執筆者
薬剤師
森本 涼太
薬剤師の資格取得後、調剤薬局に勤務。患者さんのQOLを高める服薬指導を目指して医薬品・サプリメント・運動など多方面から患者の健康を考えることに取り組んでいる。多くの人が自分の健康を考える機会を持つことに貢献したいとの思いから、大学時代の研究活動の経験を活かし、論文調査などのエビデンスに基づくヘルスケア関連のライティング活動も行う。
ビタミンCとは?
まずはビタミンCの基本情報についてご紹介します。
ビタミンCとは?
ビタミンCはアスコルビン酸と呼ばれる酸性の物質です。人間は体内でビタミンCを合成することができないため、食べ物から摂取する必要があります。
ビタミンCには強力な抗酸化作用があります。この抗酸化作用によって体内では酸化物質である活性酸素の除去などを行っているんです。他にも抗酸化作用を活かした働きとして、食べ物の中に含まれる特定の栄養分を消化管中で還元して、吸収されやすい状態にするという効果もあります。また、肌や血管の壁などに含まれる成分であるコラーゲンのような、重要な生体分子の合成にも欠かせない成分でもあります。
どんな食材に豊富に含まれている?
ビタミンCはアセロラやキウイ、レモンといったフルーツ類やピーマン・ブロッコリーのような野菜などに豊富に含まれています出典[1]。そのため、日常での食事からも比較的簡単に摂取することができます。ただし、ビタミンCは熱に弱いため、たとえビタミンCを豊富に含んでいる野菜でも強く熱を加えるとビタミンCの含有量は低下してしまうんです。食事からビタミンCを摂取したい方はサラダやカットフルーツなど、できるだけ生に近い状態でビタミンCを含む食材を摂取する必要があることに注意してください。
不足するとどんなリスクがある?
ビタミンCが不足すると、肌や粘膜、血管の内壁の弾力を保つ成分であるコラーゲンの合成が十分に行われなくなってしまいます。そのため、ビタミンCが不足した方には肌荒れや歯ぐきからの出血といった症状が現れます。その他にもビタミンCの不足により倦怠感や免疫力の低下といった症状が現れることも知られているんです。肌荒れや倦怠感など、なんとなく身体の不調を現在感じられている皆さんの中には、ビタミンCの摂取が不足している方もいるかもしれませんね。
さらに、ビタミンCの欠乏が重症になると壊血病という病気が起こります。この病は体じゅうで弾力を保つ成分であるコラーゲンが深刻に不足することにより、全身の粘膜から出血が起こる重篤なものです。新鮮な食材が容易に手に入りビタミンCを簡単に摂取できる現代では、壊血病はほぼ心配する必要のない病気です。しかし、生野菜やフルーツを全く摂取しないなど非常に偏った食生活をしている人においてはまれに発症することが報告されています。
ビタミンCに確認されている作用や効果
ここからは研究で確認されているビタミンCの効果効能についてご紹介します。
1.血圧を下げる
ビタミンCをしっかりと摂取することにより血圧を下げる効果が期待できます。最近健康診断などで血圧の数値が気になってきたという方は、ビタミンCを摂取することで高血圧の予防につなげられるかもしれませんね。ビタミンCは血管の弾力維持、酸化ストレスの緩和など複数のメカニズムを経由して血圧を下げる効果を発揮すると考えられているんです。ビタミンCと血圧の関係については盛んに臨床研究もおこなわれてきました。
1993年にアメリカで行われた研究では、168人の健康な被験者を対象に血液中のビタミンC濃度と血圧の関係について調査を行いました。その結果、被験者の血中ビタミンC濃度が高くなるほど被験者の収縮期血圧が低くなる、有意な逆相関の関係があることを報告しています出典[2]。
また2011年にイギリスで行われた研究では、1993年から1997年までに行われた調査プロジェクトの20926人のデータを基に血中ビタミンC濃度と血圧の関係を分析しました。その結果、血中ビタミンC濃度が上位25%に入る人は下位25%の人に比べて高血圧(収縮期血圧が140mmHg以上)になる可能性が22%低くなるという結果が報告されました出典[3]。
このように高い血中ビタミンC濃度を保つことは高血圧を予防することにつながるといえるでしょう。血圧が最近気になってきた人は、食生活の見直しに加えてビタミンCのサプリメントなども摂ってみると良いかもしれませんね。
2.風邪の治りを早める
