リジンとは?6つの効果と適切な摂取方法
2023年7月14日更新

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

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リジンとは

リジンは、私たちが食事やサプリメントで摂取する必要のある「必須アミノ酸」の一つで、人体で生成できない栄養素です。

リジンは体の成長や免疫力アップ、ホルモンの合成に大きく関わっており、不足すると身体的な体力の低下や精神的な不調が引き起こされます。

まずは、リジンの概要や不足したときのリスク、リジンが多く含まれる食品について見ていきましょう。

1.どんな栄養素?

リジンは、人体のタンパク質の2〜10%を構成しているアミノ酸の一種であり、体の成長や免疫力アップに深く関わっている栄養素です。

人体はリジンを生成できないため、私たちは食事でリジンを摂取する必要があります。こうした食事での摂取が必要なアミノ酸を必須アミノ酸、人体でも生成できるアミノ酸を非必須アミノ酸と呼んでいます出典[1]

また、必須アミノ酸はどれかひとつでも不足していると、たんぱく質の利用効率が低下してしまいます。最も不足しているアミノ酸は「制限アミノ酸」と呼ばれます。実はリジンは食品のアミノ酸で最も制限アミノ酸になりやすいといわれています出典[1]

 

2.不足するとどんなリスクがある?

リジンの摂取が不足すると、「たんぱく質エネルギー失調症」と呼ばれる症状が引き起こされます。「たんぱく質エネルギー失調症」は、先進国より発展途上国で蔓延していると考えられています出典[1]

たんぱく質エネルギー失調症の症状は、筋肉や脳、内臓などがエネルギー不足に陥ることから生じる体力の衰えや疲労、意識障害などが挙げられます

また、重度のリジン摂取不足は神経伝達物質であるセロトニンの減少を引き起こしストレスによる不安感が強くなるとされています。

ラットにリジン欠乏食を4日間与えた場合の精神症状について研究したところ、リジンが十分に含まれる食事を与えたラットに対し、リジン欠乏食を与えたラットの方が高架十字迷路によるストレスから誘発された不安感が有意に高いことが分かりました出典[2]

リジンの不足は、身体的な不調だけでなく精神的な不調にも繋がります。リジンなどの必須アミノ酸は体内で生成できないため、食事やサプリメントで習慣的に摂取することが大切です。

 

3.どんな食材に含まれている?

牛乳から発見されたアミノ酸であるリジンですが、主に肉や乳製品などの動物性食品に多く含まれることが知られています。

また、植物性食品中心の食生活をしている場合は豆類がリジンの大きな供給源となります。そのため、豆腐などの豆類を積極的に取り入れることが重要です。

リジンが豊富に含まれる食品の具体例としては、次のようなものがあります。

【リジンを豊富に含む食品とその含有量(100gあたり)出典[3]

食品名状態など含有量
牛肉(リブロース)1300mg
豚肉(ロース)1700mg
豚バラ肉1200mg
全卵、生940mg
牛乳270mg
ナチュラルチーズ-2600mg
木綿豆腐-480mg
絹ごし豆腐-380mg

また、リジンは穀類のたんぱく質に特に不足しているアミノ酸として知られています。

そのため、お米やパンなどの穀類には肉などの動物性食品や乳製品、大豆製品を組み合わせて、摂取するアミノ酸のバランスを整えましょう。

 

リジンに確認されている作用や効果

必須アミノ酸であるリジンを摂取すると、わずかな筋肉強化や不安の軽減、食欲調整効果があることが示されています。特に、アルギニンと組み合わせて摂取することで健康効果が高まることも重要なポイントです。

ここからは、リジンに期待される健康効果についてご紹介します。

1.わずかな筋力強化

リジンには、筋肉の機能をわずかに強化する作用があると考えられています。

男性被験者を、低リジン食を摂取するグループ20名と高リジン食を摂取するグループ20名に分け、8 週間の前後に身体測定、筋肉機能、インスリン感受性、およびロイシン動態を測定しました。その結果、高リジン食の摂取は、筋力をわずかにアップさせましたが、その他の効果は認められませんでした出典[4]出典[5]

また、遊離リジンで小麦のリジン含有量を2.5%から 5.5%に増加させ、リジン強化小麦粉として乳児に3ヵ月間摂取させたところ、通常の小麦粉を摂取した場合と比較して、乳児の身長と体重がより大きく増加することが実証されています。

さらに上腕三頭筋の皮下脂肪の厚さが減少したことから、体重増加が脂肪量ではなく筋肉量の増加によるものであることが示唆されました出典[6]

筋肉量の減少を抑えたいと考えている方は、リジンを多く含む食品やサプリメントの導入を検討するのもよいでしょう。

 

2.不安の軽減

不安や不安障害は、精神疾患の中でも最も患者数が多い症状の一つとされており、ストレスに関与する神経伝達物質の調節不全が原因と考えられています。動物を使った最近の研究では、リジンとアルギニンが神経伝達物質に影響を与えるアミノ酸である可能性が示唆されているのです。

