執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
ベタインとは
まずはじめに、成分の概要や栄養素としての働きについて見ていきましょう。
1.どんな栄養素?
ベタインはアミノ酸の一種であり、アミノ基に3つのメチル基がついた化合物です。19世紀にテンサイ(別名:サトウダイコン)のジュースで最初に発見されました。
ベタインは微生物や植物に含まれており、細胞の浸透圧を調整しています。渇水や高塩分、温度ストレスにさらされると、ベタインの合成が進み細胞内に蓄積します。ベタインは細胞の保水力を高め、渇水や温度変化といったストレスから守ってくれています出典[1]。また、高い保湿力を持つことから、化粧品やヘアケア商品としても広く利用されています。
ベタインは古くから医薬品としても利用されています。ベタイン塩酸塩は胃液の酸度調整剤として用いられており、その他の薬効も注目され、製剤中に組み込まれています出典[2]。
2.体の中でどんな働きをする?
ベタインには筋力を向上させる効果があります。ベタインはメチルを転移することで、メチオニンを合成します。メチオニンは、アルギニンやグリシンとともにクレアチンの合成を増加させます。
クレアチンを補給することで、高強度で短時間の無酸素運動中のパフォーマンスを改善することが示されています。
よって、ベタインにより提供されるクレアチン生合成の増加が、無酸素運動のパフォーマンスを向上させる可能性があると示唆されます。
また、ベタインは血中の一酸化窒素のレベルを大幅に上昇させることが報告されています。実際に1日6gのベタインを7日間補給すると血中一酸化窒素量が3倍近く増加しました 。一酸化窒素は強力な血管拡張剤であり、激しい運動中に筋肉の血流を増加させる可能性があります。筋肉の血流が増加すると、栄養素の供給や乳酸などの老廃物の排出が増加するため、運動パフォーマンスが向上する可能性があります出典[3]。
ベタインは、肝臓での脂肪の蓄積を減少させ、肝機能を向上させる働きがあります。また、コレステロール値を改善し、動脈硬化など心臓の健康維持にも有益な効果をもたらしています出典[1]。
3.どんな食材に含まれている?
ベタインは、小麦や甲殻類、ほうれん草、テンサイなど多くの食材に含まれています。以下にベタイン含有量の多い食材を記載しました出典[1]。
食材名 | ベタイン含有量(100gあたり) |
小麦ふすま | 1339 mg |
小麦胚芽 | 1241 mg |
ほうれん草 | 600-645 mg |
ビーツ | 114-297 mg |
プレッツェル | 237 mg |
えび | 219 mg |
小麦パン | 201 mg |
クラッカー | 49-199 mg |
ベタインに確認されている作用や効果
ベタインには筋力を向上させる働きがあり、筋トレをしている人には欠かせない成分です。ベタインを摂取することで、筋トレにどのようなプラスの影響がもたらされるのか、詳しく見ていきましょう。また、筋力向上のほかにも期待されている効果について紹介します。
1.筋力の向上
ベタイン摂取によりベンチプレスの重量や回数アップが望めます。
1日2.5gのベタインを14日間摂取し、10セットベンチプレスを実施したところ、回数と重量が約6.5%増加しました。また、運動後の血中乳酸量は、プラセボ摂取 (270%増加) と比較して、ベタイン摂取 (210%増加) でより少ない増加量となりました。ベタイン摂取により乳酸が溜まりにくくなっていると言えます。これらの結果より、ベタインを補給することで、ベンチプレスの回数や重量が増加し、筋力アップにつながることが分かりました出典[3]。
また、男性の大学アスリートを対象とした試験でも、ベタインが筋力を向上させることが明らかになっています。16人の男子大学生に1日5gのベタインを6週間摂取してもらったところ、オーバーヘッドメディシンボールスローとオーバーヘッドプレス、ハーフスクワットのパフォーマンスが大幅に向上しました出典[4]。ベタインは、大学生アスリートのパフォーマンスを向上させるための有用な栄養素であると言えます。
