執筆者
NSCA-CPT/調理師
舟橋位於
東京大学理学部卒、東京大学大学院総合文化研究科修士課程終了。大学入学後に筋肉に興味を持ち、自分の体で学んだ理論を体現してきた。日本の筋肉研究で有名な石井直方教授のもとで学び、ティーチングアシスタントとして、学生へのトレーニング指導を行った経験も。自分が学んだ知識を伝えることで、一人でも多くの方の健康をサポートしたいと考えている。
目次
運動は短時間でも効果アリ!?時短トレで得られる5つのメリット
それではまずはじめに、時短トレーニングで得られるメリットについて解説します。健康的な生活を送るためにも、時短トレーニングの効果について、よく知っておくと良いでしょう。
①筋力・持久力の向上
時短トレーニングでも、ジムで行うウエイトトレーニング同様に、筋力や筋持久力を高めることができます。もちろん、ジムで行う本格的なトレーニングには及ばないですが、それでも健康な生活を送るためには十分な効果が得られます。
時短トレーニングの効果を示す研究として、トレーニング経験のある男性被験者を対象としたものがあります。この研究では、被験者を3つのグループに分けて、それぞれに3種類の様式のエクササイズを行わせました。その結果、どのグループでも筋力と筋持久力の向上が見られました出典[1]。この時に用いられたトレーニングプログラムは、8週間にわたって、1回13分のトレーニングを週に3回行うものでした。トレーニングの内容にもよりますが、1時間というような長時間のトレーニングを行わなくても効果が得られる点は朗報でしょう。
高強度のトレーニングを短時間で終える方法でも、筋力や筋持久力を高められる可能性があります。さまざまな意見のある分野ではありますが、ある研究では、ボリュームの多いボディビル式トレーニングよりも、短時間の高強度トレーニングの方が高い効果を得ることができたと報告しています出典[2]。
これらの研究結果を踏まえると、短時間のトレーニングにも、筋力や筋持久力を向上させる効果が期待できそうですね。
②ダイエット効果・肥満解消
ダイエット効果や肥満解消を狙う場合にも、時短トレーニングは有効です。
脂肪燃焼のための運動と言えば、まず有酸素運動が思い浮かぶでしょう。有酸素運動の効果を得るためには、ある程度のまとまった時間の運動が必要と考える方が多いですが、実は、短時間の有酸素運動を複数回行うことでも効果を得ることができます。ある研究では、10分の有酸素運動を4回に分けて実施した場合は、40分間連続の有酸素運動を行った場合よりも、高い体重減少効果が得られたと報告しています出典[3]。
この場合の運動は、厳密には時短にはなっていませんが、体力的に長時間連続の運動が難しい場合は採用する価値があると言えるでしょう。
③血流の改善
時短トレーニングの実施によって、血流が改善するとする報告がいくつかあります。一般的には、有酸素運動やウエイトトレーニングを継続することで、血中のLDL(悪玉)コレステロールの値を改善させられるとされています。LDLコレステロールの蓄積を防ぐことで、血管を健康的な状態に保ち、血流の良い状態を維持できます。
複数の研究結果を分析し直したメタアナリシスによると、短い時間の運動を複数回行った場合でも、長時間の運動を行った場合と同じように、LDLコレステロールの値を下げることが示されています出典[4]。
比較的短い時間のランニングにも、心臓疾患に伴う死亡リスクを減らす効果があるとされています。ある研究では、18歳から100歳までの55137人を対象に、死亡リスクとランニングの関係が調査されました。その結果、継続的にランニングを行っている人は、そうでない人と比べて、心臓疾患のリスクが50%低下することが分かりました。またランニングの効果は、1日に5分から10分という短時間でも現れることが示されました出典[5]。
長時間の運動を続けることが体力的に難しい場合は、1日の中で何回かに分けて運動を実施してみると、血管に対しても良い効果が得られるでしょう。
④睡眠の質の向上
HIITと呼ばれる様式のトレーニングを行うことで、睡眠の質を向上させられる可能性もあります。
