執筆者
管理栄養士/分子栄養学カウンセラー
岡かな
大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。
すっぽんってどんな食べ物?
滋養強壮に役立つことで有名なすっぽんですが、実際に食べたことがある人は少ないかもしれません。
まずは、すっぽんの特徴や栄養価を見ていきましょう。
栄養価が高く滋養強壮に効果的
すっぽんは「捨てるところがない」と言われるほど、ほぼすべての部位が食べられる食材です。
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年には、すっぽんの肉の栄養価が記載されています。
【すっぽん100gあたりの栄養素(日本標準食品成分表(八訂)増補2023年出典[1]より)】
すっぽん(肉/生)の栄養価 | |
エネルギー(kcal) | 175 |
たんぱく質(g) | 16.4 |
脂質(g) | 13.4 |
ω‐3系脂肪酸(g) | 2.32 |
ビタミンD(μg) | 3.6 |
ビタミンE(α-トコフェロール)(mg) | 1.0 |
ビタミンB1(mg) | 0.91 |
ビタミンB2(mg) | 0.41 |
すっぽんの肉は、たんぱく質はもちろんω‐3系脂肪酸、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2などが豊富に含まれています。
また、すっぽんと言えばコラーゲンを連想する人も多いでしょう。
実際にすっぽんにはコラーゲンが豊富であり、とくに甲羅周り、エンペラーと呼ばれるゼラチン部分から効率的に摂取できるとされています出典[2]。
エンペラには骨がほぼ無いため食べやすく、プリプリとした食感も特徴ですね。
肉から甲羅まで全身食べられる
さきほど解説したように、すっぽんは肉から甲羅まで、ほぼすべての部位が食べられる食材です。
食べられない部位は、膀胱や食道、爪くらいだとか。
すっぽんの肉はもちろん、心臓やレバーといった内臓も、お鍋など煮込み料理でいただくとおいしいです。
エンペラを取り除いた甲羅は、だし取りに使用できます。
また、生き血は殺菌消毒された後に飲み物として使用されることもあります。
さらに、サプリメントでは、すっぽんをまるごと冷凍して粉砕したものもあるようです。
このように、すっぽんは全身を食べることができる食材と言えるでしょう。
男性がすっぽんに期待できる効果とは?
すっぽんは栄養価が豊富で、滋養強壮に良いとされます。
ここからは、すっぽんの摂取が男性の健康にどのようなメリットをもたらすかを、すっぽんに含まれる栄養素に注目して解説しましょう。
疲労回復のサポート
ビタミンB1やB2に代表されるビタミンB群は、エネルギー代謝をサポートする働きがあります出典[3]。
とくにビタミンB1は、私たちの第一のエネルギー源である糖質の代謝に関わります。
糖代謝を促進するビタミンB1が不足すると、糖質をうまくエネルギーに変換することができず、だるさや疲労感が生じてしまうんです出典[3]。
実際に、ビタミンB1不足のアイルランド女性80人に対し6週間毎日10mgのビタミンB1を摂取してもらい、健康状態を測定した研究が行われました。
その結果、プラセボグループに対しビタミンB1を補給したグループは、食欲や体重などの全体的な健康状態が大幅に増加し、睡眠パターンの改善、活動量の増加、そして疲労感が軽減されたことが示されたんです出典[4]。
すっぽんにはビタミンB1やビタミンB2が豊富であるため、すっぽんの摂取は疲労回復の手助けをしてくれるでしょう。
さらに、すっぽんの肝には鉄も豊富です。
鉄もビタミンB群と同様に、エネルギー代謝に欠かせない栄養素出典[3]。
鉄不足と言えば、めまいや疲労感といった症状が起こる鉄欠乏性貧血が有名です。
すっぽんの肝を摂取することで鉄欠乏性貧血を予防し、貧血からくる疲労の軽減も期待できそうですね。
