亜鉛サプリは効果ない?効きにくい人の特徴5選と正しい摂り方
2024年5月31日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

亜鉛サプリにはどのような効果がある?

亜鉛サプリは、亜鉛不足を手軽に、かつ効率よく解消するために適した手段です

亜鉛は免疫機能や味覚の維持に関係する栄養素で、創傷治癒を促したり、皮膚を丈夫に保つためにも作用しています。しかし多くの男性は免疫や味覚の維持ではなく、性機能の改善を目的としているのではないでしょうか。

亜鉛はテストステロンや精巣機能と密接な関係があります。テストステロンはやる気や活力、性機能、筋肉の合成効率などを高めるように働く男性ホルモン。性機能を充実させたい方や、心身ともにたくましくなりたい方は、とくに亜鉛の不足に注意すべきでしょう。

亜鉛とテストステロンの関係については、次のようなことが判明しています。

  • 亜鉛とテストステロンの体内量には相関関係がある
  • 亜鉛不足の男性への亜鉛補給でテストステロンが増える
  • 若い男性への亜鉛制限でテストステロンが減る
  • 亜鉛は「黄体形成ホルモン(LH)」の合成をサポートする

亜鉛とテストステロンの体内量は密接に関連しており、テストステロンは亜鉛の補給や制限の影響を大きく受けます出典[1]

また亜鉛により合成が促されるLHは、テストステロンの分泌を促すための重要なホルモンです出典[2]亜鉛サプリで不足を解消できれば、LHの合成も高まりテストステロンを増やしやすくなるでしょう。

亜鉛欠乏はとくに精巣機能と強い関係があるようです。亜鉛制限により精子数が減少し、補給により精子数が回復したケースや出典[3]、精子数の少ない男性の血中亜鉛濃度が低下していたとの論文が存在します出典[4]

男性不妊の解消にも、亜鉛補給は非常に重要と言えそうですね。
 

亜鉛サプリが効かない人の特徴5選

性機能の改善を目的に亜鉛サプリを飲んでいても、効果が十分に感じられず悩むこともあるかもしれません。

効果が出ない場合、テストステロンの増加が不十分であると考えられます。亜鉛サプリを飲んでもテストステロンが増えない理由として、考えられるものを5つ解説しましょう。

亜鉛サプリを継続できていない

「調子が出ないときに飲むもの」との認識で、亜鉛サプリをたまにしか摂らないような使い方をしていませんか?

実は亜鉛サプリは飲んですぐにテストステロンを高めるような、即効性を発揮するものではないのです。

亜鉛サプリの補給によるテストステロン濃度、筋肉量、性機能の改善は複数の論文で紹介されています。それぞれの効果に要した期間を確認しましょう。

効果

補給期間

亜鉛制限により低下した精子数が亜鉛補給により正常に戻る出典[3]

6~12か月

亜鉛不足の高齢男性への亜鉛補給でテストステロンが改善出典[1]

6か月

サッカー選手の亜鉛補給で遊離テストステロンと筋肉量が増加出典[5]

8週間

亜鉛不足の透析患者への亜鉛補給でLHとテストステロンが増加出典[6]

6週間


このように、亜鉛サプリがテストステロンや性機能などへの効果を発揮するまでには、数週間から数か月かかることがわかります。

気が向いたときや調子が出ないときにのみ亜鉛サプリを飲むようなやり方では、テストステロンや性機能などを十分に改善できないでしょう。

すぐに効果が出なくても焦る必要はありません。目安量の摂取を毎日続けて、効果が現れるかどうか長い目でのチェックを心掛けましょう。

 

体内の亜鉛量が十分に足りている

亜鉛を多く摂れば摂るほどテストステロンが増えやすくなる。そんな風に考えていませんか?

亜鉛の補給によりテストステロンが増加するとのデータは複数存在します。しかしテストステロンの増大効果は、亜鉛が不足している場合に見られるもの

十分に亜鉛が足りている場合やテストステロンの体内量が正常である場合には、亜鉛サプリの効果はあまり期待できないのです。

亜鉛の補給が効果を発揮した論文における、参加者の状態を確認しましょう。

  • 人為的な亜鉛制限により亜鉛不足をきたした男性出典[3]
  • 亜鉛不足の高齢男性出典[1]
  • 発汗で亜鉛が失われやすいサッカー選手出典[5]
  • ミネラルの喪失が大きい透析患者出典[6]

テストステロンや性機能、筋肉量などに対する効果は、亜鉛不足の方や、亜鉛の消費量または喪失量が大きい方に現れやすいことがわかります。

亜鉛補給の効果が見られなかったケースも紹介しましょう。2009年にドイツエリートスポーツ研究センターから発表された論文では、食事から十分な亜鉛を既に摂取できている男性が高濃度に亜鉛を含む栄養補助食品を摂取しても、テストステロンの量や代謝に変化は見られなかったと述べられています出典[7]

