監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
トレーニーにおける白米の役割とは?
白米は日本人の食生活における「主食」に欠かせない存在です。しかし太りやすいというイメージから、ダイエット中の方や減量期には摂取を控えたい方もいるかもしれません。
しかし筋力トレーニングを行う方にとって、白米の摂取は非常に重要です。まずはトレーニーが白米を食べることで期待できる効果について解説しましょう。
エネルギー補給に最適
筋力トレーニングで十分なパフォーマンスを発揮するためには、エネルギー源を不足なく補充しておく必要があります。糖質を豊富に含む白米は、エネルギー補給の手段として適しています。
また糖質は脳や神経系の主要なエネルギー源でもあります。トレーニング中の集中力を高めれば、パフォーマンスの向上にも繋がるでしょう。
白米は消化に時間がかかる脂質や食物繊維が少ないため、速やかに吸収され血中の糖(グルコース)を増やします。玄米やパスタよりも血糖値を急激に上げられる白米の性質は、筋グリコーゲンの貯蔵を効率化するために役立ちます。
トレーニング中のエネルギー源を多く蓄えられればエネルギー切れを起こしづらくなるため、トレーニングの質も高まります。
糖質量が多く、血糖値を速やかに上げられる白米は、速やかなエネルギー補給に最適と言えるでしょう。
筋肉の合成をより効率的に
トレーニーが筋肉を増やすために必要なのは、炭水化物ではなくたんぱく質、と考える方も多いことでしょう。しかしたんぱく質による筋肉の合成は、炭水化物によるエネルギーの充足があってこそ効率的に行われるのです出典[1]。
もし炭水化物が不足してエネルギーを十分に作れなくなると、体は食事のたんぱく質を利用してエネルギーを得ようとします。高たんぱく質食を摂取していても、たんぱく質がエネルギー生成に使われるようでは筋肉の合成効率も落ちてしまうでしょう。
また、食事自体が不足している状態では、体はエネルギーを得るため筋肉のたんぱく質を分解します。今ある筋肉を減らすことにもなりかねないため、炭水化物の極端な制限は厳禁と考えましょう。
筋肉の分解を防ぎ、食事由来のたんぱく質で筋肉を効率的に合成するため、白米のような炭水化物食品の摂取は非常に重要です。
筋トレ中にはどれくらいの白米が必要?
糖質食品の代表格である白米は、トレーニーと相性のよい主食です。では筋力トレーニング中、実際にどの程度の白米を食べるべきなのでしょう。
摂取すべきカロリーや炭水化物の量は、体重や筋力トレーニングの強度、増量期か減量期か、などで異なります。
今回はトレーニーの体重を60kgと想定し、増量期のパターンと、ダイエットや減量期のパターンとを用意しました。
主食や補食として白米を用いる際の、実際に食べるべき量について確認してみましょう。
白米の糖質量は?
