ラーメンは筋トレにNG?適切な付き合い方とは
2023年8月28日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

ラーメンってどんな食べ物?

中華麺とスープ、さまざまなトッピングからなるラーメンは、中国からの伝来を起源としています。その後、独自のアレンジやインスタントラーメンの積極的な開発を経て、ラーメンは日本独自の文化として浸透しています。

ラーメンの筋肉に対する相性を確認する前に、主食としてのラーメンの特徴や、ほかの麺類との違いについて簡単に説明しましょう。

中華麺とほかの麺類との違い

日本にはラーメンのほか、うどんやそうめん、スパゲッティ、蕎麦など、さまざまな種類の麺類が広く親しまれています。有名な麺類と、ラーメンに用いられる中華麺の栄養成分を確認してみましょう。

【麺類100g(茹でた後)あたりの栄養成分(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より】出典[1]

 エネルギー(kcal)たんぱく質(g)脂質(g)炭水化物(g)
中華麺1334.90.629.2
うどん952.60.421.6
そうめん1143.50.425.8
スパゲッテイ1505.80.932.2
そば1304.8126

まずはエネルギーと三大栄養素の比較です。茹でたラーメン100gあたりのエネルギー密度は、うどんやそうめんよりもやや高めであり、たんぱく質や脂質、炭水化物を多めに摂取できます

【麺類100g(茹でた後)あたりの栄養成分(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より】

 食塩相当量(g)食物繊維(g)
中華麺0.22.8
うどん0.31.3
そうめん0.20.9
スパゲッテイ1.23
そば02.9

また、塩分や食物繊維を比較してみると、食塩相当量は少なめ、食物繊維は多めであることが分かります。

エネルギー密度やたんぱく質量、食塩相当量や食物繊維の量は蕎麦によく似ていますが、脂質量や蕎麦よりも少なめです。麺だけで比較すれば、中華麺は高たんぱく質かつ低脂質であり、塩分を摂り過ぎる心配もない、優秀な食品であると言えそうですね。

 

スープとほかの味付けとの違い

次に麺類には欠かせない、スープの栄養成分を確認しましょう。

味付けは各店舗で提供される商品や、インスタント食品のメーカーによっても異なるため一概には言えません。それでもラーメンのスープは、うどんや蕎麦の「つゆ」よりも一般に高脂質かつ高塩分です。とくに塩分については、スープを全て飲むと過剰摂取を招くため、ラーメンのスープを飲まないように、とメディアでもよく話題になりますよね。

一般的なラーメンスープには5~6g、インスタントラーメンにもほぼ同量の塩分が含まれています。うどんや蕎麦のつゆにも3~4gの塩分が含まれていますが、これらには基本的に脂質がほとんど含まれていません。

脂質と塩分が豊富なラーメンのスープは食欲を刺激するため、うどんや蕎麦のつゆよりも多く飲まれがちです。ラーメンは中華麺だけ見ると良質な食品です。しかしスープと合わせると脂質や塩分などの栄養過多が起こりやすく、筋トレのパフォーマンスを落としてしまうため注意が必要です。

 

ラーメンは筋トレと相性が悪いのか?

ラーメンに使用されている中華麺は比較的優れた糖質食品です。しかしスープとあわせて食べると高脂質・高糖質・高塩分の食品となるため、高頻度での摂取はおすすめできません

脂質や塩分の過剰摂取は、筋力トレーニング中の方に限らず、体脂肪増加や高血圧など、健康上のリスクに関わります。また高脂質・高糖質・高塩分の食品は食欲を刺激する食品であるため、食べ過ぎによるカロリーオーバーを起こしがちです。ダイエット中はとくに気を付けて摂取する必要があるでしょう。

一方、適度なたんぱく質や脂質を含んだ食品の摂取により、筋肉へのグリコーゲン蓄積を促進するホルモン、インスリンの分泌量が上がることが分かっています出典[2]

筋肉へのエネルギーチャージに効率的であるため、バルクアップ中の増量期には、うどんや蕎麦ではなく、脂質の多いスープを絡めた中華麺の利用が有効である場合があります。

筋力トレーニング中だからといって、ラーメンを徹底的に避ける必要はありません。適量の摂取を心掛け、バルクアップに役立ててみましょう。

 

