妊活男性は精子のためにも自転車を控えるべき?知っておくべき4つのこと
2023年10月27日更新

執筆者

薬剤師 / 公認スポーツファーマシスト / 研修認定薬剤師 / 健康サポート薬剤師 / アロマテラピー検定1級

大西 剛気

薬剤師免許を取得後、メディカルモール併設の調剤薬局で勤務。複数の店舗で1日400枚越えの処方せんに対応しながら様々な診療科を学ぶ。その後、全国展開の大手調剤薬局にて4店舗の管理薬剤師 、2地区のエリアマネージャーを歴任。新店舗開発にも携わる 。現在は 、新しく調剤事業を立ち上げた企業に仲間入りし 『医療と福祉の融合 』『新時代の薬局 』を目指し日々奮闘中。趣味はキャンプ、サウナ、食べ歩き。2児のパパでもある。

なぜ自転車が妊活男性の精子に悪影響を及ぼすと言われているのか?

妊活中の男性が自転車に乗る際、精子の健康を気にされる方も少なくありません。自転車に乗ることで、なぜ精子に悪影響が及ぼされるのでしょうか。

キーとなるのは、自転車のサドルが会陰部分に圧力をかけることです。

会陰は陰茎に酸素や栄養を運ぶための血管が集中している非常に重要な部位。会陰という部分が長時間圧迫されることで、精巣への血流が制限され、精巣の温度が上昇する可能性があります。さらに、精巣への栄養供給が低下することで、精巣の機能が低下するリスクも。出典[1]

さらに、多くの科学的研究において、自転車乗車と男性の生殖機能の関連性が指摘されています。

一部の研究では、長時間のサイクリングが股間の血管にダメージを与える可能性が示唆されています。競輪選手などのプロのサイクリストの中には、精子の異常が高い率で見られるケースも。これらの研究結果から、自転車の乗車と男性の生殖機能との間には何らかの関連性があることは明らかです。出典[2]

しかしながら、実際にどれだけの時間や距離を自転車に乗ると影響が出るのか、そして自転車に乗ることによる具体的な影響とは何か、という詳しい部分についてはまだ解明されていないのが現状。

妊活中の男性は、自転車に乗ることによる男性機能への影響を考慮しながら利用を検討することが重要です。

 

妊活男性の精子に悪影響?自転車の関係4つの関係を控えるべき?知っておくべき4つのこと

妊活中の男性が抱える疑問、それは日常生活の中での適切な運動方法についての不安かもしれません。

特に自転車は都市部での移動手段や健康維持のための運動として人気がありますが、妊活男性にとっての影響はどうなのでしょうか。4つの観点から詳しく見ていきましょう。

 

1.短時間なら精子にほとんど悪影響を与えない

自転車に乗ることは、心肺機能の向上や筋肉の強化など、体の健康を維持する上で多くのメリットがあります。しかし、妊活中の男性として気になるのは、サイクリングが精子に与える影響ですよね。

ご安心ください。一般的な不妊男性を対象とした研究によれば、週に2時間以下のサイクリングでは精子の濃度が低下せず、逆にリスクが23%低下することが示されています。出典[3]

これは、適切な時間のサイクリングが体に良い影響を与え、ストレスの緩和や体のリフレッシュに効果的であることを示唆していると言えるでしょう。

日常生活の中で適度な運動を取り入れることは、健康維持だけでなく、妊活にもプラスの効果が期待できます。

 

2.時間が増えるほど影響の出る可能性は高まるかも

ただし、サイクリングの時間が増えると、精子への影響も変わってくる可能性があります。

具体的には、3〜4時間で精子の濃度が低くなるリスクが44%増加し、5時間以上ではなんと105%のリスク増加という結果が示されています。これは、長時間のサイクリングが下半身に与える圧迫や熱の影響が、精子の質や量に悪影響を及ぼす可能性があることを示しています。

また、長時間のサイクリングは疲労や腰痛の原因にもなりうるため、妊活中は特に注意が必要です。

データをもとに考慮すると、妊活中の自転車利用は週2時間程度に控えておくのがよいかもしれないですね。

「毎日の通勤に使っていたら徒歩に変える」「休日のサイクリングの頻度を落とす」などサイクリングの時間や頻度を調整することで、精巣への負担を軽減させることができます。

 

3.長時間でも精子には問題ないとされる研究も存在するが…

全ての研究が長時間のサイクリングが悪影響であると結論づけているわけではありません。

実際に、5,000人以上の男性を対象とした大規模な実験では、週に8時間半以上のサイクリングを行っても、精子の質や濃度に影響が出ることは確認されていません。さらに、週に3.76~5.75時間自転車に乗る男性は、不妊のリスクが低下しているとも指摘されています。出典[4]

