監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
やる気が出ないのはドーパミンが原因かも!?
やらなければいけないと頭ではわかっているのに、「やる気が出ない。」と感じた経験は一度はありませんか?
やる気(意欲)を感じるのに重要な役割を担っているのは、脳内で分泌される神経伝達物質の一つである「ドーパミン」になります。
スポーツの大会や仕事の前などに、やる気に満ち溢れている状態で、やる気のもとになっているのがドーパミンです。
意欲を起こすための動機づけの原動力は脳内のドーパミン濃度に依存することが示されています出典[1]。マウスやヒトの研究でドーパミンを補充すると意欲が高まることも明らかにされています出典[2]。
また、ドーパミンは意欲だけでなく、興奮・元気さ・快楽などをもたらしてくれる役割も持ちます。ドーパミンが減少すると無関心・無気力になり、集中力・性欲・運動機能なども低下してしまいます出典[1]。
例えば、ドーパミン不足により性的興奮(性欲)が起こらなくなると勃起を開始できないので、ドーパミンの低下はED(勃起不全)の原因の一つです出典[3]。他にも、うつ病やパーキンソン病などの神経疾患の原因にもなります出典[2]。
ドーパミンはやる気・意欲だけでなく、身体的・精神的に健康な生活を送る上で欠かせないホルモンです。
やる気と運動の3つの関係
やる気のもとになるドーパミンを分泌させるのに大事なのは運動すること(体を動かすこと)です。
運動によって血流が良くなると、脳に送り込まれる酸素や栄養素が多くなり、脳が活性化されるのでドーパミンが分泌されます。
やる気と運動がどのように関係しているのか解説していきます。
1回の運動でもドーパミンは放出される
運動を行うとドーパミンが分泌されます。理由は、運動などで体を動かすと血流が良くなることで脳に供給される酸素や栄養素が増えるので脳が活性化されるからです。
もちろん運動は継続して行うのがベストですが、1回の運動でもドーパミンは放出され、やる気やモチベーションを高めることができることが多くの研究から明らかにされています出典[4]。
1990年に行われたイタリアのジェノヴァ大学の研究では、5〜10分立っているだけでもドーパミンは増えるようです出典[5]。
仕事中にどうしてもやる気が出ないときは作業を中断して立ち上がり、体を伸ばすなどのストレッチや散歩したりして体を動かしてみましょう。
ドーパミンが分泌されやる気が回復するので仕事の効率が良くなりますよ。
定期的な運動がモチベーションを維持する
何事も継続することが大事とよく言われますが、意欲やモチベーションを維持するために行う運動も同じです。
もちろん、たった一回の運動でもドーパミンは分泌されますが、より効果を得るには定期的な運動が大事になります。
例えば、2022年に行われたカルフォルニア大学サンフランシスコ校の研究では、有酸素運動の量とドーパミン分泌に関わる脳内の部位の活性化に正の相関関係があることが報告されています。つまり、有酸素運動の量が増えればドーパミン量が増えることを明らかにしています出典[6]。
また、2016年に行われたポルトガルのトラス=オス=モンテス・エ・アルト・ドウロ大学の研究では、1日45〜50分のランニングを週3ペースで行なうと、ドーパミンを分解してしまうCOMT(カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ)と呼ばれる酵素の活性を活性が抑えられ、ドーパミンの量が増えることが明らかにされています出典[7]。
定期的な運動はドーパミンを増やすだけでなく、筋肉や骨量を高める・免疫力向上・肥満などの生活習慣病を予防するなどの効果ももたらしてくれます。
健康な体を作る上で定期的な運動は欠かせないので、無理のない範囲で運動するように心がけましょう。
運動は運動の意欲も高める
仕事などに限らず運動をするにもやる気や意欲が必要です。
運動したいと思っているけれど、中々行動に移すことができない人もいるのではないでしょうか?