HIITは高強度インターバルトレーニングとも呼ばれ、その名称の通り、強度の高い運動を、間に回復のフェイズを設けながら一定回数繰り返す運動です。非常にきつい運動ではありますが、短時間で高いトレーニング効果を得ることができるため、活用するアスリートも増えています。
HIITと睡眠の関係を調べたメタアナリシスでは、HIITを実施することにより、睡眠の質と睡眠の効率(布団に入っている時間と実際に寝ている時間の割合)が向上したことが報告されています出典[6]。
睡眠で問題を抱えている方は、HIITを運動の一部に取り入れてみても良いかもしれないですね。
⑤ストレス解消
運動がストレスの解消に効果があるということは広く認知されていますが、短時間の運動にも同様の効果があります。
筑波大学は、ランニングが脳に与える影響を調べるために、26名の被験者に10分間のランニングを行わせ、その後の気分の変化や脳機能について測定しました。その結果、ランニングによって快適な気分が誘発されることや、前頭前野の活性化と実行機能の強化が引き起こされることが分かりました出典[7]。
別の研究では、被験者に10分間の早歩きと瞑想を行わせたところ、座って何も行わなかった対照群と比較して、気分が改善したことが分かりました出典[8]。
仕事や人間関係等でストレスを抱えている場合は、起床後や仕事帰りなどに軽く運動する習慣がつけられると良いのではないでしょうか。
時短トレーニングを始める前に....
続いて、実際に時短トレーニングを行う場合に注意したい点を紹介します。
時短トレーニングの中には、短い時間で通常の運動と同等の効果を得るために、高い強度で行われるものがあります。そして、準備をせずにいきなりこれらの運動に取り組むと、思わぬ怪我につながる可能性があります。これを防ぐためには、事前に体をよく温めておく必要があります。体を温めるためには、以下のような方法がありますので、参考にしてみてください。
- 軽いスピードでランニングしながらジムに向かう
- メインの運動に入る前に、低強度の有酸素運動を5分ほど行う
- ジムにサウナがある場合は、そこで体を温めておく
- 家でトレーニングする場合は、バス停や駅からの帰り道を早足で歩くようにする
【所要時間別】科学的根拠に基づいた7つの短時間トレーニング
ここからは、実際に時短トレーニングとしておすすめできる7種類の運動について、その運動から得られる効果の科学的根拠にも触れながら解説していきます。中には強度が高いものもありますので、無理せず自分のレベルに合ったものから始めてみてください。
所要時間4分:タバタ式トレーニング
タバタ式トレーニングは、HIITの1種です。運動の種類は紹介する本やwebサイトごとにさまざまですが、共通点として、20秒間の全力運動を、間に10秒の休息時間を設けながら8セットほど繰り返す点が挙げられます。ジムで実施するのであれば、エルゴメータ(自転車を模したマシン)やステアマシン(負荷をかけて足踏みを行うマシン)を使うと安全に行うことができます。自宅で行う場合は、ダイナミックな動きを取り入れた自重エクササイズで代用することが可能です。
タバタ式トレーニングには、全身持久力を高める効果があります。ヒトの体は、酸素を用いながらエネルギーを生み出す有酸素性の代謝と、酸素を使わずにエネルギーを取り出す無酸素性の代謝を行っています。スポーツの種類によって比率は変わりますが、どのスポーツでも双方の代謝が行われます。タバタ式トレーニングはその運動の特性上、有酸素性と無酸素性の代謝能力の双方を鍛えることができ、それによって、スポーツパフォーマンスを向上させることが期待できます。このように、タバタ式トレーニングは持久的能力の向上には高い効果がありますが、筋肉に与える負荷は十分でないため、筋肥大の効果は期待できません。また運動時間が短いがゆえに、脂肪を燃焼する効果も低い点は知っておくと良いでしょう出典[9]。
タバタ式トレーニングの実施例は以下のようになります。
- 20秒間全力でエルゴメーターを漕ぐ
- 10秒間休む
- 1と2を繰り返し、20秒の全力運動を合計で8回実施する
