

執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
バイオドーパとは
バイオドーパという名前を聞いたことがありますか? 優れた抗酸化作用により、脳疲労を改善する効果が確認されているサプリメントです。近年、このバイオドーパが性機能にも役立つことが分かってきました。そんなバイオドーパとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
1.どんな栄養素?

バイオドーパとは、ムクナプルリエンスというマメ科植物から採取したムクナ豆のエキスのことです。この植物は、日本ではハッショウマメと呼ばれることもありますね。
サプリメントとしてのバイオドーパは「ムクナ豆から抽出されるL-DOPAを30%含むもの」として規格化されています。
このL-DOPAは「レポドバ」の名称で、パーキンソン病の治療薬として用いられることがあります。過剰な摂取により腹部の張りや食欲低下、吐き気、頭痛などを生じる場合があるため、レボドパの使用はもちろん、L-DOPAを豊富に含んでいるムクナ豆の摂取にも注意すべきとされています出典[1]。
ムクナ豆を水に浸して吸水させたり、加熱調理したりする過程でL-DOPAは減少します出典[2]。ムクナ豆は生食に向いておらず、食べる際には原則これらの処理が行われることになりますが、L-DOPAの過剰摂取を防ぐため、摂取する機会がある際には食べ過ぎに注意する必要がありますね。
2.体の中でどんな働きをする?
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L-DOPAとは、神経伝達物質の前駆体となるアミノ酸「チロシン」の誘導体であり、体内でドーパミンに変換されるという特徴を持っています。
近年、このドーパミンが男性の性機能、特に勃起機能と性欲に関係していることが明らかになってきました。動物実験において、ドーパミン受容体アゴニストを投与したラットの性行動が促進したことが確認されています。
ドーパミン受容体アゴニストとは、ドーパミンに似た作用を持つ物質で、脳内のドーパミン受容体に結合し、効果を発揮するものです。この投与でラットの性行動が促進されたという結果により、ドーパミン量が多いほど、勃起機能や性欲が向上することが判明したのです出典[3]。
体内のドーパミン増加に貢献できるL-DOPAの利用により、男性の勃起不全や性欲の改善効果が期待できる可能性があるとして、注目が集まっています。
また、L-DOPAはポリフェノールでもあり、強い抗酸化活性を持つことが分かっています出典[1]。体内に発生した活性酸素を無害化する効果が期待できるため、アンチエイジング効果や動脈硬化予防効果も期待できますね。
バイオドーパに確認されている作用や効果
L-DOPAを有効成分として含むバイオドーパは、男性の性行動を含めた生殖機能の改善に役立つ可能性があります。
現代では多くの夫婦が不妊に悩んでいます。不妊の原因は女性にあると考える方が少なくないようですが、その原因の半分は男性にもあるのです。そして男性不妊の場合、精巣や精子の機能に問題があるケースが全体の8割を占めることも分かっています出典[4]。
男性不妊の原因の多くを占める、精子の質の低下。この問題を解決するためのサプリメントとして、バイオドーパが有効に働く可能性があるのです。
1.精子の質改善

バイオドーパの有効成分であるL-DOPAは、強い抗酸化物質として機能することでも知られています。
精子は体内で発生する活性酸素に弱く、過剰な活性酸素に晒されることでダメージを受けてしまいます。抗酸化物質であるL-DOPAはこの活性酸素を除去する働きを持っているため、精子を保護するように働くと考えられています。
不妊男性がムクナ豆を摂取することによる、精液の質の変化を調べる研究において、ムクナ豆を摂取する前と後の精液が検査されました。これによると、ムクナ豆摂取後では、摂取前と比較して、活性酸素の発生原因となる過酸化脂質の量が減少し、抗酸化ビタミンであるビタミンCやEの濃度が増加していました。また精子の運動性や量、正常な精子の割合に大きな改善が見られました出典[5]。
このように、ムクナ豆由来のL-DOPAを含むバイオドーパには、L-DOPAの抗酸化作用を通じて、精子の質を全体的に改善させる可能性があります。
2.男性機能の改善

男性らしさを司るともされる、男性ホルモンであるテストステロンですが、その量は40歳を過ぎた頃から急速に減少します出典[6]。筋力や持久力の低下、やる気や意欲の減少、性機能の減退など、性腺機能低下症の症状が現れやすいのもこの頃ですね。
テストステロンの減少は、特に勃起機能を始めとする性機能の低下と強く関連していることが分かっています出典[7]。バイオドーパの利用により、体内で増加したドーパミンが男性機能に良い影響をもたらす可能性があるとして注目されています。
男性不妊症の治療における、ムクナ豆の作用機序を知るための研究において、ムクナ豆を摂取する前と後の精液と血液の採取が行われました。精液・血液検査の結果、不妊症の参加者において、ムクナ豆を摂取する前に確認されていた、ドーパミンやテストステロンの低値が、ムクナ豆の摂取により改善されたことが確認されました。さらに摂取後においては、精子の数や運動性も大幅に回復していました出典[8]。
この研究における血液検査では、アドレナリンおよびノルアドレナリンの血中濃度も大幅に増加していました。これらの神経伝達物質は精子の運動性や質を向上させることが判明しています。
バイオドーパはテストステロン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどを増加させることから、精子の質を始めとした男性機能を改善させる効果が期待できると考えられますね。
3.性欲の向上