ラーメンは太る?NGな食べ方3選

さまざまな麺類の中でも、ラーメンはとくに太りやすいと言われますね。脂質や糖質の過剰摂取により筋力トレーニングの効率が下がるのはもちろんのこと、高塩分食による生活習慣病への影響も懸念されます。

この章では、ラーメンを食べるときにおこないがちな悪習慣を振り返ってみましょう。心当たりのある方は、ラーメンを健康的に食べるため、次の習慣をやめるところから始めてみませんか。

1.チャーハンやギョーザと組み合わせる

中華料理店のチェーン店では、チャーハンやギョーザといった別の料理を半量にして、ラーメンと組み合わせられるメニューをよく見かけますね。単品でそれぞれ頼むよりも低価格のため、つい頼んでしまう方も少なくないのではないでしょうか。

しかしチャーハンもギョーザも、糖質と脂質からなる食品です。糖質と脂質が豊富なラーメンと組み合わせると、あっという間にエネルギー過多となってしまうでしょう。

また、チャーハンやギョーザには、ラーメンのトッピングとして不足しがちな野菜類がほとんど含まれていません。ラーメン単品で不足した栄養素を補えず、ただ糖質と脂質をかさ増しするだけになり、筋トレの効率を大きく落としてしまいます。

筋肉ではなく体脂肪を増やす行為は、トレーニングのパフォーマンスを落とすばかりです。メニューのお得感に釣られないよう、ラーメンと糖質食品との組み合わせは絶対に避けましょう。

  
2.スープをすべて飲む

ラーメンを高脂質かつ高塩分の食品にしている原因は、濃い味のスープにあります。全て飲み干すとエネルギーが増えてしまうのはもちろんのこと、塩分の過剰摂取が非常に深刻です。

厚生労働省が発表している日本人の食事摂取基準においては、高血圧などの生活習慣病防止のため、男性では1日7.5g以下、女性では1日6.5g以下に塩分摂取を留めることが目標量として推奨されています出典[3]

ラーメンスープを全て飲み干すと、中華麺自体の塩分とあわせて7~8gの塩分を摂取してしまいます。1日の食塩摂取量を軽く超えてしまうため、ほかの食事とあわせると塩分の過剰摂取は避けられません。

なお、トレーニングで汗をかいているため塩分補給が必要と考える方もいるかもしれませんが、発汗時の塩分補給は、発汗量に応じた量で適切におこなうべきです。ラーメンスープによる塩分補給は明らかに過剰であるため、スープを全て飲んで塩分補給を、という考え方は厳禁です。

塩分補給は汗の補充として、水分と一緒におこないましょう。

 

3.夜中に食べる

遅い時間帯の夕食や、空腹を紛らわせるための夜食として、ラーメンを食べるのは避けるべきです。睡眠中は活動によりエネルギーを消費できないため、日中に食べるよりも体脂肪の合成に繋がりやすくなっています

また、ラーメンのように、脂質を含んだ量の多い食品は消化に時間がかかるため、睡眠中の消化器系に負担が掛かります。睡眠の質が下がり、睡眠中に効率よく分泌されるはずの成長ホルモンやテストステロンが減ってしまいます。

体脂肪合成を避け、筋肉の成長を効率化するホルモンの分泌量を落とさないため、夜遅い時間帯に、食べ応えのある糖質食品を食べるのはやめておきましょう。

 

こう食べよう!ラーメンのおすすめ活用法3選

ラーメンを食べる際には、このように注意すべき点が複数あります。しかし適切な量や組み合わせ、タイミングを工夫すれば、筋力トレーニング中の食事として十分活用できます。

では、どのようにラーメンを食べれば、筋力トレーニングの質を高められるのでしょう。

1.筋トレ後のエネルギーチャージに

ラーメンは十分な糖質を含み、またたんぱく質や脂質もあわせて摂取できるため、トレーニング後の食事として適しています。

たんぱく質と脂質を適度に含んだ糖質食品の摂取により、インスリンの分泌効率が高まります。インスリンによって、トレーニングで失われた筋グリコーゲンの再補充が促進されます。筋損傷や筋疲労からの回復が早まり、良好なパフォーマンスの維持が期待できるでしょう。

なお、トレーニング前の食事においては、吸収速度の高い高糖質食品を摂取して、速やかにエネルギーを生成する必要があります。ラーメンに含まれる脂質は糖質の吸収速度を落とすため、トレーニング直前の摂取では糖質からのエネルギー変換が間に合わない可能性があります。

