

執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
亜鉛にはどのような効果がある?

亜鉛不足の解消のために、亜鉛サプリを飲んでいる方も多いでしょう。不足による味覚障害が有名な症状として知られていますが、まずは亜鉛の概要と、不足の解消により期待できる効果について解説しましょう。
必須ミネラルのひとつである亜鉛は細胞の代謝に関係しており、免疫や創傷治癒、酵素の活性などをサポートしています。亜鉛不足では味覚障害をはじめ、嗅覚の問題が生じたり、免疫機能の低下を引き起こしたりすることもあるでしょう。
男性においては、性機能面および運動面の効果にも注目したいところ。まず亜鉛は男性ホルモンであるテストステロンの分泌をサポートしたり出典[1]、精子の製造に関わったりすることが知られています。
テストステロンには性機能全般のほか、筋肥大の効率化ややる気の向上など、肉体面や精神面への作用も確認されています。テストステロンの減少が顕著に見られる40代以降では、更年期障害の症状として、性欲減退、勃起不全、筋力の低下、無気力感などが見られることも。
亜鉛不足によりテストステロンの分泌能力を回復できれば、これらの症状も改善しやすくなるでしょう。
また亜鉛は汗にも含まれるため、スポーツを頻繁におこなう方では不足が起きやすい特徴も。運動後には筋合成が活発になりますが、亜鉛はその筋合成や、運動により消耗した筋肉を修復したりする働きに関与している可能性があるとされているのです出典[2]。
さらに、亜鉛は抗酸化力を持つため、抗酸化物質として体内の酸化ストレスを減らすように働く点も重要です。運動後の炎症にともなう酸化ストレスを軽減したり出典[2]、心筋梗塞のような冠動脈疾患を予防したりといった面でも役立つ可能性が指摘されていますね出典[3]。
性機能面をはじめ、男性のコンディション全般を良好に保つための栄養素として、亜鉛が大事であることがわかるでしょう。
亜鉛サプリの効果が出るまでの目安は?

亜鉛は赤身の肉や魚、牡蠣、ナッツなどから多めに摂取できますが、サプリメントを活用すればより手軽な補給が可能です。食事から十分に亜鉛を摂れない場合の選択肢として、亜鉛サプリはおすすめです。
しかし亜鉛サプリの注意点として「すぐに効果が出るものではない」点はまず認識しておくべきでしょう。飲んでたちまちに勃起したり、男性の更年期障害の症状が消えたりといった劇的な変化は、亜鉛サプリではまず起こりません。
亜鉛補給によるテストステロンの増加例をはじめ、身体への効果が見られたケースをいくつか紹介しましょう。
まずは亜鉛不足が見られた高齢男性への亜鉛補給。テストステロンの体内量が補給前の倍近くにまで増加していましたが、この回復には6か月の期間を要しています出典[4]。
次に不妊症の糖尿病男性が亜鉛を十分に摂取したケースでは、精子の形態異常やDNA異常が軽減され、運動性も改善されています。この研究における所要期間は64日出典[5]。精子の形成周期が約3か月と言われているため、精子の量や質の改善には2~3か月かかると考えた方がよさそうですね。
また、テストステロンの減少を伴う男性の性腺機能低下症では、テストステロンの増加や精子数の改善のために亜鉛を補給することがありますが、この場合にも1~4か月間の継続摂取が一般的とされています出典[6]。
亜鉛補給により体内の亜鉛不足が解消され、体調が改善するまでには数か月かかると見るべきでしょう。亜鉛の効果を期待する場合には、少なくとも2~3か月の継続が必要と言えそうですね。
亜鉛サプリの摂取において気を付けたい4つのこと
ここからは亜鉛サプリを飲む際のコツや、亜鉛サプリの効果が得られないケース、また亜鉛サプリを飲みすぎた場合のリスクなどについて解説します。
亜鉛サプリを効果的に活用したい方は、ぜひ参考にしてください。
1日に複数回に分けて飲む
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亜鉛サプリのなかには、1日2~3粒を目安量としているものがあります。この場合には一気に飲んでしまわず、朝晩の2回や朝昼晩の3回など、複数回に分けて飲んでみましょう。コンスタントな亜鉛補給により、亜鉛の吸収効率が高まるかもしれません。
ヒトの血清亜鉛濃度は基本的に、食後すぐに上昇し、その後4時間かけて徐々に低下していきます出典[7]。食事摂取の影響により、亜鉛濃度は1日のなかで20%も変動することがあるのだとか。
亜鉛の効果を見るためには、血清亜鉛濃度が低いタイミングをなるべく作らないようにした方がよいと考えられます。食事により上昇した亜鉛濃度が4時間かけて低下するのであれば、4時間後にまた亜鉛を補給できれば、亜鉛濃度が低いタイミングを最小限に抑えられるでしょう。
血中の亜鉛濃度を上げるチャンスが増えるという点で、1日に複数回摂取できる2粒や3粒の亜鉛サプリは効果的です。ただし空腹時に亜鉛サプリを摂ると、吐き気や腹痛のような消化器症状が出る場合があるため、食物が胃に入った状態での摂取を心掛けましょう。1日2回であれば、朝食後と夕食後、のようなタイミングがよいかもしれませんね。
ほかの飲食により吸収率が下がる可能性がある