骨の健康維持
すっぽんに豊富なビタミンDは、骨の材料となるカルシウムの吸収やカルシウムの骨への沈着をサポートする働きがあります。
具体的には、 ビタミンDは「骨芽細胞」を活性化して骨を作ります。
また、ビタミンDは、カルシウムを血中に動員するために腎臓でのカルシウムの再吸収を促進し、腎臓からのカルシウム排泄を抑制する手助けをします。
多くの研究では、ビタミンDが不足すると骨粗鬆症のリスクが高まることが示されています。
骨粗鬆症と聞くと「カルシウムの不足」と思われがちですが、じつはビタミンDも骨の形成に欠かせない栄養素なんですね。
さらに、すっぽんに豊富なコラーゲンも骨の健康維持に寄与する栄養素。
骨の中にはコラーゲン繊維が網目のように張りめぐっており、その中でカルシウムなどのミネラルがしっかり骨に結びつくのです。
骨密度が低下した閉経後女性31名にコラーゲンペプチドを補給した研究では、コラーゲンペプチドの補給により、脊椎の骨密度が有意に増加したことがわかっています出典[5]。
丈夫な骨を作るために、ビタミンDとコラーゲンが豊富なすっぽんがおすすめです。
ただし、すっぽんの肉にはカルシウムはあまり多く含まれていません。
肉だけ食べる場合には、小魚や乳製品などカルシウムが多い食材と組み合わせると良いでしょう。
美肌効果
すっぽんに豊富な栄養素の中で美肌に効果があるのがビタミンE、ω‐3系脂肪酸、コラーゲンです。
ビタミンEやω‐3系脂肪酸は抗酸化作用が強く、酸化ストレスから細胞を保護することで、炎症や紫外線、メラニンの蓄積から皮膚を保護することが示されています出典[6]。
実際に、ビタミンEの一種であるトコトリエノールの抗酸化作用について、13件の研究をまとめた報告では、1日あたり80~600mgの範囲でトコトリエノールを補給すると、炎症マーカーであるC反応性タンパク質が大幅に減少することがわかりました出典[7]。
抗酸化作用の強いビタミンEやω‐3系脂肪酸は、美肌に有効であると言えるでしょう。
また、美肌に欠かせない成分と言えばコラーゲン。
コラーゲンは表皮の下層にある真皮の主成分で、肌のハリや弾力を保つ役割があります。
コラーゲン摂取と肌状態を調べた研究をまとめた報告では、加水分解コラーゲンを90日間摂取すると、しわが軽減され、肌の弾力性と水分が改善されることが示されています出典[8]。
他の食材からはなかなか摂取できないコラーゲンが豊富なすっぽん。
美肌に良いと噂される理由がわかりますね。
血中脂質のバランスを整える効果
「コレステロールが高くなってきた……」そんな方にもおすすめしたいすっぽん。
すっぽんには不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、血中脂質を改善し血液をサラサラにする効果が期待できるからです。
不飽和脂肪酸には、ω‐3系脂肪酸に代表されるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)、ω‐6系脂肪酸に代表されるリノール酸などがあります。
ω‐3系脂肪酸の摂取と血中脂質の関係を調べた研究では、成人30人が8週間にわたり12g/日のEPAまたはDHAを摂取し、その後の血中脂質を測定しました。
その結果、EPAの摂取で中性脂肪が約13.6%、DHAの摂取で約13.2%低下したことがわかっています出典[9]。
また、2175人の参加者を含む合計40件のランダム化比較試験の結果をまとめた論文では、食事由来のリノール酸の摂取によりLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が平均3.26 mg/dL減少したことが報告されています出典[10]。
不飽和脂肪酸の豊富なすっぽんは、血中脂質のバランスを整える効果も期待できるでしょう。
すっぽんは精力剤の代わりになる?
