執筆者
薬剤師
田中 嘉尚
薬剤師免許を取得後、臨床治験モニター、医療ライター、病院薬剤師、保険薬局薬剤師を経験。現在病院薬剤師をしながら、フリーライターをしている。ITに興味があり、前職の病院で恩師との出会いにより「副作用発現リスク精査表」を開発し、特許を取得。現在も共同研究中。フリーライターになろうと思ったきかっけは、恩師が現役著者で論文や学会誌などの文書の書き方をご指導頂いたことが影響している。
キシリトールとは
まずはキシリトールの基本情報について紹介します。
1.どんな栄養素?
キシリトールは、食品中のキシロースから合成される天然の糖アルコールの一種で、虫歯予防の効果が確認されている特定保険食品です。以前は術後の輸液療法や火傷、ショックの患者および糖尿病患者のダイエット食などに使用されていましたが、現在は口腔ケアを目的とした食品の甘味料に使用されています。特に虫歯の原因とされるミュータンス菌を、キシリトールにより消耗させ、エネルギーを弱めます出典[1]。
2.体の中でどんな働きをする?
キシリトールは、ミュータンス菌の糖質代謝を阻害します。その作用機序は、ミュータンス菌がホスホエノールピルビン酸依存ホスホトランスフェラーゼシステム(PTS)によりキシリトールを取り込みリン酸化して、キシリトール5リン酸を作ります。このキシリトール5リン酸が、それ以降の糖代謝系に入らないまま排出されます。一部排出されずに菌体内に蓄積されたキシリトール5リン酸は、糖代謝系の酵素であるホスホフルクトキナーゼやホスホグルコースイソメラーゼ、ピルビン酸キナーゼの3種類を阻害します。この阻害作用により歯垢を形成しているミュータンス菌のエネルギーが弱まり、歯垢が取れやすくなります出典[2]。
キシリトールに確認されている作用や効果
虫歯予防の効果があるサプリメントとして注目されるキシリトールですが、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。この章ではキシリトールで確認されている4つの効果について紹介します。
1.虫歯予防
キシリトールは、虫歯の原因とされるミュータンス菌のエネルギーを弱める働きがあります。
ミュータンス菌は食事で摂取した砂糖などを栄養源とし、歯垢や酸を生成、歯の表面を守るエナメル質を溶かします。エナメル質が溶けると、歯からミネラルやイオンなどが流出します。キシリトールは、ミュータンス菌によって溶かされた歯を修復する再石灰化を促進します。再石灰化されてできたエナメル質は、溶ける前のエナメル質より硬く、虫歯になりにくい歯になります。
多くの長期的な臨床研究で、虫歯予防効果が証明された甘味料は、キシリトールとソルビトールだけです。虫歯予防に関する40ヵ月にわたる研究では、キシリトールガムやソルビトールガムを摂取(キシリトール;8.0〜9.7g/日、ソルビトール;9.0g/日)した場合としない場合と比較し、摂取した方に虫歯予防効果が証明されました。また、キシリトールガムとソルビトールガムの比較では、キシリトールガムがより効果的であることが示唆されました出典[3]出典[4]。
最近ではキシリトール配合のガムなどが多く販売されています。ガムを嚙む習慣をつけるだけで歯を強くしてくれるので、試してみる価値があるのではないでしょうか。
2.口臭予防
口臭の原因が歯垢であり、その歯垢の原因菌がミュータンス菌です。そのため、ミュータンス菌のエネルギーを弱めるキシリトールは口臭予防効果があります。
21〜24歳の健常人80名のうちキシリトールガムを1日3回食後に3週間摂取したところ、唾液ミュータンス菌が減少しました出典[5]。この結果により、毎日キシリトールガムを摂取することにより歯垢を減らすことができ、口臭予防に有効であることが考えられます。
3.血糖値の上昇を抑制する可能性
キシリトールは、砂糖と比較すると大幅にカロリーが少ない天然甘味料として知られています。また血糖値を上げないため、糖尿病患者の食事に使用されることもあります。
ラットを使用した動物実験では、キシリトールの摂取により、食後の急な血糖上昇によって引き起こされる血漿インスリンの増加を弱めました出典[6]この結果により キシリトールが2 型糖尿病の発症または進行を予防する可能性が証明されました。
糖尿病患者は空腹感を感じて、間食することが多いと言われています。そんな時にキシリトールをガムで摂取してみてはいかがでしょうか。
4.骨粗鬆症の予防
キシリトールは歯だけでなく骨にも良い影響を与え、骨粗鬆症にも役立つといわれています。
加齢雄性ラット24匹に、10%(w/w)キシリトールを20カ月間摂取させたところ、骨の重量および骨ミネラル量の改善が認められました。この結果によりキシリトールには骨粗鬆症の予防に加え、年齢に伴う骨の障害も予防するはたらきが示唆されました出典[7]。
骨粗鬆症は気づきにくい疾患で有名であり、70代の3人に1人が骨粗鬆症と診断されています。キシリトールを摂取することで骨粗鬆症の予防にもつながる可能性があるかもしれません。
キシリトールの摂取方法や注意点
キシリトールは、、「1日の許容摂取量を限定せず」というもっとも安全性の高いカテゴリーとして評価されています。しかし、過剰摂取によりまれに副作用が現れる可能性があります。この章では推奨量や効果的な摂取量について紹介します。
1.どのくらい摂取すればいい?
キシリトールの推奨用量は、虫歯予防で1日6〜10gが推奨されています。しかし1日100gを摂取すると、下痢を引き起こす可能性があります出典[8]。この場合は量を減らすか、摂取を一時中止したほうがよいですが、一般的に1日100gを摂取することは考えにくいので副作用については過度に心配する必要性はありません。
2.効果的な摂取方法は?
キシリトールは、ガムやキャンディー、飲み物で摂取可能ですが、ガム製品が摂取しやすく多く販売されています。虫歯予防のための効果的な摂取方法は、キシリトールが50%以上配合されているガムまたはタブレット5~10g(歯科専用キシリトールガムの場合は4~8粒)を毎食後に摂取し、長く続けているとよいといわれています出典[9]。
まとめ
キシリトールの効果や、キシリトールの効果的な摂取方法について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。キシリトールガムで、効果的に虫歯予防を行うには、ただガムを食べればいいというわけではありません。食べ方にもコツがあります。まずは、キシリトールの含有量に気をつけて、ガムを選ぶことから始めてみましょう。ぜひ一度お試しください。
出典
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