妊活の成功や性生活を充実させるために男性の性機能を高めることは重要です。

その方法の1つとして注目されているのが、睾丸を冷やす金冷法と呼ばれる方法です。

なぜ、睾丸を冷やすのが良いのでしょうか？

理由は睾丸は暑さに弱く、体温よりも少し低い温度で働くためです。

2019年にフランスのトゥールーズ III - ポール・サバティエ大学の研究グループは、睾丸の温度は身体の体温より2~6℃ほど低い温度が最適であることを報告しています^出典[1]。

睾丸は身体から少し離れてぶら下がっていますが、これは体温で温まり過ぎないようにするためです。

そのため、冷やせば機能が高まり、精子の産生や性機能にとって重要なホルモンであるテストステロン分泌が改善されることなどが期待されることから、金冷法は効果的ではないかと考えられています。

睾丸は体温よりも低い温度で機能を発揮するので、睾丸を冷やす金冷法は性機能を高めるのに効果的であるように思えます。

しかし、本当に効果があるのでしょうか？

論文から読み取れる金冷法の真実について次で解説します。

1.冷やすことで精子の質は高まるかも

1つ目は睾丸を冷やすことで精子の質が高まるかもしれないことです。

睾丸が温まると、精子の質が低下することは多くの研究から分かっています。

例えば、2013年にイタリアのパドヴァ大学で行われた研究では、サウナによって精子の量や質は低下してしまい、正常値に戻るまでに3か月以上かかることが示されています^出典[2]。

また、2018年にハーバード大学で行われた研究グループは、ボクサーパンツなどのタイトな下着を履いている男性は、トランクスなどのゆったりとした下着を履いている男性よりも、精子濃度が25％、精子数が17％、精子の運動率が33%も低くなることを明らかにしました^出典[3]。

これは、締め付けの強いタイトな下着は睾丸と身体が近くなるため、睾丸が体温の影響を受けやすくなるためです。

他にも、2019年にポーランドのポメラニアン医科大学で行われた研究では、仕事の時間の50％以上(週17.5時間以上)を座りっぱなしの姿勢で過ごした男性(デスクワークが多い男性)は股間に熱がこもりやすくなるため、精子の損傷が2倍も高いことが示されています^出典[4]。

一方で、睾丸を特殊な器具で冷やすことで、精子の質が高まる可能性があることも報告されており、2021年にカナダのトロント大学で行なわれた研究で陰嚢冷却装置により精子の運動性が約4%、活動性が約7%高まることが明らかになっています^出典[5]。

これらのことから、精子にとって睾丸を温めるのは良くなく、逆に冷やすのは良い効果があるかもしれないと言えるのです。

2.テストステロンが高まる可能性は低い

2つ目は金冷法でテストステロンが高まる可能性は低いことです。

先ほど紹介しましたが、睾丸を冷やすことで精子の運動性が高まる可能性はあります^出典[5]。

しかし、男性機能にとって重要なホルモンであるテストステロンは冷やすことでむしろ低下してしまう可能性が高いです。

1991年に兵庫医科大学で行われた研究によると、体を冷水で冷やすと血中のテストステロン濃度が10％も低下することが示されています^出典[6]。

睾丸を冷やすことでテストステロンが高まる報告はなく、むしろ低下してしまう可能性があるので、金冷法はテストステロンにとって良くない行為かもしれません。

3.勃起力が改善する見込みも低い

3つ目は勃起力が改善する見込みも低いことです。

テストステロンは勃起にとって重要な役割を担うホルモンであるため、睾丸を冷やしてもテストステロンは高まらないことから、勃起力が改善する可能性は低いです。

また、睾丸を冷やすと、ペニス周りの血管が収縮してしまいます。勃起はペニスに血液が集まることで生じる現象です。そのため、ペニスへの血流が阻害され、一時的に勃起力が低下する恐れも考えられます。

2023年に中国の新疆医科大学で行なわれた研究で、ラットに寒冷ストレスを与えると勃起不全になることが報告されています^出典[7]。

勃起機能の観点からも睾丸を冷やすことにメリットが高いとは感じられません。

今回は金冷法に本当に効果があるかを論文をもとに解説しました。

快適な性生活を送るために睾丸の機能を高め、性機能の改善することは重要です。

睾丸は体温よりも低い温度で働くため、睾丸を冷やす金冷法は効果的なように思えます。

しかし、睾丸を冷やすことでテストステロンや勃起力が高まる報告はなく、かえって逆効果な可能性が高いです。

性機能を高めるためには金冷法ではなく、生活習慣を見直すなどの他の方法を実践するようにしましょう。