ヨウ素とは?不足すると生じる9つのこと
2022年10月3日更新

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

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ヨウ素とは

 あまり聞きなじみのない栄養素かもしれませんが、体の成長に必要な必須ミネラルの1つです。必要な摂取量は微量ではありますが、不足すると成長が止まることがあり、適切な量の摂取が必要です。ヨウ素不足にならないためにどのような食品を取るべきか、不足するとどのような健康被害が起こり得るのかなどを説明していきたいと思います。

1.どんな栄養素?

ヨウ素は人間の体に必要な元素の1つです。体内のヨウ素の大部分は甲状腺に含まれており、成人の体内に約13mg含まれます。

ヨウ素は別名を海のミネラルと言い、海水中などに多く存在しています。海に面している日本では摂取しやすい栄養素ですが、内陸国では摂取が難しく欠乏症になりやすい傾向にあります。


2.体の中でどんな働きをする?

ヨウ素は甲状腺ホルモンの構成成分になります。食物中のヨウ素の吸収率は高く、摂取量のほぼ全量が体内に吸収されます。吸収されたヨウ素は甲状腺に運ばれて行き、甲状腺ホルモンの合成に用いられます。

また、ヨウ素はエネルギー代謝を促進します。甲状腺ホルモンは、酸素の消費を高め、エネルギー産生を活発にします。さらに、細胞の活動を高めて、骨形成やタンパク質の合成を増加させ、交感神経の働きを活発にします。乳幼児など成長期の子供の発育を促進します出典[1]


3.どんな食材に含まれている?

ヨウ素は海水に多く含まれており、海藻や魚介類を食べることで効率的に摂取できると言えます。

【ヨウ素を豊富に含む食品(藻類・ひじき)とその含有量(100gあたり)】出典[2]

食品名状態など含有量
(こんぶ類)刻み昆布230000 μg
(こんぶ類)ながこんぶ素干し210000 μg
(こんぶ類)まこんぶ素干し200000 μg
ほしひじき45000 μg
(こんぶ類)つくだ煮11000 μg
わかめカットわかめ8500 μg
あおのり素干し2700 μg
あおさ素干し2200 μg


【ヨウ素を豊富に含む食品(魚介類)とその含有量(100gあたり)】出典[2]

食品名状態など含有量
まだら350 μg
あわび180 μg
すけとうだら160 μg


【ヨウ素を豊富に含む食品(調味料類)とその含有量(100gあたり)】出典[2]

食品名状態など含有量
昆布だし5400 μg
かつお・昆布だし1500 μg
だししょうゆ750 μg

 

ヨウ素が不足すると生じる9つのこと

藻類や魚介類を好んで食べる日本人はヨウ素不足になることは少ないですが、摂取不足になると様々な健康被害を生じます。ヨウ素が不足するとどのようなことが生じるのか見ていきましょう。


1.首のしこり

ヨウ素の不足により甲状腺腫となり首にしこりができることが報告されています。食事によるヨウ素摂取量が少ない場合、ヨウ素欠乏症による甲状腺機能低下症と甲状腺腫の可能性があることが、尿中ヨウ素量の検査などにより分かっています。

ある若い男性の最初の検査数値は、甲状腺刺激ホルモン 24.4 mIU/L(正常範囲は0.4~5.0 mIU/L)、遊離サイロキシン <0.4 ng/dL(正常範囲は0.8~1.8 ng/dL)、甲状腺ペルオキシダーゼ抗体 43 IU/mLで陽性(正常範囲は <35 IU/mL)でした。彼は、胃腸の問題(腹痛、膨満感、吐き気)のために乳製品や魚介類を摂取せずに、イチゴとピーナッツバターのサンドイッチを食べたと医師に伝えています。

身体検査において、びまん性に肥大した触知可能な甲状腺 (グレード II の甲状腺腫) が明らかになりました。首の超音波検査では、結節のない肥大した甲状腺が示されました。これらの原因を調べるために、24時間にわたって尿中ヨウ素排泄検査が行われ、ヨウ素摂取量が非常に少ないことが示唆されました。彼は、毎日150 μgのヨウ素を含むマルチビタミンの摂取を開始しました。その結果、追跡調査では、臨床検査でグレード I の甲状腺腫が示され、甲状腺刺激ホルモンは0.7 mIU/Lに正常化され、遊離チロキシンは1.2 ng/dLでした。

