

執筆者
管理栄養士
西村 俊司
給食施設や食品メーカーなどを経て、現在は老人福祉施設で栄養士として勤務。専門学校卒業後18年のブランクを経て、管理栄養士国家試験に初挑戦し、一発合格。食のプロフェッショナルとしての知識と経験を生かしながら、心も体も喜ぶ「食の提案」を多くの人に届けたいと思っている。家では妻と2人の子供との4人暮らし。食べることや料理を作ることが大好き。趣味は自転車とキャンプとDIYなオジサン。
ビタミンAとは
まずはビタミンAの基本情報についてご紹介します。
ビタミンAの正体と必要量
ビタミンAはヒトの体の機能を整え、正常に保つためのビタミンの一種です。ビタミンは構造により、「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」に分けられますが、ビタミンAは脂溶性ビタミンに分類されます。
ビタミンAはレチノール、レチナール、レチノイン酸の総称です。また、色素の一つである「カロテノイド」にも体内でレチノールに変換されてビタミンAとして働く種類があります。そのため、厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準2020」では、ビタミンAを示す単位として「レチノール活性当量(RAE)が使われています。
成人男性の推奨量は900μgRAE/日、成人女性の推奨量は700μgRAE/日とされています。一方で、最新の国民健康・栄養調査によると、成人男性の中央値は399μgRAE/日、成人女性の中央値は396μgRAE/日といずれも推奨量には届いていません。ビタミンAは脂溶性ビタミンで、ある程度は肝臓などに貯蔵されるため、欠乏症のリスクは低いとされていますが、普段の食事では不足しやすい栄養素ですので、意識的に摂取することが大切です。
ビタミンAの働き
ヒトの体にとって必要なビタミンA。その働きをひとことで表すと、「皮膚や粘膜の健康を維持すること」です。
ビタミンAの一つ、「レチノール」の代表的な働きとしては、「網膜」を保護する役割です。網膜はヒトの視覚に大きく関係する「視細胞」が集まっていて、この視細胞に光の刺激が起きることで、ヒトは「ものを見る」ことが可能になります。網膜は厚さが0.1mm〜0.4mm程度の非常に薄い膜で、視覚にとっては非常に重要な場所です。ビタミンAは大切な網膜の機能維持に必要な物質なのです。
また、レチノールが代謝された「レチノイン酸」は細胞分裂や免疫機能の維持など、生命活動にとって大切な機能の制御に関わっています。皮膚や粘膜は常に外界に接しているため、刺激や紫外線、感染といったリスクにさらされやすい場所です。そのため。皮膚や粘膜はヒトにとって最初のバリアーであり、早いサイクルで細胞の新陳代謝が行われます。ビタミンAのおかげで新陳代謝が正常に行われて、外界からのダメージを軽減しているのです。
ビタミンAの欠乏リスク
そんなビタミンAが不足すると、様々な弊害が発生します。
まず視覚に関しては、暗い場所に入った時に見にくくなる「暗順応障害」や「夜盲症」といった症状が発生します。これは、網膜で必要なレチノールが不足して発生すると言われ、ひどくなると視力の低下などを招くと言われています。また、皮膚の新陳代謝がうまくいかず、角質化し、皮膚の乾燥や割れ爪、免疫力の低下なども見られるようになります。
ビタミンAを多く含む食品と摂取のポイント
このように、ヒトにとって大切な栄養素であるビタミンA、実は様々な食べ物に入っています。まず代表的なものがレバーです。豚レバーは100gあたり13000μgRAEのビタミンAが含有されています。レバニラ炒め1人前に使われるレバーがおおよそ70g程度ですので、一食で十分なビタミンAが摂取できる計算となります。豚以外の牛や鶏のレバーも多くのビタミンA が含有されていますのでおすすめです。
ただ、毎日レバーを食べるのは大変ですし、レバーが苦手という方もいるでしょう。そこでおすすめなのが、人参やカボチャ、トマトなどの「緑黄色野菜」です。緑黄色野菜に含まれている色素の「βカロテン」は体内でレチノールに変換されます。さらに日々のメニューの中で取り入れやすいことから、ビタミンAの補給にはおすすめです。緑黄色野菜は100gで600μgRAE程度のビタミンAが含まれていますので、毎日100g前後の緑黄色野菜を摂取できれば、他の食品からのビタミンAも含めておおよそ推奨量が摂取できると言えるでしょう。
ビタミンAに確認されている作用や効果
では、実際にビタミンAの摂取により期待できる効果を見ていきましょう。ちなみに、今回ご紹介するデータは全て「植物性」のビタミンA摂取による結果となります。
加齢黄斑変性の予防
加齢黄斑変性という病をご存じでしょうか。この病は、加齢により網膜の一部である「黄斑」に障害が生じる病で、欧米では成人における1番の失明原因となっています。日本でも高齢化と生活の欧米化により近年は著しく増加している目の疾患で、日本でも失明原因の第4位となるまでに至りました。