※エルゴメーターの部分を、他の有酸素マシンや、全力でのダッシュ等に置き換えても良いです。
普段は別のスポーツを行っているような方が、短い時間でパフォーマンスにつながるような練習をしたいと考える場合は、タバタ式トレーニングがひとつの解決案となるでしょう。
所要時間5分:20秒×3の階段昇降
階段昇降を行うことでも、心肺機能を高めることができます。
カナダの研究者は、階段昇降が心肺フィットネスに与える影響を調べました。心肺フィットネスとは、運動している筋肉に酸素をどれだけ運べるかと、筋肉が運ばれた酸素をどれだけ消費できるかを表した指標です。心肺フィットネスの数値が高ければ、それだけ持久的な運動を長時間持続できることになります。研究の中で被験者は、異なる強度および継続時間の階段昇降運動を、週3回の頻度で6週間実施しました。その結果、運動の全てで最大酸素摂取量が増加し、その上昇率は平均で7%となることが分かりました出典[10]。
この研究では、20秒の運動を3セット実施する方法と、60秒の運動を3セット実施する方法について調べられています。20秒3セットの方法は、特別な器具を使わなくとも、以下のやり方で実施することが可能です。
- 20秒の間、階段を全力で上ります。スピードを意識しつつも、一歩ずつ安全に上るようにします。
- 20秒を終えたら、2分間の休憩を挟みます。
- 1と2を1回ずつ繰り返します。
- 最後にもう一度20秒の階段上りを行います。
普段の移動でエレベーターやエスカレーターを使っている方は、その部分を階段に置き換えることでも、似たような効果が得られるでしょう。
所要時間6分:東大教授が開発したスロトレ
スロトレは、東京大学で考案されたトレーニング法です。
筋肉を効率よく発達させるためには、運動によって生じるさまざまな代謝物質を筋肉に蓄積させることが重要です。スロトレでは、基本的にゆっくりした動作でウエイトトレーニングを行います。こうすると、血流が制限された状態が長く続くことになり、それによって代謝物質を長い間筋肉に止めることができます。そしてその刺激により、自重のような軽い負荷でも、筋肉を効率よく発達させることができるようになります。
実際にスロトレを行う場合は、以下のようなルールを決めると分かりやすいです。
- 異なる部位をトレーニングできる2種目を選択する
- 1種目目を6回行う
- 2種目目を6回行う
- 2と3を繰り返し、それぞれの種目を合計で3セットずつ実施する
具体的なスロトレメニューの一例を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
【スロトレメニュー】
スロースクワット
- 腰幅から肩幅の間で、自然にしゃがむことができる足幅で真っ直ぐ立ちます。
- 視線を前に向けたまま、お尻を引くようにして、6カウントでしゃがみます。
- 太ももが床と平行になる位置までしゃがんだら、4カウントで立ち上がります。
- 膝が伸び切る直前まで立ち上がったら、再びしゃがむ動作に移ります。
- 合計で6回行ったら1セット終了です。
すもうスロースクワット
- 足幅を肩幅の2倍程度まで広げて立ちます。この時、つま先は外側を向くようにします。
- 視線を前に向けたまま、お尻を下ろしていくようにして6カウントでしゃがみます。
- 太ももが床と平行になる位置までしゃがんだら、4カウントで立ち上がります。
- 膝が伸び切る直前まで立ち上がったら、再びしゃがむ動作に移ります。
- 合計で6回行ったら1セット終了です。
スプリットスロースクワット
- 直立の状態から、片足を前方に大きく一歩踏み出します。
- 視線を前に向け、上半身が直立した状態を維持しながら、6カウントで真っ直ぐ下にしゃがみます。
- 踏み出した方の太ももが床と平行になるまでしゃがんだら、4カウントで立ち上がります。
- 完全に立ち上がる直前で、再びしゃがむ動作に移ります。
- 合計で6回行ったら1セット終了です。
ニートゥーチェスト
- 床に脚を伸ばした状態で座り、手を後方について上半身を支えます。
- 膝を胸に近づけるイメージで股関節を曲げます。6カウントで膝が胸につくようにします。