ヨウ素のサプリメント摂取から6か月後の甲状腺機能検査において、甲状腺刺激ホルモンが 0.002 ng/d 未満の甲状腺機能亢進症が示され、遊離チロキシンは 2.8 ng/dLに上昇しました。ヨウ素の過剰摂取により甲状腺中毒症になってしまったことが考えられたため、ヨウ素のサプリメントをやめました。

ヨウ素が不足することで甲状腺機能低下症と甲状腺腫になり首に大きなしこりができてしまいます。反対にヨウ素を過剰摂取しすぎると甲状腺中毒症となるため、適切な量の摂取が必要と言えます出典[3]


2.知能や思考力の低下

甲状腺の機能が低下することにより、知能や思考力が低下します。甲状腺ホルモン低下症の患者は、海馬(学習や記憶に影響を与える脳の部分で、甲状腺ホルモン受容体が豊富な領域)の体積低下がみられます。

11人の甲状腺機能低下症患者と9人の対照群において、左右の海馬領域の体積を分析しました。その結果、対照群と比較して甲状腺機能低下症患者の右海馬の体積が大幅に減少することが示されました。脳の一部分の構造欠陥により、知能や思考力が低下することが示唆されます出典[4]


3.胎児や小児の成長の遅れ

子どものヨウ素摂取量が不足すると、身体的および精神的発達と死亡率に悪影響がみられます。ヨウ素欠乏症は、小児期の精神遅滞の主な原因です。

ヨウ素欠乏地域に住む29613人の子どもを対象として、26件の試験(20件は低品質、6件は中程度の品質)が行われました。ヨウ素のサプリメントの補給により、甲状腺腫の減少がみられました。認知および精神運動測定値の違いに関する結果はまちまちでした。ヨウ素補給後に乳児死亡率が低下したことが示唆された研究や、甲状腺刺激ホルモンレベルの大幅な低下がみられた研究もありました。

調査した子供の1.8%に悪影響が見られましたが、そのほとんどは軽度で一過性のものであり、身体的および精神的発達と死亡率に対するプラスの効果の兆候が見られました。これらの結果より、ヨウ素欠乏症により胎児の小児成長が遅れることが分かりました。しかし、ヨウ素をサプリメントなどで補うことで、改善することが示されています出典[5]


4.無気力や疲労感の増加

ヨウ素欠乏症は、代謝とエネルギーレベルにも影響を与える可能性があります。Thyroid に掲載された 2008 年のレビューによると、甲状腺ホルモンは基礎代謝率とエネルギー消費に大きな役割を果たしています。実際、熱発生の調節は、成人における甲状腺ホルモンの主要な役割の 1 つです。

多くのデータにより、エネルギー消費に関与する細胞プロセスに対する甲状腺ホルモンの影響が実証されていますが、そのメカニズムは不明です。甲状腺ホルモンが代謝率をどのように決定するかを完全に説明するには、さらに多くの研究を行う必要があると言えます出典[6]

アッサム州の2456人の甲状腺機能低下症患者における一般的な症状は、脱力感 (98%)、無気力 (95%)、乾燥した荒れた肌 (87%)、体の痛み (85%) でした。ヨウ素により甲状腺機能低下症を発症し、その結果無気力や疲労感が増加します。これらの健康被害を引き起こさないために、ヨウ素を積極的に摂取することが大切です出典[7]

 
5.乳がん発生率の増加

食事中のヨウ素欠乏症により、乳がんの発生率が増加することが報告されています。白人よりも尿中ヨウ素濃度が低い黒人は、白人女性の2倍程度乳がんになりやすいことが示されています。ヨウ素は乳房の健康を維持する成分であり、女性の摂取不足は乳がんを引き起こすこともあり得るため、食事やヨウ素のサプリメントで不足分を補うようにしましょう出典[8]


6.前立腺がんリスクの増加

ヨウ素の低下は前立腺がんのリスクを高めます。前向き研究の結果、甲状腺疾患は前立腺がんリスクの増加と関連しており、2.34 (1.24〜4.43) でした。甲状腺疾患と診断されてから10年を超えるとリスクが上昇し、3.38 (1.66〜6.87) になりました。食事性ヨウ素の明確な役割はわかっていませんが、甲状腺疾患および/または甲状腺疾患に寄与する要因が前立腺発がんの危険因子となり得ます出典[9]


7.脱毛

甲状腺ホルモンは、毛包の成長を制御するのに役立ち、甲状腺ホルモンのレベルが低下すると、毛包の再生が停止することがあります。700人を対象としたある研究では、甲状腺ホルモンレベルが低い人の30%が脱毛を経験したことがわかりました出典[10]

