リンとは?7つの役割や摂取方法について解説
2022年10月3日更新

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

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リンとは

リンとはいったいどのような成分なのでしょうか。まずは、リンが体内で担っている役割や不足した場合のリスク、リンが豊富に含まれる食べ物についてご紹介します。

1.どんな栄養素?

リンはミネラル(非金属元素)の一種です。多くの食品に栄養素として含まれているほか、食品添加物としても使用されています出典[10]

食事やサプリメントから摂取したリンは、リン酸として十二指腸や回腸、大腸で吸収されます。このとき、ビタミンDによってリンの吸収は促進され、カルシウムやマグネシウムによって吸収が抑えられるなど他の栄養素の影響を強く受けることも特徴の一つです出典[10]

また、体内に吸収されるリンの濃度は、副甲状腺ホルモンなどの働きによって一定に保たれています出典[10]

 

2.体の中でどんな働きをする?

人体では、リンは成人の体重の約1%を占めており、そのほとんどは骨や歯でカルシウムと結合してリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)として存在しています。それ以外には、リン脂質として細胞膜を構成しています出典[7]

また、リンは人体のエネルギーを合成する働きもあります。糖質や脂質、たんぱく質は酸化してATP(アデノシン三リン酸)となり、このときにリンが使われるのです。さらに、リンは遺伝に関わるDNAを作るときにも必要です出典[7]

このように、リンは人体の構成や生命の維持に欠かせない栄養素といえるのです。

 

3.不足するとどんなリスクがある?

リンが不足すると、骨や関節、歯がもろくなります。この状態が悪化すると、骨軟化症くる病などの原因となってしまいます。

また、リン不足はエネルギー代謝の低下にも繋がるため、脱力感筋力の低下溶血性貧血を引き起こす場合もあるのです出典[10]

ちなみに、リンは幅広い食品に多く含まれているため、通常の食生活をしている限りはリンの不足はほとんど起こらないとされています。


4.どんな食材に含まれている?

リンは魚介類、肉類、大豆製品、玄米に多く含まれています。

【リンを豊富に含む食品(魚介類)とその含有量(100gあたり)】出典[1]

食品名状態など含有量
キンメダイ490㎎
ししゃも430㎎
メジマグロ290㎎
かつお280㎎
クロマグロ270㎎

 

【リンを豊富に含む食品(大豆製品、玄米)とその含有量(100gあたり)出典[1]

食品名状態など含有量
凍り豆腐乾燥820㎎
大豆炒り、乾燥710㎎
玄米290㎎


【リンを豊富に含む食品(肉類)とその含有量(100gあたり)】出典[1]

食品名状態など含有量
豚レバー340㎎
牛レバー330㎎
鶏レバー300㎎
鶏ささみ240㎎
豚ひれ肉230㎎

また、リンは加工食品やインスタント食品、清涼飲料水に添加物として使用されています。ハムやソーセージ、カップラーメン、炭酸ジュースをよく摂っている方は、リンの摂り過ぎに十分気を付けましょう。
 

リンに確認されている作用や役割

リンは、骨や歯を構成するだけでなく、筋肉や心血管、脳神経の健康維持についても重要な役割を担っています。ただし、リンを摂り過ぎるとカルシウムの吸収が妨げられてしまい、逆効果となるため注意が必要です。

1.骨の健康を保つ

リンは、骨組織の代謝にとって重要な役割を持っています出典[2]出典[3]

ラットを対象に、リンやカルシウムの吸収を妨げる作用のあるシュウ酸や酒石酸を飲料水に加えて1~3週間調査を行ったところ、カルシウムやリンの吸収を妨げられたラットには骨粗鬆症が悪化する可能性が示されました出典[11]

将来の骨粗鬆症を予防したい方は、カルシウムとリンをバランス良く摂取することが重要です。

 

2.丈夫な歯を形成する

人体のリンの大部分は歯のエナメル質を丈夫にするためのリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)として存在しています。このため、リンをしっかり摂取することで丈夫な歯を形成することに繋がります。

