ビタミンB12とは?5つの効果と適切な摂取方法
2022年10月5日更新

執筆者

管理栄養士

西村 俊司

給食施設や食品メーカーなどを経て、現在は老人福祉施設で栄養士として勤務。専門学校卒業後18年のブランクを経て、管理栄養士国家試験に初挑戦し、一発合格。食のプロフェッショナルとしての知識と経験を生かしながら、心も体も喜ぶ「食の提案」を多くの人に届けたいと思っている。家では妻と2人の子供との4人暮らし。食べることや料理を作ることが大好き。趣味は自転車とキャンプとDIYなオジサン。

ビタミンB12とは

ビタミンB12は数あるビタミンの中でもあまり聞きなれない名前ではないでしょうか?どのようなビタミンなのか、どういった働きをするのか、詳しく説明していきます。

1.ビタミンB12とはどのような栄養素なのでしょうか。

ビタミンB12はビタミンB群と言われる栄養素の一つです。ビタミンB群は全て水溶性のビタミンで、現在以下の8種類が確認されています。

  • ビタミンB1
  • ビタミンB2
  • ナイアシン
  • ビタミンB6
  • ビタミンB12
  • 葉酸
  • パントテン酸
  • ビオチン

これらビタミンB群は全て、ヒトの体の代謝に関わっていて、生きていくためのエネルギーを作り出す働きをしています。また、タンパク質の合成にも必要な補酵素であり、ヒトの体にとって重要な役割を担っています。

ヒトの体を一つの複雑な機械に例えると、ビタミンB群は機械の歯車を回すための潤滑油みたいなもの。油がなければ機械が動かないように、人の体もビタミンB群がないと体に不調をきたすようになります。その中でも、ビタミンB12は造血のビタミンと呼ばれ、正常な血液を作るのに必要不可欠なビタミンです。

ビタミンB12は暗みがかった赤色をしていることから、「赤いビタミン」とも呼ばれています。また、ミネラルの一つである「コバルト」が含まれ「コバラミン」という別名もあります。ビタミンB12は5種類確認されていますが、最も効率的にビタミン活性を持つ「シアノコバラミン」が代表的で、「日本食品標準成分表2020」でも、食品中のビタミンB12の量は「シアノコバラミン相当量」として掲載されています。

 

2.ビタミンB12は体の中でどんな働きをするのでしょうか?

まずは、ビタミンB12が吸収される過程を説明します。

ビタミンB12の多くは、食物中のタンパク質と結合しています。そのため、胃液に含まれるタンパク質分解酵素である「ペプシン」によって遊離します。また、胃からは「内因子」と呼ばれる糖タンパクが分泌されます。胃から十二指腸に送り込まれたビタミンB12はさらに膵液の働きによって内因子と結合され、小腸(回腸)で吸収されます。そのため、ビタミンB12 の消化・吸収には胃液が必要不可欠なのです。

また、体内で代謝されたビタミンB12は胆汁中に排泄されますが、一部は「腸肝循環」という働きにより、再度吸収されます。このような様々な機能によりビタミンB12は体内に取り込まれています。取り込まれたビタミンB12は肝臓や血液に貯蔵されます。

ビタミンB12が必要となるとき、それは新しい血液を作る時です。同じビタミンB群である葉酸とともに「造血ビタミン」であるビタミンB12は、正常な赤血球を作るために必要なのです。赤血球は血液1μℓ中に男性で約500万個、女性で約450万個含まれています。赤血球の寿命は約120日と言われ、古くなった赤血球は脾臓で分解され、一部は新しい赤血球の材料として使われます。新しい赤血球が作られる場所は「骨髄」です。骨髄では1秒間に200万個ともいわれる量の赤血球が作られますが、その製造過程でビタミンB12が重要な補酵素として必要なのです。

 

3.不足するとどんなリスクがあるのでしょうか?

ビタミンB12の不足に伴う疾病の一つに「貧血」があります。貧血というと、鉄分が不足したときに発症する「鉄欠乏性貧血」が有名ですが、実はビタミンB12の不足によっても貧血が起きます。

ビタミンB12が不足すると、酸素を運搬する役割を持つ「赤血球」の産生がうまくいきません。そのため、全身に酸素を運搬することができず、貧血となってしまうのです。

ビタミンB12不足による貧血は、顔面蒼白や疲労感の増加などが症状として出現します。また、うつ症状やせん妄などの精神的な症状が出ることも確認されています。さらに、重度の貧血になると、肝臓や脾臓の機能低下が起こることがあります。 

 

4.どんな食材に含まれている?

