執筆者
管理栄養士/分子栄養学カウンセラー
岡かな
大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。
はちみつってどんな食べ物?
ミツバチが集めた花の蜜が原料の”はちみつ”。
「はちみつ=健康食品」というイメージがあるかもしれませんが、実際どのような食品でどんな栄養素を含んでいるのでしょうか?
まずは、はちみつの特徴について解説していきましょう。
ミツバチが作る甘い蜜
はちみつは甘いので「砂糖と同じようなもの」というイメージがあるかもしれません。
しかし、砂糖とはまったく違う特徴がいくつかあるんです。
<砂糖と比較したはちみつの特徴>
- 甘味が強い
- 低カロリー
- 血糖値を上げにくい
まずは甘味について解説しましょう。
砂糖は、スクロース(ショ糖)という二糖類で構成されています。
一方、はちみつの主な構成成分はフルクトース(果糖)とグルコース(ブドウ糖)。
フルクトースの甘味はスクロースやグルコースよりも強いため、砂糖よりも甘味を感じやすいんですね。
また、はちみつは砂糖よりもカロリーが低いことも特徴のひとつ。
白砂糖は100gあたり391kcalであるのに対し、はちみつは100gあたり328kcalであり、2割弱ほど低エネルギーなんです出典[1]。
さらに、はちみつは38%のフルクトース、31%のグルコース、二糖類、三糖類、オリゴ糖など複数の糖から構成されています出典[2]。
そのため、血糖値の上昇が緩やかであることもはちみつの特性と言えるでしょう。
はちみつの種類と特徴について
はちみつは、大きく分けて以下のように分類されています。
- 純粋はちみつ:ミツバチが花蜜を採集し、巣房に貯え熟成した天然の甘味物質。
- 加糖はちみつ:純粋はちみつに異性化液糖などの糖類を加えたもので、純粋はちみつの含有量が60%以上のもの。
- 精製はちみつ:純粋はちみつからたんぱく質やビタミンミネラル、臭い、色等を取り除いたもの。はちみつ由来の甘味料として商業用に使われることが多い。
また、純粋はちみつの中でも非加熱の製法で作られたものを”生はちみつ”と言います。
生はちみつにはビタミンやミネラル、アミノ酸、酵素、ポリフェノール、有機酸など、さまざまな成分が含まれています出典[2]。
一方、加糖はちみつや精製はちみつは、はちみつの含有量が少ないため、健康食品としては適していません。
また、純粋はちみつのなかでも加熱されたものは、栄養素の一部が失われているため、やはり生はちみつほどの栄養価は期待できないでしょう。
はちみつの健康効果を最大限に引き出すためには、生はちみつを選ぶと良いでしょう。
ちなみに、はちみつとセットでよく耳にするローヤルゼリーは、羽化して1週間後の若い働きバチ出す物質で、花の蜜とは異なるものなんですよ。
はちみつが男性機能改善に役立つ6つの理由
勃起機能の改善には、テストステロンが重要であることはご存知の方も多いでしょう。
はちみつは、特有の栄養素の働きによりテストステロンを高める効果が期待できます。
ここからは、はちみつがどのようにテストステロンを向上させるか、学術的視点から解説していきます。
テストステロン合成に関わるホルモンを増やす
テストステロンが作られるまでには、様々な過程があります。
- 視床下部で性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が分泌
- 下垂体前葉で黄体形成ホルモン(LH)が分泌
- 精巣でコレステロールからテストステロンが合成
GnRHが分泌されると脳の下垂体前葉という部位に作用し、LHが分泌されます。
LHはテストステロン生産工場である精巣に作用して、テストステロンを合成するように指令を出します。
そしてはちみつは、この過程のうちLHを増やす効果が複数の動物実験で確認されているんです出典[3]。
