精子は増える?男性が葉酸に期待できる効果4選と飲み方について
2024年2月23日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

葉酸ってどんな栄養素?

葉酸はビタミンB群の一種です。ビタミンB1やビタミンB2のような他のビタミンB群と同様に、私たちの代謝をサポートする役割があります。

まずは葉酸の具体的な役割について確認してみましょう。

体内でどんなはたらきをする?

葉酸は赤血球の産生に関わる栄養素として発見されました。その後研究が進む中で様々な役割が特定されています。

ただ、ビタミンB1であれば糖質の、ビタミンB6であればアミノ酸の代謝をサポートする働きがありますが、葉酸の機能はこのような明確な表現ではまとめられません。そのため葉酸はヘルスケアにおいてあまり深く取り上げられることのない栄養素です。

しかし葉酸は私たちの健康維持に欠かせない栄養素です。葉酸の機能として、主に次のようなものが明らかになっています。

  • 赤血球の産生を助ける
  • DNAやRNAなどの核酸やたんぱく質の合成を促す
  • (妊娠中の女性において)胎児の神経管閉鎖障害のリスクを下げる

全身の細胞や血球成分の維持に、葉酸の存在は欠かせません。重篤な貧血や神経障害を引き起こすことなく、元気に毎日を過ごすことができるのは葉酸のおかげとも言えるでしょう。

 

どんな食べ物に多く含まれる?

葉酸はその名の通り、ほうれん草の「葉」から発見されています。しかし葉物野菜に限らず、納豆や枝豆、いくらにレバーなど、様々な食品から摂取できます。

【食品100gあたりの葉酸量(日本標準食品成分表(八訂)増補2023年より)出典[1]

食品

葉酸(μg)

焼きのり

1900

鶏レバー

1300

豚レバー

810

枝豆

320

ブロッコリー

220

きなこ

220

ほうれん草(通年平均)

210

アスパラガス

190

玉露(抽出液)

150

いちご

90

鶏卵(全卵)

49

焼きのり、きなこは含有量が多いものの、1食分の分量がごくわずかであるため効率的な摂取源としてはあまり期待できないかもしれません。

摂取頻度が高く、手軽に食べられるものとしては、やはりブロッコリーやアスパラガスのような野菜類がおすすめです。不足が気になる場合にはレバーを使用した料理を取り入れるのもよいでしょう。

なお、葉酸は水溶性のビタミンです。茹で調理により流れ出てしまうため、ブロッコリーやアスパラガスの茹で調理は避けた方がよいでしょう。電子レンジでの加熱、または茹で汁ごと食べられるスープ類への活用がおすすめです。
 

男性が期待できる葉酸の効果とは?

葉酸の摂取が最も重要視されるのは、妊活中および妊娠中の女性です。妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の脳や脊髄を作る神経が正常な管の形を取らない「神経管閉鎖障害」のリスクが高まります。胎児の正常な発育のため、食事やサプリメントから十分な葉酸を摂ることは非常に重要です。

このように女性における葉酸の需要が有名である一方で、男性における葉酸摂取はあまり注目されないトピックかもしれません。しかし葉酸の不足を防ぐことは、男性の健康においても大きなメリットをもたらします。

男性が葉酸を十分に摂ることで期待できる効果について、主なものを4つ解説しましょう。

心血管疾患の発症リスクを下げる

葉酸はDNAやアミノ酸など、様々な代謝の補酵素として機能します。中でもホモシステインからメチオニンへの変換をサポートする作用が重要視されています。

メチオニンへの代謝には葉酸のほか、ビタミンB6やビタミンB12の存在も必要です。これらビタミンB群が不足するとメチオニンが十分に生成されず、体内にホモシステインが蓄積することになります。

過剰なホモシステインは血管の柔軟性を低下させ、動脈硬化のリスクを高めてしまいます。さらに血管を固まりやすくする作用も確認されているため、血栓の発生による心筋梗塞や脳卒中を生じる可能性もあります。

2008年に筑波大学で発表された、40~59歳の男女4万人以上を対象とする追跡調査においては、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12を多く摂取するグループほど、心筋梗塞のリスクが低下していたと報告されています出典[2]

柔軟性のある若々しい血管を保つことは、心血管疾患の予防のみならず、血行促進や肩こりの解消にも役立ちます。ホモシステインからメチオニンへの代謝を促す葉酸を不足なく摂取して、元気に毎日を過ごしましょう。

 

