監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
筋トレは男性妊活にいいのか?論文から分かる4つの関係
精子の量や質を高めておくことは妊活において欠かせないことの1つです。
筋トレなどの運動は基本的には精子の量や質を高めてくれるので男性妊活に効果的です。
しかし、筋トレもやり過ぎたり、やり方を間違えたりすると逆効果になってしまうことがあります。
筋トレが精子の量や質に与える影響について論文を基に解説します。
基本的にトレーニングは男性妊活に効果的
1つ目に紹介するのは基本的に筋トレなどのトレーニングは男性妊活に効果的であることです。
2014年にハーバード大学で行なわれた研究で、1週間の運動時間と精子濃度の関係が調べられています。
その結果、全く運動しない場合と比較すると、屋外での運動が1.5時間の場合は42%、ウェイトリフティングを2時間の場合は25%も精子濃度が高まることが示されました出典[1]。
筋トレなどのトレーニングを行うことで精子の質が高まる理由はいくつかあります。
例えば、体内の抗酸化力が高まることで、酸化ストレスから精子を守ることができます出典[2]。また、精子の質や量を高めるために重要な役割を担っているテストステロンの合成を増やす作用もあるのです出典[3]。
精子の量や質を高めてくれるので筋トレなどのトレーニングは妊活男性にとって効果的な方法の1つです。
節制している食事も精子の質に良い影響を与える
2つ目はトレーニングのために節制している食事も精子の質に良い影響を与えていることです。
筋トレなどトレーニングをしている人は食事もストイックに節制していることが多いです。
低脂質の食事などの食事制限を行うことが精子の質に良い影響を与えている可能性があります。
2017年にイランのイスファハーン大学で行なわれた研究で、飽和脂肪酸の摂取量が1g増加するごとに精液量が38%も減少することが示されています出典[4]。
飽和脂肪酸は肉類や乳製品などの動物性脂肪に多く含まれている脂肪酸で、摂りすぎると体に良くない脂肪酸です。
体を鍛えたり、引き締めたりするために食事の内容を制限していると、飽和脂肪酸などの精子の量や質への悪影響を与える脂質の摂取量を減らすことができるので、精子の質に良い効果が出るのです。
1日2時間以上の筋トレは精子の質を低下させる可能性がある
3つ目は1日2時間以上の筋トレは精子の質を低下させる可能性があることです。
先程も紹介しましたが、基本的に筋トレなどの運動は精子の質を高めるのに効果的です。
筋トレのしすぎにより精子の質が低下することを示した明確な研究はありませんが、筋トレのしすぎで疲労が溜まると精巣にストレスがかかり精子の質が低下する可能性があります。
2012年にイランのウルミア大学で行なわれた研究で、1日に2時間以上の筋トレを1週間に4, 5日行なっているエリートアスリートの精子の質が調べられました。
その結果、エリートアスリートでは、精液の量や濃度が半分近くに低下しており、精子の運動性も4割以下でした。また、精液中の活性酸素や精子の酸化具合が4倍以上も高く、精子が酸化ストレスによるDNA損傷を受けやすい可能性が示されています出典[5]。
運動しすぎると大量に酸化ストレスが発生し、かえって精子がダメージを受けてしまう可能性があるので、筋トレするにしてもほどほどにしておきましょう。
高重量すぎるトレーニングも注意が必要かも...
4つ目に紹介するのは、高重量すぎるトレーニングも注意が必要かもしれないことです。
筋肉を大きく発達させるために、重りなどで過重量をかけてトレーニングをする場合があるかと思います。
スクワットやベンチプレスなどを行うパワーリフターの精子の質について調べられた研究では、パワーリフターは精子の質が低いとする研究と、精子の質が高いとする研究の双方の報告がされているのです。
まず、2019年にスペインのクルセル大学病院が行った研究で、ウェイトリフティング選手は定期的に運動しない男性と比較して、精子濃度が40%も低いことが示されています出典[6]。
一方で既に紹介した論文ですが、2014年にアメリカのハーバード大学の研究では、ウェイトリフティングを週に2時間以上行っている場合に精子濃度は25%高まることが示されています出典[1]。
それぞれ精子濃度が変化する明確な理由はわかっていません。
しかし、トレーニング時の重量負荷が大きすぎると精子の質が低下してしまう可能性は否定できないので、パワーリフター特有のトレーニング方法(1~3回ギリギリ挙げられるくらいの超高重量で行うトレーニング)は控えた方が良いかもしれません。
精子の質を最大化する筋トレガイドライン
筋トレは精子の量や質を高めてくれるので男性妊活に効果的です。
しかし、先程も紹介したように、やり過ぎたり、やり方を間違えたりすると逆効果になってしまう恐れがあります。
これまでに紹介した論文から考えられる、精子の質を最大化するための筋トレガイドラインは次の通りです。
- 長時間やらない。1日1時間程度。
- 適度な頻度。週2~3程度。
- 負荷をかけすぎない。70%1RM(最大挙上重量)以下の重量を扱う。
- 筋肉量の多い下半身を鍛える
大事なことは、精子の質を高めるためには過度に行うのではなく、適度な量の負荷で筋トレを行うことです。
適度な筋トレで精子の質を高めよう!
今回は筋トレと男性不妊の関係を紹介しました。
男性の妊活にとって精子の量と質を高めることは重要なポイントです。
筋トレなどのトレーニングは精子の量や質を高めてくれるので、妊活男性に取り組んで欲しいことの1つにはなります。
妊活を成功に近づけるために適度に筋トレに取り組んでみましょう。
出典
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