執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
マラソンをする人はどんなサプリを摂ればいい?
持久力運動であるマラソンのパフォーマンスを高めるために、サプリメントが役立つ場合があります。まずはマラソンに役立つ可能性のあるサプリメントについて、重要視したい要素を3つ解説します。
効率的にエネルギーチャージできるもの

マラソンのような全身を用いる持久力運動では、大量のエネルギーを消費します。運動においては筋肉に蓄えられたグリコーゲンがエネルギーとして使われますが、筋肉に蓄えられるグリコーゲンの量には限界があるため、長時間のマラソンにおいて必要とされるエネルギーすべてを賄えるわけではありません。
筋グリコーゲンが枯渇した状態でもエネルギー供給ができるよう、マラソンにおいてはその場で速やかにエネルギーチャージができるサプリメントがあると望ましいでしょう。
エネルギー源として最も効率的なものはもちろん糖質です。競技中に適切な量の糖質補給ができたアスリートの方が、マラソンの成績も向上する傾向にあります。ナトリウムやカフェインの摂取では成績に差が見られなかったことから、運動中の疲労回復においては糖質が最も重要であると読み取れますね出典[1]。
また、筋グリコーゲンの貯蔵量を高める意味でも、競技前に十分な糖質を摂ることは重要です。運動の1~4時間前、体重1kgあたり1~4gの炭水化物の摂取が筋グリコーゲンを蓄えるために推奨されていることからも、事前の糖質補給が重要であることが分かるでしょう出典[1]。
米国スポーツ医学会(ACSM)の炭水化物摂取ガイドラインでは、運動の最初の2.5時間は1時間あたり60gの、運動が2.5時間以上続く場合は最大90gの糖質をそれぞれ摂るべきとしています出典[1]。
これだけの量のエネルギー補給を運動中に効率よくおこなえるものがあれば、パフォーマンスも上がりやすくなりそうですね。
筋疲労や筋損傷を抑えられるもの

長時間の運動では、大量のエネルギーを消費することに加え、筋肉にも大きな付加がかかります。
筋肉の運動においては活性酸素が発生しやすく、筋肉をはじめ体全体に酸化ストレスの形でダメージを与えます。1分未満、かつ最大酸素摂取量(VO2max)の約30%程度の軽い運動であれば酸化ストレスは生じないようですが、長時間の運動や高強度の運動では活性酸素が急激に増加するため出典[2]、筋肉へのダメージもより大きくなるでしょう。
また、酸化ストレスに対抗するための物質として体内の抗酸化酵素がありますが、筋肉における抗酸化酵素の活性は、持久力トレーニングを継続することで高まり、酸化ストレスを増やしにくくすることも分かっています出典[2]。
つまり裏を返せば、持久力トレーニングを初めて間もない方ではより筋肉へのダメージが増えやすいということ。酸化ストレスにより鍛えたはずの筋肉が損傷したり、筋肉痛が長引いたりすることにもなりかねません。
体内には酸化ストレスに対抗するための抗酸化酵素があります。しかしより体内の抗酸化能力を高めたいのであれば、食事から抗酸化物質を取り入れる方法がおすすめです。
野菜や果物に含まれる抗酸化ビタミンやポリフェノールは抗酸化物質の代表格。ジュースやサプリメントの形でこれらの抗酸化物質を効率よく摂取できれば、筋疲労や筋損傷のリスクを抑えられそうですね。
血流を改善するもの
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マラソン中の筋肉のパフォーマンスを高めるためには、血流を良好に保つことも重要です。なぜなら血流は、筋肉へ酸素や栄養素を供給する重要なルートだから。
血流が滞ると酸素や栄養素による筋肉のリカバリが効かず、より消耗が早くなってしまいます。疲労を軽減し、運動パフォーマンスを高い状態でなるべく長く保つためにも、血流のサポートは重要です。
筋肉の血流が運動時の疲労と回復に及ぼす影響を、強めのハンドグリップ運動を行っている8人の男性被験者の前腕筋で調査した研究があります。
この男性8名はまず通常のハンドグリップ運動をおこない、次に血圧計カフで血流を遮断した状態で同じ運動に取り組みました。結果、カフを使用した状態では、血流の遮断により1分間で握力が最大握力の40~50%まで低下したのです。さらにその後の消耗も激しく、疲労するまでの時間もより早まっていました出典[3]。
栄養素や酸素の運搬ルートが遮断された状態では、運動パフォーマンスが大きく低下し、疲労もしやすくなることが分かりますね。
血流を良好に保つためには、粘度の低いサラサラの血液と、拡張しやすいやわらかな血管が重要です。血液の粘度を上げないよう水分補給を十分におこなうことに加え、血管を拡張させやすくするサプリメントを取り入れることも、マラソンのパフォーマンスを高めるためには役立ちそうですね。
マラソンのパフォーマンスUPにおすすめのサプリ7選
ここからはマラソンのパフォーマンスを高めるために役立つサプリメントについて解説します。
マラソンを始めたばかりの方や、マラソンのパフォーマンスに伸び悩んでいる方は、ぜひ効率的な栄養補給の手段の参考にしてください。
EAA

