執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
マカとはどのようなもの?
マカの名前はサプリメントの成分として、ドラッグストアやネット通販でよく目にするでしょう。しかしマカがどのような食品であるのか、詳しく知っている方は少ないかもしれませんね。
まずはマカという食品の概要について説明します。
ペルー原産のアブラナ科の植物
マカとはカブや大根に似ている植物であり、キャベツやブロッコリーの仲間であるアブラナ科に属します。ペルーでは2000年以上にわたり栽培されており、標高4000~4500mほどの中央アンデスでのみ生育しています出典[1]。地下の根にあたる塊茎部分を食べることができる点も、カブや大根に似ていますね。
一般的なマカの栄養組成は、たんぱく質10.2%、炭水化物59%、脂質2.2%、食物繊維8.5%とされています。でんぷん質を多く含む一方で、たんぱく質や食物繊維の摂取にも活用できることがわかるでしょう。
また脂質のなかでは飽和脂肪酸は40.1%、不飽和脂肪酸は52.7%であり、リノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸が多めに含まれているようです出典[2]。
マカはカラフルな植物で、種類も白や黄色、ピンク、赤に紫、黒などさまざまです。色により成分の含有量がやや異なるようで、たとえば黄マカには炭水化物が、赤マカにはたんぱく質とカリウムが、黒マカにはアブラナ科の植物に特徴的なグルコシノレートが、紫マカには抗酸化物質が豊富であることが知られています出典[2]。
紫や黒のマカにはポリフェノールやグルコシノレートなど、マカに特徴的な栄養素が多く含まれるため、一般には色が濃いほどマカの効果が現れやすいとされているようです。
アミノ酸や微量栄養素による高い健康効果
マカはとくに栄養豊富な食品として、現代においても重宝されています。
ミネラルではカリウムやカルシウム、鉄、亜鉛などを多く含み、アミノ酸においては血流改善効果のあるアルギニンの摂取源として役立ちます。不飽和脂肪酸であるリノール酸やオレイン酸も摂取でき、血中脂質のバランスを整える効果も期待できるでしょう。
抗酸化作用を持つポリフェノールのアントシアニンや、イソチオシアネート、グルコシノレートなども豊富です。これらの抗酸化物質は活性酸素を除去して酸化ストレスを減らし、細胞へのダメージを減らすように働きます。とくにイソチオシアネートは老化や病気のリスクを減らすための成分として有名ですね。
このように、マカにはさまざまな微量栄養素やアミノ酸、機能性成分などが含まれています。これらの豊富な栄養素は、活力を高めたり、生殖能力を向上させたりするために役立つとされていますね。
具体的には性機能障害の改善、うつ症状や不安の改善、記憶力や学習能力の向上、紫外線による肌へのダメージ軽減、血圧の適正化、骨粗鬆症の予防などが報告されています出典[2]。
若々しさや健康をサポートし、元気に毎日を過ごすための食品としてマカが非常に優秀であることがわかるでしょう。
妊活男性がマカに期待できる効果とは?