甲状腺の問題は髪の問題を引き起こすこともあるため、食事やサプリメントからヨウ素を摂取することが大切です。


8.肌の乾燥

甲状腺ホルモンが低いと肌の湿度が失われ、肌が乾燥する可能性があります。いくつかの研究において、甲状腺ホルモンのレベルが低い人の最大77% が、乾燥した薄片状の皮膚を経験する可能性があることがわかっています出典[11]

さらに、甲状腺ホルモンは乾皮症(皮膚が乾燥しガサガサなる疾患)の治療にも用いられています。甲状腺ホルモンには発汗を調節するのを助ける役割があります。 ヨウ素欠乏症など、甲状腺ホルモンのレベルが低い人は、甲状腺ホルモンのレベルが正常な人よりも発汗量が少ない傾向があります。出典[12]

そのため、皮膚の乾燥に悩む人や汗をかきづらい人はヨウ素を取ると効果的でしょう。


9.寒気

甲状腺ホルモンは、組織の発達、リモデリング、組織へのエネルギー供給に関わる多くの代謝経路を刺激します。その結果、熱産生が増加しエネルギーバランスを保つように働きます出典[13]。もし甲状腺ホルモンが低下した場合には、寒気を感じる可能性があります。

いくつかの研究において、甲状腺ホルモンのレベルが低い人の84% が、通常よりも低温に敏感に感じたり冷え性を経験したりする可能性があることがわかっています%%出典11%%%。寒気を感じやすい女性などは、食事やサプリメントからヨウ素を摂取するようにしましょう。
 

ヨウ素の摂取方法や注意点

1.どのくらい摂取すればいい?

 1日あたりのヨウ素の摂取推奨量は以下の通りです。

【ヨウ素の1日あたりの食事摂取基準】出典[1]

性別/年齢男性女性
0~5か月100 μg100 μg
6~11か月130 μg130 μg
1~2歳50 μg50 μg
3~5歳60 μg60 μg
6~7歳75 μg75 μg
8~9歳90 μg90 μg
10~11歳110 μg110 μg
12~17歳140 μg140 μg
18歳~130 μg130 μg

妊婦は+110 μg、授乳婦は+140 μgが摂取推奨量となりますので注意しましょう出典[1]

 

2.健康上限摂取量は?

 1日あたりのヨウ素の耐容上限量は以下の通りです。過剰摂取により、甲状腺腫や甲状腺機能障害になることがあるので推奨量をきちんと守るようにしましょう。

【ヨウ素の1日あたりの食事摂取基準(耐容上限量)】出典[1]

性別/年齢男性女性
0~5か月250 μg250 μg
6~11か月250 μg250 μg
1~2歳250 μg250 μg
3~5歳350 μg350 μg
6~7歳500 μg500 μg
8~9歳500 μg500 μg
10~11歳500 μg500 μg
12~14歳1200 μg1200 μg
15~17歳2000 μg2000 μg
18歳~3000 μg3000 μg

妊婦は2000 μgが耐容上限量となりますので注意しましょう出典[1]

伝統的な日本食は、魚料理や海藻の入った味噌汁など海の産物を含むことが多いため、日本人はヨウ素不足になりにくいです。通常の食事で必要量を摂取しているにもかかわらずサプリメントで過剰に補うと過剰摂取による健康障害を引き起こしかねません。上記で述べた推奨量や耐容上限量を参考に、ヨウ素の取りすぎに注意しましょう。

 

3.ヨウ素が不足しやすい人は?

妊娠中は特異的なヨウ素代謝が行われます。非妊娠時よりも約2倍のヨウ素摂取が必要とされているため、ヨウ素不足にならないように気を付けましょう。また、ベジタリアンビーガンの人は動物性たんぱく質が不足しやすく、海藻や魚介類を避ける傾向にあります。ヨウ素の重要な摂取源である海藻や魚介類を取らない代わりに、サプリメントで補うようにしましょう。日本は海に面している国であるためヨウ素不足は極めてまれです。
 

まとめ

 ヨウ素は人間の体に必要な元素の1つであり、その大部分は甲状腺に含まれています。そのためヨウ素が不足すると、甲状腺腫や甲状腺機能障害を引き起こします。それに伴い、疲労感の増加や脱毛、皮膚の乾燥や寒気などの症状も現れるため、必要な量を食事やサプリメントから摂取するようにしましょう。

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