせないアミノ酸です出典[4]。
健康な人は、普段の食生活でアスパラギンが不足する可能性はほとんどありません。また、アスパラギンは細胞内タンパク質の代謝に利用されるため、過剰摂取しても人の健康を損なう恐れはないといわれています。
アスパラギンは筋肉の疲労を軽減する働きがあることが報告されています。運動した後はアスパラギンの多い食事や栄養補助食品を補給しておきましょう。
出典
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