ラーメンの豊富な糖質を活かしきれないため、トレーニング前の摂取は避けましょう。

 

2.豚骨より醤油や塩ラーメンを

ラーメンの脂質量を左右するのはスープの味付けです。スープの脂質量が多いほど、高塩分の濃い味付けであるほど、スープを飲むことによるトレーニングへのデメリットも増加します。

スープの塩分量は店舗やメーカーによって大きく異なるため、一概に「醤油ラーメンより豚骨ラーメンの方が高塩分」とは言い切れません。しかし脂質量に関しては、背脂などが入った豚骨ラーメンが確実に多めです。麺の糖質やスープの塩分とあわせて、食欲を増進させやすい味付けとなっています。

麺のおかわりやスープの飲みすぎに繋がりやすく、カロリーオーバーや塩分の過剰摂取を招きやすいため、いわゆる「こってり」とした味付けのものは意識して避けましょう

また、脂質量が比較的少ない醤油ラーメンなどにおいても、トッピングにバターを使った「バター醤油」の味付けがされている場合もあります。醤油、と名前にあるから低脂質、とは考えず、バターやバラ肉など、トッピングに高脂質の食品が使われていないかもチェックしておきましょう。

 

3.たんぱく質食品や野菜と組み合わせて

中華麺はうどんやそうめんと比較するとたんぱく質が多めですが、1食分に必要なたんぱく質量を補うには到底足りません。また野菜も摂取できないため、ラーメン単体では栄養に大きな偏りが生じてしまいます。

野菜やたんぱく質食品から摂取できるビタミンやミネラルは、栄養素の代謝や筋肉の機能などのサポートに欠かせません。また、野菜に含まれる食物繊維は、筋力トレーニング中の高たんぱく質食により悪化しがちな腸内環境を整えるために役立ちます。

たんぱく質や野菜を摂取できる料理として、レバニラ炒めなどを追加注文するのもひとつの方法です。また、より手軽に取り入れたい場合は、トッピングにたんぱく質食品や野菜を取り入れる方法がおすすめです。

煮込みラーメンの「ちゃんぽん」であれば、野菜や肉類を多めに摂取できます。たんぱく質の強化や野菜の補充がより手軽におこなえるため、メニューにある場合はぜひ試してみましょう。

 

4.必要な糖質量に応じて替え玉もアリ

一般に、ラーメン1食分の中華麺の量は、茹でた状態で280gほどとされています。この1食分には糖質が78gほど含まれており、一般的な主食の糖質としては十分な量を摂取できます。

しかしより高強度かつ長時間のトレーニングによりエネルギー消費が激しい場合、体格がよく体重が重い場合には、必要に応じて替え玉で糖質量を調整するのもよいでしょう。

グリコーゲンの再貯蔵をより効率的に行うには、1時間に体重1kgあたり1.0~1.2gの糖質摂取を、運動後すぐから4~6時間後まで続けるのが理想です出典[4]

体重60kgの方であれば、1時間に60~72gの糖質摂取が理想であるため、ラーメン1杯で十分な量となります。しかし体重90kgの方は90~108gの糖質を摂りたいため、一般的なラーメン1杯では不足することもあるでしょう。

自身の体格やトレーニングの負荷を考慮して、中華麺の摂取量を調整しましょう。なお、当然ながら麺を増やしてもスープをおかわりするのは厳禁です。あくまで増やすのは麺だけ、という意識を忘れないでくださいね。

 

筋トレ効率UP!おすすめトッピング5選

ラーメンはさまざまな食材と相性がよいため、お店においてもさまざまなトッピングを選べます。

この章では一般的なトッピングの中から、特にトレーニングの効率UPに繋がりやすい食材を紹介しましょう。トレーニング後のラーメンにどのようなトッピングをすればよいか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.味玉

卵はラーメンのみならず、あらゆる料理にプラスすることで手軽にたんぱく質の強化ができる、非常に優秀な食品です。

卵は動物性食品であるため必須アミノ酸のバランスがよく、筋肉を合成するために使われやすい性質があります。

1個の全卵50gから6.1gほどのたんぱく質を摂取できるため、あと少したんぱく質を増やしたい場合に積極的に使っていきましょう。

ゆで卵でもラーメンとの相性はよいですが、よりおいしく味わいたい場合にはお酢やだし汁、醤油などの調味液に漬け込んだ味玉をおすすめします。お酢が染み込んだ味玉では、お酢のクエン酸が加わるため、より高い疲労回復効果が期待できます。