EAAとは数多くあるアミノ酸のうち、人体では生成できない9種類のアミノ酸を指します。人体のたんぱく質の合成に欠かせないアミノ酸であり、筋肉を作るためにもとくに重要とされるEAAを、サプリメントの形で手軽に補給できれば、筋肉の合成効率もより高まるでしょう。マラソンにおいて損傷した筋肉の、修復をサポートするためのアイテムとして活躍しそうですね。
EAAはエネルギー源としても活躍します。アミノ酸の形状であるEAAは、アミノ酸が複数結合しているたんぱく質よりも速やかに吸収されます。マラソンの直前やマラソンの最中に補給すれば、エネルギーチャージにより疲労が軽減でき、パフォーマンスアップにもつながるでしょう。
たとえばEAAを含むアミノ酸サプリメントの摂取では、疲労の指標となるクレアチンキナーゼやミオグロビンの量が減少し、筋肉痛も軽減したとの報告があります出典[4]。
さらにEAAと有酸素運動を併せておこなった高齢者では、有酸素運動のみおこなった高齢者よりも、より筋力が増加したというデータも存在します出典[5]。
マラソンによる筋肉の損傷を軽減したい場合にも、マラソンによる筋肉へのよい影響を期待したい場合にも、EAAの摂取が役立つことが分かりますね。
マルトデキストリン+フルクトース

