執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
目次
勃起が生じるメカニズム
朝立ちとテストステロンの関係について理解するためには、勃起のメカニズムについて正しく理解する必要があります。
そもそも勃起とは、性行為時など性的興奮が高まった際に陰茎(ペニス)に血液が流れ込むことで、硬く大きくなる生理現象です。
男性は勃起が起こることで陰茎を女性の腟内に挿入できるようになるので、勃起が正常に起こることが性行為の成功のためには必要不可欠です。
- テストステロンが高く性的興奮が高い状態
- テストステロンの作用により脳が勃起させるための信号を送る
- 心臓がポンプとなって血液を下半身に送り込む
- 身体中の血管を通って陰茎に血液が届き、勃起する
テストステロンの量と陰茎に流れる血流を増やす・保つことが正常に勃起を起こすために重要になります。
朝立ちは夜立ち?
テストステロンが起点となり、陰茎に流れ込む血液が増えることで勃起は起こります。
では、朝立ちはどうでしょうか?
朝立ちは勃起の一つです。「朝、目が覚めた時に勃起していた」という経験が一度はあるのではないかと思います。朝に陰茎が勃起している現象のことを指して「朝立ち」と呼びます。
実は朝立ちは朝だけに限った現象ではありません。夜間にも何度か起こります。そもそも、朝立ちとは「夜間勃起現象(NPT)」と呼ばれる現象の一つ。
睡眠のサイクルのうち、レム睡眠(浅い眠り)で起こります出典[3]。 レム睡眠中は自律神経の働きが活発になるので、勃起しやすくなるのです。
通常、NPTはレム睡眠中に3~5回程度、一回あたり10~15分程度持続します。朝の起床する時はレム睡眠の最終セッションであるので、目覚めた際に勃起しているのです。
朝に限ったことではなく、夜にも起こっているので「朝立ち」ではなく「夜だち」の方が正しいかもしれません。
睡眠中に分泌されるテストステロンがシグナルとなって朝立ちが起きる
では、朝立ちが夜間や朝方に起こりやすいのはなぜでしょうか?
鍵はテストステロンが握っています。テストステロンは勃起の開始の命令を出すホルモン。
つまり、テストステロンが多い状態だと、勃起は生じやすくなります。
1997年にイタリアのモデナ・レッジョ・エミリア大学は、体内のテストステロン値がNPTに及ぼす影響について調査しました。
201名の男性をテストステロンレベルに応じて、8つのグループに割り当てています。テストステロン値が0~99ng/dlをグループ1、100~199ng/dlをグループ2と100ng/dl刻みでグループ分けしています。
そして専用の機器を用いて、NPT時の勃起の持続時間や硬さ・周径を測定しました。なお、正常な勃起の場合は、8時間の睡眠中に10~15分継続する勃起が3~6回。周径は陰茎の根元で3cm、先端の溝の部分で2cm増加。また、70%以上の硬度になります。
グループ1と2のテストステロン値が低い男性は他のグループと比較して、NPT時の硬度が低く、60%以上の硬度を持続している時間も短いことがわかりました出典[4]。
また、同じ研究グループは2007年加齢に伴うテストステロンの低下とNPTとの関連を調査しています。
209名の男性(122人が30–49歳、87人が50歳以上)をテストステロンレベルに応じて、4つのグループに割り当て、先程と同じく、NPT時の勃起の持続時間や硬さ・周径を測定しています。
加齢によりテストステロンが低下するとNPTの回数、勃起の持続時間や陰茎の大きさなどが低下すること、テストステロン値には閾値があり、8nmol/L(約230ng/dl)以下だとNPT関連数値の減少が顕著になることが明らかにされています出典[5]。
さらに1990年にヒューストンの退役軍人省医療センターが発表した論文では、テストステロン補充療法によるNPTの変化が観察されています。
こちらの研究ではテストステロン20mgを注射で投与するとテストステロン値は35.9nmol/Lに増え、NPTの回数・勃起時の陰茎の最大周囲長・総時間が2倍になることがわかりました。
一方でテストステロンの補充を止めるとテストステロン値は2.3nmol/Lまで大幅に低下し、NPTの回数は3.7回から2.0回に減少、勃起時の陰茎の最大周囲長は24mmから13mmに減少、NPTの総時間は107 から 55 分に減少することが報告されています出典[6]。。
つまり、テストステロンの値が高いとNPTが発生しやすくなるのです。
ではなぜ日中ではなく、夜間に起こるのか。
理由はテストステロンの分泌が睡眠中に高まるためです。
2011年にアメリカのシカゴ大学で睡眠とテストステロンの分泌の関係が研究されています。
睡眠開始から徐々に血中のテストステロン濃度が高まり、起床前の午前6時頃にピークに達し、日中や睡眠前の1.5倍にまで上昇するのが明らかになりました。
また、睡眠時間を1週間1日5時間以下に制限したところ、睡眠不足が続くことでテストステロンは10~15%も低下してしまうことが示されています出典[7]。
以上のことをまとめると、朝立ちにはテストステロンが大事。朝立ちがなかったり、頻度が少なかったりするのはテストステロンが低下しているサインの一つと言えます。
「朝立ちがない→テストステロンが低い」とは限らない
テストステロンが朝立ちに重要であることは間違いありません。
しかし、必ずしも「朝立ちがない=テストステロンが低い」というわけではないのです。
先程、朝立ちはレム睡眠中に起こると紹介しました。そのため、ノンレム睡眠の時にアラームで無理やり起きた場合には朝立ちが確認できません。
また、血流や神経系などに異常がある場合はテストステロンが正常でも朝立ちが起きないことがあります。テストステロンは正常なのにNPTの回数が減ったり、なくなったりしている時は特に注意が必要です。
心筋梗塞や動脈硬化などの血管系の病気の前触れの可能性がありますので、一度病院で検査してもらうようにしましょう。
【余談】テストステロンが高すぎると痛みを伴うくらい強い勃起で目が覚める?
睡眠中にテストステロンが分泌されることで朝立ちが起こることを紹介しました。
余談になりますが、実はテストステロンが高すぎると痛みを伴うくらいの強い勃起が起こることがあります。
「睡眠関連疼痛性陰茎勃起」と呼ばれる現象で、人によっては勃起による痛みで目が覚めてしまうこともあるほどです。
他にも閉塞性睡眠時無呼吸症候群、心理的・精神的要因などが原因になります。複数の薬を併用するのが効果的とされますが、決まった治療法がないのが現状です出典[8]。
紹介こそしましたが、発症する人は少ないので気にし過ぎる必要はそれほどありません。
まとめ:朝立ちは男性の健康を示すバロメーター
今回は朝立ちとテストステロンの関係について解説しました。
朝立ちが正常に起こらない場合は、テストステロンの低下や血流・神経系などに異常が生じている可能性があります。
「そういえば最近朝立ちが起こらないな、回数が減ったな…」などと感じる方は、一度病院で診てもらうことをオススメします。
朝立ちは男性の健康を示すバロメーターになるのでセルフチェックを心がけるようにしましょう。
出典
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