趣味で筋トレをしている方も本気でスポーツをしている現役アスリートの方も、筋力を向上させるベタインの摂取はトレーニングに有効です。サプリメントを利用してベタインを積極的に摂取するようにしましょう。
2.体脂肪の減少
ベタインは体脂肪の減少に効果があります。
若年層を対象に、ベタイン1日2.5gを摂取しスクワットなどのトレーニングを実施してもらいました。その結果、ベタイン摂取群において体脂肪率は-3.3%、脂肪量は-2.0kgと大幅に減少しました。ベタインの補給は脂肪量の減少を促進する可能性があることが示されました出典[5]。
195人を対象とした6つの研究結果から、ベタインを補給することにより、体脂肪率が-2.44%、脂肪量が-2.53kgと大幅に減少することが示されました。体重の減少は-0.29kg、BMI指数は-0.10kg/m2と減少率は低く、ベタインは体脂肪の減少に効果があることがわかります出典[6]。体重やBMI指数もわずかではありますが減少が見られました。大規模調査の結果からも、ベタインは体脂肪の減少に効果があることがわかります出典[6]。
ダイエット中の方はベタインを摂取することで体脂肪が減少する可能性があります。食事やサプリメントから積極的に摂取しましょう。また、ジムで筋トレをしながらダイエットに励んでいる人にとっては、筋力を向上させ体脂肪を減少させるベタインは一石二鳥の栄養素です。ベタインを摂取し美しい身体を手に入れましょう。
3.筋持久力の向上
ベタインには筋持久力を向上させる働きがあります。
男子大学生24人にベタインのサプリメントを15日間摂取してもらい、筋持久力や疲労率に及ぼす効果を調べました。その結果、ベタイン摂取群のスクワットの回数は、対照群で見られた回数よりも有意に多いことが分かりました出典[7]。
ベタインを摂取することでスクワット運動の筋持久力が向上し、トレーニングの質が上がります。ベタインは筋トレを支える有用な成分であるため、運動をしてる人は特に不足しないように努めましょう。
4.テストステロンの向上
ベタインはテストステロン量を増加させます。
29人のプロサッカーユース選手に1日2gのベタインを14日間摂取してもらったところ、テストステロン量が増加し、コルチゾール量が減少しました。コルチゾールはストレスがかかると分泌されるホルモンです。本来、激しい運動後は体に負荷がかかりストレスを感じたような状態となるため、コルチゾール量は増加します。テストステロンはコルチゾールと負の関係にあるため出典[8]、コルチゾール量が増えるとテストステロン量は減少します。
今回の研究から、ベタインは、思春期の激しいトレーニングによるテストステロンの減少を改善する可能性があることが分かりました。ベタインの補給による成長への悪影響(身長や体重)は見られておらず、スポーツ選手にとって有効な成分と考えられます出典[9]。
16歳前後のハンドボール選手10人に1日2.5gのベタインを14日間摂取してもらったところ、テストステロン量の増加が見られたという研究もあります。それに加え、ベタイン摂取によりコルチゾールと乳酸の低下が見られ、レッグプレスとベンチプレスの回数が増えました。このことから、ベタインは運動によるコルチゾールの増加を抑え、上半身と下半身の筋持久力を改善することが分かりました。
ベタインは、運動によるコルチゾールの増加を防ぎテストステロンを向上させます。そのため、スポーツや筋トレに励んでいる方には非常に有効な成分と言えます。筋肉量増加や男性の生殖機能発達に効果的なテストステロン量を向上させるために、ベタインを積極的に摂取するようにしましょう。出典[10]
5.筋肉分解を抑制
ベタインの筋肉分解抑制作用を解説する前に、同化と異化についてご説明します出典[11]。
- 同化:代謝によって、複雑な物質を合成し体を作ること
- 同化ホルモン:成長ホルモン、インスリン、テストステロン、インスリン様成長因子1 (IGF-1) など
- 異化:代謝によって、複雑な物質を分解しエネルギー源とすること