ただし、リン酸カルシウムは酸に弱い性質があるため、虫歯菌(ミュータンス菌)によるう蝕などで口の中が酸性になると、虫歯になりやすくなってしまいます。

歯の健康を守る特定保健用食品として、リン酸化オリゴ糖カルシウムを使用したガムが存在します。リン酸化オリゴ糖カルシウムは、リンやカルシウムが歯の再石灰化を促進し、口の中を中性に保つ働きがあるとされています。

人口唾液を使った実験によると、初期虫歯がみられる歯のエナメル質にリン酸化オリゴ糖カルシウムと緑茶由来のフッ化物を組み合わせて投与すると、3日後にはエナメル質の再石灰化がみられることが分かりました出典[12]

虫歯を予防したい方は、リンが使われているガムなどを取り入れることが有効です。

 

3.筋肉を動かす

運動などで筋肉を動かす際にも、リンは重要な役割を果たしています。筋肉の収縮のエネルギー源となるリンは、ATP(アデノシン三リン酸)として存在します

ATPを合成する方法として、筋肉に貯蔵されているリン(クレアチンリン酸)を分解する方法があります。こうした方法はATPスピードが速いため、短距離走などの瞬発的な運動に使われます。

ただ、筋肉に貯蔵されているクレアチンリン酸は、それ程多くありません。そのため、食事で摂取したグルコースを分解し、ATPを合成する必要があります。ちなみに、運動していると「乳酸が溜まっている」状態を体験することがありますが、それはグリコーゲンやグルコースの分解が高まることで生じる反応です。

また、皮下脂肪や内臓脂肪から分解された脂肪酸からもATPは合成されています。脂肪酸から合成されたATPは、安静時や長時間運動のエネルギーとして使われます出典[13]

マウスを使った実験によると、食事からのリン摂取量が不足しているマウスは血液中のリン濃度と筋肉からのATP合成が約50%減少していることが分かりました出典[16]

最近は糖質制限ダイエットがブームとなっていますが、筋肉の健康のためには、バランスの良い食事から筋肉を動かすエネルギーに変えていく必要があるのです。

 

4.組織や細胞の形成を助ける

リンは、リン脂質として組織や細胞の形成にも大きく関わっています

リン脂質は、1つの極性基(ホスホコリンなど)と2つの脂肪酸からできています。この脂肪酸は様々な組織ごとに組み合わせが違っています。

マウスを使った実験によると、酵素の異常によってリン脂質を構成する脂肪酸の組み合わせが変化すると、様々な病気にかかりやすくなる可能性が示されました出典[14]

健康な体を維持していくためには、リン脂質の存在が不可欠なのです。

 

5.DNAやRNAの構成要素となる

リンは、遺伝に関わるDNAやRNAの構成にも欠かせない栄養素です。

DNAとRNAは核酸と呼ばれており、基本構成は糖、核酸塩基、リン脂質からなっています。糖についてはDNAにはデオキシリボース、RNAにはリボースが使われているといった違いがあります。また、核酸塩基についても違いがあり、DNAに存在するチミン(T)はRNAには存在せず、替わりにウラシル(U)となっています。ただ、いずれの場合においてもリン脂質が必要であることは変わりません出典[15]

こうした理由から、リンは私たちの細胞の遺伝情報の段階から重要な役割を担っているといえるのです。

 

6.心血管系の健康を維持する

体内においてリンのバランスを一定に保つことは、心血管系の健康を維持することにも繋がります。

リンが不足すると、筋肉内でのATPが減少し、心臓を動かす力が衰えて不整脈などの症状を引き起こす可能性があります。一方、リンの過剰は心筋の肥大や血管石灰化による動脈硬化の悪化の原因となるのです。

11名の健康な男性を対象に、400㎎と1200㎎のリンを含む食事を交互に摂取してもらい、それぞれについて食事前と食後2時間後に上腕動脈の血管機能について測定しました。その結果、1200mgのリンを含む食事を食べた2時間後は血液中のリン濃度が上昇し、血管拡張機能の悪化がみられました出典[17]

心血管の病気を予防したい方は、食事によるリンの不足や摂り過ぎには十分気を付けましょう。

 

