執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
マカとは?
マカとは植物の名前です。ペルーでは2000年以上にわたり栽培されており、標高4000~4500mほどの中央アンデスでのみ生育が可能であるようです。カブのような見た目をしているアブラナ科の植物であり、地下の根にあたる塊茎部分を食べることができます。
マカには白や黄色、ピンク、赤に黒など、様々な種類があります。色の濃いものにはポリフェノールやアントシアニン、鉄などの栄養素が特に豊富であるため、色が濃いほど様々な効果が現れやすいとされています。動物実験においては、記憶と学習の改善効果、精子数や精子の運動性を改善する効果、などにおいて黄色マカや赤マカよりも黒マカの方が大きな効果を示していました。
マカは豊富なアミノ酸やミネラルを含みます。ミネラルではカリウムやカルシウム、鉄に亜鉛などが、アミノ酸では特にアルギニンが豊富です。
また、マカにはポリフェノールも豊富に含まれており、色の濃いものにはアントシアニンも含まれます。またアブラナ科の植物に特有のグルコシノレートという成分も豊富であり、これらは抗酸化作用、抗炎症作用、解毒作用などに優れています。
このように、栄養価が高く健康食品としても知られるマカですが、ヒトにおいての研究では、血圧の適正化、うつ症状や不安の改善、軽度の勃起不全の改善、精子数の増加、などが効果として報告されており出典[1]、精力増強に焦点を置いた紹介がされることが多くなっています。
マカでテストステロンUPは期待できない!
このように様々な健康効果をもたらし、男性の性機能にもよい働きをもたらすことが期待されるマカですが、実は男性ホルモンであるテストステロンの量を増やす効果はいまだ認められていません。
ラットを用いた動物実験においては、マカの摂取による血中テストステロン値の増大が確認されています。マカの水アルコール抽出粉末を6週間、ラットへ投与する実験において、生殖器官の重量や、血清テストステロン濃度、テストステロンを合成する場所であるライディッヒ細胞の細胞質面積が増大したと報告されています出典[2]。このことからも、マカの摂取が生殖機能によい影響をもたらすことはある程度期待できるでしょう。
一方、ヒトを対象とした二重盲検ランダム化比較試験においては、マカによる血清テストステロン濃度の増大効果は期待できないと結論付けられています。マカを1500mg/日または3000mg/日の摂取を続けたグループと、対照群としてプラセボを摂取したグループとの比較において、性的欲求の改善はマカ摂取群で確認できたものの、血清テストステロン濃度には有意な差が見られなかったと報告されているのです出典[3]。
マカの摂取により性欲などの改善は期待できるものの、血中テストステロン量を増大させる効果に関しては、残念ながら現時点では不確実であるようです。
男性がマカに期待できる効果5つ
男性ホルモンであるテストステロンを増大させる効果こそ確認できないものの、マカという食品には様々な健康効果があります。豊富に含まれているカリウムによる血圧低下効果や、アルギニンによる新陳代謝の促進効果なども認められていますが、以下ではその中でも特に精力増強に該当する効果について取り上げ、詳しく説明します。
①性欲の向上
マカには性欲を向上させる効果があることが判明しています。
ヒトを対象とした二重盲検ランダム化比較試験において、マカによる血清テストステロン濃度の増大効果は確認できなかったものの、マカの継続摂取により性的欲求の改善が確認されたという結果が得られています。効果が得られたのは1500mg/日または3000mg/日を摂取した群であり、摂取を8週間続けることで対照群との間に有意な性的欲求の改善効果が生じています出典[3]。
マカのサプリメントを摂取する場合には、黒マカを使用しているものを選ぶようにしましょう。マカは色の濃いものほど様々な健康効果を得られることが判明しているため、性欲の改善においても黒いマカを選ぶ方がより効果的であると言えそうです。
②EDの改善
マカの摂取により勃起不全が改善される可能性があることが幾つかの試験において示されており、ED改善の効果が期待できます。
性機能に問題のある男性におけるマカによる治療効果を調べた臨床試験によると、性機能障害および性的欲求において、マカの摂取により改善が見られたことが明らかになっています。中でも勃起不全を有する患者に対してのマカの効果がより大きく評価されました出典[4]。
また、軽度の勃起不全患者である男性を対象としたランダム化比較試験においては、マカ乾燥抽出物2400mgの摂取を12週間にわたり続けた群は、プラセボ摂取群と比較して、主観的な健康認識がより大きく改善されました。更にマカ摂取群にのみ身体的および社会的パフォーマンスの回復効果が見られたことも分かっています出典[5]。
マカに含まれる豊富なカリウムにより血圧が正常に保たれること、また、マカに特有の成分であるグルコシノレートが強力な抗酸化物質として機能し、血管の状態を良好に保つ効果を持つことなどから、良好な血流が確保しやすくなり、EDの症状改善効果に繋がっているのではと考えられています。
