監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
チョコレートと性欲や性機能の関係
チョコレートは気分を高揚させ、性欲を高めるために役立つとのイメージが広まっています。
しかしチョコレートは本当に性欲や性機能の増強に役立つのでしょうか?
まずは男性とチョコレートの関係に注目し、性欲や性機能に及ぼすメリットを学術的視点から解説します。
カフェインやテオブロミンが勃起力や性欲を高める
カフェインは交感神経を活発にして覚醒を促す働きがあり、テオブロミンも心拍数を増やすように作用します出典[1]。気分を向上させ、性欲をサポートする効果が期待できるでしょう。
またカフェインとテオブロミンの血流改善効果が、勃起力の維持に役立つ可能性があります。
2017年にドイツのデュッセルドルフ大学から発表された論文では、カフェインとテオブロミンを組み合わせて摂取した場合、血管の柔軟性を示す「血流依存性血管拡張反応(FMD)」が2時間後に約1.7倍に増加したと報告されています出典[1]。
また拡張期血圧や血管内皮の抵抗にも有意な改善が見られており、血流の改善に役立つと考えられるでしょう。
さらにカフェインの勃起不全(ED)への影響については、2015年にテキサス大学で大規模な調査がおこなわれています。
全国健康栄養調査(NHSNES)に参加した20歳以上3724人の、EDとカフェイン摂取量の関係を調べたところ、カフェインを1日170~375mg(コーヒーで2~3杯)摂取すると、カフェインを全く摂取しない場合よりもEDのリスクが約4割下がる傾向にあると報告されたのです出典[2]。
カフェインやテオブロミンにはこのように、気分の高まりや血流の改善により、性欲と勃起力をともに高める効果が期待できます。カフェインとテオブロミンを同時に摂取できるチョコレートは、大事な夜に向けて体の調子を整えるために役立つかもしれません。
カカオポリフェノールでテストステロンUP
男性の性機能や性欲を高めるためのホルモンといえば、やはりテストステロンでしょう。テストステロンの体内量は20代の頃にピークを迎え、40歳を過ぎると急激に減少します。加齢にともなう性機能や性欲の低下には、テストステロンの減少が関係しているかもしれません。
チョコレートに含まれるカカオポリフェノールにはさまざまな健康効果が確認されています。なかでもテストステロンによい影響を与えるものとして、強力な抗酸化作用に注目すべきでしょう。
テストステロンの合成場所である精巣は、酸化ストレスに非常に弱い組織です。活性酸素によるダメージを受けるとテストステロンの合成量が落ちる可能性があります。
私たちの体にも抗酸化能力は備わっていますが、食事から抗酸化物質を摂ることで、よりテストステロンを保護する効果が期待できるでしょう。
2023年にインドでおこなわれた臨床研究では、カカオを含むハーブのブレンドが、テストステロンの合成を促す黄体形成ホルモン(LH)や、活性の高い遊離テストステロンの量を増やすように働いたと報告されています出典[3]。
また、カカオポリフェノールには血管を拡張させるNOの利用可能量を増やし、血流を改善する効果も確認されています出典[4]。テストステロンの運搬効率を高めるほか、勃起力の改善にも役立つ可能性がありそうですね。
適度な糖質で活力UP
チョコレートに含まれる糖分も、性欲のサポートに役立つ可能性があります。
2019年にアメリカのグランドフォークス人間栄養研究センターでおこなわれた調査では、カカオ90%、80%、70%、ミルクチョコレートを摂取した際の、精神や食欲の変化が調べられました。
結果、チョコレートの糖度が高いほど、緊張の軽減や気分の改善など、精神的によい影響が強く出やすいとの結果が得られたのです出典[5]。
カカオ由来の成分を効率よく得るためには、カカオ含有量の高いチョコレートの方が適切と考えられがちです。しかしチョコレートによる気分の向上や活力の高まりを期待する場合には、糖類を程よく含むチョコレートの方が有効と考えられるでしょう。
ただし、糖類の量が増えるほど「もっと食べたい」という気持ちも強まり、チョコレートの摂取量が増えやすいこともわかっています出典[5]。チョコレートは高カロリーであるため、摂りすぎには十分注意しましょう。
チョコに媚薬効果は期待できるのか?