プロラクチン、というホルモンがあります。これは女性において母乳を作るために機能する重要なホルモンですが、男性においては血中のプロラクチン濃度が高いほど、性欲が低下することが知られているなど、男性によってはあまり増やしたいホルモンとは言えません出典[9]。
そんなプロラクチンですが、ムクナ豆の摂取により血清プロラクチン濃度を減らせる可能性が示されています。
ムクナ豆を摂取することによる、ニホンウズラの発育や生殖条件の変化を調べる研究において、通常食、L-DOPAの混合食、ムクナ豆の混合食での飼育が4週間続けられました。これによると、L-DOPAやムクナ豆の混合食を食べたニホンウズラでは、オスもメスも血清プロラクチン濃度が有意に低下したという結果が得られています。またオスにおいてはテストステロンの増加が、メスにおいては卵の重量や卵胞のサイズと数などの増加が確認されました。
この研究により、ムクナ豆は天然のL-DOPAとして、L-DOPAと同じように機能すること、また血清プロラクチン濃度を低下させて、性欲を始めとした性機能を向上させることが分かっています出典[10]。
バイオドーパはムクナ豆由来のL-DOPAを効率的に摂取できる規格化成分です。性欲向上のためにバイオドーパを摂取することで、性行動を含めた性機能全体の向上効果が期待できそうですね。
4.睡眠の質向上

ムクナ豆の摂取により、睡眠の質を向上させる効果が確認されています。L-DOPAの強い抗酸化作用により脳疲労を軽減させる効果が確認されているため、睡眠の質にも影響を与える可能性があると考えられますね。
不眠傾向にある男女を対象とした介入試験において、参加者はムクナ豆を含むサプリメントを28日間摂取しました。その結果、睡眠の質を評価するためのピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)において、スコアの大きな改善が見られました出典[11]。
睡眠不足の状態ではテストステロンの分泌量が低下します。スムーズな妊活のためにはテストステロン濃度を維持し、性機能を低下させないようにする必要があります。バイオドーパの睡眠の質を向上させる働きは、男性妊活のサポートにも役立ちそうですね。
バイオドーパの摂取方法や注意点
性機能や睡眠の質の向上効果が確認されているバイオドーパですが、どのような形で利用するのがよいのでしょうか。以下ではバイオドーパの効果的な摂取方法について説明します。
1.どのくらい摂取すればいい?

バイオドーパを輸入している「バイオアクティブスジャパン株式会社」において、バイオドーパの1日摂取量は300mgと推奨されています。この量に従って利用することで、効果が期待できるでしょう。
不眠傾向にある男女を対象としたバイオドーパの介入試験において血液検査が行われましたが、安静時の心拍数、血圧、血液成分には変化が見られず、大きな影響は確認されませんでした出典[11]。サプリメントの使用による有害な結果は認められなかったことから、通常量を利用する分には安全に摂取できると考えられています。
バイオドーパに限ったことではありませんが、サプリメントは多量に摂取することで、より多くの健康効果が得られるものではありません。一度に推奨量以上を摂取することがないよう注意する必要がありますね。
2.効果的な飲み方
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バイオドーパはL-DOPAの摂取源として優れたサプリメントです。食品からの摂取は現状難しいため、サプリメントの形で摂取する必要がありますね。
L-DOPAを豊富に含むムクナ豆からの摂取を考える方もいるかもしれません。しかしムクナ豆は生食できず、浸漬の後にあく抜きや加熱をする必要があります。この工程によりL-DOPAの量が減ってしまうこと、またムクナ豆はとても硬いため加熱に長時間かかること、などから、手間がかかり摂取源としてはやや非効率であるようです出典[12]。
摂取を継続したい場合には、やはりサプリメントを利用すべきであると言えるでしょう。
まとめ
バイオドーパはL-DOPAを摂取する方法として最も効率的な規格化成分です。サプリメントを摂取することで、性機能や睡眠の質が向上する可能性がありますね。
ただし不妊の改善には食事や運動など、生活習慣にも気を配る必要があります。バイオドーパはあくまで不妊治療のサポートとして考え、体調を整える取り組みの補助として使うようにしましょう。
出典
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