クレアチンは勃起に効果はある?男性機能との関係を徹底解説
2024年6月12日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

クレアチンってどんな成分?

クレアチンはアミノ酸の一種です。グリシン、アルギニン、メチオニンという3つのアミノ酸を材料とし、ヒトの体内で合成できることから非必須アミノ酸に分類されています。もちろん食事からも摂取が可能であり、肉や魚のような動物性食品が主な供給源となりますね。

クレアチンの95%以上は、リン酸化されたクレアチンリン酸の形で骨格筋に存在しています。クレアチンリン酸は「エネルギー貯蔵物質」として活躍する非常に優秀な化合物です。

私たちが運動を行うと、エネルギーを作るアデノシン三リン酸(ATP)が分解されてアデノシン二リン酸(ADP)を生じます。しかし骨格筋に蓄えておけるATPはごく僅か。ATPのみでは激しい運動の継続が難しく、すぐにエネルギー切れとなってしまうでしょう。

そこで活躍するのがクレアチンリン酸です。クレアチンリン酸は運動時に分解されてリン酸を放出し、ADPから分解前のATPへと再合成するように働くのです出典[1]。エネルギー源の再補充に役立つため、運動のパフォーマンスを高めたり、持久力トレーニングの質を高めたりする効果が期待できるでしょう。

また、クレアチンは脳でも同様にATPを生成する物質として機能しており、脳へのエネルギー補充に役立ちます。実際にヒトへのクレアチン補給で、うつ症状が改善されたり気分が上昇したりといったケースが確認されています出典[2]

脳のクレアチン欠乏が見られる老化やアルツハイマー病などにおける、認知機能の低下を防ぐ可能性も指摘されています。
 

クレアチンは勃起力を改善しない?

男性に特有の悩みのひとつ、勃起力の改善のためにクレアチンのサプリを飲もうと考える方もいるのではないでしょうか。しかし勃起力を改善させる効果は、残念ながらクレアチンには認められていないのです

そもそも勃起力の改善においては、男性ホルモンであるテストステロンの増加や血流の改善が重要です。

血流改善のためには、血中脂質のバランスを保ち血液をサラサラに保つことや、喫煙や血糖値スパイクを避けて血管へのダメージを防ぐことが重要です。また適度な運動や水分補給も、血流を良好に保つため重要となるでしょう。

またテストステロンを増やすように働く栄養素として、次のようなものがあります。

栄養素

テストステロンを増やすメカニズム

亜鉛

テストステロン分泌を促す黄体形成ホルモン(LH)の生成をサポート出典[3]

マグネシウム

性ホルモン結合グロブリン(SHBG)とテストステロンの結合をブロックして、活性の高い遊離テストステロンの割合を増やす出典[3]

セレン

抗酸化物質として機能するほか、LHの合成をサポートする効果も出典[4]

抗酸化物質

抗酸化ビタミン(ビタミンC、E)、βカロテン、ω‐3系脂肪酸、ポリフェノールなど

酸化ストレスを減らしてテストステロンの減少を防ぐ出典[5]

ビタミンD

精巣の受容体に結び付きテストステロンの合成量を増やす出典[6]

テストステロンを効率的に増やしたい場合、これらの栄養素の不足を補う方法が効果的です。

クレアチンにはこれらの栄養素のような、テストステロンを直接増やす作用が認められておらず、また血流に関わる血管拡張効果や、血液状態の改善効果も確認されていません。そのため、クレアチンの摂取と勃起力の改善を直接結び付けるのは難しいと言えるでしょう。

合わせて読みたい:フル勃起しない原因4つとペニスを硬くする方法15選
 

クレアチンと男性機能の正しい関係3つ

クレアチンは血流の改善やテストステロンの増加をもたらす栄養素ではありません。

しかしクレアチンの効果により、間接的にテストステロンを高めたり、性機能を改善したりできる可能性があります。

クレアチンと男性機能との関係について、関連が認められることを紹介しましょう。

運動によるテストステロン増強効果を高める

思春期を過ぎた男性においては、筋力トレーニングによりテストステロンが高まることが確認されています出典[7]。クレアチンのエネルギー生成を促す働きにより筋力トレーニングの効率が高まれば、テストステロンもより増やしやすくなると考えられるかもしれません。

実際に、2010年にイランのクルディスタン大学から発表された、クレアチン補給による短距離水泳と血中ホルモン濃度への影響を調べた論文では、クレアチン補給により水泳の平均タイムが短縮されたことに加え、テストステロン濃度が高まったことも確認されています出典[8]

