

執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
牡蠣を食べることで妊活にはどのような効果がある?
妊活の成功率を上げるためには、男女ともに食生活のケアが重要です。とくに牡蠣は妊活をサポートする食品としてよく話題に挙がっていますね。
まずは牡蠣を食べることの妊活におけるメリットについて、男性と女性に分けてそれぞれ見ていきましょう。
男性:テストステロンの増加で性欲や勃起力UP
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自然妊娠で妊娠するためには性行為での挿入と射精が必要です。男性のセックスのポテンシャルを決める要素として重要なもののひとつが、男性ホルモンのテストステロン。性欲や勃起力などを高める働きがあるため、セックスをスムーズに進めるためにはテストステロンの維持が重要と考えられますね。
そんなテストステロンの分泌能力を維持するためには、食事から摂取できるビタミンやミネラルなどの充足が必要。とくに牡蠣からは、テストステロンに関わるさまざまな栄養素を摂取できるのです。
牡蠣から摂取できる栄養素のうち、テストステロンに関わりの深いものとして次のようなものがあります。
- 亜鉛:テストステロンの分泌を促すホルモンの合成をサポートする出典[1]
- マグネシウム:テストステロンのうち、活性が高い遊離テストステロンの割合を増やすように働く可能性出典[1]
- DHAやEPA:抗酸化作用によりテストステロンの分泌場所である精巣を保護
亜鉛やDHAの継続摂取でテストステロンが増えたケースや出典[2]出典[3]、体内のDHAやEPAの量とテストステロン濃度との間に相関関係があるケースなども確認されています出典[4]。これらの栄養素の充足は男性機能の維持に役立ちそうですね。
とくに牡蠣の亜鉛量は非常に多く、1粒20gの牡蠣4粒で、30~64歳の男性の亜鉛推奨量である9.5mgをゆうに超える、11.2mgもの亜鉛を摂取できるほど出典[5]出典[6]。
テストステロンの不足による性欲減退や勃起不全などのトラブルを防ぐためには、亜鉛やマグネシウムなどが豊富な牡蠣が効率的と言えるでしょう。
男性:精子の量や質を改善

妊娠の成立のために必須と言えるのが精子。性行為での射精ができても精子に問題があると妊娠は難しくなるでしょう。医療の介入が必須である場合もありますが、精子の量や質に問題があるケースでは、食生活のケアにより改善ができるかもしれません。
ここでも牡蠣に豊富な亜鉛が重要となります。亜鉛不足により減ってしまうテストステロンは精子の製造にも関わるホルモン。
ヒトの精液ではほかの組織よりも亜鉛濃度が高いことが分かっており、亜鉛が精子と関係の深いミネラルであることが読み取れますね出典[7]。
実際、亜鉛は精巣の発達や精子の状態の維持に重要な役割を果たすほか、体内の抗酸化能力を高めて、精巣を保護してテストステロンの量を維持したり、精子へのダメージを防いだりする働きがあるとも推測されているのです出典[7]出典[8]。
また、亜鉛から効率よく摂取できるアミノ酸、タウリンにも注目したいところ。タウリンには脳から精巣へのテストステロン分泌指示をサポートして、テストステロンの分泌を促すように働く可能性が指摘されているのです出典[9]。
さらにタウリンには抗酸化作用を強化する働きもあるため、精巣を保護してテストステロンや精子によい影響を与えることも期待できそうですね。
精子濃度の低下リスクは40歳を超えてから、精子の運動率は30歳を超えてから、有意に低下するとのデータがあります出典[10]。30代から妊活を始める方は、自身の精子や精液のポテンシャルが落ち始めている可能性を考え、亜鉛やタウリンを摂れる牡蠣の摂取を検討してもよさそうですね。
女性:妊娠初期に必要な栄養を効率よく補給