卵には脂質も含まれますが、良質かつ適量であるためダイエット中の方でも摂取を控える必要はありません。たんぱく質の強化のため、ラーメン1杯につき1個を目安に加えてみてはいかがでしょうか。

 

2.牛肉

より多くのたんぱく質を摂取したい場合には、煮込んで味付けされた牛肉を活用してみましょう。脂がやや多いため、醤油ラーメンなど脂質量の少ない味付けを選んで全体の脂質量を調節することが重要です。

牛肉からはL-カルニチンを摂取できます。L-カルニチンには脂肪酸の代謝を促進する効果があり、摂取した脂質をエネルギーに変えやすくしてくれます出典[5]

体脂肪合成を防ぎ、エネルギーの生成効率を上げるL-カルニチンは、脂質量が多くなりがちなラーメンの摂取において好相性です。たんぱく質を豊富に摂取できる牛肉から摂取することで、トレーニングの質の向上が見込めるでしょう。

 

3.豚チャーシュー

豚チャーシューはラーメンの定番とも言える具材であり、好んでトッピングしている方も多いのではないでしょうか。

豚肉も牛肉と同様に豊富なたんぱく質の摂取源として活用できます。さらに豚肉にはビタミンB1が豊富に含まれており、中華麺の糖質をエネルギーに変えるためのサポートとして活躍します。高い疲労回復効果が期待できるため、高強度のトレーニングにより疲労感が溜まりやすいと感じた日の食事には、豚肉を取り入れてみましょう。

 

4.鶏むね肉

高たんぱく低脂質なたんぱく質食品の代表格といえば、やはり鶏むね肉ですよね。ラーメンのスープが濃い味付けであるため、淡泊な味わいである鶏むね肉とは味の面でも好相性です。片栗粉を付けて茹でる「水晶鶏」を作り、タレの代わりにスープを使用すれば、つるりとしたのど越しのよい鶏肉をおいしく味わえます。

鶏むね肉はダイエット向きの食材であることに加え、イミダゾールペプチドによる高い疲労回復効果も期待できます。

イミダゾールペプチドは鳥類の筋肉に豊富に含まれるペプチドです。とくに羽を動かすむね肉の部分に含有量が多く、長期間の飛行を可能にする持久力の助けとなっていると考えられています。

豚肉が疲労回復効果の高い食品である一方、鶏むね肉は抗疲労効果により、トレーニングのパフォーマンス向上に役立ちます出典[6]。疲労の蓄積を避け、長時間のトレーニングの質を高めたいときには、鶏むね肉を活用してみましょう。

 

5.ネギや玉ネギ

ネギはラーメンに加える野菜の代表格です。一般的な緑の小ネギだけでなく、白い太ネギや玉ねぎなども活用してみましょう。味に変化が生まれて食べやすくなることに加え、トレーニング後のコンディションを整える効果が期待できます。

ネギ科の野菜に含まれるアリシンという成分には、疲労回復効果が期待できます。生での摂取により効率的に摂取できるため、ネギを細切りや薄切りにしてトッピングしてみましょう。

なお、アリシンは加熱することでスコルジニンに変化し、エネルギー生成の効率化にも役立ち、筋疲労からの回復を早める効果を発揮します。ネギ類の生での摂取を苦手としている場合には、加熱での活用もおすすめです。

また、玉ネギにとくに豊富なケルセチンには高い抗酸化作用が確認されており、筋肉痛における筋肉の炎症を抑制する働きがあります出典[7]。痛みの緩和によりパフォーマンスが向上するため、トレーニングの効果をより得ることができるでしょう。

 

まとめ

健康的というイメージの薄いラーメンは、食べ過ぎや料理の組み合わせに十分注意する必要があり、筋力トレーニングとの両立は少々難易度の高い食品です。しかし食べ方を工夫すれば、トレーニング後の糖質補給として十分に活用できるほか、たんぱく質食品や野菜のトッピングによりバルクアップの効率化にも役立ちます。

高糖質・高脂質・高塩分であるラーメンの食べ過ぎを防ぐため、野菜でかさを増したり、脂質量の少ないスープを選んだりといった工夫を欠かさないようにしましょう。体脂肪を増加させないよう、適度にラーメンを取り入れて糖質補給に役立ててみてください。

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