- 逆の動作を4カウントで行い、脚が伸び切る位置に戻ります。
- 合計で6回行ったら1セット終了です。
膝付き腕立て伏せ
- 手幅を肩幅かそれよりやや広い程度にして床につきます。
- 全身が一直線になるように気をつけながら、膝も床につきます。
- 通常の腕立て伏せのように肘を曲げて、上半身を床に近づけていきます。6カウントで床ギリギリに近づくようにします。
- 逆の動作を4カウントで行い、元の位置に戻ります。
- 肘が伸び切る手前で、3の動作に戻ります。
- 合計で6回行ったら1セット終了です。
スロークランチ
- 床に仰向けになって寝たら、膝を90度に曲げて立てます。
- 手のひらが太ももの前面をこするようにしながら、6カウントで上半身を起こします。
- これ以上体を起こせないという地点に達したら、4カウントで元の位置へ戻ります。
- 合計で6回行ったら1セット終了です。
所要時間7分:サーキットトレーニング
サーキットトレーニングは、間に休息を挟まずに、複数のエクササイズを続けて行う運動です。メニューのほとんどは筋力トレーニングからなりますが、連続して行うという性質上、有酸素運動のような効果も望むことができます。短時間で全身をまとめて鍛えたいという方におすすめです。ある程度の筋肥大効果と、有酸素性代謝能力の向上が見込まれます。
トレーニング全体の流れは以下のようになります。なお、それぞれの種目の詳細な解説は後半に書いてあります。
※それぞれの種目の間に10秒の休憩時間を取ります。
- ジャンピングジャックを30秒間行う
- 空気椅子を30秒間行う
- 腕立て伏せを30秒間行う
- クランチを30秒間行う
- ステップアップを30秒間行う
- スクワットを30秒間行う
- リバースプッシュアップを30秒間行う
- プランクを30秒間行う
- もも上げを30秒間行う
- ランジを30秒間行う
- プッシュアップローテーションを30秒間行う
- サイドプランクを左右15秒間ずつ行う
ジャンピングジャック
- 直立した状態から真上にジャンプします。この時、両腕を横方向に高く挙げます。
- 着地時には足が肩幅よりやや広くなるようにします。両腕は着地時に肩のラインより高く挙げます。
- 続いてもう一度ジャンプし、今度は足を閉じて着地します。着地時には両腕は下がります。
- 2と3の動作をリズムよく30秒間繰り返します。
空気椅子
- 直立した状態からスタートします。
- 視線を前に向けたまま、お尻を引くようにしてしゃがみ、太ももが床と平行になったら、そのポジションを30秒維持します。
腕立て伏せ
- 手幅を肩幅よりやや広くして床につきます。全身が一直線になるように気をつけながら、脚を伸ばします。
- 背中が反らないように気をつけながら、肘を曲げて上体を下ろしていきます。
- 肘が90度になる位置まで体を下ろしたら、動作を切り替えして元の位置へ戻ります。
- 30秒でできるだけ動作します。
クランチ
- 床に仰向けになって寝たら、膝を90度に曲げて立てます。
- 手のひらが太ももの前面をこするようにしながら上半身を起こします。
- これ以上体を起こせないという地点に達したら元の位置へ戻ります。
- 30秒でできるだけ行います。
ステップアップ
- 安定した踏み台となるものを用意します。
- 踏み台を片方の足で押すようにしながら、踏み台の上へ立ち上がります。
- 元の位置へ戻ったら、逆方向の足で同様に動作します。
- 左右の足を入れ替えながら、30秒間動作します。
スクワット
- 直立した状態からスタートします。
- 視線を前に向けたまま、お尻を引くようにしてしゃがみます。
- 太ももが床と平行になる位置までしゃがんだら、元の姿勢に戻ります。
- 30秒の間でできるだけ動作します。
リバースプッシュアップ
- 椅子やベンチなどの安定した台を用意します。
- 台に背中を向ける姿勢で近づき、台の端を両手で押さえます。
- 足を前方に動かし、体重を両腕で支えるようにします。
- 肘を曲げながら体を下方向へ沈ませます。
- 肘が90度になったら、手で強く台を押して元の位置へ戻ります。