巨赤芽球性貧血を防ぐ

葉酸には赤血球の生成をサポートする働きがあり、葉酸またはビタミンB12の不足により「巨赤芽球性貧血」を生じます。

貧血といえば鉄の不足による鉄欠乏性貧血が一般的です。鉄欠乏性貧血では赤血球の構成成分である鉄の不足により、赤血球の酸素運搬能力が低下しています。

一方、巨赤芽球性貧血では赤血球のDNA合成が不十分であるために、赤血球の成分が濃縮されず、巨大なままとなってしまいます

巨大な赤血球というと機能が十分にあるイメージを想像するかもしれませんね。しかし巨大な赤血球はむしろ未熟であり、十分な酸素や栄養素の運搬能力を持たないのです。

巨赤芽球性貧血では鉄欠乏性貧血と同様に、疲労感や体力の低下、動悸に息切れなどを生じやすくなります。様々な食品から葉酸を十分に摂取して、疲れにくい体を目指しましょう。

 

うつ病などメンタルのトラブルを防ぐ

葉酸の機能として確率されているものではありませんが、葉酸の不足とうつ病のような精神症状との間に関連があることが確認されています。

2017年にアメリカの南フロリダ大学から発表された論文では、うつ病の罹患者は非罹患者と比較して、血清葉酸値や食事からの葉酸摂取量が低いと示されています出典[3]

また女性を対象とした研究ではありますが、2012年に滋賀医科大学から発表された論文において、1日あたり240μgより多い葉酸を摂取する女性ではうつ病の発生率が低下したとも報告されています出典[4]

同論文では葉酸の補給によりうつ病の発生率が減少する可能性についても述べられているため、葉酸不足の解消で精神状態を改善する効果が期待できるかもしれません。

 

認知機能を維持する

ホモシステインからメチオニンへの代謝に必要な葉酸が不足すると、体内にホモシステインが蓄積します。過剰なホモシステインは脳にダメージを与えるため、アルツハイマー型認知症などの脳機能障害のリスクに関連すると考えられています。

2016年に中国の天津医科大学が発表した論文では、毎日葉酸を1.25mg、6か月摂取したグループは、摂取していないグループと比較して、アルツハイマー型認知症の発症の原因物質のひとつ「アミロイドβ40」の濃度が48%まで減少していたと報告されています。

また炎症を示すインターロイキン6(IL-6)やTNFαの濃度も摂取したグループで低く観測されており、葉酸の十分な摂取が炎症予防に役立つ可能性も指摘されています出典[5]

葉酸不足によりホモシステインによる脳へのダメージが増えるほか、脳の神経細胞が炎症を起こしやすくなる可能性があります。認知機能の低下はうつ症状のリスクも高めるため、葉酸不足で多く確認できるうつ症状との関連も考えられるかもしれません。

脳の健康を保つためにも、毎日の食事から十分に葉酸を摂取しましょう。
 

葉酸を飲むと精子は増えるのか?

葉酸のサプリメントは妊活中や妊娠中の女性が飲むものという認識が一般的です。では男性が葉酸のサプリメントを摂取することは、精子の量や質の改善に繋がるのでしょうか。

葉酸を含む特定の栄養素の摂取と精子の関連についてはいくつか研究が行われています。たとえば2002年にオランダのナイヘーメン大学から発表された論文では、葉酸(1日5mg)と亜鉛(硫酸亜鉛として1日66mg)の摂取を26週間続けたところ、不妊男性の精子濃度が1.6倍に増加したと報告されています出典[6]

一方で、比較的新しい研究では精子の量や質に改善が確認できておらず、また精子を増やす目的である「妊娠の成功」についても、あまり有益な結果が得られていないようです。

2020年にアメリカのメリーランド州で行われた研究では、不妊治療を求めるカップルの男性が葉酸(1日5mg)と亜鉛(1日30mg)の摂取を6か月続けても、精子の量や質、および出生率の有意な改善は見られなかったと報告されています出典[7]

また、過去に確認できた精子濃度の改善は亜鉛と葉酸の組み合わせによるものであり、葉酸単体で精子の量や質が改善したというエビデンスの高い研究は示されていません

質のよい精子を製造するためには、良好な血流を確保する必要があります。そのため葉酸不足で血管が硬くなり生じる血行不良が、精子の質や量を落とす可能性は考えられるかもしれません。

