勃起力を高めるために役立つ食べ物を探している方も多いでしょう。毎日の摂取を継続したいおすすめ食材として、今回はトマトを紹介します。

トマトには勃起力への効果が期待できる複数の成分が含まれています。とくにリコピンの効果は大きく、勃起不全（ED）でない男性はEDの男性よりもリコピンの摂取量が多いとのデータも^出典[1]。リコピンの継続摂取で、EDのリスクを下げられる可能性がありそうですね。

まずはトマト由来の成分が、勃起に関わる要素に与えるよい影響について説明します。

テストステロンを増やしやすくする

性的興奮により勃起するためには、脳から勃起の指令を陰茎に伝える必要があります。男性ホルモンのテストステロンには勃起の指令を強化する重要な役割があるため、テストステロンの分泌能力を高めることができれば、勃起力も上がると考えられるでしょう。

そこでカギとなるのがトマトのカロテノイド、βカロテンやリコピンに由来する抗酸化作用。βカロテンやリコピンは、体内で発生した過剰な活性酸素の働きを抑えるように作用するのです。

活性酸素は私たちの呼吸や代謝においても一定量発生していますが、暴飲暴食や激しい運動、睡眠不足、ストレスなどで量が増えると、酸化ストレスとして体にダメージを与えてしまいます。

テストステロンの分泌場所である精巣は、酸化ストレスにとくに弱い組織^出典[2]。酸化ストレスが強まると精巣が傷付き、テストステロンの分泌能力が落ちてしまうことも。トマトから抗酸化物質を十分に摂ることで、精巣を守る効果が期待できるでしょう。

リコピンの補給により酸化ストレスが減少し、テストステロンの分泌も改善した例が動物実験において確認できています^出典[3]。トマト由来の成分は、精巣のコンディションの低下防止に役立ちそうですね。

血流を改善する

勃起のためには血流も重要です。興奮により陰茎が硬くなるためには、陰茎の血管を十分に広げて、大量の血液を送り込む必要があります。

血流の改善のためには、血管をやわらかくすることと、血液をサラサラにすることが重要。

血管を拡張するための物質として知られる一酸化窒素（NO）には、酸化されやすい性質があります。トマトに豊富な抗酸化物質がNOの酸化を保護できれば、しなやかで拡張しやすい血管を保ちやすくなるでしょう。

また、脂質異常症は血液や血管への悪影響が大きく、EDのリスクも高い状態です。しかしトマトジュースの摂取では血中脂質のうち、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールが減少したとの結果が得られています^出典[4]。コレステロールの過剰な生成を抑え、血液をサラサラに保ちやすくする効果が期待できそうですね。

またトマトジュースやスパゲッティソースの摂取では、過酸化脂質の生成が抑制されたとのデータも^出典[5]。過酸化脂質は血管にダメージを与えて硬くする性質があるため、過酸化脂質を抑えることができれば血管のしなやかさを保ちやすくなるでしょう。

トマトには勃起に関わるテストステロンや血流に対するよい効果が期待できることが分かりました。勃起力を高めるため、トマトを食べようという気持ちが湧いてきた方もいるのではないでしょうか。

そこでここからはトマトの効果をより高めるためのポイントについて解説します。トマトの食べ方やタイミングに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

朝の摂取でリコピンを効率摂取

トマト由来のリコピンをより効率よく摂りたい場合には、朝の摂取がおすすめ。

栄養素の吸収率は1日のなかで、時間帯により変動することが分かっています。リコピンの場合、ヒトが朝に摂取した際に血中のリコピン濃度が最も上昇するとのデータが得られているのです^出典[6]。

また、ラットへのリコピン補給では、活動を始めた初期の摂取でリコピンの血中濃度が最も高く計測されていました。ヒトとラットから得られたデータにより、食事を摂っていない時間が長いほど、リコピンの利用効率が高まることが分かるでしょう^出典[6]。

朝起きてすぐは、睡眠による空腹時間が長いため、リコピンの摂取には最適のタイミング。朝飲めない場合でも空腹の時間帯を意識することで、リコピンの利用効率を上げやすくなるでしょう。

朝に飲み忘れた場合には、空腹の状態である食前に飲むようにしましょう。

脂質との同時摂取や加熱調理もおすすめ

トマトは生のままでも食べられる食品ですが、リコピンやβカロテンを効率よく摂りたい場合には加熱したり、ほかの食材と組み合わせたりする方法がおすすめです。

まずトマトの加熱では細胞壁が壊れ、中のリコピンやβカロテンの吸収効率が高まります。トマトを煮込んだラタトゥイユやブイヤベース、粉砕や加熱の処理を経ているトマトジュースなどが効率的でしょう。