まずは白米のエネルギーと、血糖値の上昇に大きく関わる糖質量について確認しましょう。
【炊いた米100gあたりの栄養素(日本標準食品成分表(八訂)増補2023年より)出典[2]】
エネルギー | 炭水化物 | 利用可能炭水化物 (差引き法) | |
白米100g | 156kcal | 37.1g | 36.1g |
白米150g | 234kcal | 55.7g | 54.2g |
白米200g | 312kcal | 74.2g | 72.2g |
※食品中の糖質量(食物繊維以外の炭水化物)には様々な算出法がありますが、今回は差引き法から数値を引用しています。
ダイエット中の方であれば1食あたり150g、筋肉を増やすため摂取カロリーを増やしている場合は200gがおおよその目安となります。各時期における摂取量について、もう少し詳しく確認しましょう。
増量期の白米摂取量
筋肉を増やすためとはいえ、いくら食べてもよいわけではありません。急激な体重増加は体脂肪合成のリスクを高め、体にも大きな負担となります。
増量期には消費カロリー+10~20%の食事を続け、1週間あたり0.25~0.5kgのペースで体重を増やすことが推奨されています。たんぱく質(P)、脂質(F)、炭水化物(C)のバランスは、PFC=25~30:20~30:40~55を目安にするとよいでしょう出典[3]。
増量期においては筋肉量を増やすためにたんぱく質が、摂取カロリーを効率よく増やすために脂質の摂取がそれぞれ重要視されます。しかしたんぱく質や脂質を摂りすぎて、炭水化物の量が減りすぎないよう気を付けましょう。
1日の摂取カロリーを3200kcal、炭水化物のカロリー割合を50%として計算してみましょう。このとき炭水化物からは1600kcal摂る必要があります。
炭水化物は食物繊維と糖質(利用可能炭水化物)で構成され、食物繊維はエネルギーとして利用できません。そのため1600kcal相当の400gは、炭水化物量ではなく糖質量で計算すべきです。
仮に1日の糖質すべてを白米で補おうとした場合、約1.1kg以上の摂取が必要です。しかし野菜や調味料にも糖質が含まれています。そのため主食や補食の糖質源白米からの摂取は、900~1000g程度と考えるべきでしょう。
【増量期の摂取目安一例】
総摂取カロリー | 3200kcal |
利用可能炭水化物の摂取カロリー | 1600kcal(400g) |
白米換算 | 1108g |
1日の摂取量目安 | 900~1000g |
減量期の白米摂取量
減量期には体を引き締めるため、摂取カロリーを消費カロリーから500~700kcal程度減らした食事が推奨されています出典[3]。過度なカロリー制限は筋肉量の減少に繋がるため、長期間での緩やかな体重減少がおすすめです。
PFCバランスは体脂肪を効率よく落とすため脂質を制限し、PFC = 25~30:15~20:50~60で計算しましょう。
糖質源を削りすぎるとエネルギー源が不足し、筋肉の分解が起こりやすくなります。減量期においてもお米や麺類などの主食は抜かないよう注意すべきです。
仮に摂取カロリー2200kcal、炭水化物の割合を55%として計算してみましょう。このとき炭水化物からは1210kcal摂る必要があります。
1日あたりの糖質の目安は302gとなり、増量期と比較すると25%の糖質カットを意識する必要があるでしょう。
1日の糖質すべてを白米で補おうとした場合、必要となる白米は約840gです。野菜や調味料などに含まれる糖質を計算に入れると、主食や捕食として使える白米の量は680~750g程度が適当と考えられますね。
【減量期の摂取目安一例】
総摂取カロリー | 2200kcal |
利用可能炭水化物の摂取カロリー | 1210kcal(302g) |
白米換算 | 837g |
1日の摂取量目安 | 680~750g |
筋トレ中の白米の食べ方は?
1日に摂るべき糖質量と、おおよその白米の量を把握できたところで、増量期と減量期、それぞれの食べ方について考えてみましょう。
以下では食事や補食への白米の分配方法や、組み合わせるべき食品、体脂肪合成を抑えるための工夫などについて解説します。増量期と減量期で食べ方を変えることで、より効率的なボディメイクが可能となるでしょう。
増量期の食べ方