マカはペルーを原産とする食品であり、日本では乾燥粉末化させたものをサプリメントとして摂る方法が一般的です。
性機能障害を改善し、生殖能力を高めるためにも役立つとされるマカ。妊活男性が摂ることで、具体的にどのような効果が期待できるのでしょう。
性欲を高めて妊活をサポート
マカの摂取により、実際に性欲が高まったとのデータが存在します。21~56歳の男性がゼラチン化したマカを1日1.5gと3gの投与で摂取したところ、継続8週目と12週目で性欲が高まったことが確認されています出典[3]。
男性の性欲に関連するホルモンとして、テストステロンが有名です。しかしこのマカ摂取の試験では、テストステロンの増加は確認できませんでした。マカにはテストステロンをブーストさせる働きはないものの、テストステロンとは別のメカニズムで性欲を高めていると推測されているのです。
マカが性欲を高めるメカニズムについては明らかになっていませんが、性交渉をスムーズにおこなうために役立つ可能性があります。3g/日のマカ抽出物を12週間にわたり摂取したケースでも、健康への悪影響は確認されていないため出典[4]、安全性の高い精力剤として活用できそうですね。
勃起力を改善して性交渉をスムーズに
勃起は陰茎に血液が集まることで起こるため、スムーズな勃起には血流を良好に保つことが重要です。マカには血流改善に役立つ成分が多数含まれているのです。
たとえばマカ由来のリノール酸やオレイン酸には、血中脂質のバランスを整えて血液をサラサラにする効果が期待できます。カリウムは、体内の過剰なナトリウムを水分とともに体外へ排出するように働きます。さらに豊富な食物繊維は血糖値や血中脂質のコントロールに役立つでしょう。
血中脂質、血圧、血糖値の乱れは血管にダメージを与え、血流を悪くする原因になることも。マカで血液の状態をケアできれば血管へのダメージも減らせるため、血流の改善にもつながりそうですね。
酸化ストレスによる血管へのダメージを抑えるためには、抗酸化物質の働きも重要です。マカには強力な抗酸化物質であるイソチオシアネートやグルコシノレートが豊富であり、血管を保護してやわらかく保つ効果が期待できるでしょう。
勃起をスムーズにするためには、サラサラの血液とやわらかい血管が重要。マカの成分にはどちらの機能も期待できるため、勃起力を高める効果が高いと言えそうですね。
実際に軽度の勃起不全患者である男性が、マカ乾燥抽出物2.4gを12週間摂取したところ、偽薬(プラセボ)を摂取した場合と比較して、国際勃起機能指数 (IIEF-5) がより多く改善したと報告されています出典[5]
勃起力に不安を覚える方や、加齢による硬さの弱まりを感じている方にもマカは役立つかもしれません。
精子の質を高めて受精率UP
マカに豊富なイソチオシアネートやグルコシノレート、フェノール化合物などは、血管に加え精巣の保護にも役立ちます出典[6]。精巣は男性ホルモンのテストステロンや精子を作る、いわば妊活の要とも言える器官。とくに精子の質を保つためには、精巣へのダメージを減らすことが重要です。
男性9名がマカ錠剤1.5gと3gを4か月にわたり摂取したところ、精液量や精子濃度、精子の運動性に改善が見られたとするデータが存在します出典[7]。
ただしテストステロンや卵胞刺激ホルモン(FSH)など、精子の製造にかかわるホルモンの分泌量には変化が見られませんでした。このことから、マカの効果はあくまで精巣を保護するものであり、精子の製造機能にブーストをかけるものではないと判断できるでしょう。
しかしながら精巣を保護するマカの能力は、とくに高齢男性の妊活において非常に重要です。精巣は酸化されやすい不飽和脂肪酸をほかの組織よりも多く含んでいるため出典[8]、体の部位のなかでもとくにデリケート。健康に気を遣う暮らしをしていても、加齢による精巣へのダメージはなかなか避けられないものです。
抗酸化物質を効率よく取り入れ、精巣を保護する能力を高めるためのサプリメントとして、マカは大いに役立つでしょう。
なお、色の濃いマカの方がアントシアニンを豊富に含むため、精子数や精子の運動性の改善に有益な効果があることが判明しています出典[9]。精子の質の改善を重視する場合には、マカのサプリメントを購入する際、黒マカや紫マカの使用が確認できるものを選ぶとよいかもしれません。
肥満の改善により生殖機能の低下を防ぐ
肥満はテストステロン量の減少リスクや精子の質の低下リスクを高めるため、妊活を成功させるためには体重のコントロールも重要です。
マカに豊富なグルコシノレートは、体内の脂肪をエネルギーの材料として使いやすくする効果があるとされています。脂肪燃焼効率が高まり、体重を減少させるために役立つ可能性がありそうですね。
