【原因別】遅漏と膣内射精障害の治し方
2022年11月2日更新

執筆者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識できるよう日々邁進中。

遅漏/膣内射精障害とは

遅漏とは、セックス時の射精のタイミングが本人が意図するよりも遅く、フラストレーションを感じている状態を指します。また、膣内射精障害とは、セックスで女性の膣内で射精することができない状態です。一般的に遅漏が重症化すると膣内射精障害につながると考えられています。

ただし、遅漏には、射精までにかかった時間などの明確な基準はありません。射精までの時間が平均より遅くとも、苦痛やわずらわしさを感じていなければ、それは遅漏とは言えません。

一方で射精までの時間が平均程度でも本人またはパートナーが遅いと感じ、不満を抱えていれば、遅漏と言えます。射精までの時間が遅いことで性的な親密さが低下した場合も含まれます。
 

まずは射精のメカニズムを知っておこう

射精障害を改善するためには、射精のメカニズムについて正しく理解する必要があります。メカニズムを知らなければ、不適切なアプローチで遅漏や射精障害を促進してしまう場合も。射精は精液が出るという単純な現象のように感じますが、実際は異なります。繊細な神経伝達や筋肉の動きによって制御されているのです!

ここでは射精が発生するプロセスについてご紹介します。具体的なプロセスは以下の通り出典[1]

  1. 射精中枢の刺激:視覚的刺激による性的興奮や陰部の触覚的刺激がシグナルとなって射精中枢が刺激されます。
  2. 交感神経の活性化:射精中枢の刺激を通じて、交感神経が活性化。勃起は副交感神経が優位な時に生じますが、射精時には交感神経が優位になります。
  3. 精液が尿道に移動:1,2により刺激が伝導し、PC筋と呼ばれるインナーマッスルが反射的に収縮し、精液が精巣から尿道に移動する。
  4. 精液の排出:括約筋の反射で尿道から精液が排出される。

上記のメカニズムのどこかに異常があると射精できない可能性があります。
 

遅漏/膣内射精障害の原因4つ

遅漏や膣内射精障害の原因は大きく分けると4つです出典[2]出典[3]出典[4]。自分の普段の習慣と照らし合わせて当てはまるものがないか確認してみましょう。

①精神的な原因

射精は副交感神経が優位でリラックスした状態から、交感神経が活性化した状態に切り替わることで生じる現象です。つまり自律神経のスムーズな切り替えが鍵となります。しかし、妊活へのプレッシャーや過去のトラウマなどが原因で、焦りや緊張を感じていると、この切り替えが上手くいかなくなります。その結果、射精までの時間がかかってしまいます。

 

②神経的な原因

射精は性的興奮や陰部への刺激がシグナルとなって、射精中枢が活性化されることから始まります。しかし、病気や薬の影響で神経が鈍っている場合、性的刺激を十分に受け取ることができません

 

③刺激耐性が原因

不適切な自慰行為により性的刺激に慣れてしまい、女性との性行為での刺激では射精に至りにくいケースもあります。不適切な自慰行為の例として、女性の膣の圧力以上の強さで陰茎を握ることや、現実離れしたシチュエーションのポルノ視聴などが挙げられます。

 

④肉体的な原因

PC筋と呼ばれるインナーマッスルがリズミカルに収縮することで、精液が精巣から尿道に移動します。歳を重ねると筋肉は全体的に衰えますが、PC筋も例外ではありません。またピストン運動は股関節を曲げ伸ばしする筋肉が重要です。筋肉の衰えにより十分にピストン運動を行えないと、陰茎に十分な刺激を得られない可能性があります
 

【原因別】遅漏/膣内射精障害の改善方法

ここからは原因別に遅漏や膣内射精障害の改善方法をご紹介していきます。自分の原因に適した解決策で夜のパフォーマンスを取り戻しましょう。

①精神的な原因の場合

性行為への焦りや不安が原因の場合は、それらを取り除くことで改善が期待できます。焦れば焦るほど、緊張すればするほど、射精は難しくなります。リラックスした状態で望みましょう。具体的な解決策は以下のようなものがあります出典[3]

パートナーと話し合う

性行為はパートナーがあってのもの。1人でしているわけではありません。不安や焦りがある場合は相手に打ち明けてみるのも1つでしょう。二人三脚でお互いが寄りそい合って、満足できる形を少しずつ探していきましょう。

専門医のカウンセリングを受ける

カップルで話し合っても一向に改善しない場合は、専門家の力を借りてみるとよいでしょう。適切なカウンセリングを通じて、2人だけでは気づかなかった潜在的な原因を明らかにしてくれるはずです。そして最適な改善方法やトレーニングを教えてくれるでしょう。

 

②神経的な原因の場合

病気になる前後で、興奮しにくくなったり、陰部の感度が低くなったりした場合は神経伝達が原因かもしれません出典[4]。かかりつけの医師と相談しながら、改善方法を探していくのがよいでしょう。

まずは病気の治療に専念する

神経が鈍ってしまっては射精はおろか、勃起もできなくなってしまう可能性があります。まずは病気の治療に専念して、心身を健康な状態に戻すことを第一に考えましょう。特に40代以降の6人に1人が発症すると言われている糖尿病は神経障害を引き起こし、EDや遅漏を招くことで有名です。健康的な生活習慣を保ち、病気を予防・改善しましょう。