しかし現時点では、男性がサプリメントで葉酸を追加で摂取することへの意義は低いと考えられるでしょう。
 

男性が葉酸を摂取する際のポイント

妊活への活用は難しいものの、健康維持や疾病予防のためには男性も葉酸を不足なく摂取する必要があります。しかし葉酸の必要量や普段の食生活における摂取量について、あまり気にしたことがない男性は多いことでしょう。

この章では葉酸の摂取状況や、サプリメントを活用する際の注意点について解説します。必要量や摂取上の注意点を確認した上で、毎日の食生活を見直してみましょう。

成人男女の1日推奨量は240μg

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人の男女ともに240μgが推奨量として設定されています出典[8]

葉酸の主な摂取源はやはり緑の野菜や果物でしょう。ブロッコリーやほうれん草の葉酸量は、生の状態で100gあたり200μg以上あります。また小松菜やレタス、オクラにニラなどからも100gあたり100μg以上を摂取できます。

果物ではオレンジやキウイ、さくらんぼ、いちごなどの摂取効率がよく、100gあたり30μg以上含まれています。量は少なめですが、肉類や卵、貝類も摂取源となるでしょう。

このように、葉酸は様々な食品から摂取できるため、主食、主菜、副菜の揃った食事を摂る習慣があれば大きな不足はまず起こりません。令和元年度の国民健康・栄養調査においても20歳以上の男性の平均摂取量は310μgと示されており、日本人の食生活は葉酸不足のリスクが比較的低いと言えるでしょう出典[9]

一般には、野菜を極端に嫌う方や、欠食が多い方に葉酸の不足が見られやすいようです。偏食や欠食の傾向にある方は、食生活の改善とともにサプリメントの利用を検討してもよいかもしれません。

 

サプリメントはお茶や紅茶で飲まない

葉酸不足の解消のためにサプリメントを飲む際は、お茶や紅茶を使わず、水で飲むようにしましょう

飲料の成分がサプリメントの栄養素の吸収を阻害する場合がある、という話は聞いたことがある方もいるかもしれませんね。お茶の成分であるカテキンが鉄の吸収を阻害するため、鉄のサプリメントはお茶と相性が悪く、注意すべきです。

葉酸においても、緑茶や紅茶での摂取により吸収が阻害される可能性が指摘されています。

2008年にドイツのヨハネス・グーテンベルク大学から発表された論文では、0.4mgの葉酸を緑茶や紅茶と共に摂取したところ、水での摂取と比較して、緑茶では血中の葉酸濃度が39.2%、紅茶では38.4%も低下したという結果が得られています出典[10]

葉酸においても、鉄と同様に、お茶由来のカテキン類が吸収を阻害するように働いた可能性があると同論文では考察されています。葉酸のサプリメントを利用する際は吸収率を落とさないよう、水での摂取を心掛けましょう。

 

サプリメントによる摂りすぎに注意

「日本人の食事摂取基準」では、葉酸の耐用上限量(継続摂取を続けても健康への害がないと考えられる1日の摂取量)は成人男女で900~1000μgと示されています出典[8]

また、一般的な食事からの葉酸の摂りすぎによる健康被害はこれまで報告されていません。そのためブロッコリーやほうれん草などの食べ過ぎによる葉酸の過剰摂取を心配する必要はないと考えられるでしょう。

一方、サプリメントによる摂りすぎでは神経障害の出現や、ビタミンB12不足による貧血の症状を隠すように働く「マスキング」が健康被害として確認されています。

サプリメントは1日の目安量以上の摂取を続けることで、より多くの健康効果を得られるものではありません。必要以上の多用は避け、不足を補うためのサポートとして適度に活用しましょう。

 

男性も緑の野菜を食べて葉酸が不足しない食生活を送ろう!

水溶性ビタミンである葉酸には、赤血球を正常に形成したり、体の細胞や神経を正常に合成したりする働きがあります。貧血、心血管疾患、うつ病に認知症など、あらゆる疾病のリスクを減らす効果が確認されているため、毎日の食事から不足なく摂取する必要があるでしょう。

葉酸は妊活中および妊娠中の女性において追加の摂取が推奨されていますが、男性の妊活においては追加摂取の有効性が確立されていません。男性のサプリメント利用は、食事からの葉酸摂取量に不安がある場合に留めておきましょう。

欠食が多い方、緑の野菜を食べる機会が極端に少ない方は、葉酸の摂取が不足しやすい可能性があります。食生活を見直すとともに、不足分を補う方法としてサプリメントの活用も検討してみましょう。
 

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