- 30秒間でできるだけ動作します。
プランク
- うつ伏せで全身を伸ばして床に寝転がります。
- 肘を90度に曲げたら、前腕を床について上半身を床から浮かせます。
- 全身が一直線になった状態を30秒間維持します
もも上げ
- 直立した状態から始めます。
- バランスを崩さないように注意しながら、右腕と、左足を勢いよく上方に動かします。
- 元の位置へ戻したら、左右を入れ替えて同様に動作します。
- 2と3の動作はリズムよく行えると良いです。
- 左右交互に30秒の間繰り返し行います。
ランジ
- 直立した状態から始めます。
- 前方に大股一歩踏み出し、膝が90度になるまで踏み込みます。
- 踏み込んだ足を強く蹴って、元の姿勢に戻ります。
- 左右の足を入れ替えて同様に動作します。
- 30秒間でできるだけ行います。
プッシュアップローテーション
- 腕立て伏せで肘が伸び切った時の姿勢を作ります。
- 片腕で、体重を支え、もう一方の腕を上方に挙げていきます。上半身をねじるようなイメージになります。
- 高いところまで上がったら元の位置へ下ろし、腕を入れ替えて行います。
- 30秒間でできるだけ行います。
サイドプランク
- 真横を向く姿勢で床に寝転がります。
- 床に接している側の腕を90度に曲げ、前腕部分を床に当てながら、上半身を持ち上げます。この時、全身が一直線になるように注意します。
- そのままの姿勢を15秒維持したら、左右を入れ替えて実施します。
所要時間10分:激しい運動はたった1分だけ
どう頑張っても10分しか日常で時間が取れないので、きつくても良いから最大限に効果があるエクササイズに取り組みたいという方向けの運動もあります。
過体重もしくは肥満と診断されている被験者を対象に、以下のような10分間の運動プロトコルを実施させました。実験では、エルゴメータが利用されています。
- 50Wでの2分間のウォームアップ(階段昇降程度の負荷)
- 20秒の全力運動を、間に2分間のインターバルを挟んで3回(ウォームアップの9倍から10倍の負荷)
- 50Wでの3分間のクールダウン
この運動計画を、週3回のペースで6週間続けたところ、以下のような効果が得られました出典[11]。
- 最大酸素摂取量が運動前より12%向上
- 拡張期血圧が7%減少
- 男性被験者における血糖量の低下
これらのことより、心肺機能の向上だけでなく、過体重や肥満に由来する問題も解決できる可能性が示唆されます。
注意点として、全力運動の負荷は非常に高いので、運動開始前には十分に体を温めてから取り組むようにすることが挙げられます。また、運動初心者は、ここに書かれている強度より低い負荷から慣らすことができると良いでしょう。
所要時間12分:10-20-30トレーニング
続いて紹介するのは、10-20-30トレーニングです。聞き慣れない方がほとんどだと思いますので、まずはエクササイズの概要を紹介します。10-20-30トレーニングでは、強度を三段階に設定し、強度を上げていくにつれてその運動時間を30秒から10秒へと減らしていきます。具体的な運動の流れは以下のようになります。
- 全力疾走の30%以下の強度で30秒のランニング
- 間に1分間のインターバルを取る
- 全力疾走の60%以下の強度で20秒のランニング
- 間に1分間のインターバルを取る
- 全力疾走の90%以上の強度で10秒間ランニング
デンマークの研究者は、実際に8週間にわたって10-20-30トレーニングを被験者に行わせてその効果を調べました。実験では、8週間の介入期間中、1週間に2回の10-20-30トレーニングが実施されました。介入の結果、以下のような指標に改善が見られました出典[12]。
- 5kmのタイムが平均で38秒低下
- 血圧の低下
- 最大酸素摂取量の増加
これらのことは、10-20-30トレーニングによって心肺機能が強化され、それに伴って全身持久力が向上したことを意味します。
休日は長距離ランニングのトレーニングを行っている方が、平日の時間がない場合に取りれ入れるトレーニングとして適していると言えるのではないでしょうか。