薬の種類を医師と相談する

一部の薬には遅漏や膣内射精障害を引き起こす副作用があるものも。ここでは遅漏を誘発する可能性のある薬のチェックリストをご紹介します出典[2]。当てはまる薬がある場合は、かかりつけのお医者様に別の薬に変えてもらうよう相談するとよいでしょう。

  • 向精神薬:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤 (SNRI)など
  • 前立腺疾患治療薬:シロドシン、タムスロシン、デュタステリドなど
  • AGA治療薬:フィナステリド、デュタステリドなど
  • 高血圧治療薬:ドキサゾシンなど
  • てんかん治療薬:ガバペンチンなど
  • HIV感染症治療薬:ロピナビル・リトナビル配合剤など
  • ED治療薬:シルデナフィル、バルデナフィルなど

 

③刺激耐性が原因の場合

陰茎や脳が性的な刺激に慣れてしまうと射精中枢が十分に刺激されず射精できません。主に「感度が低下している原因を取り除く」「感度を高める」の2つのアプローチがあります。

不適切な自慰行為を控える

普段から刺激の強い方法で自慰をしていると、性行為での刺激では物足りなく感じてしまいます。不適切な自慰行為には以下のようなものが挙げられます出典[1]

  • 手を使わない: 思春期から何かをこすったり押したりすることによるハンズフリーのマスターベーションは、多くの場合、射精障害を引き起こします。
  • 強グリップ:10kg以上の握力でオナニーをする人は膣内射精が困難になるそうです。
  • 包茎関連:包皮をかぶったまま陰茎を刺激する(スキンマスターベーション)包茎患者は、膣内射精が困難になります。
  • 非ピストン運動:オナニー時の陰茎を、ピストンのような動きではなく、横に揺さぶったりかき回したりするように動かすことが挙げられます。
  • オナニー中の特定の姿勢: マスターベーション中に特定の姿勢(脚を持っている、仰向け、または横になっている)でオナニーする人は、膣内射精が困難になります。
  • フェチ:特定の「モノ」がないと射精できない人は、膣内射精が困難になります。
  • ポルノ:現実ではありえないシチュエーションのポルノは性行為時に視覚的に興奮できなくなる原因になります。

自らの自慰行為を見直し、できる限り性行為時に近い刺激で行うようにしましょう。遅漏のリハビリ用に開発されたオナホールを使用するのもよいでしょう出典[5]

テストステロンの分泌を刺激する

歳を増すにつれて、興奮しづらくなっていると感じている人はテストステロンが低下が原因かもしれません。テストステロンは男性ホルモンの1種であり、性欲向上に関わっています。しかし20代後半をピークに年1%ずつ低下すると言われています出典[6]。衰えを感じてきた方はテストステロンを増やす習慣を意識しましょう。

【テストステロンを増やす習慣】

  • バランスのとれた食事
  • 定期的な運動
  • 7時間の睡眠の確保
  • 健康体重の維持
  • ストレスケア

行為前の飲酒を控える

お酒が遅漏の原因であることが経験的にも分かりやすいかもしれません。アルコールの摂取はテストステロンを低下させるため、性的興奮を低下させる恐れがあります。

実際にアルコールとテストステロンとの関係について、健康な男性を対象に行われた調査によると、飲酒4時間後にアルコールの血中濃度が最大に達し、テストステロンの分泌量が低下したことが確認されています。このときテストステロンの分泌量は飲酒後24時間まで回復しなかったとのことです出典[7]

お酒は健康にあまりよくないため、基本的には完全にやめることがおすすめ。少なくとも行為の2、3日前からは控えましょう。

 

④肉体的な原因

射精のプロセスには筋肉も大きく関わっているため、適切なトレーニングで筋肉を強化することも大切です。特に筋肉量が顕著に低下する50代以降はトレーニングを欠かさないようにしましょう。

PC筋を強化する

陰茎に血液を送り込むはたらきを持つPC筋。もちろんトレーニングによって鍛えることができます。

PC筋の王道トレーニングとしてケーゲル体操があります。ケーゲル体操とは1948年にアーノルド・ケーゲル博士によって、失禁改善のために開発された運動。近年ではED改善にも有効であると考えられており、どこでも簡単に実施できることから人気を博しているエクササイズです出典[8]

現在、ケーゲル体操には特定のプロトコルはなく、基本的には排尿を止めたり遅らせたりする適切な筋肉を正しく収縮させる運動全般を指します

高齢の方では筋力が衰えているため、骨盤底筋の正確な位置を認識することが難しいと言われております。尿・便を我慢するように力を入れる、もしくは陰茎を上下に動かすように力を入れるようにすると骨盤底筋を意識しやすいと言われています。

■方法出典[9]

  1. 仰向けに寝転び、膝を軽く曲げる
  2. お尻をゆっくり上に突き上げる
  3. 元の姿勢に戻る
  4. 8~12回を3セット行う

股関節周りの筋肉を鍛える

筋肉の衰えにより、ピストン運動が満足に行えない場合、陰茎に十分な刺激を与えられず、遅漏につながります。特に腰を押し出す力が衰えると十分な速度を保てません。腰を押し出す時は主にお尻や太もも裏の筋肉が重要となります。以下のトレーニングで定期的に鍛えましょう!

  • ヒップリフト
  • スクワット
  • デッドリフト
     

まとめ

遅漏や膣内射精障害の原因には以下の4つがあります。

  • 精神的な原因
  • 神経的な原因
  • 刺激体制が原因
  • 肉体的な原因

それぞれ適切な対処法が異なりますので、自分に合った方法で遅漏を治しましょう。
 

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