チョコレートを食べると相手を魅力的に感じやすいという「ときめき」の効果が注目されています。
特別な夜にはチョコレート、とのイメージは、このときめきを期待したものであることが多いようです。
ここからはチョコレートを食べることで得られる「ときめき」と呼ばれるものについて確認してみましょう。
チョコレートで興奮や心拍数が高まる可能性はある
フェネチルアミンに代表される微量アミンはヒトの中枢神経系に存在する物質であり、ドーパミンの放出を促すように働きます出典[6]。
2021年に韓国でおこなわれた研究では、同じ微量アミンの一種であるβ-フェニルエチルアミンをマウスに投与したところ、ドーパミンの量が約2倍以上に増加し、ポジティブな感情を誘導するように働いたと報告されています出典[6]。
ドーパミンは快感や喜び、やる気や行動力などを高めるように働く神経伝達物質のひとつです。チョコレートにより体内のドーパミン量が増えることで、性的反応がよくなる可能性も考えられるでしょう。
また、カカオ由来のテオブロミンには心拍数を増やす働きがあり、その効果はテオブロミンの摂取量が増えるほど増すことがわかっています出典[1]。
心拍数は興奮や緊張によっても増加するもの。そのため「ときめき」により心臓がドキドキする現象と同じことを、チョコレートにより引き起こせるとも考えられそうです。
男女ともに性的関心を高める効果は薄い
一方で、チョコレートが「性的関心」を高めるとのイメージは、必ずしも正しいとは言えない可能性があります。
まず男性についてですが、チョコのみの摂取により、男性の性欲を高めるテストステロンを増やせるといったデータは現在確認できていません。
男性の性欲はテストステロンの量と密接に関係しているものです。チョコ単体の摂取によるテストステロンへの作用が確認できていない以上、性的関心を高める効果はあまり期待できないでしょう。
また女性においては、チョコレートを高頻度で摂取する習慣がある場合には性機能が高い傾向にある、とのデータが得られています出典[7]。
しかし一方でチョコレートをよく食べる女性の方が、アンケートで「性的関心が低い」と回答する頻度が高かったとする研究結果も存在するのです出典[8]。
このようにヒトを対象とした実際の調査では、チョコレートの摂取と性的関心の高まりとの間には、十分な関係性が確認できていません。
一般に言われる「食べる媚薬」としてのチョコレートへの期待は、やや過剰であるかもしれない点を覚えておきましょう。
チョコレートの正しい食べ方
「食べる媚薬」としての過剰な期待は禁物ですが、チョコレートに含まれるカフェインやテオブロミン、カカオポリフェノールは、男性の性機能や性欲によい働きをもたらします。
では実際にチョコレートを食べる際には、どのようなことに注意すればよいのでしょう。ここからは、性欲や性機能を高めやすいと考えられるチョコレートの食べ方について解説します。
カカオ70%のチョコレートがおすすめ
チョコレートを食べる際には、カカオ含有率が70%のものをおすすめします。
ミルクチョコレートよりもダークチョコレートの方が、カカオポリフェノール、テオブロミン、カフェインなどを効率よく摂取できます。
たとえば2013年のフランスの調査では、ミルクチョコレートとダークチョコレートの1枚当たりの成分が次のように示されています出典[9]。
【チョコレート1枚(50g)あたりの成分量】
ミルクチョコレート | ダークチョコレート | |
カフェイン | 14mg | 35~200mg |
テオブロミン | 約75mg | 最大220mg |
カフェインやテオブロミンのようなカカオ由来の成分を摂りたい場合には、ダークチョコレートが適していることがわかるでしょう。