最初の一歩を踏み出すことができれば、運動によってドーパミンが増えるので運動すること自体への意欲も高まります出典[4]。
例えば、マラソンやランニングをする人の場合は「もっと速く走りたい。タイムを縮めたい。」といった感情。野球やサッカーなどの対戦式の運動の場合は「勝ちたい。もっと上手くなりたい。」などの感情が運動への意欲が高まっている証拠です。
運動に対する意欲が高まると、自然と運動の頻度や強度を上げることができますし、継続するのも容易になります出典[4]。結果として、ドーパミンをより増やすことができ、好循環になるのです。
運動が中々できていない人は、まずは頑張って重い腰を上げて運動してみましょう。
ドーパミンを増やす運動ガイドライン
ドーパミンを増やすために定期的に運動をすれば良いと言っても、どんな運動をどのくらいの強度や頻度で行うのが理想かわからない方もいると思います。
ドーパミンを増やすのにオススメな運動はランニングなどの有酸素運動です。
どのくらいの強度や頻度で行うのが効果的なのか科学的根拠に基づき解説していきますので、参考にしてみてください。
少しつらいと感じる強度で行う
まず、運動の強度は少しつらいと感じる強度で行うのがベストです。
ラットに対してトレッドミル(ルームランナー)を用いた研究で、ある程度の強度(少しきついと感じる程度)からでないとドーパミンが分泌されないことが示されています出典[8]。
また、運動習慣のない人は少し走っただけでもドーパミンが出ますが、運動習慣のある人はトレッドミルを30分走っただけではドーパミンが十分に分泌されないようです。運動習慣のある人にとって低強度の運動はドーパミン分泌に不十分であることが明らかになっています出典[9]。
つまり、運動によるドーパミンの放出には閾値があり、一定の強度以上の負荷が必要であることが示されています。
わかりやすい例は、「ランナーズハイ」と呼ばれる現象です。ランナーズハイは走っている時に、体はキツイのに満足感や快感を感じたり、集中力が上がり元気よく走れるようになる現象で、ドーパミンやエンドルフィンなどの分泌が増えることで起こります。
ランナーズハイを起こすには最大心拍数の70~80%ほどの強度(目安としては多少息があがる程度)で、少なくとも30分間運動する必要があるようです出典[10]。普通のランニングは中程度の強度になり最大心拍数の50~70%が目安(40才の人は1分間の心拍数が90~126回)なので、普段のランニングよりも速いペースで走る必要があります。
運動に慣れていない人は、いきなり強度の高い運動を行うのはケガの原因になるので少しずつ強度を上げるようにしましょう。
次でも解説しますが運動は継続して行うことが大事ですよ!
週3回を継続しよう
次に運動の頻度ですが週に3回程度は実施しましょう。
2016年に行われたポルトガルのトラス=オス=モンテス・エ・アルト・ドウロ大学の研究では、ランニングを週3ペースで行なうとドーパミンの量が増えるようです出典[7]。
時間としては30分以上行なうことができれば脂肪燃焼効果も期待できますよ。
無理のない範囲内で継続して行ってみましょう!
おすすめはランニング
ドーパミンを増やすのに有効な運動はランニングや水泳などの有酸素運動です。
ドーパミンと運動に関する研究のほとんどがランニングで行われていることもあり、ランニングに関しては科学的エビデンスが多くあります。
例えば、ランニングなどの有酸素運動はドーパミン分泌を促すだけでなく、ドーパミン受容体の数や受容体とドーパミンの結合能力を高め、ドーパミンによる情報伝達を良くすることが明らかになっています出典[11]。
また、日光を浴びている時間が長い人は脳内のドーパミン受容体の密度が高くなるのでドーパミンによる情報伝達が行われやすくなるようです出典[12]。ランニングは屋外で行うのでもってこいですね。
さらに、少し強度の高いランニングを行なう必要がありますがランナーズハイを起こすことができれば、ドーパミンだけでなくエンドルフィンやカンナビノイドなど幸福感や高揚感をもたらすホルモンを分泌させることができます。エンドルフィンなどが放出されることで幸福感が上がったり、集中力の向上も期待できるのです出典[10]。
ランニングはシューズ以外は特別な物を必要としません。場所も選ばないのでいつでもどこでも手軽に行えるのも継続して実施する上で大きなメリットです。
やる気を回復させたい・維持したい人は、時間を見つけてランニングに取り組んでみましょう。
慣れてきたら「マラソンに出てみる。どのくらいのタイムで走りたい。何km走れるようになりたい。」などの目標を立てるとよりモチベーションが上がるので効果的ですよ!
まとめ
今回はやる気を出すため・維持するのに効果的なドーパミンを増やすための運動方法について解説しました。
ランニングなどの有酸素運動はオススメな方法で、継続して行うことが大事です。
ドーパミンを増やすことができれば、やる気や意欲が出るようになるので仕事などの効率も高まりますよ。
運動以外にもサプリメントを摂取することでもドーパミンは増やすことができます。近年注目されているのは「バイオドーパ」と呼ばれる、ドーパミンを合成するための原料となるL-DOPA(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)を多く含むサプリメントです。
ドーパミンを増やしてくれるのでやる気や意欲を高める効果が期待できます。サプリメントとして手軽にL-DOPAを摂取できるので、効率的にドーパミンを高めたい方は運動と併用を検討してみてください。
出典
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