③精子の質の改善
精子の運動性や量、および正常な形態である精子の割合は、不妊を改善するにおいて重要な要素です。マカにはこれら精子の質に関わる要素を改善する効果があるとして期待されています。
成人男性の精液の状態が、マカの摂取によりどのような影響を受けるかについて調査が行われました。この臨床試験によると、マカの錠剤を1500mg/日または3000mg/日、4か月にわたり摂取する治療により、精液量や精子の濃度、精子の運動性が改善されたと報告されています出典[6]。
この試験において、テストステロンや、テストステロンの分泌を促す黄体形成ホルモンなどの増加は見られなかったことから、マカはホルモン分泌とは別のメカニズムによって独自に精子の産生量や運動性を改善させていることが明らかになりました。
マカに豊富である亜鉛などのミネラルは、精子形成において欠かせない栄養素です。精子の量や質を向上させるという点において、マカの摂取は有効であると考えられるでしょう。
④運動パフォーマンスの向上
精力増強効果のあるマカは、運動パフォーマンスを向上させる効果を持ちます。スポーツを日常的に行う人の栄養補給において、マカが役立つ可能性があり、期待が寄せられています。
サイクリングを行う男性の持久力パフォーマンスが、マカの摂取によりどう変化するのかを調べるランダム化比較試験が行われました。この試験によると、マカ抽出物を14日間にわたり摂取した群は、同じ期間プラセボサプリメントを摂取した群と比較して、その後の40kmにおよぶサイクリングのタイムトライアルにおいて大幅に短いタイムを記録したという結果が得られています出典[7]。
マカに含まれるグルコシノレートは強力な抗酸化物質として機能し、運動時に発生する活性酸素を無害化するように働きます。活性酸素が蓄積することで、酸化ストレスとなり筋肉へダメージを与えたりや疲労を強めたりするため、抗酸化物質を効率よく摂取できるマカは、疲労回復や持久力の向上に有効であると考えられます。持久力を要するサイクリングやマラソンなどにおけるスポーツサプリメントとして、摂取を検討してみるとよいかもしれません。
⑤気分の改善
マカの効果は、うつ症状や不安の改善など、気分の落ち込みにも作用する可能性があります出典[1]。この作用はマカの色によって改善レベルが異なることが明らかになっており、赤マカおよび黒マカが気分の改善において有効であることが分かっています。
マカの乾燥抽出物を3g/日、12週間にわたり摂取した際の影響を調べたランダム化比較試験において、黒マカ、赤マカ、プラセボの3群に分けて摂取が行われました。その結果、生活の質のスコアを示すHRQL、および気分において、赤マカと黒マカが同レベルの改善効果を示しました出典[8]。
マカは他にも黄色やピンクなど様々な色のものがありますが、基本的に色の濃いものの方が健康効果をより多く得られることが、動物実験により明らかになっています出典[1]。気分の改善効果を期待する場合には、黒マカもしくは赤マカから抽出されたものを選ぶようにするとよいでしょう。
マカの推奨量や安全性
マカ抽出物はサプリメントと同様に、栄養補助食品として販売されています。マカの健康効果を調べる試験においては、マカ抽出物を1.5g~3g程度摂取した際に、性機能や運動パフォーマンスの向上などの効果が確認されています。
性欲においては、1.5g/日と3g/日のマカ抽出物の摂取によりどちらにも同等の改善効果が見られており、精子の質の改善においては、1.5g/日の摂取と3g/日の摂取とで、やはりもたらされる健康効果に有意な差が確認できませんでした出典[6]。1.5g/日と3g/日、どちらの量での摂取が適正であるかの判断は難しいようですが、いずれの試験においても継続摂取により効果が得られていることから、この1.5~3gの範囲内での摂取を数週間続けるべきであると言えそうです。
マカによる重篤な健康被害は確認されておらず、3g/日の赤マカまたは黒マカの抽出物を12週間にわたり摂取しても、健康への悪影響は確認されなかったと報告されています出典[8]。
ただし、これはマカに限ったことではありませんが、サプリメントは目安量以上に摂取することで、より多くの健康効果を得られるというものではありません。サプリメントに記載されている目安量を超えての摂取を続けることがないよう注意しましょう。
また、生のマカについては、体内で消化されにくいことから摂取すべきではなく、ペルー現地でも茹でて食べることを推奨しています出典[1]。生での摂取においては腹痛や嘔吐など、消化器症状を中心とした副作用を生じることがあるため、マカを植物の状態で手に入れる機会があったとしても生食は避けるべきでしょう。
まとめ
テストステロンを直接増やす効果はヒトにおいて確認されていないものの、マカには性機能を改善させる効果が複数認められています。継続摂取により性機能だけでなく、性欲や運動パフォーマンスの向上なども期待できるため、利用することでエネルギッシュな毎日を過ごすためのサポートを得られるでしょう。
出典
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