また、不妊症の男性37名を対象に亜鉛補給療法を行った臨床試験では、亜鉛補給後の精子数やテストステロンの増加は、試験前の血清テストステロン値が4.8ng/ml未満の方にのみ見られ、4.8ng/ml以上の男性には性機能へのよい影響が確認できなかったのです出典[8]

亜鉛が十分に足りている場合、テストステロンを増やすための別のアプローチを考える必要があるでしょう。

 

亜鉛の吸収率を下げる食品と同時に飲んでいる

亜鉛サプリを食事とともに飲んでいませんか? 亜鉛はほかの栄養素により吸収率が変動しやすい栄養素です。吸収率を高める栄養素を同時に摂ればプラスの効果が得られますが、吸収率を下げる食品を習慣的に食べている場合には注意が必要です。

亜鉛の吸収率を下げる成分として、次のようなものが判明しています出典[9]出典[10]

【亜鉛の吸収率を下げる成分と食品の例】

成分

含有食品の例

タンニン

コーヒー、緑茶

フィチン酸

玄米、豆類、ナッツ

多すぎるカルシウム

乳製品

多すぎる食物繊維

オートミール、アーモンド、ゴボウ

たとえば白米や白い小麦粉のような精製された穀物中心の食事での亜鉛の利用効率は26~34%と推定されていますが、未精製の穀物中心の食事では18~26%まで低下するとのデータが存在します出典[10]

また2006年にスウェーデンのチャルマース工科大学から発表された論文では、亜鉛に対するフィチン酸の含有量が増えるほどに吸収率は低下することが確認されています出典[11]

健康のためにと、玄米やオートミールのような未精製の穀物を主食にしている方、緑茶やコーヒーを好んで飲む方は要注意です。

 

テストステロンを減らす悪習慣がある

テストステロンは亜鉛のほか、さまざまな栄養素や生活習慣に影響を受けます。テストステロンを減らすリスクの高いものとして、次のような習慣に注意すべきでしょう。

【テストステロンの減少に関連する習慣の詳細】

習慣

詳細

肥満

BMI30以上の男性において、体脂肪量とテストステロン量は逆相関関係にある出典[12]

栄養の偏り

脂質の摂りすぎや極端な制限出典[13]

たんぱく質の摂りすぎ出典[14]

マグネシウム、セレン、抗酸化ビタミンなどの不足

過剰な飲酒

飲酒量が増えるとテストステロンが減少する出典[15]

睡眠不足

睡眠不足の状態が24時間以上続くことでテストステロンが減少する出典[16]

強いストレス

ストレスホルモンのコルチゾール増加によりテストステロンが減少する出典[17]

過剰な運動

運動でコルチゾールが増えるほど、テストステロンは減少する出典[18]

飲み過ぎや睡眠不足といった習慣がある場合には、日々の過ごし方や生活リズムを見直すべきでしょう。肥満もテストステロンを低下させる危険因子となるため、食べ過ぎの習慣も要注意です。

ストレスホルモンのコルチゾールが増えるほど、テストステロンは減りやすくなります。慢性的な精神的ストレスや睡眠不足、過剰な運動などはコルチゾールを増やしやすいことを覚えておきましょう。

また、亜鉛のほかにもテストステロンに関わる栄養素は複数あります。たとえばセレンには亜鉛と同様にLHの合成をサポートする働きが確認されています出典[19]。マグネシウムや抗酸化ビタミンによる抗酸化作用は、テストステロンの減少を防ぐために非常に重要です。

これらの栄養素の不足がある状態では、亜鉛を補給してもテストステロンの増強効果が十分に得られないかもしれません。

テストステロンを高めるためには、亜鉛サプリの活用に加えてさまざまな栄養素や生活習慣に気を配る必要があるでしょう。

合わせて読みたい:【テストステロン2.0】男性ホルモンを増やす最新戦略

 

亜鉛サプリへの期待が大きすぎる

テストステロンや性機能には、亜鉛以外にもさまざまな栄養素や生活習慣が関係しています。亜鉛サプリはテストステロンの劇的な改善を約束するものではないことを覚えておきましょう。

亜鉛によるテストステロンの増大や性機能の改善には即効性がないことにも注意すべきです。効果が見られない場合にも焦らず、最低でも1~2か月は摂取を継続してみましょう。

また、亜鉛補給による効果は、亜鉛不足の方において現れやすいものです。2020年度の「日本人の食事摂取基準」と、令和元年度の「国民健康・栄養調査」における、日本人男性における亜鉛の摂取量を確認してみましょう。