女性の妊活における栄養管理は、妊娠した場合の赤ちゃんへの栄養補給のため、また妊娠して変化する女性自身の体のケアのために非常に重要です。
牡蠣からは妊娠中に必要とされる栄養素を効率的に摂れるため、妊活中の食事に取り入れると効果的とも考えられています。
たとえば鉄分。妊娠中はお腹の中の赤ちゃんに栄養を送り込むために血液の量が増え、血液成分が薄まることで貧血を起こしやすくなります出典[11]。妊娠中期からは鉄の需要がとくに増えるため、妊活段階から鉄を不足なく摂る習慣を身に付けておくとよいでしょう。
カルシウムやマグネシウムも、妊娠初期の不足を防ぎたいミネラルです。妊娠中にはカルシウムの吸収率が増すため摂る量を増やす必要はないとも言われますが、そもそも日本人のカルシウムの摂取量は少なく、普段から不足している可能性が高い点に注意が必要です。牡蠣をはじめ、魚介類や乳製品から意識して摂りたいものですね。
牡蠣にとくに豊富な亜鉛もまた、赤ちゃんの発育に重要なミネラルです。脳の機能や免疫機能を維持するように働くことが知られていますね出典[11]。
これらの不足では赤ちゃんの発育不全のリスクがあるほか、母親の健康にも影響が及び、さまざまな合併症を生じる可能性も出典[11]。妊娠してからの母子の健康維持のため、ミネラルが豊富な牡蠣の摂取は役立つでしょう。
女性:着床率を高める可能性

牡蠣に豊富な亜鉛は、妊娠中にも不足を防ぎたい栄養素ではありますが、実は妊娠の成功率を高めるために役立つ可能性も指摘されているのです。
妊娠が成立するためには、精子と卵子が受精した状態で、子宮に着床する必要があります。このときに女性に亜鉛欠乏が見られると、着床率が低下する可能性があるのです。
たとえば体外受精および胚移植の治療を受ける中国山東省の女性を追跡したケースでは、血中亜鉛濃度が低い方では、体外受精の失敗リスクが66%増加していたことが分かっています出典[12]。
またマウスを用いた動物実験では、排卵前の5日間のみ食事の亜鉛を減らすだけで、胚の着床率が最大75%低下したというデータも。さらに着床後の胚のサイズが38%縮小したことや、妊娠中の亜鉛補給が十分であった場合でも神経管の発達に悪影響が出たことなども確認できています出典[13]。
妊活時からの十分な亜鉛補給は、妊娠の成立、ならびに赤ちゃんの発育にも重要である可能性があるとも言われています出典[13]。亜鉛の不足を牡蠣により解消できれば、着床率や赤ちゃんの発育にもよい影響が期待できるかもしれませんね。
効果的な牡蠣の食べ方とは?
このように、ミネラルが豊富な牡蠣は、男女ともに妊活中のコンディションを高めるために役立つことが分かりました。牡蠣をおいしく食べて妊活をサポートしたいと考える方もいるのではないでしょうか。
そこでここからは、妊活中に牡蠣を取り入れる際のポイントについて解説します。牡蠣を食べる量やおすすめの調理法について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
男性の亜鉛不足解消には1日4粒まで

男性がテストステロンの充足や精子の状態の改善のために牡蠣を食べる場合、1日4粒までを目安にするとよいでしょう。
牡蠣1粒を20gと仮定すると、4粒での亜鉛量は11.2mg出典[6]。日本人の食事摂取基準(2025年版)では30~64歳の男性の亜鉛推奨量を9.5mgと示しているため出典[5]、4粒食べれば亜鉛不足の心配はまずなくなるでしょう。
小粒の牡蠣でも1個15gを4粒で8.4mg。ほかの食事からも亜鉛を摂れることを考えると、小さめの牡蠣でも4粒で十分と言えそうですね。
なお、テストステロンの充足や精子の状態の改善のため、より多く牡蠣を食べればよいのではと考える方もいるかもしれません。しかし残念ながら、必要以上に亜鉛を摂ってもよい効果は得られないようです。
たとえばすでに食事から十分量の亜鉛を摂取できている方が亜鉛の栄養補助食品の摂取を続けても、血中テストステロンに改善は見られなかったとのデータがあります出典[14]。
さらに血中テストステロンの減少が見られない方への亜鉛補給では、テストステロンのさらなる増加や精子数の増加も起こらなかったとの報告も出典[15]。
亜鉛は摂れば摂るほどよいものではない点に注意し、あくまで不足を防ぐためのサポートとして取り入れるようにしましょう。欠食の多い方や、ジャンクフード中心の食事を続けている方、屋外での作業やスポーツなどにより大量の汗をかく方などは、亜鉛が不足しやすい傾向にあるため、牡蠣の摂取がとくに役立ちそうですね。
焼き料理やスープ料理がおすすめ