しかし一方で、1997年にペンシルベニア州立大学から発表された論文では、クレアチン補給後に激しいジャンプスクワットやベンチブレスなどの運動を行っても、テストステロンの上昇幅に有意差は見られなかったと報告されています出典[9]

このように、現状では運動前のクレアチン補給は、運動によるテストステロンの増加効果を必ずしも高めるものとは言えないようです。

ただし、クレアチンに期待できる別の効果として、激しい筋力トレーニングにより生じる酸化ストレスを減らす働きがあります出典[1]

先ほどのクルディスタン大学から2011年に発表された論文では、男性が筋力トレーニングとともに、1日あたり5gのクレアチンを4回に分け、計20gを7日間摂取したところ、酸化DNAのひとつである8-ヒドロキシ-2-デオキシグアノシン(8-OHdG)や、過酸化脂質の指標となるマロンジアルデヒド(MDA)の上昇が抑えられたとの結果が得られているのです出典[10]

筋力トレーニングはテストステロンを増やすように働くものの、過剰な運動による酸化ストレスはテストステロン合成の障害となる場合もあります。クレアチン補給により筋力トレーニングのデメリットを解消できれば、テストステロン合成の効率化に役立つかもしれません。

 

精液や精子の質を高める可能性

クレアチンは精巣にも存在しており、精子の運動エネルギーとして使用されることが判明しています。クレアチンの十分な供給により、精子の運動性を高める効果が期待できるでしょう。

クレアチンと精液や精子の質との関係は複数の研究で確認されています。たとえば2020年にデンマークのコペンハーゲン大学から発表された論文では、たんぱく質サプリメントを摂取している778人の男性への調査により、有意差こそなかったものの次のような傾向が確認されています出典[11]

 

精液濃度

総精子数

クレアチンサプリを摂取している

4,200万/mL

1億800万

クレアチンサプリの摂取経験がない

3,600万/mL

9,000万

さらに2020年にチュニジアから発表された論文では、精液中のクレアチン濃度が高いほど、精子の運動性が高いとの相関関係があることが確認されています出典[12]

クレアチンを作用させることによる効果の確認は、細胞実験でのデータがわかりやすいでしょう。人工授精の培地にクレアチンリン酸を添加すると、体外受精中の精子の運動性や速度が向上し、受精能力の向上につながることが確認されました出典[13]

以上より、質の悪い精子や精液の改善、ひいては男性への不妊治療ではクレアチン補給が有効である可能性があります。クレアチンは筋肉や脳に加え、精子へのエネルギーチャージにも役立つことがわかりますね。

 

筋肉量を増やして肥満を防ぐ

クレアチンの摂取により運動パフォーマンスが高まると、筋肉量を増やしやすくなります。

高齢者のクレアチン補給に関する18の研究を分析した論文では、クレアチン補給と筋力トレーニングを組み合わせた場合、除脂肪体重の増加幅が平均で1.32kg高まると報告されています出典[14]

筋肉は脂肪よりもエネルギー消費量の多い組織です。基礎代謝を高める効果が非常に高いため、筋肉量を効率よく増やせれば痩せやすい体質になり、肥満の防止に役立つかもしれません。

肥満はテストステロンを下げる危険因子です。肥満においては炎症性サイトカインにより脂肪組織が炎症を起こしやすくなっています。炎症を起こした脂肪組織はテストステロンをエストラジオールに変換させる酵素「アロマターゼ」の生成を促すように働いてしまうのです出典[15]

またテストステロンの減少により肥満のリスクも高まるため、体重増加とテストステロンの減少の悪循環を生じやすい点に注意しなければいけません。

肥満の解消によるテストステロンの増加効果は非常に大きいことが判明しています。2003年にフィンランドのヘルシンキ大学から発表された論文においては、BMI35以上の男性38名がダイエットで体重を約14%落としたところ、遊離テストステロンが4倍以上に増加したとの結果が得られています出典[16]

クレアチンにより除脂肪体重を増やし基礎代謝を高められれば、テストステロンの増大効果が期待できるかもしれません。
 

クレアチンの効果を得るためのポイントは?