これまで、すっぽんの健康効果について学術的視点から解説してきました。
ところで「滋養強壮」と聞くと、性欲や性機能との関連を想像する人も多いでしょう。
ここからは、男性の性機能向上にすっぽんが役立つのかどうか、解説しましょう。
栄養不足の改善が性機能をサポートする可能性
すっぽんは、ビタミンDやビタミンE、ω-3脂肪酸などの栄養素が豊富で、栄養補給に非常に優れています。
よって、これらの栄養素が不足することで性欲や性機能が落ちている場合、すっぽんの摂取により男性機能が向上する可能性は十分にあるでしょう。
すっぽんに豊富な栄養素で、男性機能に関わるものは以下の3つがあります。
- ビタミンD
- ビタミンEやω-3脂肪酸などの抗酸化物質
- 不飽和脂肪酸
まずは、ビタミンDについてです。
じつは、ビタミンDの摂取量と血中テストステロン量には相関があることをご存知でしょうか。
そもそもテストステロンは男性ホルモンの代表格で、筋肉隆々とした男性らしい体や性機能、性欲を高める役割があります。
実際に、ビタミンD欠乏症の男性に高容量ビタミンDを月1回12か月投与したところ、血中ビタミンDと血清テストステロン濃度が上昇、性機能のスコアが改善されたとの報告があるんです出典[11]。
ビタミンDが不足している場合、すっぽんの摂取によりテストステロン量が増加する可能性は期待できるでしょう。
続いて、抗酸化物質について。
精巣が酸化ストレスによるダメージを受けると、精巣の細胞であるライディッヒ細胞が傷つき、テストステロンの合成効率や性機能が落ちてしまうんです。
そこで役立つのが、活性酸素から体を守る作用をもつ抗酸化物質。
美肌効果のところで解説した通り、すっぽんには抗酸化作用をもつビタミンEやω‐3系脂肪酸が豊富に含まれており、精巣保護と性機能向上に役立ちそうですね。
最後が不飽和脂肪酸についてです。
酸化したLDLコレステロールが陰茎の海綿体につまって血流が滞ると、EDの原因となってしまいます。
実際にコレステロールの上昇とHDLコレステロール(善玉コレステロール)の低下は、EDのリスクを高めることも知られているんです出典[12]。
すっぽんは血流を改善する不飽和脂肪酸が豊富であるため、血流低下による勃起不全の改善が期待できるでしょう。
ただし、ビタミンDなどの栄養素はあくまで不足が問題となるもの。
必要以上にたくさん摂取したからと言って、性機能がどんどんと向上するようなものではありません。
普段の食事がある程度整っている人は、すっぽんを摂取したとしても男性機能向上効果を実感しにくい可能性はあるでしょう。
性欲や性機能をブーストする効果は未確認
さきほど解説した通り、すっぽんに豊富な個々の栄養素が性機能向上に役立つというデータは多く存在しています。
しかし、実はすっぽんを食べることで性機能やテストステロンが高まったとする研究データはないんです。
また、すっぽんは手に入りにくく、継続して摂取するのが難しいことからも、精力向上目的で食べるのには適していないかもしれません。
一方、テストステロンブースターサプリメントは、実際にテストステロン値や勃起機能が高まったことが研究で示されています。
テストステロンブースターサプリメントと言えば、LJ100(トンカットアリ)やテストフェン(フェヌグリーク)などが挙げられ、これらは日本人の普段の食生活で取り入れることができない栄養素。
普段と異なる変化が身体に表れる可能性があるため、 更なる精力増強を目指す人におすすめなんです。
栄養不足の解消が男性機能を80%→100%に向上させるとするならば、テストステロンブースターサプリメントの使用は男性機能を100%→120%に向上させるイメージが近いでしょう。
すでに食事が整っていて、性欲や性機能をさらに高めたい場合には、テストステロンブースターサプリメントを活用してみましょう。
合わせて読みたい:【テストステロン2.0】男性ホルモンを増やす最新戦略
まとめ
すっぽんは、ビタミンB群やビタミンD、ビタミンE、ω-3系脂肪酸などの栄養素が豊富です。
疲労回復効果や骨の健康維持、美肌効果、血中脂質の改善効果が期待できます。
また、すっぽんの摂取により不足した栄養素を補うことができると、勃起力向上やテストステロン増加に効果を成す可能性はあるでしょう。
栄養不足がない人や普段の食事が整っている人は、すっぽんの摂取よりもテストステロンブースターサプリメントを活用することで、性機能をさらに高めることができるでしょう。
出典
LINEで専門家に無料相談
365日専門家が男性の気になる疑問解決します