1日に3200kcal摂取する場合、必要な利用可能炭水化物(糖質)はおよそ400gです。主食や捕食をすべて白米で補う場合の分配方法について考えてみましょう。
900~1000gの白米を1日に食べる場合、まずは1食分を200gとして、食事に600gの消費を割り当てます。残り300~400gの白米はトレーニング前後の補食とするとよいでしょう。
トレーニング前には強度にあわせて体重1kgあたり1~4gの炭水化物の摂取が適切とされています。運動の1~4時間前に摂ることで筋肉や肝臓のグリコーゲン貯蔵を効率的に行えます出典[4]。体重60kgの方が1g/kgの白米を食べる場合、必要な炭水化物は60gで、約170gの白米が必要となるでしょう。
トレーニング後すぐの糖質補給は、グリコーゲンの再貯蔵効率を高めるため、1時間体重1kgあたり1.0~1.2gの摂取が望ましいとされています出典[5]。こちらも同様に60㎏の方で考えると、60~72gの摂取が必要となり、白米で補うなら160~200g程度の摂取が適切と考えられます。
【増量期の摂取目安一例(消費カロリー3200kcal/日、体重60kgの方の場合)】
朝食・昼食・夕食 | 200gずつ |
トレーニング前(1時間前) | 166g |
トレーニング後(30分以内) | 166~199g |
トレーニング前には糖質の吸収性を早めるため、白米単体での摂取がおすすめです。おにぎりやお茶漬けなど、手軽に摂取できるものを考えましょう。
一方、トレーニング後にはたんぱく質や脂質を含む食品との組み合わせがおすすめです。たんぱく質や脂質と合わせての糖質補給により、筋グリコーゲンの貯蔵効率が高まります出典[6]。
減量期の食べ方
1日2200kcal摂取する場合、約300gの利用可能炭水化物(糖質)が必要です。
約680~750gの白米を1日に食べる場合、1食分の目安は150g、食事で450gを摂るようにします。トレーニングのパフォーマンスを高めるため、前後の補食は増量期と同様に摂りましょう。
トレーニングの前後、両方のタイミングでの摂取が難しい場合には、トレーニング前の摂取を優先しましょう。トレーニング後にはホエイプロテインなど、たんぱく質と糖質を同時に摂取できる食品を活用するのも選択肢のひとつです。
【減量期の摂取目安一例(消費カロリー3200kcal/日、体重60kgの方の場合)】
朝食・昼食・夕食 | 150gずつ |
トレーニング前(1時間前) | 166g |
トレーニング後(30分以内) | 少量の白米またはホエイプロテイン |
減量期にもエネルギー補給は必要ですが、体脂肪合成は極力抑えたいところ。そのため血糖値を急激に上げる白米を食べる際には、食べ方を工夫する必要があります。
一つ目の工夫は、炊いた白米を一度冷やすというものです。白米を冷やすと、でんぷんの一部が難消化性の「レジスタントスターチ」に変化します。レジスタントスターチは食物繊維に似た働きを持つため、血糖値の上昇を抑える効果が期待できるのです出典[7]。
2021年に文教大学で行われた食品試験では、レジスタントスターチは白米や麺類などの冷却により増加し、電子レンジの再加熱によっても失われないことが判明しています出典[8]。減量期やダイエット中には血糖値の急上昇を抑えるため、白米を一度冷やす手間をかけてみるとよいでしょう。
二つ目の工夫は「ベジファースト」への意識です。サラダやおひたし、味噌汁など、食物繊維を多く含む副菜や汁物から先に食べることで、白米の血糖値の上昇を抑えるために役立つでしょう。
三つ目の工夫として、食事の白米を玄米に置き換える方法があります。玄米には栄養素の吸収を緩やかにする食物繊維が白米より多めに含まれるため、血糖値の急上昇を抑えるために役立つでしょう。
白米に関するよくある質問
筋肉を増やしたい増量期にも、体脂肪を絞りたい減量期にも、エネルギー源である糖質食品の確保は重要です。糖質量が多く、脂質が控えめな白米は、増量期にも減量期にも活用しやすい食品です。
しかしダイエット中に糖質食品を摂ることや、白米の活用法について不安を持たれる方もいるかもしれません。
そこで今回は白米に関する質問の中で、よく寄せられるものについて回答しましょう。白米の食べ方について悩んでいる方、不安がある方は、ぜひ以下を参考にしてください。
白米は太りやすい?