今回はより効率的な糖質補給に役立つサプリメントとして、マルトデキストリンとフルクトースの組み合わせを紹介しましょう。
グルコースよりも浸透圧が低く、かつでんぷんよりも分子量が小さいマルトデキストリンは、糖類のなかでもとくに素早く吸収されることで知られているのです。さらにフルクトースを組み合わせることで、より多くの糖質を吸収できるようになります。
フルクトースは二糖類。マルトデキストリンとは体内への吸収に使われる輸送体が異なります出典[6]。マルトデキストリンの一つの入り口だけでなく、フルクトースを加えた二つの入り口からエネルギーを取り込めるため、糖質の吸収を効率化して、エネルギー切れや筋損傷を防ぎたい場合にはおすすめです。
男性サイクリスト8名が、120分のサイクリング運動中に、グルコースとフルクトースを2:1の割合で混ぜた飲料を摂取したおこなった実験では、同カロリーかつグルコース単体のみの飲料を摂取した場合よりも、運動後におこなわれたタイムトライアルの終了タイムが8%も速くなった、とのデータが得られています出典[7]。
グルコースとフルクトース、二つの入り口から糖質を取り入れて吸収速度を高めるやり方はトランスポーター法とも呼ばれています。持久力運動のパフォーマンスを高める効果があるとして、注目されている方法ですね。
パフォーマンスを高めるための手段として、ぜひマルトデキストリンとフルクトースを組み合わせてみましょう。
S7
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S7は、抗酸化物質が豊富な7種類の素材を同時に摂取できるサプリメントです。S7に含まれる7つの素材からは、次のような抗酸化物質を摂取できます。
素材 | 主な抗酸化物質 |
グリーンティー | 緑茶カテキン |
グリーンコーヒー豆 | クロロゲン酸 |
タートチェリー | アントシアニン |
ブルーベリー | アントシアニン、フェノール化合物 |
ウコン | クルクミン |
ケール | βカロテン、ルテイン、ビタミンC |
ブロッコリー | スルフォラファン |
これらの豊富な抗酸化物質により筋疲労を軽減できれば、マラソンにおける筋肉の消耗やパフォーマンスの低下も防ぎやすくなるでしょう。
またS7の抗酸化物質には、体内の血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の生成効率を増やし、減少を抑える効果も期待できます。NOが少ないと血管を十分に拡張できず、血流も低下します。そしてNOは酸化されやすい物質でもあるため、酸化ストレスの増える持久力運動中には量が減りやすいのです。
しかしS7で抗酸化物質を効率よく補給し、酸化ストレスを減らすことができれば、NOも保護でき、血流を良好に維持しやすくなるでしょう。
実際に健康な参加者8名がS7を50mg摂取した実験では、3時間後にミトコンドリアや細胞内の活性酸素の生成量が17.7%阻害され、さらにNO濃度が2.3倍に増加したとのデータが得られています出典[8]。
また、軽度肥満にあたる男性が50mg/日のS7を90日摂取し続けたところ、ミトコンドリアでの活性酸素の生成が約75%も減少し、NOの濃度が53.43%も増えたと報告されています出典[9]。
効率的に抗酸化物質を補給し、血流を良好に保ちつつ筋疲労を抑えたい場合には、S7の摂取が役立つでしょう。
オキシストーム

オキシストームもまた、NOを増やす効果の高いサプリメントです。NOの増加による血流の改善で、高い抗疲労効果が期待できるでしょう。
オキシストームの原料である赤ほうれん草(レッドスピナッチ)は、ナイトレート(NO3)を豊富に含む植物です。NOを生成するルートは体内に複数ありますが、そのうちのひとつがこの、食事由来のNO3の還元によってもNOを得るルート。NO3の供給をサプリメントで増やすことができれば、より血流を改善できそうですね。
11名の健康な男性が15日間、赤ほうれん草由来のNO3を6m mol/日で摂取した実験では、血圧の低下や安静時の呼気NO濃度の上昇とともに、高強度の運動により疲労するまでの時間が、偽薬(プラセボ)を摂取した場合よりも約19%伸びたとのデータも存在します出典[10]。
NO3は通常の食事においても、ほうれん草、レタス、白菜などから摂取可能ですが出典[11]、より高い効果を得るためには、NO3を多量かつ手軽に摂取できるサプリメントがおすすめです。
マラソンのような長時間の運動時にも血流を良好に保ち、疲労を抑えたい方には、オキシストームが役立つかもしれません。
無水カフェイン

無水カフェインは食品や飲料に含まれるカフェインから水分を取り除いたものであり、カフェインと作用は変わりません。高い携帯性と保存性に加え、水分やカロリーの摂りすぎも防げる点も無水カフェインのメリットですね。
カフェインは眠気や疲労の軽減をはじめ、集中力を向上させたり、意欲を高めたりする効果が確認されています。マラソンのパフォーマンスを高めるために役立つでしょう。
実際に7名の成人男性が4mg/kgのカフェインをサイクリングの前に摂取したところ、カフェインを摂取しない場合よりも疲労するまでの時間が12%延び、主観的な疲労感が大幅に減少したとの結果が得られています出典[12]。
また、普段から筋力トレーニングに取り組む男性12名がカフェイン300mgを運動90分前に摂取したところ、運動に対するモチベーションが14.8%増加したことも確認されています出典[13]。
このようにカフェインの摂取は、運動の意欲や疲労感の軽減に役立つでしょう。
また運動中における脂肪のエネルギー利用を促し、体脂肪の燃焼効率を高める効果も認められているため出典[14]、ダイエットを目的にマラソンをしている方にも役立ちそうですね。
カフェインの血中濃度は摂取後30分~2時間で最大になるとされているため出典[15]、このタイミングを目安に摂ることをおすすめします。
エクスプローノックス

