執筆者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識できるよう日々邁進中。
息切れを引き起こす3つの要因
息切れの原因は多岐にわたります。その中でも特におおきく関わっていると言われている3つの要因についてご紹介します出典[1]。
心肺機能の衰えている
息切れを引き起こす一番の要因は心肺機能の衰えです。心当たりのある方も多いことでしょう。運動不足により心肺機能が衰えると、日常生活のちょっとした動作でも息が上がってしまいます。そして心肺機能は加齢によっても衰えます。年を重ねるごとに年々、息切れが激しくなっている方は心肺機能の衰えが原因かもしれません。
ストレスや不安を感じている
また仕事や家庭でのストレスや不安も息切れの要因の1つです。
呼吸は意識的に行うこともできますが、ほとんどは自律神経によって無意識的に行われています。ストレスや不安で自律神経が乱れると、息を必要以上に吸ったり、逆に全く吸えなくなることにつながります。
大事な面接の前に緊張やストレスで呼吸が早くなった経験がある人はすくなくないでしょう。激しい運動をしたわけではないのに息切れする人はストレスケアに取り組むと良いでしょう。
呼吸が正常になされていない
一定量の空気を吸い、一定量の空気を吐き出す。このように私たちが無意識下で行っている呼吸動作がなんらかの理由で正常に行われていない場合、息切れしやすくなります。
例えばCOPD(慢性肺閉塞疾患)の人は空気を十分に吸える一方で、吐き出すことが出来ません。つまり肺の中に吐き出せない空気が溜まっていき、息苦しさにつながります。
呼吸が適切に行われていない場合は、呼吸法の練習や原因を取り除くことが有効とされています。
息切れを改善する7つのライフスタイル
息切れは単に加齢だけの問題ではないことはご理解いただけましたでしょうか。ここからは息切れ改善のために日常で気を付けるべきことについてご紹介します。心当たりがあるライフスタイルがあれば是非改善してみてください。
スケジュールをつめこみすぎない
かつかつなスケジュールは息切れを引き起こす大きな要因です。スケジュールを詰め込むと移動を早く行う必要があり、呼吸が早くなり、息が上がります。また十分な休息をとる時間がないと、呼吸を正常なリズムに回復させることはできません。
通勤時などの移動中に息切れを起こす人はスケジュールを見直してみるとよいかもしれません。ゆとりをもって計画を立てることで、落ち着いて移動ができることでしょう。あらかじめ休憩時間をスケジュールに組み込むのも1つです。
体重を落とす
息切れと合わせて体重の増加に悩んでいる方は、ダイエットすることで息切れも解消できるかもしれません。胸やお腹に脂肪がつくと肺が圧迫され、十分に息を吸い込む事ができず息切れにつながります。
実際に2019年に18人の肥満男性を対象に12週間のダイエットを実施した研究では、平均10kgの体重減少により、肥満の人の息切れ症状が軽減されたことが報告されています。出典[2]
お腹周りの脂肪が目立ち始めた人は、普段の食事や運動習慣を意識しなおしてみましょう。
軽い運動に取り組む
運動は心肺機能の向上、ストレス解消の効果が期待でき、息切れの改善に最も有効な方法の1つです。また適度な運動は体重減少にもつながるため、運動は息切れで悩む多くの人におすすめです。
2020年に長崎大学が発表したシステマティックレビューでは、有酸素運動は重大な呼吸困難症状を持ち且つ運動制限のある患者の息切れ改善に有効であることが示されています。出典[3]
もちろん過度な運動は息切れを引き起こします。そのため、まずはウォーキングなどの軽い運動から始め、慣れたら徐々に強度を上げるとよいでしょう。
扇風機を顔に当てる
夏は大活躍の扇風機。実はその役割は身体を涼しくすることだけに留まりません。
2010年に50人の被験者を対象に行われた研究では、手持ち扇風機を5分間顔に当てるだけで息切れの感覚を減少させたことが報告されています。出典[4]
冷気を鼻や口に存在する受容体が感知することで呼吸中枢が調節され、呼吸リズムが正常になるのではないかと考えています。
日常的に息切れが起こる人は応急処置の1つとして手持ち扇風機を携帯しておくとよいでしょう。
喫煙を辞める
タバコが心肺機能に悪影響なのはみなさんご存じの通り。タバコを吸うと空気の通り道である気道が狭くなり、酸素の交換を行う肺胞が傷つき、十分に呼吸が行えなくなります。
タバコの恐ろしい点は、若くて健康な人であっても、咳や息切れ、喉の痛みなどの症状を引き起こす点です。出典[5]
タバコは息切れに限らず健康にとって百害あって一利なしです。若いから大丈夫と考えず、できる限り早く断ち切りましょう。
