

執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
男性の勃起力はなぜ低下する?
「若いころよりもスムーズに勃起できなくなった」という悩みを抱える中高年の方は意外に多いものです。なぜ男性の勃起力は低下するのでしょうか。考えられる2つの原因についてまず説明します。
テストステロンが減少するから
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勃起不全(ED)に悩む男性では、テストステロンの減少が見られる場合があります出典[1]。
テストステロンとは男性ホルモンの一種で、性欲や性機能に関係しています。勃起は性的興奮にともない陰茎が太く硬くなる現象であり、性的興奮と勃起を連動させる役目を担っているのがこのテストステロン出典[2]。そのためテストステロンが少なすぎると、性的な興奮と勃起が連動しきれず、なかなか勃起できなかったり、すぐに硬さが失われたりしやすくなるのです。
テストステロンは主に精巣で作られるホルモンですが、体内量のピークは20代。30歳を過ぎたころから減少が始まり出典[3]、35~40歳以降では年に1~3%のペースで減少するとのデータも出典[4]。
年を取るほど、多かれ少なかれテストステロンは減少します。けれどもさらに減少を加速させる要素として、暴飲暴食や夜更かし、運動不足などの生活リズムの乱れがあります。
とくに大きな要因として注目されているのが、過剰な活性酸素による酸化ストレス。テストステロンの分泌場所である精巣は酸化ストレスに弱い組織のため出典[5]、酸化ストレスを増やす生活を続けるほど、テストステロンも減りやすくなるでしょう。
年を重ねると、多かれ少なかれテストステロンは減少するもの。加齢による勃起力の低下を食い止めて回復に転じるためには、生活習慣のケアが重要となりそうですね。
血流が低下するから
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勃起におけるもう一つのカギが血流です。性的に興奮すると、脳からの指令により陰茎の血管が大きく拡張し、そこへ一気に血液が流れ込みます。勃起時の陰茎の大きさや硬さは、大量の血液によるものなのです。
血流とは血液の通りやすさのこと。勃起における血流は、血管の柔軟性および血液の粘性に左右されます。つまり血流を良好に保つためには、血管をしなやかに保つことと、血液をサラサラにする必要があるということ。
血管を硬くする要因には、酸化ストレスによる血管の損傷や、血管を拡張させる物質である一酸化窒素(NO)の減少などがあります。たとえば糖尿病や脂質異常症、高血圧などのような生活習慣病は、NOの不足と大きな関連があると言われています出典[6]。
また、糖尿病では血液中に糖が、脂質異常症では中性脂肪やコレステロールが増えすぎて、血液がドロドロになってしまいます。これらの病態では血管のみならず血液にも悪影響があるため、より勃起力の低下につながると考えられるでしょう出典[7]。
血管や血液の状態が悪いままでは血流が低下し、十分に勃起できなくなります。暴飲暴食を改めたり、十分な睡眠や適度な運動で体のケアをおこなったりすることで、良好な血流を保つ必要がありそうですね。
勃起力が弱い7つの原因と対策
勃起力が弱い場合、テストステロンの減少や血流の低下が関係している可能性があることが分かりました。ここからはテストステロンや血流に悪影響を与える可能性として、改善すべき生活習慣を7つ解説しましょう。
落ち込んだ勃起力を回復させたいけれど、何から取り組めばよいか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
ヘビースモーカーである

勃起における血流低下の原因として、最も重大なもののひとつが喫煙です。
タバコの吸い過ぎにより血圧が上がる、という話を聞いたことがありませんか?ヘビースモーカーの方ではとくに最低血圧(血管が拡張したときの血圧)が上がりやすいと言われています。すなわち度重なる喫煙により、血管の拡張能力が失われているということ。
タバコの煙に含まれる有害物質により活性酸素が大量に発生することや出典[8]。喫煙習慣により血管拡張作用のあるNOの生成量が減ることなどが出典[9]、勃起力を落とす原因と考えられています。
また、喫煙者では精液中の活性酸素濃度が高いというデータも出典[10]。喫煙による活性酸素が精巣にも影響を与えていることが分かりますね。
喫煙習慣と勃起不全における10の研究を分析した論文では、EDのリスクは喫煙本数や喫煙期間に比例し、より多く、より長く吸うほど高リスクになると述べられています出典[11]。
勃起力を高めるためには、今吸っているタバコの本数を1本でも多く減らすことが重要となるでしょう。
最も有効な取り組みは禁煙です。自力での禁煙に不安がある場合には、禁煙外来や禁煙薬を活用して、よりスムーズに、よりストレスの少ない形で取り組みましょう。
肥満体型である
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勃起力が弱いことに悩んでいる方、20代のころよりも体重が大きく増えていませんか?