ビタミンCの日常的な摂取は、風邪を引いた際の回復を早められることが期待できます。風邪などによるパフォーマンスの低下は仕事にも大きな影響を及ぼしますよね。一番の対策はしっかりとした休養を取ることですが、このような悪影響を最小限にするために普段からビタミンCを摂ってみるのもいいかもしれません。
2016年にアメリカで行われた複数の研究結果に対するシステマティックレビューでは、31の研究結果を対象にビタミンCの日常的な摂取が風邪に罹っている期間と重症度に及ぼす影響を検証しました。その結果、大人の1-2g/日の日常的なビタミンCの摂取は風邪の症状が現れている期間を8%程度減少させ、重症度も比較的軽減されるという結果が出ています出典[4]。
日常的なビタミンC摂取が風邪の治癒を早めることがいくつかの研究で立証されています。しかし、よく言われているビタミンCの風邪を予防する効果については普段から激しい有酸素運動をしている人以外にはあまり確認されていないことには注意が必要です。
2013年にフィンランドで行われたメタアナリシスでは、63の研究結果を対象に日常的なビタミンCが風邪の予防に及ぼす効果について分析を行いました。その結果、200mg/日前後の日常的なビタミンC摂取は、一般の健康な人では風邪の引きやすさにほとんど影響を与えないと結論付けられました。ただし、マラソンランナーや兵士などの普段から高い肉体的ストレスを受けている人たちに対してのみ、予防的な効果が認められました出典[5]。
風邪で仕事のパフォーマンスを落としたくないという人、特に普段から激しい有酸素運動を行っている人は、ビタミンCを普段からしっかりと摂取することで風邪によるリスクを低減することができそうですね。
3.鉄分の吸収を高める
鉄分を豊富に含む食材は、ビタミンCを含む食事と同時に摂取することで鉄分の吸収をより高めることが期待できます。鉄分不足で貧血気味な自覚症状のある人は、鉄分のサプリメントと一緒にぜひビタミンCも摂るとよいですね。
鉄分は自然界では消化管から吸収されにくい3価イオンとして存在しています。ビタミンCはこの3価イオンを還元して、吸収されやすい2価イオンにすることで鉄分の吸収を高めるんです。放射性の鉄同位体を用いた複数の研究によってこの効果を実証する結果が示されています出典[6]。ただし、この効果は鉄分とビタミンCをそれぞれ含む食事・サプリメントを同時に摂ることで現れる効果であり、別々に摂取しても鉄分の吸収量は上昇しないことには注意が必要です。
鉄分とビタミンCの同時摂取を心がけて、貧血が気にならない生活を送りたいですね。
4.肌を正常に保つ
ビタミンCとビタミン Eなどの他の栄養素を継続的に摂取することは、皮膚の機能を正常に保ち、若々しい外見を維持することに役立つかもしれません。最近顔にしわが目立つようになった、あるいはいつまでも若々しい外見を保ちたいという方は、ビタミンCを含むサプリメントが効果的でしょう。
1998年にドイツで行われた研究では、40人の20-47歳の健康な被験者に対してα-トコフェロール(ビタミンE) 2g/日の投与、ビタミンC 3g/日の投与のどちらかまたは両方を50日間継続し、偽薬を投与したグループと合わせた計4つのグループで50日間での前後の紫外線に対する皮膚の炎症反応を比較しました。その結果、ビタミンCとビタミンEの両方を50日間摂取したグループにおいてのみ、日焼けの炎症による紅斑の大きさ・赤さが有意に減少しました出典[7]。
2008年のアメリカで行われた国民健康栄養調査のデータベースと皮膚科受診記録を用いた分析研究では、4025人の女性を対象にビタミンCの摂取量と皮膚の老化の関連を調査しました。その結果、ビタミンCの摂取量が上昇するほど、皮膚の老人性乾燥やしわが見られるリスクが低下することが判明しました出典[8]。
ビタミンCを他の栄養素と共にしっかりと補給することで健康で若々しい肌を保ちたいものですね。
5.歯ぐきの出血を予防
ビタミンCの摂取は歯ぐきの健康を保つことにも役立ちます。最近口内炎や歯ぐきからの出血が気になるという方は、もしかするとビタミンCが不足しているのかもしれません。ビタミンCは肌や歯ぐきの弾力を保つコラーゲンの合成に必須の栄養素です。このため、ビタミンCが不足すると歯ぐきの弾力が失われてもろくなり、腫れあがったり出血しやすくなったりすると言われています出典[9]。