また、少量の油とともにトマトを食べる方法もおすすめです。アボカドをトマトを和えて食べたり、トマトのスライスにオリーブオイルをかけて食べたりすることで、トマト由来の抗酸化物質の吸収率が高まる可能性があるのです。

トマトと脂質の組み合わせによるリコピンの吸収効率の変動については詳しい研究データが存在します。リコピン40mgを含むトマトソースをアボカドにかけて食べた場合、リコピンの吸収率が単体摂取の4.4倍に、βカロテンは2.6倍にもなったとのデータが得られているのです^出典[7]。

また、トマトサラダにアボカドを加えた場合にも、βカロテンの吸収効率が高まっています。トマトの加熱の有無にかかわらず、脂質と併せて食べることは効果的と言えそうですね。

なお、脂質を12g加えた場合と24g加えた場合では、吸収率には差が見られなかったことも分かっています^出典[7]。脂質の摂りすぎは脂質異常症や肥満のリスクを高めるため、高脂質食品や調味料は少量に留めておきましょう。

1日1杯のトマトジュースを習慣に

トマトをより手軽に摂りたい場合には、トマトジュースの活用がおすすめです。リコピンやβカロテンの摂取効率の面においても、粉砕と加熱を経たトマトジュースはより効率的であることが分かっているため、生のトマトが苦手な場合にはぜひ取り入れてみましょう。

ただしトマトジュースを飲む場合には無添加のものを選ぶべきです。飲みやすさの向上のために食塩や甘味料を加えているものもありますが、塩分や糖分の摂りすぎは血管の状態やテストステロンの分泌能力に影響を与える場合があるのです。

たとえば塩分の摂りすぎでは高血圧のリスクが高まります。血行不良の原因になるため、勃起力も上がりにくくなるでしょう。

また糖分の摂取により血糖値が急上昇すると、活性酸素が大量に発生し、酸化ストレスとして精巣を傷付ける可能性も。75g経口ブドウ糖負荷試験による人為的な高血糖状態では、テストステロンが平均24.7％低下するというデータも^出典[8]。食後高血糖のリスクが非常に高いことが分かりますね。

トマト由来の成分を効率的に摂れるはずのトマトジュースで、塩分や糖分の摂りすぎによる勃起への害が生じてしまっては本末転倒です。勃起力の向上に役立てたい場合には、無添加のトマトジュースを用意し、毎朝コップ1杯ずつ継続して飲むようにしましょう。

トマトに限定せずさまざまな野菜を摂ろう

トマトは勃起力を高める効果が期待できる野菜ではありますが、トマトの摂取にばかり偏らないようにも注意すべきです。

毎食の副菜をトマトサラダにする、トマトジュースを毎食1杯ずつ飲み続ける、などの極端なやり方は避けるべきでしょう。

野菜にはトマトのほかにも、強力な抗酸化物質を持つものや、テストステロンの分泌に関わる重要なミネラルを効率よく摂れるものが存在します。

たとえば玉ねぎのケルセチンやブロッコリーのスルフォラファンなどには、強力な抗酸化物質として精巣を保護したり、血管や血液の状態を良好に保ったりする効果が期待できるでしょう。

またほうれん草にはナイトレート（NO3）と呼ばれる物質を豊富に含んでおり、体内で還元されてNOになり、血管の拡張をサポートするように働くことも分かっています。

このように、テストステロンの分泌能力を高めたり、血流を改善したりする効果の期待できる野菜は、トマトのほかにも複数存在します。ぜひトマトをきっかけにほかの野菜にも目を向け、さまざまな野菜料理を取り入れて勃起力をより高めましょう。

トマトからは、勃起に関わるテストステロンや血流によい効果をもたらす可能性のある成分を複数摂取できることが分かりました。

リコピンやβカロテンのようなカロテノイドを十分に摂ることで、テストステロンの分泌能力を高めたり、血管の拡張能力や血液の状態を良好に保ったりする効果が期待できるでしょう。

トマトを効果的に摂りたい場合には、毎朝の継続摂取がおすすめです。より手軽に摂りたい場合には、食塩および砂糖が無添加のトマトジュースを、毎朝コップ1杯飲む習慣を付けるとよいでしょう。

料理にトマトを用いたい場合には、油と合わせたり、加熱したりといった方法でリコピンの吸収効率を増やせます。

さまざまな方法でトマトを毎日の食事に取り入れ、勃起力の向上をサポートしましょう。