執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
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生姜とは
生姜とはどのような食べ物で、私たちの体でどのような働きをしているのか、生姜を摂取しないとどのような健康被害が生じるのかについて詳しく見ていきましょう。
1.どんな食べ物?
生姜(Zingiber officinale)は、東南アジア原産のショウガ科に属する植物です。何世紀にもわたって、中国やインドなどアジア諸国の先住民族によって、地元料理の香辛料や甘味料として、また多くの病気を治療するための漢方薬として、消費されてきました。伝統的な中国医学、インド医学、アーユルヴェーダ医学では、生姜には治療効果があると考えられています
食用として使われているのは、生姜の根茎の部分です。生姜の栄養価は、根茎に含まれるジンゲロール、ショウガオール、パラドール、ジンギベレンなどの活性化合物によるものです。そのほかに、ゼルンボン、ジンゲロン、1-デヒドロ-(10)ジンジャージオンなどの物質や多糖類、脂質、有機酸なども豊富に含まれています。
新鮮な生姜の根茎に見られる揮発性フェノール化合物(主に6-ジンゲロールであり、4-、8-、10-、12-ジンゲロールも含む)は、生姜に刺激的で独特の香りを与えています。
生姜に含まれるこれらの化合物は、pHと温度の変化に敏感です。ジンゲロールは、乾燥や焙煎など極端な熱により、ショウガオールに急速に変換されます。また、パラドールの水素化により、ショウガオールになります。
最近の研究によって、6-ショウガオールは6-ジンゲロールよりも優れた生物学的作用を持ち、関連する副作用がないことが実証されています。そのため、乾燥生姜は生の生姜よりも薬効が高いと考えられています出典[1]。
2.体の中でどんな働きをする?
生姜には、痰を緩めて排出する去痰作用があります。そのため、咳止めの治療薬として使用されています。また、痛みの緩和、吐き気、嘔吐、中毒の治療、消化促進にも使用されます。
健康的な老化を促進し、罹患率を減らし、健康寿命を延ばすことも分かっています。老化に関連する多くの病気を、その病因に関与する分子標的を調節することにより、保護、予防、さらには治療することもできると考えられています。
細胞を用いた試験により、活性酸素であるスーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、一酸化窒素ラジカルを除去するなど、多くの抗酸化特性を有することが実証されています。
生姜には抗炎症作用もあります。生姜の抗炎症活性は、痛みを引き起こすプロスタグランジンとロイコトリエン合成に対する阻害作用に関連していることが示唆されています出典[1]。
3.不足するとどんなリスクがある?
生姜の不足によって健康に大きな被害が出るといった情報はありませんでした。
しかし生姜には、抗酸化作用や病気を予防し健康寿命を延ばす効果などがあり、摂取することで健康につながる食べ物であると言えます。
生姜が苦手な方は、生姜に含まれる成分を別の食品から摂取すると良いでしょう。
生姜には、マンガンが豊富に含まれています。
マンガンが不足すると成長障害や生殖機能障害、低コレステロール血症が起こりうるため、生姜嫌いの方は、マンガンが多く含まれるシソやレンコンを摂取し不足しないように努めましょう。
ショウガオールのような生姜特有の栄養素は、他の食べ物からの摂取が難しいです。飲みやすい生姜湯や飴、サプリメントなど摂取しやすいものを見つけ、きちんと補うようにしましょう。
生姜に確認されている作用や効果
生姜を摂取することで、どんなメリットがあるのでしょうか?研究により明らかになっている生姜の作用や効果について見ていきたいと思います。
1.ダイエット効果
生姜にはダイエット効果があることが、いくつかの調査により明らかになっています。
473人の被験者を対象とした研究から、生姜の摂取により、過体重または肥満の人の体重、ウエストヒップ比、ヒップ比、空腹時血糖の大幅な減少および、HDLコレステロールの大幅な増加があることが明らかになっています。
BM、トリグリセリド、総コレステロールおよびLDLコレステロールにおいては、生姜による影響が見られませんでした出典[2]。
生姜を摂取することで、熱発生が促進され空腹感が軽減することも明らかになっています。39.歳でBMIが27.2の男性10人が参加し、朝食に生姜粉末2gをお湯に溶かしたものを食べる場合と食べない場合の観察をしました。
総安静時エネルギー消費量および呼吸商(呼吸時に排出する二酸化炭素量と摂取した酸素量の比率)に対する生姜の有意な効果は見られませんでした。しかし、食物の熱効果に対しては、生姜の有意な効果が見られました(生姜対コントロール = 42.7 kcal/日)。