健康的な口内環境を維持するためにビタミンCを含むサプリメントは有力な選択肢の一つと言えますね。
6.骨粗鬆症の予防
実は骨の強度を維持するためにもビタミンCは重要なんです。ビタミンCは骨のもとを形成する骨芽細胞の発生を助ける役割を持っています。このためにビタミンCを継続的に摂取することは骨密度を保ち、立つ、歩くなどの運動機能を維持する助けとなってくれることが期待できます。
2008年にアメリカで行われた研究では、1948年から継続して行われている疫学研究のデータから骨密度に関するデータと推定ビタミンC摂取量、その他関連データを用いた分析調査が行われました。その結果、非喫煙者男性においてはビタミンC摂取量が多いほど大腿部の骨の骨密度が高くなる傾向があることが判明しています出典[10]。
年齢を重ねても骨密度を高く保ち、しっかりと自立して生活できるようにビタミンCの摂取も欠かさずに行いたいものですね。
7.ビタミンC不足による肥満のケア
ビタミンCはその抗酸化力によって肥満の予防にも役立つ可能性があります。最近体重の増加が気になってきたという人はビタミンCをはじめとした抗酸化物質の助けを必要としているのかもしれません。
2017年のオーストラリアで行われたシステマティックレビューでは、複数のデータベースから検索した31の論文を用いてビタミンCを含む6種類の抗酸化物質の循環量と体脂肪率の関係について解析を行いました。その結果、ビタミンCなどの抗酸化物質の体内循環量が高くなるほど体脂肪率は低くなるという負の相関関係があることが判明しました出典[11]。
また、1985年のイギリスで行われた研究では、38名の重度の肥満患者の女性被験者に対して3g/日のビタミンCまたは偽薬の投与を6週間行いながらダイエットを行ってもらい、6週間前後での体重の減少を比較しました。その結果、どちらも体重の減少幅はあまり大きくなかったものの、ビタミンCを摂取した被験者の体重減少幅は偽薬を服用した被験者に比べて有意に大きくなりました出典[12]。
より引き締まった体を手に入れたいという方にも、ビタミンCは味方になってくれるようですね。
ビタミンCの飲み方や注意点
ビタミンCは厚生労働省の食事摂取基準で1日の推奨摂取量が決まっています。この基準では100mg/日の摂取で抗酸化作用などが期待できる血中濃度を保てるとされています。冒頭で述べたビタミンCを多く含む食品の中には100gあたり100mg以上のビタミンCを含む食品などもあるんです。これらのことからも普通の食事でも簡単にこの基準はクリアできると言えるでしょう出典[13]。
ビタミンCは日常の生活からでも容易に十分量を摂取できるとここまでは説明してきました。しかし、これまでに述べたビタミンCの効果を十分に得るための必要量には個人差があることには注意が必要です。個人が日常的に受ける酸化ストレスなどによってビタミンCの必要量は変化します。例えば酸化ストレスの多い喫煙者ではビタミンCの必要量は非喫煙者よりも多くなるんです。厚生労働省の食事摂取基準においても、喫煙者は同年代における推奨量より多くのビタミンCを摂取することが推奨されていますね出典[13]。
健康な人ではビタミンCを1g/日以上摂取しても吸収率が低下し、尿などへの排泄が増加します。そのためビタミンCを過剰に摂取しても健康への被害はないとされており、安全に使用できるといえるでしょう。ただし、3-4g/日程度の極端な量を摂取すると下痢や吐き気、腹痛といった消化器症状が現れるので注意してくださいね。また、腎機能障害のある人が2g/日程度のビタミンCを摂取すると、腎結石などのリスクが高まるという報告があります。腎機能障害を持っている人はサプリメントなどからのビタミンCの過剰な摂取は控えたほうがよいでしょう出典[13]。
まとめ
今回は栄養素やサプリメントの成分としてのビタミンCの特徴と期待できる効能についてご紹介しました。非常に多様な効果を持ち合わせていて、まさに健康的な生活には欠かせない成分であることがお分かりいただけたと思います。食事やサプリメントを考えるうえでの参考にぜひしてみてください。
出典
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文部科学省|食品成分データベース
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