32匹のラットを用いた研究では、ラットにニコチンを投与したグループとニコチンとはちみつを併用投与したグループに分け、血液中のLH及びテストステロン濃度を測定しました。
その結果、ニコチングループはLH及びテストステロン濃度が有意に低下しましたが、はちみつを併用したグループはLHとテストステロン濃度が顕著に改善し、さらに精子の運動性、生存率、形態、数も有意に改善したことがわかりました出典[4]。
さらに、糖尿病ラットに飼料の5%のはちみつを与えた実験では、糖尿病により減少したテストステロンがはちみつの補給で約26%、LHも約36%改善したこともわかっています出典[5]。
このように、はちみつにはLHを増加させテストステロンが上昇することで、結果的に勃起力を改善する効果が期待できるでしょう。
抗酸化物質が精巣を守る
活性酸素が体に与える影響を「酸化ストレス」と言いますが、精巣が酸化ストレスによるダメージを受けると、テストステロンの合成効率や性機能が落ちてしまいます。
そこで酸化ストレスの減少に役立つのが、はちみつに含まれるポリフェノールやフラボノイドなど抗酸化成分。
酸化ストレスの原因である活性酸素を取り除き、精巣を保護して性機能を改善する効果が期待できるのです。
実際に、精巣損傷をおこしたラットに対して、はちみつを投与した研究では、はちみつ投与により細胞損傷および細胞死が減少し、生殖ホルモン産生に対する顕著な保護効果が見られたことがわかりました出典[6]。
はちみつは、豊富な抗酸化成分により酸化ストレスから精巣を守ることで、テストステロン合成機能を保つように働くでしょう。
血流改善により勃起力増強
勃起力向上には、テストステロンだけでなく血流の改善も大切な要素。
なぜなら、勃起とはそもそも陰茎に血流を送り込むことで起こる現象だからです。
血流量を増やすためには、血流の改善が重要であることは言うまでもありませんね。
はちみつに豊富なポリフェノールやフラボノイドの抗酸化作用によって、血流を良好に保つ効果が期待できるんです。
ちなみに、はちみつに含まれるポリフェノールにはカフェ酸、p-クマリン酸、没食子酸などがあります。
これらのポリフェノールには、脂肪を生成する酵素を阻害する働きが示されているため、血中脂質を改善することで血液をサラサラにする効果が研究でも示されています出典[7]。
さらに、はちみつにはピノセンブリンとして知られる独特のフラボノイドをはじめ、ケルセチン、クリシン、ガランギン、ルテオリン、ケンフェロールなどの様々なフラボノイドも豊富出典[2]。
こうしたポリフェノールやフラボノイドの抗酸化作用により、血流改善による勃起力向上に繋がるでしょう。
肥満の改善でテストステロン低下を防止
はちみつには、体重と体脂肪を減らす効果が示されているポリフェノールが豊富に含まれているんです。
さきほども解説した、脂肪を生成する酵素を阻害するカフェ酸、p-クマル酸、没食子酸です。
55人の肥満患者を対象とした研究では、イラン産の天然未加工はちみつ70gを30日間摂取したところ、体重と体脂肪がそれぞれ1.3%、1.1%減少したことが示されました出典[8]。
肥満になると脂肪細胞から炎症性サイトカインが分泌されますが、炎症性サイトカインはテストステロンを分解してしまうんです出典[9]。
肥満を改善できれば炎症性サイトカインを効率的に減らせるため、テストステロンを守る効果が期待できそうですね。
実際に、中年肥満男性38名を対象にした研究では、32週間のダイエットで体重を約14%落とすと、遊離テストステロンが4倍以上に増加した出典[10]ことが示されているんです。
つまり、はちみつにより肥満を防止することでテストステロンの保護、ひいては勃起力向上に繋がると言えるでしょう。
緩やかな血糖上昇で酸化ストレスを軽減
血糖値の上がりやすさを示す指標「グリセミック・インデックス(GI値)」をご存知でしょうか。
