パントテン酸(ビタミンB5)とは?4つの効果と適切な摂取方法
2022年9月6日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。

パントテン酸(ビタミンB5)とは

水溶性ビタミンの一つであるパントテン酸は、体の中で起こるきわめて多くの反応に関与している栄養素です。

ここでは、パントテン酸の働きや不足した場合の健康への影響、含まれる食べ物などについてご紹介します。

1.パントテン酸(ビタミンB5)とは?

「ビタミンB5」とも呼ばれるパントテン酸は「水溶性ビタミン」で、ビタミンB群の一つです。さまざまな動植物に含まれており「幅広く存在する酸」という意味のギリシャ語からパントテン酸と名付けられました。

パントテン酸は食物から摂取できますが、腸内でもわずかに合成されています。


2.パントテン酸(ビタミンB5)の働き

パントテン酸は、食事から摂取する糖質や脂質、たんぱく質をエネルギーにつくり変えたり、コレステロールや脂肪酸、副腎皮質ホルモンなどを合成したりすることに関わっています。

このような糖質や脂質、たんぱく質の代謝には「コエンザイムA(CoA/補酵素A)」という物質が必要ですが、コエンザイムAはパントテン酸がないと合成されません。つまり、コエンザイムAが必要な生体反応にはパントテン酸も必要であるということになります。


3.パントテン酸(ビタミンB5)が不足するとどうなる?

動物性植物性問わず幅広い食品に含まれるパントテン酸は、普通の食生活が送れている分には不足することはほとんどありません。

しかし適切に食事を摂取できないなどの理由によりパントテン酸が欠乏した場合は、エネルギーの代謝異常により成長が止まるなどの影響が出る可能性があります。また手足の痺れや灼熱感、頭痛、疲労、不眠、胃の不快感を伴う食欲不振などの症状が現れることもあります。


4.パントテン酸(ビタミンB5)を含む食材

パントテン酸は名前の通り多くの食材に含まれていますが、主に肉類、魚介類、豆類などに含まれています出典[1]

【パントテン酸を多く含む食品(可食部100g当たり)】

  • 鶏レバー(生)……10.00mg
  • 豚レバー(生)……7.19mg
  • 牛レバー(生)……6.40mg
  • たらこ(生)……3.68mg
  • 納豆……3.60mg
  • 子持ちがれい(生)……2.41mg
  • うなぎ(養殖/生)……2.17mg
  • 鶏ささみ(生)……2.07mg
  • モロヘイヤ(生)……1.83mg
  • ブロッコリー(生)……1.42mg
  • 鶏卵(全卵/生)……1.16mg
  • しそ(葉/生)……1.00mg
     

パントテン酸に確認されている作用

それではパントテン酸に期待できる主な効果を見ていきましょう。

1.代謝の促進

パントテン酸は、糖質や脂質からエネルギーをつくり出す酵素の働きを補助するビタミンです。食事から摂取した糖質や脂質は体内で分解され、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー物質につくり変えられます。このATPが、私たちが体を動かす源となるのです。

糖質や脂質のエネルギー代謝には、コエンザイムAという物質を必要とします。パントテン酸はコエンザイムAの構成成分、つまり「部品」となるため、エネルギー代謝にも重要な役目を担うと考えられているのです。

食事から摂取した糖質や脂質を効率よくエネルギーに変換したいという方、つまりダイエット中の方などにはパントテン酸が役立つといえるでしょう。

 

2.LDLコレステロールの減少

パントテン酸は脂肪酸やコレステロールなどの代謝に関与しています。そのため、十分に摂取することでコレステロール(悪玉コレステロール)やHDLコレステロール(善玉コレステロール)代謝の正常化が期待できるといわれています。

薬物(スタチン)治療の対象となる、低~中等度の心血管疾患リスクのある北米人32名を対象に1~8週目は600mg/日、9~16週目は900mg/日のパントテン酸製剤(パンテチン)を投与した結果、8週目と16週目のLDLコレステロールが有意に減少しました。また、8週目と12週目の非HDLコレステロール(総コレステロールからHDLコレステロールを除いたもの)が減少傾向となり16週目で有意な差がみられたことから、パントテン酸が心血管疾患リスクを低下させることが示唆されました出典[2]