所要時間25分:4分×4のHIIT
最後に紹介するのはHIITです。HIITは”High Intensity Interval Training”の略で、日本語で言えば、高強度インターバルトレーニングという感じです。この運動の特徴は、短時間の高強度運動を、間にインターバルを挟みながら繰り返し行う点です。スポーツの現場では、長時間パフォーマンスを出し続けるための全身持久力が重要です。HIITは、全身持久力を高めるために行われてきたタイプの有酸素性トレーニングよりも、短い時間でより高い効果が得られるとして注目されています。
ノルウェーの研究者たちは、4分間の全力運動を4セット行う形式のHIITの効果を調べました。被験者は、4分間の全力運動を行ったら、中強度で3分間の休息運動を行い、さらにまた全力運動に移行するというプログラムを実施しました。このプログラムは、週に3回の頻度で10週間行われました。その結果、以下のような効果が得られたことがわかりました出典[13]。
- 最大酸素摂取量が13%増加(心肺機能に関連)
- 酸素使用量が13%低下(心肺機能に関連)
- 収縮期血圧が2.6mmHg低下
- 拡張期血圧が6.1mmHg低下
- 体脂肪量、総コレステロール、LDLコレステロール、酸化LDLコレステロールの減少
心肺機能に関連する指標に向上が見られただけでなく、生活習慣病に関わる因子を低下させる効果も望めそうですね。ただし、非常に強度の高い運動なので、十分にウォーミングアップを行い、初回は指導者の監視のもとで実施することをおすすめします。
忙しい中でも運動を継続するコツ
ここまでに時短トレーニングの方法をいくつか紹介してきましたが、それでもやはり運動の習慣が身につかない方もいるかもしれません。そのような場合は、以下のような運動を継続するためのコツを意識してみると良いでしょう。
- 隙間時間を活用する:仕事の休憩時間に会社の周辺を散歩したり、座ったまま行える筋トレやストレッチを行ったりしてみましょう。
- 複数回に分ける:一度に長時間運動しなくても、効果が得られることを解説しました。1日のうちで運動した時間を合算していき、それが全体で目標値に届くようにしていくと良いのではないでしょうか。
- 様々な運動を用いる:同じ運動ばかり続けていると、飽きてしまって気が重くなることもあります。有酸素タイプの運動を行ったら、次回は筋トレタイプの運動を行うというように、バリエーションを持たせることも継続のコツです。
- 音楽を活用する:有酸素運動を行う場合は、好きな音楽を聞きながらだとあっという間に終えることができるかもしれません。一方、筋トレ中に音楽を聞くことは、推奨する意見と否定する意見がありますので、自身の感じ方に合わせて選択してみてください。
- 仲間と運動する:パートナーを作り、運動スケジュールを立ててしまうことも有効です。家族や会社で仲の良い方を誘ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、短い時間の運動について解説しました。
運動と聞くと、ある程度長い時間続けないといけないと感じてしまい、二の足を踏んでしまう方もいるのではないでしょうか。この記事で紹介したいくつかの運動は、短い時間で完結し、強度もそこまで高くはありませんでした。初心者が気軽に試すという意味では、これらの運動はおすすめです。
時短と言っても、その効果は通常のまとまった時間行われる運動に匹敵するものも紹介しました。HIITはその一例で、アスリートも積極的に取り入れるようになっています。HIITは非常に強度の高い運動なので、実施する場合は、十分に体を温めて、怪我のないように注意しながら行えると良いでしょう。
運動を継続させるためには、張り切って運動に臨むのではなく、生活の一部として取り込んでいくことが大事です。今回紹介した時短エクササイズの中には、日常のわずかな時間でできるものもありますので、まずはそれらから始めてみてはいかがでしょうか。
出典
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