エクスプローノックスとは、タマリンドとワサビノキの有効成分から抽出した、サポニン15%とプロアントシアニジン40%の含有が規格化されているサプリメントです。
運動と組み合わせて摂ることで、筋肉に対するさまざまな効果が確認されています。
- 筋肉へのダメージを軽減
- 有酸素運動の持久力の向上
25~45歳のウェイトトレーニングに精通している男性が、運動の30~45分前に500mlのエクスプローノックスを飲んでトレーニングする生活を60日続けたところ、プラセボ(偽薬)を飲んだ場合と比較して、次のような効果が生じました出典[16]。
エクスプローノックス | プラセボ(偽薬) | |
有酸素運動の成績 | 5.27分 ↑ | 2.21分 ↑ |
筋肉へのダメージ (損傷マーカーLDH) | 15.78% ↓ | 9.08% ↓ |
エクスプローノックスを摂取した場合の方が、有酸素運動の成績がより伸びていることが分かるでしょう。筋肉へのダメージもより抑えられています。
このように、運動へのさまざまな効果を得られるサプリメントとして、エクスプローノックスはおすすめです。
チェリーピュア

チェリーピュアはマラソンのような持久力トレーニングにおけるリカバリに焦点を置いたサプリメントです。原料はタルトチェリーであり、栄養価が高い果皮の部分のみを、フリーズドライ製法で丁寧に粉末化しています。
強力なポリフェノールであるアントシアニンが、筋肉の炎症を軽減。さらに抗酸化物質によりNOの保護効果で血流も改善され、筋肉への栄養や酸素の供給効率を高める効果も期待できると考えられています。
20名のマラソンランナーが、マラソンの5日前、当日、そして48時間後に、チェリージュースを摂取して、プラセボ(偽のドリンク)を摂取した場合の状況と比較したケースを見てみましょう。結果、チェリージュースを飲んだグループの方が、「抗酸化状態が約10%高く」「筋力の回復が早く」「炎症の減少量が多い」ことが分かったのです出典[17]。
筋肉痛についても、チェリーピュアを摂取したグループの方が、トレーニング24時間後の外側広筋(太ももの外側)の筋肉痛が軽減されていたとの結果が得られています出典[18]。
チェリーピュアの炎症を抑える効果や抗酸化状態を保つ効果により、筋肉の消耗や筋肉痛を防ぎやすくなりそうですね。
さらに有酸素運動のパフォーマンスにおいては、チェリーピュアを摂取したグループの、ハーフマラソンの平均タイムが103分、摂取していないグループは118分と、15分の短縮が確認されています出典[19]。
マラソンの成績向上を狙う方にも、チェリーピュアはおすすめです。
サプリの活用でマラソンのパフォーマンスを高めよう
マラソンの持久力パフォーマンスを高めるためには、効率的なエネルギー補給、筋損傷の軽減、血流の確保などが重要です。
EAAやクレアチン、マルトデキストリンなどで効率的に栄養補給をおこなうことは、疲労を軽減するため、とくに優先すべきでしょう。
筋肉の保護のため、抗酸化物質が豊富なS7やタルトピュアを活用する方法も有効です。血流の確保には、オキシストームのようなNOの生成効率を高めたり分解を抑えたりするタイプのサプリメントが役立つでしょう。
意欲や集中力、パフォーマンスの向上のため、無水カフェインを活用する方法もおすすめですね。
マラソンは体の消耗が非常に大きな競技です。サプリメントでのケアを徹底することで、ダメージを抑えながら効率的に体を鍛えることができるでしょう。
出典
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