7.脳や神経の健康を保つ

リンから作られるリン脂質は、脳や神経にも重要な物質とされており、脳や神経の健康維持に役立っています。また、リンの摂取量を補うことで、アルツハイマー型認知症の発症リスクを軽減するといわれています。

認知症のリスク因子として、β-アミロイドと呼ばれる物質が挙げられます。182名の認知障害の患者について分析した結果、β-アミロイドが脳に沈着している人は、血液中のリン濃度が低いことが分かりました出典[4]

これらの理由から、高齢者の認知症予防にとって、リンの摂取が有効とされているのです。
 

リンの摂取方法や注意点

通常、一般的な食生活を送る方ではリン不足の心配はないといわれています。むしろ、加工の摂り過ぎなどによってリンの過剰摂取が起こることが問題視されているようです。また、カルシウムなどの他のミネラル吸収障害や、腎機能悪化の恐れがあるとされています出典[6]出典[7]出典[10]

さらに、腎臓結石などの腎機能障害が既にある方は、リンの過剰摂取によって症状の悪化リスクが高まるともいわれているため注意しましょう出典[7]

1.どのくらい摂取すればいい?

1日あたりのリンの摂取目安量は以下の通りです。

【リンの1日あたりの食事摂取基準(目安量)】出典[10]

性別/年齢男性女性
0~5ヶ月120mg120mg
6~11ヶ月260mg260mg
1~2歳500mg500mg
3~5歳800mg600mg
6~7歳900mg900mg
8~9歳1000mg900mg
10~11歳1100mg1000mg
12~14歳1200mg1100mg
15~17歳1200mg900mg
18~29歳1000mg800mg
30~49歳1000mg800mg
50~69歳1000mg800mg
70歳以上1000mg800mg

リンを摂取した際の吸収率は60〜70%といわれています出典[10]

また、日本人は平均的にカルシウムの不足、リンの摂り過ぎが起こりやすいとされているようです。

 

2.健康上限摂取量は?

1日あたりのリンの耐容上限摂取量は以下の通りです。

【リンの1日あたりの食事摂取基準(耐容上限量)】出典[10]

性別/年齢男性女性
0~5ヶ月--
6~11ヶ月--
1~2歳--
3~5歳--
6~7歳--
8~9歳--
10~11歳--
12~14歳--
15~17歳--
18~29歳3000mg3000mg
30~49歳3000mg3000mg
50~69歳3000mg3000mg
70歳以上3000mg3000mg

リンの過剰摂取が長い期間続くと、慢性腎不全を引き起こす場合があります。これは、腎臓でリンの吸収を抑える副甲状腺ホルモンの分泌が高まることが原因です出典[6]出典[7]

また、お菓子類を頻繁に食べている方は、リンを摂り過ぎている可能性があるとされています。

109名の健康な若者に対して空腹時採血や食事履歴アンケート調査を行ったところ、お菓子類の摂取量が多いほど、血液中のリンの濃度が高いことが明らかになりました出典[8]

このため、リンが健康増進にとって重要であっても、加工食品やお菓子類、清涼飲料水で摂取し過ぎないように気をつける必要があるのです。

 

3.リンはカルシウムとのバランスが重要!

リンとカルシウムの体内バランスが崩れると、食事からの摂取量が十分だとしても吸収が悪くなってしまいます。この状態が続くと、骨量や骨密度の低下に繋がるため気を付けましょう出典[5]出典[7]出典[9]

リンの摂り過ぎはカルシウムの吸収を妨げてしまい、カルシウムの摂り過ぎはリンの吸収を妨げてしまいます。そのため、リンの摂取量はカルシウムと同程度にすることが大切なのです出典[10]
 

まとめ

リンは、骨や歯の健康やエネルギー合成、DNAやRNAを作る役割があるミネラルの一種です。また、リンは筋肉の代謝や心血管の健康維持とも深く関わっています。一般的な食生活ではリンが不足することはほとんどありません。しかし、加工食品やインスタント食品、清涼飲料水の摂り過ぎによってリンが過剰となる恐れがあるため、注意が必要です。リンは私たちの体に不可欠な栄養素ですが、食事で摂取するバランスを意識することが大切なのです。

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