妊活の目的で牡蠣を食べる際には、鍋料理や焼き料理、炒め料理などがおすすめです。
おいしく牡蠣を食べる方法として天ぷらやフライなどもありますが、これらのような油を用いた料理は2つの理由から避けるべきです。
- 高温調理によりω-3系脂肪酸の量が減りやすくなる
- 高カロリーの料理により肥満のリスクが高まる
DHAやEPAのような、抗酸化物質として機能するタイプの脂質は熱に弱く、加熱により酸化されて量が減る可能性があるのです。
たとえばサンマの加熱によるω-3系脂肪酸の残存量を調べた研究では、調理法により次のような差が生じていました出典[16]。
DHA | EPA | |
---|---|---|
グリル焼き | 84% | 87% |
フライパン調理 | 85% | 77% |
揚げ調理 | 58% | 51% |
揚げ調理ではグリル焼きやフライパン調理より多くのω-3系脂肪酸が失われていることが分かります。抗酸化物質を効率的に摂るためには、揚げ物は避けた方がよさそうですね。
また、天ぷらやフライは衣がたっぷりの油を吸うため総じて高カロリーです。揚げ物の摂りすぎは肥満のリスクを高めるため注意が必要。肥満男性では精子濃度や精液量の減少、精子の運動率の低下など、妊娠に関わるさまざまなステータスが落ちることがわかっているのです出典[17]。
牡蠣に含まれる栄養とともに、余分なカロリーを摂りすぎてしまっては逆効果になる可能性も。摂取カロリーを増やしすぎない焼き料理や炒め料理などでおいしく食べましょう。茹で調理ではタウリンのような、牡蠣の栄養素の一部が茹で汁に溶け出すため、スープ料理として溶け出した分も丸ごと摂ることをおすすめします。
妊活中の生食は避ける
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加熱により牡蠣のω-3系脂肪酸が減るのであれば、生で食べればより妊活には効果的なのでは、と考える方もいるかもしれません。しかし妊活中の生食だけは避けるべきです。なぜなら牡蠣のような二枚貝には「ノロウイルス」を溜め込む性質があり、生牡蠣の摂取により食中毒を生じる可能性があるから出典[18]。
ノロウイルスを含む可能性のある食品は一般的に、中心部を85~90℃で90秒以上の加熱をすれば、ウイルスの感染性はなくなるとされています出典[19]。食中毒を予防するためには、生食はもちろん、網で牡蠣を焼いて食べる場合の生焼けにも注意する必要がありそうですね。
妊活中の女性で、すでに妊娠初期の状態にある場合、免疫力の低下により食中毒にかかりやすくなっている可能性があります出典[20]。
食中毒では激しい嘔吐や下痢などを生じ、脱水をはじめ、母親の体が深刻なダメージを受けます。赤ちゃんに影響が出る可能性もあるため、妊娠の可能性が少しでもあるタイミングでの摂取は避けた方がよいでしょう。
ノロウイルスによる食中毒が、男性の生殖能力に与える影響については現在確認されていないようです。しかしノロウイルスはヒトからヒトへの感染力が非常に高いウイルス。食中毒に感染した男性から、妊娠している可能性がある女性へ感染する可能性もあります。パートナーを守るため、男性も妊活中の生牡蠣は避けることをおすすめします。
結局、妊活で重要なことは?
妊活中には男女ともに食生活のケアが重要。栄養豊富な牡蠣は、男性の生殖能力を維持するためにも、女性の妊娠中に必要な栄養素を補給するためにも役立つでしょう。
妊活中に食べる場合には生食や揚げ調理を避け、十分に火を通せる焼き調理や炒め調理、茹で調理などがおすすめ。スープ料理にすれば茹で汁に溶け出した栄養素も効率よく摂ることができますよ。
なお、妊活中には女性のみならず男性も、食事を中心とするさまざまな体のケアが重要。自身にできる取り組みを詳しく知りたい方には、ナイトプロテイン公式LINEでの相談がおすすめです。
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