白米は血糖値を急激に上げるため太りやすい、とはよく聞く話かと思います。ではなぜこのように言われているのでしょう。
血糖値が急激に上がると、血糖値を下げるためのホルモン「インスリン」が分泌されます。インスリンは血中にある糖(グルコース)を、血液の外に出して蓄えようとします。グルコースの貯蔵先は肝臓や筋肉のグリコーゲン、そして脂肪組織内の中性脂肪です。
トレーニングにより、グリコーゲンを消費する予定がある場合には、血糖値を急激に上げる白米はエネルギー補給に最適です。しかしエネルギーを消費する機会がない場合には、インスリンは体脂肪を合成する方向にばかり蓄えられてしまうでしょう。
白米が太りやすいと言われる理由は、血糖値の急上昇が体脂肪合成を促す性質を持つためなのです。
エネルギー消費を控えているタイミング以外での、白米の食べ過ぎは禁物です。とくに減量期には、白米を冷やしたり野菜を先に食べたりといった工夫で、血糖値の急上昇を起こさないような意識が重要になるでしょう。
玄米と白米、どちらがトレーニー向き?
玄米の方が白米よりも太りにくいと言われるのは、血糖値の上がりにくさによるものです。玄米も白米もほぼ同等の糖質を含み、エネルギー補給の手段として活用できます。
実際に玄米と白米のカロリーや炭水化物量を比較してみると、それほど大きな差がないことが分かるでしょう。
【炊いた米100gあたりの栄養素(日本標準食品成分表(八訂)増補2023年より)出典[2]】
エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | |
白米 | 156kcal | 2.5g | 0.3g | 37.1g |
玄米 | 152kcal | 2.8g | 1.0g | 35.6g |
玄米にはビタミンやミネラル、食物繊維を効率よく摂取できるという特徴があります。食物繊維には血糖値の上昇を抑える効果が、ビタミンB群にはエネルギー代謝を促す効果が期待できます。
トレーニング前後の糖質補給においては、血糖値を上げやすい白米が適しています。効率的に筋グリコーゲンを蓄えるため、消化に優れた白米を選びましょう。
玄米の硬さや味に抵抗がないようであれば、減量期の3食は玄米へ切り替えるのもよい方法です。増量期においても夕食時にはエネルギーを消費する機会がないため、玄米の取り入れを検討してもよいでしょう。
低炭水化物ダイエットで効率的に痩せられる?
一般的な日本人の食事において、炭水化物は総摂取カロリーの約半分を占めます。そのため炭水化物を制限すればおのずと総摂取カロリーも減少し、体重の減少に繋がります。
たとえば2014年に南アフリカのステレンボシュ大学から発表された論文では、低炭水化物食とエネルギーバランスの取れた減量食、どちらも短期間で同じような減量効果が確認できたと報告されています出典[9]。
このように低炭水化物ダイエットでは、エネルギーバランスのとれた減量食と同様に、短期間での減量効果が得られます。しかし炭水化物カットはトレーニングの質を大きく下げ、筋肉の分解を引き起こすため、トレーニーには不向きです。
本格的なトレーニングを行わないダイエット志向の方にとっても、筋肉量を維持することは重要です。筋肉は基礎代謝を大きく上げる臓器であり、極端な炭水化物制限で筋肉量が減ると、エネルギー消費の少ない、太りやすい体になってしまうでしょう。
筋肉量を維持しつつ体重を落としたい場合には、炭水化物ではなく脂質のカットが有効です。適切な量の炭水化物を摂り、痩せやすい体を作りましょう。
適量の白米でボディメイクを効率化しよう!
トレーニーにとってエネルギー源である糖質食品の摂取は非常に重要です。低脂質かつ血糖値を急激に上げる性質を持つ白米は、筋力トレーニングと相性の良い食品と言えるでしょう。
増量期、減量期ともに主食の摂取は不可欠です。野菜や調味料由来の糖質を考慮しつつ、1日に取るべき白米の量を計算してみましょう。増量期の目安は1食あたり200g、減量期の目安は1食あたり150gです。
減量期においては血糖値を急激に上げないよう、一度冷やしたりベジファーストを心掛けたりといった工夫が必要です。玄米を取り入れることも有効であるため、硬さや味に抵抗がない場合は白米と玄米の併用もおすすめです。
適切な量の白米を取り入れ、トレーニングの質を高めましょう。
出典
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