一方で、ダークチョコレートには糖類が少なめです。チョコレートの糖類は、カフェインやテオブロミンの精神的効果を高めるために役立つ可能性が指摘されています。そのため糖類の添加がほとんどないカカオ90%以上のチョコレートは、性欲を高めるための摂取には向いていないかもしれません。
チョコレートの糖類と効果との関係を調べた論文では、糖類の量が多いほど、精神的効果が高まることが報告されています。
しかし興奮作用においてはカカオ70%チョコレートでほぼ頭打ちとなり、カカオ70%チョコレートとミルクチョコレートの間には興奮を示すスコアにほとんど差が生じていませんでした出典[5]。
カカオ由来の成分を効率よく摂取しつつ、精神的なよい効果を得るためには、カカオ70%のチョコレートが最もよい選択肢と考えられそうです。
1日の摂取は30gまで
カカオポリフェノールによる抗酸化効果を得るためには、チョコレートを毎日摂ることが重要です。一方でチョコレートは100gあたり530~580kcal程度と高カロリーであるため、毎日食べる場合には量を控える必要があるでしょう。
カロリーオーバーにともなう肥満は、テストステロンを低下させる危険因子です。
2010年にオーストラリアのヘンリー王子医学研究所でおこなわれた調査では、BMIが35~40以上の男性は、痩せた男性よりも総テストステロンや遊離テストステロンの濃度が50%以上も低下していたと報告されています出典[10]。
またテオブロミンについては、摂取量が増えるほど心拍数を増やす効果も高まります。そのため過剰摂取で心拍数が上がりすぎて、強い緊張や不安感を生じやすくなるかもしれません。
2014年にシカゴ大学から発表された論文では、テオブロミンの摂取量が250mgを超えるとネガティブな心理的効果が起こりやすく、500~1000mgの摂取では容量が増えるほど不快感も高まるとの結果が得られました出典[11]。
ダークチョコレートの種類によっては100g程度の摂取でテオブロミンが250mgを超える可能性もあるため、不快感を防ぐためにもチョコレートの食べ過ぎには注意が必要です。
太るリスクを抑えつつ不快感を生じないようにするため、チョコレートの摂取は1日30g程度に留めておきましょう。
効果を得たいタイミングの2時間前を目安に
カフェインやテオブロミンの効果を最大限に得るためには、摂取のタイミングにも注意が必要です。
カフェインは摂取後30分後に、テオブロミンは2.5~3時間後にそれぞれ血中濃度がピークに達する物質です出典[1]。両方とも性機能や性欲によい効果を与える成分ですが、このように作用が強まるタイミングが異なるため、いつ食べればよいか迷う方もいるかもしれません。
チョコレートの摂取タイミングとしては、カフェインとテオブロミンを組み合わせて摂取した場合のデータが参考になるでしょう。この場合、血管の柔軟性を示すFMDの増加は2時間後により高く現れていました出典[1]。
カフェインやテオブロミンによる血流改善効果、ひいては勃起力を高める効果を期待する場合には、タイミングの2時間前を目安にチョコレートを食べるとよいでしょう。
チョコは性機能維持のサポートとして活用可能
チョコレートに含まれるカフェインやテオブロミン、カカオポリフェノールは、とくに男性の性欲や性機能を高めるために役立つ可能性があります。またチョコレートの糖類も精神的なよい効果をもたらすために有効と考えられています。
1日30g程度を目安に、効果を発揮したいタイミングの2時間前を目安に摂取しましょう。チョコレートの種類は、カカオ由来の成分と糖類とのバランスがよい、カカオ70%チョコレートがおすすめです。
一方で、「食べる媚薬」とまで呼ばれるほどの、高い性的関心をもたらす効果は期待できないと考えた方がよさそうです。チョコレートは自身の興奮をサポートするための食品として考えた方がよいでしょう。
出典
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