クレアチンには勃起力を高めたり、テストステロンを直接増やしたりする効果はないものの、間接的なテストステロン増加効果や、性機能を改善する効果が得られる可能性があることがわかりました。

そこでここからは、クレアチンを摂る際に意識したいポイントについて解説します。摂取のタイミングや食事との相性をチェックして、クレアチンの効果をより高めましょう。

サプリ補給は運動と併用しておこなう

クレアチンの効果は、主に運動のパフォーマンスを高める方向で現れます。効率よく筋肉量を増やすためにも、クレアチンサプリは運動と並行して摂取しましょう

運動前後は筋肉へのグリコーゲン貯蔵効率が増しているタイミング。クレアチンの保持効率も高まりやすいため、運動前後のエネルギーチャージと併せて摂るとよいでしょう。

パフォーマンス向上のためには、やはり運動前での摂取がおすすめです。クレアチンにはエネルギー貯蔵物質として機能するほか、筋肉のカルシウム感度を上げる効果も期待できます出典[17]

カルシウムは筋収縮をサポートするミネラルです。カルシウムの感度が高まれば少量のカルシウムで筋肉を動かせるようになるため、筋力トレーニングの効率をより高められるでしょう。

運動後のクレアチン補給では、トレーニングによる酸化ストレスの軽減効果が期待できます。筋肉のダメージを抑えたり、疲労回復効率を高めたりするように働くため、長期的な運動パフォーマンスの効率が上がり、筋肉を増やしやすくなるでしょう。

 

糖質やたんぱく質と組み合わせて

クレアチンのサプリメントは効果を高めるため、ほかの栄養素と組み合わせられていることがあります。そのため食事でもクレアチンと相性のよい栄養素を意識して摂れば、よりクレアチンの効果が期待できるかもしれません。

代表的な組み合わせとして、クレアチンと糖質、またはクレアチンと糖質とたんぱく質、2種類の組み合わせが考えられます。

クレアチンの筋肉への貯蔵は、インスリン反応の影響を受けます。そのため糖質摂取によりインスリン分泌を促すことで、クレアチンによるエネルギー貯蔵がより効率化できると考えられているのです。

2000年にイギリスから発表された論文では、12人の男性による体内のクレアチン保持能力の変化が調べられました。

この試験では、クレアチンと炭水化物を5gだけ同時摂取した場合よりも、クレアチンとたんぱく質50gと炭水化物47g、あるいはクレアチンと炭水化物96gを摂取した場合の方が、クレアチンの体内貯蔵量を25%も増やせたとの結果が得られているのです出典[18]

運動前にクレアチンサプリを摂る場合は、グリコーゲンチャージもかねて、白米や餅のような高糖質食品を多めに摂るとよいでしょう。運動後ではたんぱく質と糖質の同時摂取がおすすめです。消化に優れた白身魚やプロテインと、白米やパスタなどを組み合わせましょう。

 

継続補給で除脂肪体重UP

除脂肪体重を減らす効果を期待したい場合には、クレアチンの長期摂取が有効である可能性があります。ダイエットを兼ねて筋力トレーニングに取り組む場合には、ぜひクレアチン摂取を継続してみましょう。

国際スポーツ栄養学会においては、5年間にわたる30g/日のクレアチン摂取においても、乳児から高齢者まですべての集団において安全であると述べられています。また、生涯にわたる3g/日のクレアチン摂取は、安全であることに加え健康上の利益をもたらす、とも認識されています出典[19]

このように、クレアチンの継続補給は安全であり、長期摂取によるメリットも大きいと考えられます。テストステロンを間接的に増やしたり、精液や精子の質を改善したりといった効果を得るためにも、長期補給を前提にクレアチンサプリの活用を考えてみるとよいでしょう。
 

まとめ

クレアチンはエネルギー貯蔵物質として役立つアミノ酸であり、運動のパフォーマンスを高めるために役立ちます。直接勃起力を高める効果はないものの、運動パフォーマンスを高める効果や除脂肪体重を増やす効果などにより、間接的にテストステロンを増やせる可能性があります。

また、勃起力の向上にはつながらないものの、精子や精液の質を高める効果も確認されています。男性における不眠の問題を解消するためにも、クレアチンサプリが役立つかもしれません。

運動パフォーマンスを高めて筋肉量を効率よく増やすためには、運動前後でのクレアチン摂取がおすすめです。糖質やたんぱく質と組み合わせて摂取すると、クレアチンの取り込み効率をより高められるでしょう。

LINEで専門家に無料相談

365日専門家が男性の気になる疑問解決します
LINEからメッセージを送るだけで薬剤師やパーソナルトレーナー、睡眠指導士やサプリメントアドバイザーなどNP所属の男性ヘルスケアの専門家があなたの疑問や質問に直接回答します!