亜鉛サプリをせっかく飲んでいても、吸収率の低い状態では亜鉛を体内に取り込むことができません。亜鉛サプリを飲む際に注意したいのが、ほかの食べ物や飲み物との相性。亜鉛の吸収を妨げる成分として、とくに注意したいのがフィチン酸です出典[8]出典[9]。
フィチン酸は玄米やオートミールのような未精製の全粒穀物のほか、大豆のような豆類にも豊富に含まれています。キレート作用が強く、亜鉛をはじめ、多くの金属イオンと結合して吸収を阻害するように働きます。
ナッツ類や豆類、野菜類、フルーツ、シリアルなどの植物性食品における亜鉛とフィチン酸の比が、亜鉛の吸収に及ぼす影響を調べた論文では、亜鉛に対するフィチン酸の比率が上がるほど、亜鉛の吸収率が低下したと報告されています。
亜鉛1に対してフィチン酸が5~15の状態では吸収率が11~16%と測定されていますが、亜鉛1に対してフィチン酸が15より多い状態では4~11%まで吸収率が下がったとのこと出典[9]。
玄米や大豆などは健康食品として名高く、ダイエットや生活習慣病予防などへの意識が高い方であれば取り入れることも多いでしょう。もちろんよい食品ではありますが、亜鉛サプリとの相性は悪いため、フィチン酸の多い食事の際に亜鉛サプリを摂ることは避けた方がよいかもしれませんね。
また、飲み物においてはタンニンが豊富な緑茶やコーヒーを避けることも重要です。どちらもカロリーがほとんどなく、健康志向の方でもよく飲む飲料のため、あまり警戒していない方も多いかもしれませんね。しかしこれらの飲料が亜鉛の吸収を妨げる可能性もあるため、水で飲むことを習慣づけた方がよいでしょう。
亜鉛が足りている場合には効果が得られないことも

亜鉛サプリを飲めば性機能をはじめさまざまなコンディションが整うと考える方もいるかもしれません。しかしそもそも、体が亜鉛を必要としているかどうかで、効果の出方は異なります。亜鉛の不足が見られない状態のところにさらなる亜鉛補給をおこなっても、期待した効果が得られない可能性が高いことを覚えておくべきでしょう。
亜鉛が十分にある状態での亜鉛補給に効果がないことは、テストステロンの数値から読み取れます。1日あたり11.9~23.2mgの亜鉛を摂取できている20代の男性に亜鉛サプリを補給しても、テストステロンの増大効果は確認できなかったのです出典[10]。
ちなみに日本人の食事摂取基準(2025年版)では、20~29歳や65歳以上の男性で1日あたり9.0mg、30~64歳の男性で9.5mgが、亜鉛の推奨量として示されています出典[11]。1日あたり11.9~23.2mgは亜鉛の摂取として十分すぎる量と言えるでしょう。
日本での亜鉛摂取状況ですが、令和5年度の国民健康・栄養調査において、20~69歳で平均9.1~9.4mgと、推奨量をおおむね満たす量に収まっています出典[12]。日本で一般的な食事をする分には過度な不足は起こりにくいことがわかりますね。
亜鉛の不足リスクが高い方の例として、朝食の欠食が多い方、インスタント食品やジャンクフード中心の生活でミネラルを摂る機会が少ない方、スポーツや労作業で発汗量が多く亜鉛を喪失しやすい方、などがあります。
反対にこれらの問題がなく、亜鉛不足がない場合には、亜鉛補給でも体の悩みが解決できないかもしれません。生活習慣を見直したりほかのサプリメントを試したりして、亜鉛以外のアプローチで体質改善をはかる必要があるでしょう。
摂りすぎによる健康被害に注意

亜鉛は必要以上の摂取でよりよい効果をもたらすものではありません。とはいえ体内での亜鉛の充足というものは分かりにくいものです。念のため多めに摂っておこうと考え、量を増やそうと考える方もいるかもしれませんね。
しかしあらゆる栄養素は薬と毒の両方の性質を併せ持つ存在。亜鉛もまた、極端に多く摂りすぎれば身体への悪影響が生じてしまいます。
亜鉛は、食事やサプリメントのような形で経口摂取した場合には、比較的毒性の薄い栄養素とも言われています。しかし極端な摂取では、吐き気、嘔吐、腹痛のような消化器症状が出る可能性もあるでしょう。
1日の推奨量を大幅に超えるような量を摂り続けると、血液成分が乱れやすくなり、貧血や免疫機能の障害を生じたり、鉄や銅の欠乏症のリスクを高めたりするとも言われています出典[13]。
また、通常の食品ではなく亜鉛サプリから亜鉛を摂る場合には、推奨量を大幅に超える量でなくとも、銅や鉄の利用を妨げたり、血中脂質への影響が生じたりする可能性もあることが報告されています出典[13]。
亜鉛サプリを飲む場合には目安量を必ず守るとともに、体調に問題がないことを確認しながら継続した方がよいでしょう。
亜鉛不足の解消で男性機能をサポートしよう
必須ミネラルの亜鉛は、性機能面や運動面など体のあらゆるコンディションを保つために重要な栄養素。低下した性機能を取り戻したい場合や、筋トレの効率を高めたい場合などに、手軽に亜鉛不足を解消できる亜鉛サプリは重宝するでしょう。
一方で、効果の実感には数か月単位での時間を要することや、必要以上の摂取には意味がないことにも注意が必要。亜鉛サプリの摂取で効果が見られなかった場合には、生活習慣の改善や別のサプリメントからのアプローチに切り替える必要があるでしょう。
性機能に関しては、テストステロンの分泌能力をさらに高める効果のある、希少成分を使用したエルゴジェニックサプリがおすすめ。
とくにテスノア、LJ100、バイオドーパなどは、効果が確認された希少な有効成分の含有が保証された「規格化成分」のため、より効果を期待しやすいでしょう。
亜鉛サプリを適切に使用するとともに、目的に応じてほかのサプリメントを試したり、生活習慣の見直しをおこなったりする工夫もぜひ取り入れていきましょう。
出典
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