ラットを用いた動物実験では、8週間の高脂肪職によるラットの体重増加が約7.2%起こるところ、マカの摂取により増加を約4.7%まで抑えられたと報告されています出典[10]
また肥満の改善のために運動を取り入れている場合は、マカの摂取がより効果的です。抗酸化物質には運動時に発生する活性酸素の働きを抑える効果があるため、運動時の疲労を軽減し、持久力パフォーマンスを高める効果が期待できるでしょう。運動効率の高まりにより、消費エネルギーを増やしたり、筋肥大を効率化して基礎代謝を高めたりするためにも役立ちそうですね。
実際にマウスへマカ成分を補給した場合、抗酸化物質の指標として測定されるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)が約24%増加し、酸化ストレスの指標となるマロンジアルデヒド(MDA)が約8%減少し、水泳時間が1.3倍以上に増加したと報告されています出典[11]。
体脂肪の燃焼効率や運動効率を高めたい方は、ダイエットのサポートにマカを取り入れるとよいでしょう。
マカの摂取が逆効果になるケースについて
このように、マカには生殖能力をはじめとするさまざまな効果が期待でき、男性の妊活に役立つ可能性が高いと考えられるでしょう。
またマカは副作用のない安全な食品としても知られているため、サプリメントに記載されている適量を摂る分には、妊活の妨げとなることもないと言えそうですね。
しかし安全とされているマカも、摂り方を誤ると妊活に逆効果となる場合があります。マカが妊活に逆効果となるケースについて解説しましょう。
アブラナ科アレルギーの方の摂取は危険
マカはブロッコリーやキャベツ、カブや大根と同じアブラナ科の植物です。そのためアブラナ科の植物にアレルギー反応を示す場合、マカでも同じ反応が見られる場合があるようです。
マカ自体のアレルギー反応に関する研究は十分ではありませんが、サプリメント販売元からは「アブラナ科の植物にアレルギーがある方」への注意がされている場合が多いようです。
妊活に役立つとされるマカで、じんましんや腹痛などのアレルギー反応を起こしてしまっては本末転倒。アレルギーアブラナ科の植物にアレルギーがある方は、サプリメント服用前に、あらかじめ医療機関で医師に相談するようにしましょう。
マカ以外の成分や食習慣の見直し不足
マカは血流改善効果や抗酸化効果など、妊活に役立つさまざまな成分を効率よく摂取できる、いわばスーパーフードとも呼ぶべき存在です。
しかしながら、マカのサプリメントは万能ではありません。「マカさえ摂っていれば妊活は完璧」との考えでほかの生活習慣の改善を怠ると、性欲や精子の質を損なう可能性もあるでしょう。
たとえばマカ由来のグルコシノレートには消費エネルギーを増やす効果がありますが、消費エネルギーの増大分以上のカロリーを摂り続ければ当然ながら太ってしまいます。
また、マカに豊富な抗酸化物質には血糖値スパイクによる酸化ストレスを抑える効果がありますが、大量の糖質食品を摂る習慣が抜けていないと悪影響は避けられないでしょう。
75g経口ブドウ糖負荷試験による血糖値スパイクでは平均でテストステロンの濃度が25%低下するとのデータもあるほど、血糖値スパイクが性機能に与えるダメージは深刻です出典[12]。
そのほか、睡眠不足や慢性的な強いストレスもテストステロンや精子の質を低下させます。生活リズムを整えたり、ストレスコントロールをはかったりすることも重要ですね。
さらにテストステロンをブーストする効果が確認されている成分の活用もおすすめです。トンカットアリやバイオドーパなど出典[13]出典[14]、男性の摂取でテストステロンの増加が確認されている物質を適宜取り入れて、妊活に有利な体質づくりに役立てましょう。
まとめ
マカにはミネラルや食物繊維、抗酸化物質を豊富に含む栄養価の高い食品です。血圧の低下や骨粗鬆症の予防、気分の落ち込みやうつ症状の改善などに役立つことに加え、性機能を改善する効果も複数確認されています。
性欲を高める効果はスムーズな性交渉をサポートし、血流を改善する効果は勃起力を高めることにつながります。さらに豊富な抗酸化物質がデリケートな精巣を守るように働くため、精子の質や量を高める効果も期待できるでしょう。
マカを摂る際にはアレルギー反応が起こらないかチェックしましょう。とくにアブラナ科の植物にアレルギーがある方は、摂取前に医療機関で相談するべきです。
マカへの過信も禁物です。マカを摂りさえしていれば妊活は絶対成功するというものではありません。肥満や睡眠不足、ストレスなど、性機能の低下につながる生活習慣の見直しを怠らないことが重要です。
テストステロンのブースト効果が認められているほかのサプリメントも活用すると、さらなる効果が期待できるでしょう。
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