また、生姜を摂取することで、空腹感の低下、食物摂取量の低下、満腹感の増加が見られました。グルコース、インスリン、脂質、または炎症マーカーに対する生姜の影響はありませんでした。
これらの結果より、生姜を摂取することで熱発生が促進され空腹感が軽減することが明らかになり、体重管理における生姜の潜在的な役割が示唆されました出典[3]。
生姜には空腹感を減らし、満腹感を高める役割があります。生姜の力を利用することで、食べる量を減らすことができ体重減少につながるかもしれません。生姜湯などを毎朝摂取する習慣をつけると良いでしょう。
2.消化吸収の促進
生姜には消化吸収を促進する効果もあります。
機能性ディスペプシア(胃もたれ、早期の満腹感などを感じる症状)の患者11人を対象に、食事摂取後の消化の状態を調べる試験が行われました。患者は、8時間の絶食後に、生姜1.2gまたはプラセボを含むカプセルを摂取し、その1時間後に500mLの低栄養スープを摂取しました。プラセボを投与された患者は胃が空になるまでに16.1分かかりましたが、生姜を摂取した患者は12.3分でした。この試験により、生姜が消化不良の患者の消化吸収を促進する効果があることが示されました出典[4]。
また、24人の健康な個人を対象とした研究では、8時間の絶食後に、生姜1.2gまたはプラセボを含むカプセルを摂取し、その1時間後に500mLの低栄養スープを摂取しました。プラセボを摂取した患者は胃が空になるまでに26.7分かかりましたが、生姜を摂取した患者はわずか13.1分でした。この結果より、生姜を摂取することで、食事摂取後に胃が空になるまでの速さが大幅に加速されることが分かりました出典[5]。
これらの研究により、生姜を摂取することで、胃内容物の排出が促進され、消化がスムーズに進むことが分かりました。胃もたれを感じる場合などに生姜を摂取することで、症状が緩和する可能性があります。
3.男性不妊のサポート
生姜には、男性の不妊の問題を改善する働きがあります。
19〜40歳の結婚して2年経つ不妊男性75人を対象に、生姜による不妊治療が行われました。その結果、不妊男性の精子数は、治療前と比較して最大16.2%増加しました。また、不妊男性の精子の運動性が47.3%まで増加し、治療前と比較して有意に増加しました。さらに、不妊症の精子の生存率と正常な精子の形態は、治療前と比較して有意に増加しており、精子の生存率は最大40.7%増加しました。射精量も有意な増加が見られ、射精量は最大36.1%増加しました。テストステロンレベルは、生姜による治療後に有意に増加しました出典[6]。
これらの研究により、生姜を摂取することで、テストステロン濃度が増加し、精子の数や運動性、生存率が向上することが分かりました。不妊に悩む男性は、毎日生姜を摂取することで、子どもを授かる可能性が上がるかもしれません。食事や飲み物から生姜をとるようにすると良いでしょう。
4.痛みの緩和
生姜は昔から、月経困難症、遅発性筋肉痛、変形性関節症 、慢性腰痛、片頭痛などの鎮痛剤として使用されており、痛みを緩和する効果があります出典[7]。
27人の参加者に24のエキセントリック運動(筋トレの一種)を実行してもらい、運動の24時間後と48時間後に2gの生姜またはプラセボを摂取させました。
摂取45分後の測定において、中等度の腕の痛み(39 ± 20 mm)、機能障害(関節可動域の14%減少)および腕のボリュームの増加(1.8%)が見られました。摂取45分後では、プラセボと生姜の筋肉痛に与える影響の差は見られないことが分かりました。
運動の24時間後に生姜を摂取した参加者は、運動の48時間後に腕の痛みが軽減されました(13%、-5.9 ± 8.8 mm)。しかし、運動の24時間後にプラセボを摂取した参加者は、翌日にも痛みが持続し軽減しませんでした(0.0 ± 14.7 mm)。
これらの結果より、エキセントリック運動によって引き起こされる筋肉痛、炎症、機能不全は、生姜を摂取してもすぐには軽減されないことが分かります。しかし、生姜を毎日摂取することで、筋肉痛の日々の進行を軽減する可能性があることが示唆されました出典[8]。
また生姜は、変形性関節症患者の痛みと症状を大幅に軽減することが分かっています。18歳以上の変形性関節症患者を対象とした5件の試験(593人の患者)によると、生姜の摂取後に、有意な痛みの軽減および障害の減少が見られています出典[9]。
5.吐き気を抑える
生姜には吐き気を抑える効果があります。
妊娠中の吐き気や嘔吐を抑える働きがあることが研究により明らかになっています。