LDLコレステロールが高めであると指摘されている方や動脈硬化を予防したいという方にとっては、効果が期待できる成分であるといえますね。


3.ストレス耐性の増加

パントテン酸はストレスに負けない体づくりに役立つ効果が期待できます。

私たちはストレスを受けると副腎皮質ホルモンの一種である「コルチゾール」を分泌し、ストレスに対処しようとします。このコルチゾールの合成に関わっているのがパントテン酸です。

21 日齢の雄ラットに 0.03% のパントテン酸飲料水を 9 週間投与したところ、コルチゾールをはじめとする糖質コルチコイドやプロゲステロンなど副腎皮質ホルモンの分泌を高めることが示唆されました出典[3]

仕事や勉強でストレスにさらされやすいという方や、季節の変わり目にはストレスを感じやすいという方は、パントテン酸を積極的に摂取してみると良さそうですね。


4.グルタチオンの合成による抗酸化

パントテン酸には、抗酸化物質グルタチオンの合成を促進する作用があると考えられています。

このメカニズムを解明すべくヒトリンパ芽球細胞を用いて行われた研究では、パントテン酸が細胞内のミトコンドリアにおいてコエンザイムAの合成を促すことでエネルギー産生を増加させ、同時にグルタチオン量も増やしていることが確認されました出典[4]

グルタチオンには細胞の老化防止作用による生活習慣病の予防や、美肌効果、また肝機能を高めたり眼病を予防したりといった効果が期待されています。

抗酸化作用により若々しい体を保ちたいという方は、パントテン酸を意識して摂取してみると良いでしょう。
 

パントテン酸の飲み方や注意点

パントテン酸はビタミンの一種です。そのため基本的には安全な成分であると考えられますが、サプリメントなどからの摂取において注意点はあるのでしょうか。

ここでは、パントテン酸の摂取目安量やサプリメントで摂取する場合の注意点などについて解説します。

1.パントテン酸(ビタミンB5)の摂取目安量は?

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、パントテン酸の1日当たりの摂取目安量が設けられており、18歳以上の男性で5~6mg、同じく女性で5mgです出典[5]

また、妊娠中の方の目安量は妊娠していない場合と同様の1日当たり5mgですが、授乳中の方は6mgとなります出典[5]


2.パントテン酸(ビタミンB5)摂取量に上限はある?

パントテン酸の過剰摂取による副作用などの報告はほとんどなく、食事摂取基準においても摂取量の上限は設けられていません。

パントテン酸は基本的には安全である上に、食事から十分摂取できる成分です。そのため、あえてサプリメントで摂取する必要はないと考えられます。しかし、複合型のサプリメントなどを摂取する場合は過剰摂取とならないよう、1日当たりの摂取目安量を守るようにしましょう。


3.パントテン酸(ビタミンB5)と医薬品の相互作用

パントテン酸と同時に摂取することで、作用が増強したり弱まったりする恐れのある薬品は報告されていません。

服薬中の方も安心して摂取できる成分ですが、念のためパントテン酸と内服中の薬の相互作用について、主治医に確認することをおすすめします。


4.パントテン酸(ビタミンB5)理想の摂取方法やタイミング

パントテン酸は水溶性ビタミンです。水溶性ビタミンは体に蓄積されることはなく、多めに摂取しても尿として体外に排出されます。

そのため、パントテン酸も一度に摂取するよりは、3食の食事のタイミングで摂取するのが無駄のない方法であるといえるでしょう。

また水に溶けやすい性質のほか熱にも弱いため、サッと炒めたりレンジで加熱したりするなどの調理法がおすすめです。
 

まとめ

パントテン酸は、水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種です。糖質、脂質、たんぱく質の代謝に関与するコエンザイムA(補酵素A)の構成成分となるほか、コレステロールや脂肪酸、副腎皮質ホルモンの合成に関わる成分としての働きを担います。

このようなパントテン酸の働きにより、LDLコレステロールやHDLコレステロールの代謝を正常化させたり、ストレスに負けない体づくりや老化防止に役立ったりといった効果が期待できるでしょう。

さまざまな食品に含まれているパントテン酸は、食事摂取基準により目安量が定められているものの通常の食事で不足する心配や過剰摂取の報告はほとんどありません。

あえてサプリメントなどで摂取する必要はないと考えられますが、より十分に補給したいという方は1日当たりの摂取目安量を守って利用しましょう。
 

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