コーヒーを飲んでみる
集中力の向上を目的によく飲まれるコーヒー。息切れの緩和にも有効である可能性が最近の研究で報告されています。実際に2010年にロンドン大学で実施された研究では、カフェインは、喘息のある人の気道機能を最大4時間まで改善することが明らかにされています。出典[6]
カフェインは息切れの原因となる化学物質の受容体のはたらきを低下させ、空気の通り道である気道を拡張することで呼吸を改善するのではないかと考えられています。
コーヒーは飲みすぎると、自律神経のバランスが崩れ、むしろ息切れを助長する可能性があります。1日にマグカップ3杯程度を目安に飲むとよいでしょう。
葛根湯を常備する
葛根湯に含まれるショウガにも息切れ改善が期待できます。ショウガはウイルスが気道に付着することをブロックすることで、空気の通り道を正常に保つ可能性があります。出典[7]
かぜや頭痛のイメージが強い葛根湯ですが、息切れに悩む人は常備しておくとよいでしょう。
まとめ
息切れは年齢だけでなく、ライフスタイル全般が関わっています。今回ご紹介したライフスタイルに加え、健康的な生活習慣を意識することが息切れの改善につながることでしょう。できることから焦らずゆとりをもって取り組んでみてください。
出典
- 1.
Sara Booth, Miriam J. Johnson. Improving the quality of life of people with advanced respiratory disease and severe breathlessness. Breathe 2019 15: 198-215
- 2.
Bernhardt V, Bhammar DM, Marines-Price R, Babb TG. Weight loss reduces dyspnea on exertion and unpleasantness of dyspnea in obese men. Respir Physiol Neurobiol. 2019 Mar;261:55-61.
- 3.
Hanada M, Kasawara KT, Mathur S, Rozenberg D, Kozu R, Hassan SA, Reid WD. Aerobic and breathing exercises improve dyspnea, exercise capacity and quality of life in idiopathic pulmonary fibrosis patients: systematic review and meta-analysis. J Thorac Dis. 2020 Mar;12(3):1041-1055.
- 4.
Galbraith S, Fagan P, Perkins P, Lynch A, Booth S. Does the use of a handheld fan improve chronic dyspnea? A randomized, controlled, crossover trial. J Pain Symptom Manage. 2010 May;39(5):831-8.
- 5.
An LC, Berg CJ, Klatt CM, Perry CL, Thomas JL, Luo X, Ehlinger E, Ahluwalia JS. Symptoms of cough and shortness of breath among occasional young adult smokers. Nicotine Tob Res. 2009 Feb;11(2):126-33.
- 6.
Welsh EJ, Bara A, Barley E, Cates CJ. Caffeine for asthma. Cochrane Database Syst Rev. 2010 Jan 20;2010(1):CD001112.
- 7.
Chang JS, Wang KC, Yeh CF, Shieh DE, Chiang LC. Fresh ginger (Zingiber officinale) has anti-viral activity against human respiratory syncytial virus in human respiratory tract cell lines. J Ethnopharmacol. 2013 Jan 9;145(1):146-51.
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