しかし、ポジティブな結果とは対照的に、一部の研究結果ではサイクリングが前立腺に与える悪影響が浮き彫りにされています。

特に、50歳以上の男性を対象とした時、3.75~5.75時間/週のサイクリングは前立腺がんのリスクを約194%増加させ、5.76~8.5時間/週のサイクリングでは前立腺がんのリスクが約189%増加、さらに8.5時間/週以上のサイクリングでは驚くべきことに、リスクが約514%も増加しています。前立腺は精液を作り出すはたらきをしているため、男性機能全般に対する負担は少なくないと言えるでしょう。

これらの結果を総合的にみると、自転車に乗る時間や頻度によっては、精子の健康に直接的な悪影響はないかもしれませんが、全く影響がゼロとも言い切れません。

したがって、サイクリングを続ける場合も、健康を維持するための工夫や注意が求められるでしょう。

 

4.精子が良好でもEDに繋がる可能性がある

最後に、精子の質や量だけでなく、勃起機能にも注意が必要です。

サイクリングと勃起不全(ED)の関連が示唆されている研究があり、長時間のサイクリングが原因となる可能性が考えられます。出典[5]

精子の状態が良好であっても、勃起機能に問題があれば妊活に悪影響です。

従って、サイクリングの際は適切なサドルの選択や乗車時間の調整など、様々な角度からの注意が必要といえます。
 

妊活男性が自転車に乗る時気をつけたい3つのこと

自転車の利用には男性機能に対して一定のリスクがあることはわかりました。

ここで朗報ですが、実は少し工夫をしながら乗れば影響を最小限に抑えることが可能です。

妊活男性が自転車に乗る時実践したい3つのことをご紹介します。

 

1.適度に立ちこぎをはさんで温度上昇と血流低下を防ぐ

自転車に乗る際、特に長時間のサイクリングを行う場合、下半身への血流や体温の管理が意外と難しくなります。

精子の生成や機能は、適切な温度や血流に大きく依存するので、妊活に専念する男性としては特に注意を払うことが必要です。

そこで、立ちこぎを適度に取り入れると、筋肉の動きを活発にして下半身の温度上昇と血流の低下を効果的に防ぐことが期待できます。

結果、精子の質を最適な状態に保つためのサポートとなるでしょう。

 

2.ノーズレスサドルを使用する

※画像は出典[6]より引用

自転車のサドルは、長時間のサイクリングにおいて、体に直接的な影響を与える部分として重要。特に妊活を行っている男性にとって、会陰部の健康は精子の質や量に大きく関わっています。

そして、サドルの形状や素材の選択によって負担を大きく軽減することができるのです。

研究によれば、座骨結節を適切にサポートする広いサドルを使用することで、会陰部への圧迫は軽減できることが示唆されています。出典[6]

一方、中央部分が切り取られている部分的なカットアウトは、会陰部への圧迫を軽減せず、逆に増加させる可能性があるとの報告も存在します。出典[6]

ここで注目すべきは「ノーズレスサドル」という特定のタイプのサドルです。ノーズレスサドルは、サドルの前部が存在しないデザインを指します。この特徴的な形状により、ノーズレスサドルは長時間のサイクリングでも会陰部への圧迫を大幅に軽減します。出典[6]

圧迫の軽減は、妊活中の男性にとって、精子の質や生産量を維持する上で極めて有益といえるでしょう。

また、サドルの素材選びにも注意が必要です。ジェル、フォーム、非パッディングなどの異なる素材間でのデータは一致していないものの、過度なサドルのパッディングが会陰部の圧迫を増加させるリスクが指摘されています。出典[6]

結論として、妊活中の男性が自転車を楽しむ際、クッション性の高いノーズレスサドルの使用は非常におすすめと言えます。サドル選びを通じて、日常のサイクリングをより健康的に、そして快適に楽しむ手助けとなることでしょう。

 

3.サイクリング時のウェアはゆとりのあるサイズを選ぶ

ウェアの選び方も、男性の生殖健康に影響を与える要因の一つとなります。

締め付けが強いウェアは、陰嚢の温度を上昇させるリスクが高まり、精子の質に悪影響を及ぼす可能性があるからです。

研究によると、締め付けの強いウェアを着用した男性は、ゆとりを持ったウェアを選択した男性に比べて、精子濃度が25%、精子数が17%、精子の運動率が33%低かったことが示されています。出典[7]

サイクリング時は締め付け感の少ない、ゆとりを持ったウェアを選択することが、生殖健康を保つ上で重要となるでしょう。
 

妊活男性は自転車との付き合い方を工夫して精子の質を高めよう

自転車は素晴らしい移動手段であり、心身の健康を維持するための効果的なツールでもあります。

しかし、妊活中の男性が自転車に乗る場合、特有の注意点が必要です。精子の質を守り、向上させる目的で、自転車との付き合い方を工夫しましょう。

適度な立ちこぎの取り入れ、ノーズレスサドルの使用、そしてゆとりのあるウェアの選択。これらのポイントを心掛けることで、サイクリングを続けながらも、生殖能力を最良の状態に保つ手助けとなります。

サイクリングの楽しみを享受しつつ、妊活における自身の健康を向上させる具体的なアクションを取りましょう。

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