【日本人の亜鉛摂取量の推奨量と平均値出典[20]出典[21]

18~74歳男性の亜鉛の推奨量11mg/日
20~69歳男性における亜鉛の摂取平均9.1~9.8mg/日

このように、日本人の食事では亜鉛を十分摂取できていないケースが多いものの、劇的な不足も起きづらいことがわかります。亜鉛の不足が軽微である場合や、そもそも食事からの摂取で亜鉛が十分に足りている場合には、亜鉛サプリの効果が出づらいことも心得ておくべきでしょう。

亜鉛さえ充足していればテストステロンが増える、といった極端な考えは非効率的です。ほかの栄養素や生活習慣など、さまざまなアプローチを試みてテストステロンの改善に努めましょう。
 

亜鉛サプリの効果的な摂取法

亜鉛サプリは効果を発揮しない場合があるとはいえ、亜鉛がテストステロンの増強や性機能の改善に重要な栄養素であることは確かです。

適切な飲み方を継続すれば、期待する効果もより得やすくなるでしょう。

ここからは亜鉛サプリを飲む際の、効果をより出しやすくする方法について解説します。

商品の目安量を守る

亜鉛サプリは必要以上の摂取により効果が増すものではありません。商品により1日あたりの摂取目安量は異なるため、パッケージを確認した上で飲むようにしましょう。

亜鉛は大量摂取すると吸収率が大きく下がる栄養素です。たとえば6人の若い男性による亜鉛の代謝研究では、亜鉛摂取量が5.5 mg/日の場合の吸収率が53%、16.5 mg/日の場合は25%と、大きな差が確認されています出典[22]

このように、必要以上の亜鉛は十分に吸収されず多くが排出されてしまうため、まとめての摂取にはあまり意味がないことも覚えておきましょう。

また、体内の亜鉛濃度が正常である場合には、テストステロンを高める効果や性機能の向上効果も見られにくいことが分かっています。

一度に大量の亜鉛サプリを飲むよりも、目安量を守り長期間継続することが重要です。

 

吸収率を上げる食品と同時に飲む

亜鉛は同時に摂る栄養素の影響を受けるため、食事内容により吸収率を高められる可能性があります。

吸収率を高める栄養素として、動物性たんぱく質やクエン酸が知られています出典[9]。動物性たんぱく質は肉や魚、貝類などから、クエン酸は柑橘類やお酢などから豊富に摂取できるでしょう。

動物性たんぱく質をベースとした食事では、亜鉛含有量が増えるほど吸収量も増すという相関関係が見られています出典[23]

またクエン酸には牛乳や乳製品からの亜鉛の利用能力を高めることが判明しています出典[24]。動物性食品や柑橘類などを取り入れると、亜鉛サプリの効果を高めやすくなるかもしれません。

なお、ビタミンCが亜鉛の吸収率を高める栄養素として推奨される場合もありますが、ビタミンC投与では亜鉛の吸収率が高まらないとする論文も存在します出典[25]

ビタミンCのサプリメントを併用しても、亜鉛の吸収率には影響を及ぼさない可能性がある点に注意すべきでしょう。

 

吸収率を下げる食品の摂取を避ける

亜鉛サプリの効果を正しく発揮するため、吸収率を下げる食品には注意しましょう。

玄米やオートミールのような未精製の穀物、緑茶やコーヒーを摂るときは、亜鉛サプリを摂るタイミングとずらすことをおすすめします

また、カルシウムや食物繊維のサプリを摂る場合も、亜鉛サプリとは時間帯を分ける必要があるでしょう。

ちなみに大豆や玄米はフィチン酸が多い食品ですが、発酵させたものからはフィチン酸塩が減少しています出典[24]。そのため発芽玄米や納豆は亜鉛の吸収を下げるリスクが比較的少ないと考えられるでしょう。

ただし発芽玄米や納豆には食物繊維も豊富です。緑茶やコーヒー、カルシウムサプリなどと同様に、摂取タイミングをずらす意識が必要になるでしょう。

 

亜鉛サプリは不足を補うために使おう!

亜鉛サプリにより、テストステロンや性機能を高める効果が期待できます。

しかし亜鉛サプリはあくまで、亜鉛の不足を補うためのもの。すでに亜鉛の体内量が足りている場合には効果を感じられないことを覚えておきましょう。

また亜鉛サプリは即効性を発揮するものではありません。テストステロンや性機能を高めるには毎日の継続が重要です。すぐに効果が現れない場合でも、まずは1~2ヵ月続けることをおすすめします。

もちろん、テストステロンや性機能の改善には、亜鉛補給以外の要素も重要です。生活習慣を整えたり、栄養素の過不足を防いだりして、テストステロンや性機能を効率よく高めましょう。
 

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