- 異化ホルモン:コルチゾールなど
筋肉の分解=異化を意味しており、それを抑制するためには同化ホルモンの働きが必要となります出典[12]。Aktやp70 S6kといった物質がリン酸化されることにより同化筋シグナル伝達が進み、筋肉が作られ筋力アップにつながります。AMPKはリン酸化により活性化し、同化作用を阻害、異化作用を活性化します。
上記を踏まえて、ベタインの筋肉分解抑制作用について見ていきましょう。
2011年に行われた研究により、ベタインの補給が筋肉分解を抑制し、筋力を向上させることが示されました。
活動的な12人の男性に1日1.25gのベタインを14日間摂取してもらい、スクワットやボックスリフトテスト(荷物持ち上げトレーニング)などを実施しました。その結果、ベタイン摂取後に、スクワットの回数とボックスリフトテストで持ち上げることができた荷物の数が大幅に増加しました。また、ベタイン摂取によって成長ホルモンが大幅に増加し、コルチゾール量やAMPKリン酸化の減少が見られました。さらに、筋肉の総Aktが増加しました。ベタインを摂取していない群においては、Aktやp70 S6kのリン酸化の減少が見られました。
これらのことから、ベタインは同化ホルモンを増加させ同化筋シグナル伝達を維持することによって、筋力をアップし筋持久力を向上させます。また、異化ホルモンであるコルチゾールを減少させ、筋肉の分解を抑制するAMPKリン酸化を阻害しました出典[13]。
2013年に行われた研究においても、ベタインの同化作用が確認されています。12人の男性に1日1.25gのベタインを14日間摂取してもらったところ、成長ホルモンおよびIGF-1の大幅な増加、コルチゾール量の大幅な減少が見られました。また、筋肉の総Akt量の増加、Aktおよびp70 S6kのリン酸化が見られました。AMPKのリン酸化は減少しました。これらの結果より、ベタインは同化を促進し筋肉分解を抑制することが示唆されます出典[14]。
ベタインは、筋肉を分解するホルモンであるコルチゾールを減少させ、筋トレの質を向上させる栄養素です。筋トレをしている方は、ベタインの含まれているサプリメントやプロテインを摂取することで、トレーニングの質を向上させることができるでしょう。
6.脳機能のサポート
ベタインは脳機能の改善に有用な可能性があります。
認知機能や神経保護作用の改善とベタインを関連付ける多数の臨床報告があり、脳機能をサポートする物質として注目されています。
浸透圧ストレス条件下において、ベタインが、グリシンやグルタミン、タウリンといった浸透圧を調節する物質の濃度を変化させることが明らかになりました。このことから、ベタインが抑制性神経伝達物質の生成やリサイクル経路に影響を与える可能性があることが示唆されます出典[15]。まだ明らかになっていない部分も多いですが、ベタインは脳機能を改善しうる物質として期待されています。
ベタインの摂取量
ベタインの効果を十分に発揮するための適切な摂取量についてご紹介します。
食事における1日あたりのベタイン摂取量は、平均1g〜2.5gの範囲とされています出典[1]出典[16]。また、前述した臨床試験においても、1.25g〜5gのベタインを使用して効果の確認がされています。
1日あたりのベタイン摂取量は、1g〜5g程度が適切で効果も期待できるでしょう。
まとめ
ベタインはテンサイから発見された化合物で、微生物や植物に含まれ細胞の浸透圧を調整しています。
筋力や筋持久力を向上させたり、男性ホルモンであるテストステロン値を上昇させたりと、男性にとって非常に魅力的な栄養素です。
摂取量は1日1g〜5g程度が良いとされています。小麦や甲殻類などに豊富に含まれており食事から摂取することも可能ですが、含有量の表示されたサプリメントやプロテインを利用することでより手軽に摂取できます。ベタインの習慣的な摂取を続け、理想的なボディを目指しましょう!
出典
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