ビタミンAは加齢黄斑変性を予防する効果があるかもしれません。ビタミンAの一つである「カロテノイド」の摂取量と加齢黄斑変性の発症リスクを調べた海外の研究によると、血漿中のカロテノイドスコアが高いグループは低いグループに比べて加齢黄斑変性の発症リスクが40%低いという結果が示されました出典[1]。
加齢とともに視力の衰えのリスクは高まりますが、少しでも健康な視力を維持したい方にはうってつけの成分ですね。
体の老化防止
加齢とともに体は老化していきます。その原因の一つが活性酸素によるダメージの蓄積です。活性酸素は主に免疫細胞から作られ、重要な免疫機能を担っていますが、現在人はストレスが多く、食生活も欧米化していることから、活性酸素が産生されすぎて様々な疾患の原因となるのです。
がんや皮膚のシミやシワ、生活習慣病の原因にもなると考えられていますが、ビタミンAの一つである「カロテノイド」は活性酸素の発生を抑え、取り除く働きがあるとされています出典[2]。
カロテノイドはおもに緑黄色野菜などに多く含まれますので、体の老化が気になる中高年男性は積極的に摂取したい成分ですね。
記憶力の改善
ビタミンAにより、記憶力などの脳の機能が改善するかもしれません。ビタミンAの一つである「カロテノイド」には抗酸化作用や抗炎症作用を持つものがありますが、その効果により記憶力などの脳の機能が正常になることが考えられます。
海外の研究結果によると、血中のカロテノイド濃度の低い成人に12ヶ月にわたってカロテノイドを投与した結果、投与していないグループに比べて、記憶力の改善が見られたという報告がされています出典[3]。年齢とともに記憶力は低下するもの。
第一線で活躍するビジネスパーソンは、長く元気に働くためにも、ビタミンAをしっかりと摂取することが必要ですね。
ビタミンAの飲み方や注意点
次にビタミンAの飲み方や注意点をご紹介します。
ビタミンAは脂溶性のビタミンであるため、調理の際に油と一緒に摂取すると効率良く吸収できます。そのため、レバーなど、動物性食品からの摂取はビタミンA摂取にはうってつけと言えるでしょう。緑黄色野菜からビタミンAを補給するときも、ドレッシングや炒め物など、油と一緒に調理すると吸収力が上がります。ビタミンAを含むサプリメントなどから補う場合も、食事と一緒に摂取することで、吸収力が高まります。
ビタミンAは意識的に摂取したいビタミンではありますが、過剰摂取にも注意が必要です。ビタミンAは脂溶性ビタミンのため、脂肪とともに体内に蓄積しやすいという性質も持っています。厚生労働省の定める日本人の食事摂取基準によると、耐容上限量は成人の男女ともに、2,700μgRAE/日と定められています。これは日常的に摂取した場合に健康上の被害がないと考えられる量なので、レバーなどのビタミンAを豊富に含む食品やサプリメントを摂取する場合は気をつけたほうが良いでしょう。
また、緑黄色野菜などに含まれるカロテノイドから摂取したビタミンAは、動物性のビタミンAの量が十分な場合は吸収されないため、過剰摂取にはつながらないとされています。ビタミンAを摂取するときはレバーなどの動物性食品と緑黄色野菜などの植物性食品、必要に応じてサプリメントを使うなどして、バランスを保つことをお勧めします。
まとめ
ビタミンAは様々な食事に含まれていますが、日々の食事では不足しがちな栄養素です。いつまでも若々しく、元気に過ごすためにも、ビタミンAは大切な栄養素です。今一度自分の食事を見直して必要な量を摂取できているか確認しましょう。
出典
- 1.
Wu J, Cho E, Willett WC, Sastry SM, Schaumberg DA. Intakes of Lutein, Zeaxanthin, and Other Carotenoids and Age-Related Macular Degeneration During 2 Decades of Prospective Follow-up. JAMA Ophthalmol. 2015 Dec;133(12):1415-24.
- 2.
e-ヘルスネット|カロテノイド(かろてのいど)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-007.html
- 3.
Power R, Coen RF, Beatty S, Mulcahy R, Moran R, Stack J, Howard AN, Nolan JM. Supplemental Retinal Carotenoids Enhance Memory in Healthy Individuals with Low Levels of Macular Pigment in A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Clinical Trial. J Alzheimers Dis. 2018;61(3):947-961.
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