妊娠17週またはそれ以前の、吐き気と嘔吐のある女性70人が研究に参加し、4日間にわたって1日1gの生姜またはプラセボが経口投与されました。
治療後の吐き気の重症度(ビジュアル・アナログ・スケール)は、プラセボ群と比較して生姜摂取群で有意に減少しました。嘔吐の数も、プラセボ群と比較して生姜摂取群で有意に減少しました。「当てはまる」「やや当てはまる」といった選択肢のあるアンケートを実施し、症状の重症度を評価したところ、プラセボ群(35人中10人)に比べて、生姜摂取群(32人中28人)の方が吐き気症状が改善したことが示されました。妊娠結果に対する生姜の悪影響は検出されませんでした。この研究より、生姜は妊娠中の吐き気や嘔吐の症状を緩和するのに効果的であることが示されました出典[10]。
生姜には船酔いを予防する効果もあります。1992年7月〜9月にかけてノルウェーでクジラサファリに参加していた1741人の観光ボランティアを対象に、船酔いの予防に使用される7つの薬剤(シンナリジン、シンナリジンとドンペリドン、シクリジン、ジメンヒドリナートとカフェイン、生姜の根、メクロジンとカフェイン、およびスコポラミン)の有効性を評価する試験が行われました。嘔吐、倦怠感 といった船酔いの症状は、1489人のボランティア(85.5%)でフォローアップが可能でした。7つの薬剤のうち、スコポラミンの使用者は、視覚的な問題がわずかに多く、薬剤の効果が低い傾向にありました。この結果より、調査した7つの薬剤のうち、生姜の根を含む6つの薬剤で船酔いの予防に効果がある可能性が示唆されました出典[11]。
以上より、生姜には妊娠中や乗り物酔いなどによる吐き気を抑制する効果があることが分かりました。乗り物に酔いやすい人は、生姜を摂取することで症状が軽減する可能性があります。生姜湯などを準備しておくと良いでしょう。
6.血糖値の低下
生姜には血糖値を低下させる効果があります。
41人の2型糖尿病患者を対象として、1日2gの生姜パウダーまたはプラセボを12週間摂取させました。生姜を摂取することで、空腹時血糖は12%低下しました。
この結果から、生姜を摂取することで血糖値が低下し、糖尿病の慢性合併症のリスクを軽減する可能性があることが示唆されます出典[12]。
血糖値を下げる効果のある生姜は糖尿病予防にも効果的です。しっかりと摂取するようにしましょう。
7.コレステロール値の改善
生姜を摂取することでコレステロール値が改善することが分かっています。
2014年にパキスタンで生姜の摂取とコレステロール値の関連を調べる研究が行われました。18~70歳の男女60人の高脂血症患者を2つの群に分け、30人の患者には通常の食事と5g生姜ペースト粉末を、30人の患者には通常の食事とプラセボの小麦粉末を、3か月間摂取してもらいました。その結果、生姜を3か月間摂取した群では、LDLコレステロールが17.41%、総コレステロールが8.83%、体重が2.11% 減少していました。プラセボ群と比較すると、すべてのパラメータの変化は有意でした。このことから、生姜の有効成分が血漿脂質と体重を有意に低下させ、最終的に一次および二次高脂血症患者の冠動脈疾患の発症を予防することが示されました出典[13]。
2004年にイランで行われた研究では、高脂血症患者95人を、生姜摂取群45人(生姜カプセル1日3gを3回に分けて投与)とプラセボ群40人(ラクトースカプセル1日3gを3回に分けて投与)に分け、45日間摂取してもらいました。その結果、生姜摂取群とプラセボ群ともに、トリグリセリド、コレステロール、LDL、VLDL(悪玉コレステロールの一種)の量が、摂取前後で有意に減少しました。生姜摂取群のトリグリセリドおよびコレステロール量の変化は、プラセボ群よりも有意に高く、LDLコレステロール値は45日間で10%減少していました。生姜摂取群はプラセボ群よりも、LDL量が低下しHDL量が増加していました。以上のことから、生姜がプラセボと比較して、有意な脂質低下効果を有することが示されました出典[14]。
生姜を摂取することでコレステロールが低下し、狭心症や心筋梗塞といった冠動脈疾患の予防につながります。生姜を食事やサプリメントからきちんと摂取するようにしましょう。
8.血圧低下
生姜には血圧を低下させる効果があります。
平均年齢50歳以下の345人の被験者を対象とした調査によると、生姜を1日3g以上摂取することで、収縮期血圧が平均6.36mmHg減少、拡張期血圧が平均2.12mmHg減少しました。このことから、生姜の摂取は血圧を安定にする働きを持つことが示唆されました出典[15]。
血圧が高めの方は生姜を摂取することで改善が見られるかもしれません。毎日生姜湯を飲むなどして、健康な血圧の維持に努めましょう。
9.認知機能の改善
生姜には認知機能を改善する働きがあります。