実は肥満は勃起力を減らす危険因子として知られています。肥満の問題点は、過剰な脂肪組織が炎症を起こしやすいということ。
脂肪組織の炎症では、テストステロンを女性ホルモンのエストラジオールに変換する酵素「アロマターゼ」や出典[12]、精巣や血管にダメージを与える活性酸素が増えてしまうことが分かっているのです出典[13]。
たとえばBMIが35~40kg/m²を超えるような重度の肥満では、痩せ型の男性よりもテストステロンが50%以上低いとのデータが存在します出典[14]。さらに、EDに悩まされている男性の約79%がBMI25kg/m²以上の肥満体型であったとの統計も出典[15]。
EDのリスクを下げるためには、食事量や運動量の調整によるカロリーコントロールで、体重を適正範囲に保つ必要があるでしょう。
しかし厳しすぎる食事制限や激しい運動による急激な体重減少では、体脂肪とともにテストステロンや筋肉も大きく減少します出典[16]。テストステロンの減少、およびリバウンドのリスクを下げるため、減量は1か月に1~2kg程度のペースで、無理のない範囲でおこなうことをおすすめします。
甘いものや清涼飲料水を摂りすぎている
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水分補給と称して炭酸ジュースやエナジードリンクを頻繁に飲んだり、1日に何度も甘いお菓子を食べたりしていませんか?
糖分の多い嗜好品の摂りすぎは、もちろん肥満のリスクを高める点で問題です。しかし勃起においてより気を付けたいのが、糖質の摂りすぎによる血糖値の急上昇が、テストステロンや血液、血管に悪影響を与えてしまうこと。
血糖値が急激に上がると、血糖値を下げるためのホルモン、インスリンが大量に分泌され、今度は急激に血糖値が下がります。この血糖値の急変動は血糖値スパイクと呼ばれ、活性酸素の発生量を増やすことが分かっているのです出典[17]。
たとえば75g経口ブドウ糖負荷試験により血糖値スパイクを起こした実験では、血中のテストステロンが平均で24.7%減少したとのデータが寄せられています出典[18]。血糖値スパイクがテストステロンに与える影響が非常に大きいことが分かりますね。
また高血糖状態では過剰な糖により血液がドロドロになっているため、酸化ストレスによる血管へのダメージと相まってさらに血流が低下するでしょう。
砂糖入り飲料を飲む習慣がある方ほど、EDのリスクも高まることが分かっています出典[19]。
水分補給はすべて水やお茶のような無糖のものに切り替えるとともに、お菓子は糖質の少ないナッツや小魚、チーズなどで澄ませることをおすすめします。甘いお菓子やジュースは特別な日の楽しみに取っておきましょう。
野菜や果物や魚を摂る機会が少ない
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一人暮らしの男性でかつ自炊の習慣がない場合には、野菜や果物、魚を食べる機会も減りがちです。レトルトパウチのカレーや牛丼、ハンバーガーやカップ麺などのジャンクフード、コンビニの菓子パンなどで日々の食事を澄ませている方も多いのではないでしょうか。
しかしこれらの食事では、テストステロンの合成や分泌において重要なビタミン、ミネラル、ポリフェノールなどをほとんど摂取できません。これらの栄養素の摂取不足は、テストステロンの分泌を促す脳からの指令効率を落としてしまうのです出典[20]。
さらに抗酸化ビタミン、ω‐3系脂肪酸、ポリフェノールなどの抗酸化物質にはNOの分解を防ぎ、産生効率を高める効果も確認されています出典[21]。血管拡張物質であるNOは酸化されやすいため、酸化ストレスが多い状態ではNOが減少し、血管のしなやかさが失われてしまうでしょう。
ED患者を対象とした調査では、血中の抗酸化ビタミンの濃度が低いほど、EDが重症化していることが明らかになっています出典[22]。勃起力を回復させるためにも、抗酸化物質の摂取が重要と言えそうですね。
外食では麺類や丼もののような一品料理よりも、野菜の小鉢や魚料理などを少量ずつ食べられる定食料理がおすすめ。総菜の購入では主食、主菜、副菜に相当するものをそれぞれ購入するようにしましょう。野菜料理を1食につき1品以上入れることで、ビタミン、ミネラル、ポリフェノールの不足を防ぎやすくなります。
座りっぱなしの時間が長く運動習慣がない
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デスクワーク中心で座りっぱなしになる時間が長かったり、歩く機会が極端に少なかったりする方では、勃起力が弱まりやすい可能性があります。
運動量や活動量が極端に不足すると、テストステロンが減りやすくなるほか、血流の悪化ににもつながります。
たとえばテレビ視聴のために長時間座ったままの姿勢でいたり出典[23]、1日あたりの歩数が4000歩以下と少なかったりする場合に出典[24]、テストステロンが少なくなりやすいというデータが得られています。活動量が極端に少ない状況ではテストステロンが減りやすいと言えそうですね。
有酸素運動を取り入れることで、勃起機能を評価するIIEFスコアが改善したケースが複数存在しています出典[25]出典[26]。とくに1日400kcalの運動や、高強度の身体活動がEDの予防効果が高いため出典[27]、運動に慣れている方は積極的に体を動かしてみるとよいでしょう。