では、ビタミンB12を多く含む食品をご紹介します。

  • あさり/52.0μg
  • ハマグリ/28.0μg
  • 牛レバー/53.0μg
  • さんま/16.0μg
  • 焼き海苔/58.0μg

ビタミンB12は、動物性の食品に多く含まれ植物性の食品にはほとんど含まれていません。畜肉の肝臓や魚介類などには豊富に含まれています。唯一植物性食品で多く含まれるのが「海苔」。ただし、上記の数字は100g当たりの数字です。焼きのり大判1枚は2〜3g程度ですので、やはり動物性食品から摂取するのが良いと思います。特に、レバーや心臓といったホルモンや赤身肉、貝類(二枚貝)や青魚に多く含まれています。

 

ビタミンB12に確認されている作用や効果

ビタミンB12は造血のビタミンですが、それ以外にも多くの効果があるとされています。順番に見ていきましょう。

1.骨を健康にし骨粗鬆症を予防

骨粗鬆症は、骨の量が減っていき、骨が弱くなることで骨折などを引き起こしやすくなる病気です。日本では高齢者を中心に患者数は1,000万人とされています。骨粗鬆症になると、わずかな衝撃や転倒などにより骨折してしまいます。高齢者では骨折による安静後、そのまま寝たきりとなってしまうことが多いため、注意が必要な疾病です。

海外の研究によると、ビタミンB12の不足に伴い、血中のホモシステインとメチルマロン酸の二つが増加することで、骨を分解し血中カルシウム濃度を上げる「破骨細胞」が活性化し、骨がもろくなるとされています。この研究では、ビタミンB12が「ホモシステイン」と「メチルマロン酸」の代謝に必要な補酵素であるため、ビタミンB12不足によりこれらの血中濃度が上昇するとしています出典[1]

高齢者は、消化液分泌の減少に伴いビタミンB12の吸収率も低下すると言われています。骨粗鬆症を予防するためにも、しっかりと摂取したいですね。

 

2.睡眠を促す効果

十分な睡眠が健康的な生活を送るために必要不可欠であることは、誰もが感じていることだと思います。しかし、現代社会はストレスや外的要因により、睡眠不足に陥りやすい環境でもあります。海外の研究によると、ビタミンB12には良質な睡眠を促す物質であるメラトニンに作用することで入眠に促す効果があることがわかりました。男女20名を対象とした14日間の比較試験で、ビタミンB12の投与後、睡眠の質や集中力、爽快感が有意に改善されたと報告されています出典[2]

この実験では、日本の推奨量を大きく超える3.0mgのビタミンB12を投与しています。この量は食事からの摂取が困難であるため、サプリメントなどの併用が必要となります。しかし、今のところ、過剰摂取による健康被害の報告はなく、耐用上限量の設定もありません。今後の研究によって、ビタミンB12と睡眠に関する発見があるかもしれません。



3.目の健康をサポート

現代社会は目へのストレスが多い時代でもあります。パソコンやスマートフォンの長時間にわたる使用などにより、目が疲れている方も多いのではないでしょうか。中にはドライアイなどのような慢性的な症状に苦しんでいる方も多いと思います。

海外の研究によると、神経障害性疼痛やドライアイに悩む患者にビタミンB12サプリメントと局所治療を行ったところ、ビタミンB12レベルの高いグループはもう一方のグループに比べて主観的な痛みや症状の改善が見られたとされています出典[3]

ビタミンB12と目の健康に関する研究は進んでおり、今後新たな発見が期待されています。

 

ビタミンB12の摂取方法や注意点[2]

ビタミンB12を摂取する際に注意することはあるのでしょうか?

1.どのくらい摂取すればいい?

ビタミンB12は、水溶性ビタミンではありますが、健康な成人では肝臓などに2〜3mgが貯蓄されていると言われています。ビタミンB12の減少量は、貯蔵量の0.1~0.2%程度ですので、全くビタミンB12を摂取しなくても1年~数年は健康被害が発生しにくいと言われています。

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準2020」においては、成人の推奨量は2.4㎍/日としていますが、一方で、推奨量の2.4㎍/日では低いとされる研究も発表されています。厚生労働省発表の「国民健康・栄養調査」では、成人のビタミンB12摂取平均値は6.5㎍/日で、通常の食生活において不足するということは起こりにくいと言えます。ただし、菜食主義で動物性食品をとらない食生活を続けている方や、ビタミンB12の吸収に必要な胃を切除した方などは、ビタミンB12の欠乏がおこるリスクが高いと言えます。

一方で、食物からビタミンB12を摂取しすぎた場合においても、体内に吸収されるビタミンB12の量は、胃から分泌される内因子でコントロールされており、内因子と結合できなかったビタミンB12は便として排泄されることから、過剰摂取による健康被害も起こりにくいとされています。

 

2.薬との飲み合わせは?

服薬している薬によっては、ビタミンB12の体内吸収を低下させたり、体内での働きを鈍くさせたりする薬があります。特に、抗生物質により腸内細菌の種類や数が急激に変化した場合は、ビタミンB12の吸収が低下すると言われています。その他にも、胃潰瘍や糖尿病の治療に使われている薬により、ビタミンB12の吸収に影響があると言われていますので、これらの薬を服薬している方は、ご注意ください。詳しくはかかりつけ医に相談することをお勧めします。

 

まとめ

貧血予防や骨粗鬆症などの疾病の予防に効果的であるビタミンB12。まずは、普段の食生活を見直して、不足なく摂取できているか確認してみましょう。
また、睡眠や眼精疲労に効果があるかもしれないという研究は、ストレス社会に生きる現代人にとっては非常に大切な効果になると思います。今後の研究の発展に期待したいですね。

 

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