60人の健康な中年女性を対象とした研究において、プラセボまたは生姜抽出物(400mgおよび 800mg)を1日1回、2か月間摂取してもらい、認知機能を調べました。その結果、生姜の摂取により事象活動電位の増加が見られたことから、脳が反応し活動が活発になったことが分かりました。つまり、生姜を摂取することで、脳の反応時間と作業記憶が改善されることが示されました。したがって、生姜は認知機能を増強する効果があると言えます出典[16]。
年齢とともに衰えていく認知機能を改善するために、生姜を摂取すると良いでしょう。日々の食事の風味づけに生姜を加え、認知症の予防に努めましょう。
10.免疫力の向上
生姜は抗ウイルス活性を持ち、免疫力をアップさせる働きがあります。
新鮮な生姜が、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(HRSV)に対する抗ウイルス活性を持つことが研究により分かっています。生および乾燥生姜の熱水抽出物がHRSVに及ぼす影響を調べるために、癌細胞であるHEp-2細胞とA549細胞におけるプラークの観察を行いました。新鮮な生姜は、HEp-2細胞およびA549細胞の両方で、HRSVが誘発するプラーク形成を用量依存的に阻害しました。乾燥生姜は用量依存的な阻害を示しませんでした。300 μg/mLの新鮮生姜は、プラーク数を対照群の19.7%(A549細胞)および27.0%(HEp-2)まで減少させることができました。
特にA549細胞では、新鮮な生姜はウイルス接種前に投与するとより効果的でした。300 μg/mLの新鮮な生姜は、ウイルス接種前に投与すると、プラーク形成を12.9%まで減少させることができました。生姜は、用量依存的にウイルスの付着と内部移行を阻害しました。新鮮な生姜は、粘膜細胞を刺激してIFN-β(ウイルス感染時に免疫獲得のために働く物質)を分泌させ、ウイルス感染の抑制に寄与した可能性があります。したがって、乾燥させていない新鮮な生姜は、ウイルスの付着と内在化をブロックすることにより、HRSVが誘発するプラーク形成に対して効果的であると言えます出典[17]。
また、生姜は慢性疾患予防にも効果的です。18〜77歳の4628人の参加者(男性1823人、女性 2805人)に対して、対面式の食事と健康に関するアンケートを実施しました。その結果、毎日生姜を摂取することで、高血圧および冠状動脈性心疾患のリスクが低下しました出典[18]。
生姜を摂取することで、ウイルス性疾患や慢性疾患などの病気の予防につながります。免疫力が低下しがちな冬の時期には温かい生姜湯を飲み、病気になりにくい体作りに努めましょう。
生姜の摂取方法や注意点
生姜を摂取することで、さまざまな効果が得られます。生姜の効果を十分に得るためには、どのような点に注意して生姜を摂ればよいのでしょうか。摂取量や効果的な摂取の仕方について詳しく見ていきたいと思います。
1.どのくらい摂取すればいい?
生姜の臨床効果について調べた109件の研究によると、生姜パウダーの一般的な投与量は1日0.5〜1.5gでした出典[19]。これは生姜約5〜15gに相当し、生姜ひとかけ程度です。生姜の効果を十分に発揮するためには、この数値を目安に摂取すると良いでしょう。
2.健康に摂取できる量は?
生姜の摂取上限量に関する記載は見つかりませんでした。
しかし、生姜を使用した研究論文より、副作用として胃腸の荒れや胸やけ、吐き気が報告されています出典[19]。生姜には胃腸を刺激する作用があるため、腹痛や下痢を引き起こすことがあります。必要以上に摂取しすぎないようにしましょう。
3.効果的な飲み方
生姜を効果的に摂取するためには、サプリメントやドリンクとして摂取すると良いでしょう。生姜には身体を温めたり腰痛などを緩和したりする働きがあり、必要な時に手軽に摂取できるサプリメントを常備しておくと良いかもしれません。また、生姜をすりおろしてスープやたれに加えることでも簡単に摂取できます。普段の料理にひと手間加え、生姜が不足しないようにしましょう。また、しょうがをドリンクとして飲む方法もあります。生姜特有の辛味が苦手な方は、はちみつやリンゴを入れることで甘味が加わり、飲みやすくなります。食事からの摂取が難しい方は、生姜湯として飲むと良いでしょう。
まとめ
生姜は何世紀も前から漢方薬として使用されている非常に健康に良い食べ物です。料理の味わいを深めるだけでなく、血圧の維持やコレステロール値の改善、免疫力の向上や認知機能の改善などさまざまな効果を持っており、私たちの健康に欠かせない栄養素です。毎日10g(ひとかけ)程度を継続的に摂取し、健康寿命を延ばしていきましょう。
出典
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