ただしマラソンのような激しい持久力運動は適度には良いものの、オーバーワークになればテストステロンを減らす原因にもなるほか出典[28]、サイクリングのような股間の圧迫を伴う運動はEDのリスクを高める可能性があるため避けるべきです出典[29]。
比較的短時間で終えられる高強度の運動の例として、高強度インターバルトレーニング(HIIT)がおすすめです。テストステロンを増やす効果も確認されているため出典[30]、ぜひ挑戦してみましょう。
夜更かしで睡眠不足になりがち

慢性的な睡眠不足はEDの原因にもなります。勃起力を高めたい場合には夜更かしをやめ、睡眠時間を増やすとともに、睡眠の質を高める必要があるでしょう。
睡眠はテストステロンにおいても血流においても重要です。まずテストステロンは睡眠中に分泌量が最大化する性質があるため出典[31]、睡眠時間が減るとテストステロンを効率よく増やせなくなるのです。
また睡眠中には活性酸素の除去もおこなわれるため出典[32]、睡眠不足の状態では酸化ストレスが増えやすく、血管を傷付けて血流を悪化させる可能性もあるでしょう。
さらに短時間睡眠ではNOの利用効率も落ち込むため、ますます血流が悪化出典[33]。睡眠不足では血管の状態が悪くなりやすいと言えそうですね。
一般には1日に7~8時間が健康を害さない適切な睡眠時間と言われています出典[34]。1日7時間未満の睡眠では肥満やうつ病、生活習慣病などのリスクも高まるため出典[35]、血液や血管の状態を良好に維持するためにも、今寝不足を感じている方は、1日7時間以上を目標にするとよいでしょう。
夕方かた夜に予定を詰め込みすぎないようにするとともに、コーヒーやエナジードリンクのようなカフェイン飲料を避けたり、寝酒をやめたりすると、より睡眠の質が高まり、勃起力の改善にも効果的です。
お酒を飲みすぎている
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お酒を飲む量が多い方ほど、勃起力が弱い傾向にあります。高頻度で飲み会に参加する方や、寝酒をしている方では、飲酒量がとくに増えやすいため注意が必要です。
大量飲酒では、体内の抗酸化能力が低下したり出典[36]、テストステロンの分泌を促すホルモンの合成効率が落ちたりすることが分かっています出典[37]。
また、お酒は血行促進に役立つとも言われていますが、大量飲酒では反対に血圧が増加したり、血栓による脳卒中のリスクを高めたりするとの情報も出典[38]。
大量飲酒が習慣化しているアルコール使用障害の患者では、68.5%でEDの有病が確認されたとのデータも存在します出典[39]。大量飲酒とEDには密接な関係があると言えそうですね。
アルコールの害をなくすためには禁酒が一番。アルコール使用障害とEDを併発する男性では、禁酒によりEDの改善が見られています出典[40]。
しかしお酒を好む方や人付き合いのために断酒が難しい場合には、厳格に量を調整する必要があるでしょう。週当たり7単位未満(純アルコール換算で1日に20g未満)であれば、性ホルモンへの影響が出にくいようです出典[37]。
アルコール度数5%のビールであれば500ml(ロング缶1本)、40%のウイスキーであれば約60ml(ダブル1杯)が目安となるでしょう。これより多くを1日に飲んでいる場合には、勃起機能の改善のため、飲む量を減らした方がよさそうですね。
勃起を改善する最適な方法とは?
勃起力が弱いことに悩んでいる方では、テストステロンの減少や血流の悪化が問題になっている可能性があります。
どちらも食事や運動、睡眠、飲酒など、生活習慣のケアにより改善が可能です。本記事で自身の課題を見つけ、取り組めるところから改善していきましょう。
とはいえいずれの取り組みも一朝一夕にはいかないものばかり。すぐには結果も出ないため、自身の取り組みが正しいか不安に感じることもあるでしょう。
効率よく勃起力を高めたい場合には、自身の取り組みの見直しや確認をメンズヘルスの相談のプロたちとともにおこなえる、ナイトプロテイン公式LINEの活用がおすすめです。
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テストステロンや血流は放っておいて自然に改善するものではありません。勃起力の改善にはいち早い取り組みが重要。ぜひナイトプロテイン公式LINEを活用して、周りの男性よりも一足先に勃起の悩みを解決しましょう。
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Karunakaran A, Michael JP. The Impact of Abstinence From Alcohol on Erectile Dysfunction: A Prospective Follow up in Patients With Alcohol Use Disorder. J Sex Med. 2022 Apr;19(4):581-589.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35236641/
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