GI値を考案したオーストラリアのシドニー大学では、GIが70以上の食品を「高GI食品」、56~69の間の食品を「中GI食品」、55以下の食品を「低GI食品」と定義しています出典[11]。
実際に、食品のGI値を調べた研究によると、精製砂糖のGI値が91に対して、はちみつのGI値は53であり、砂糖に比べてGI値が40ほど低い低GI食品であることが示されているんです出典[12]。
血糖値の急上昇や急降下(血糖値スパイク)は、酸化ストレスを発生させテストステロン濃度にも影響を及ぼすんです。
19~74歳の74人の男性に対し、75gの経口ブドウ糖負荷試験を行いテストステロン濃度を測定した研究では、血糖値スパイクによりテストステロンの濃度が平均25%低下したことがわかりました出典[13]。
血糖値スパイクを起こさないはちみつは、テストステロン上昇や勃起力向上にうってつけの甘味料と言えるでしょう。
オリゴ糖や有機酸による腸活効果も
はちみつには、オリゴ糖や、有機酸の一種であるグルコン酸が含まれています。
オリゴ糖やグルコン酸は腸内で善玉菌のエサとなることで腸内環境を改善する効果が示されています。
実際に、1997年に日本で発表された研究では、1日2g以上のグルコン酸の継続摂取により、ビフィズス菌や排便回数が増加し、腸内環境の改善効果が確認されているんです出典[14]。
「腸活はテストステロンに関係あるの?」と疑問を持った人もいるかもしれませんね。
じつは、善玉菌を多く含むフィルミクテス門に属する腸内細菌の一部は、男性のテストステロン値と相関していることが示されているんです出典[15]。
つまり、テストステロン値や勃起力向上のためには、腸内環境を整えることも重要なのです。
はちみつは腸活にうってつけの食材。
はちみつを上手に活用して腸内環境を整えることが、勃起力向上にも繋がりますよ。
合わせて読みたい:フル勃起しない原因4つとペニスを硬くする方法15選
はちみつの効果的な摂り方
ここからは、男性機能や勃起力に効果的なはちみつの種類や摂取量について紹介しましょう。
非加熱の純粋はちみつ(生はちみつ)を選ぼう
純粋はちみつには、加熱されたものと生はちみつがあります。
加熱処理されたはちみつは、酵素の活性や熱に弱いビタミンが失われているため、本来の健康効果を発揮できません。
また、せっかく生はちみつを選んでも、煮込み料理や焼き菓子などで加熱調理をしても同じように栄養価が下がってしまうため注意が必要です。
そのまま舐める、牛乳やヨーグルトに混ぜる、パンに塗るなどの方法で、生はちみつを摂取しましょう。
大さじ1杯を継続摂取
はちみつの健康効果は、継続してこそ発揮されます。
様々な研究においても、一度や二度はちみつを摂取しただけで即効性があるようなものはありませんでした。
はちみつの効果が示された、人を対象とした研究では、3~12週間にわたって1日あたり20gの継続摂取がされています出典[3]。
また、はちみつは砂糖よりも低カロリーですが、もちろん摂り過ぎればカロリーオーバーを引き起こすため、1日20gを目安に摂取すると良いでしょう。
はちみつは、大さじ1で約21gであるため、1日大さじ1杯までと覚えてくださいね。
適度なはちみつで男性機能をサポートしよう!
はちみつはフルクトースやグルコースをはじめ、ビタミン、ミネラル、酵素、ポリフェノール、フラボノイドなど様々な成分が含まれている優れた甘味料です。
砂糖よりも甘味が強い上、低カロリーで血糖値の上昇も緩やかであるため、ダイエットや肥満予防にももってこいですね。
はちみつの抗酸化作用や血糖値を緩やかに上げる作用、腸内環境を整える作用により、勃起力改善に効果的と言えるでしょう。
毎日の継続には、そのまま舐めたり、プロテインやヨーグルトに混ぜる、パンに塗るなどして食べるのがおすすめ。
1日20g程度の摂取を継続してくださいね。
出典
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