リジンとアルギニンが成分として含まれるハーブサプリメントによる、不安症状の治療効果についての研究が行われました。

健康な日本人108名を対象にリジンとアルギニンが含まれるサプリメントを1週間投与したあと、状態不安(特定の状況や活動に対する不安、緊張、恐怖を特徴とする一時的な状態)と特性不安(あらかじめ設定されたレベルの不安または不安になる傾向)について分析しました。

その結果、男女ともに状態不安と特性不安が大幅に軽減されたことが分かりました出典[7]

また、急性ストレスは腸の収縮と結腸の通過の刺激に繋がり、下痢を引き起こすとされています。そのため、リジンは不安やストレスによる下痢を和らげると考えられているのです。

下痢の発生率に対するリジンの影響を調べるために、実験の24時間前に絶食させたラットに人為的なストレスを与えた後、ストレス誘発性の糞便排泄の有無について分析しました。その結果、リジンを投与したラットに対してストレス誘発性の下痢が軽減されたことが示唆されました出典[8]

健康な日本人を対象とした、リジンとアルギニンを組み合わせた摂取によるホルモンストレス反応の変化についての研究も行われています。

108名の健康な日本人成人を対象に、リジン(1日あたり2.64g)とアルギニン(1日あたり2.64g)を1週間経口摂取した後の、ストレス誘発性の状態不安とストレスホルモンの基礎レベルについて分析しました。その結果リジンとアルギニンの摂取により、男性被験者の唾液から検出されるストレスホルモンの基礎レベルが低下することが判明しました出典[9]

リジンは穀物ベースの食事をする人にとって不足しやすいアミノ酸であることが知られています。そのため、リジンを強化した小麦を主食とすることで不安やストレス反応を軽減させることができるのです出典[10]

さらに、リジンは統合失調症治療にも役立ちます。統合失調症の患者10名を対象に、抗精神病薬の補助としてリジンを1日6g投与し、4週間後の症状について分析しました。その結果、3名の患者に対して症状の大幅な減少がみられました出典[11]

これらの研究結果を踏まえて、日常的な不安やストレスが気になる方はリジンが多く含まれる食生活を習慣的に取り入れることをおすすめします。加えて、動物性たんぱく質の不足や全体的な食事量の不足が起きていないかチェックしておきましょう。

 

3.食欲の調整

リジンを始めとしたアミノ酸は食後の満腹感を引き起こす大事なシグナルとして働いています。

脳の視床下部にある細胞(タンサイト)は、食後のリジンやアルギニンなどのアミノ酸の濃度を感知しており、脳に満腹感を伝えると考えられているのです出典[12]

ヨーグルト等に含まれるホエイプロテインの満腹効果について分析した研究によると、ホエイプロテインに含まれるリジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、チロシン、バリンを摂取する度に空腹感が減少し、満腹感が大幅に増加したことが分かりました出典[13]

こうした研究結果から、ダイエットや食べ過ぎ防止を考えている方にとって、リジンを始めとしたアミノ酸の補給が有効といえるでしょう。

 

4.血圧の正常化

リジンは、高血圧の治療サポートに役立つと考えられています。

ガーナのアクラにおいて、高血圧成人の血圧に対するリジン摂取の効果について調査が行われました。18〜45歳の男女180名を被験者として、リジンが含まれるサプリメントを摂取するグループとそうでないグループの2つに分けて血圧を測定しました。

その結果、リジンを補給した高血圧の被験者に対して、血圧の正常化がみられました出典[14]

血圧が気になる・高血圧を予防したい方は、リジンの摂取が不足しないよう、食事バランスを整えてみましょう。

 

5.成長ホルモン分泌のサポート

成長ホルモンの分泌は、アルギニンとオルニチン、リジンといった3つのアミノ酸の相乗効果によって促進されることが期待されています。

アスリートを被験者として、3週間の高負荷トレーニング中のアルギニンとオルニチン補給と血液中の成長ホルモン濃度の関わりについて調査が行われました。その結果、アルギニンとオルニチン補給後の筋力トレーニングによって、成長ホルモンの有意な増加が観察されました出典[15]

ちなみに、成長ホルモンの分泌が盛んになるのは睡眠中とされています。アルギニンとオルニチン、リジンを組み合わせたサプリメントを寝る前に飲むことも、筋肉の成長を促すために有効と考えられます。

 

6.骨の修復のサポート

リジンやアルギニンなどのアミノ酸は、コラーゲンの合成を促進して骨の修復に繋げる作用が期待されています。

ウサギ40匹をリジンとアルギニンが豊富な餌を与えるグループと標準的な餌を与えるグループに分け、骨折後の骨結合の状態について観察しました。その結果、リジンとアルギニンが豊富な餌を与えたグループについて骨折が治るまでの期間が2週間短縮されたことが分かりました出典[16]

骨の健康維持を考えている方は、リジンとアルギニンのサプリメントを習慣的に摂取することを検討しても良いでしょう。

 

リジンの摂取方法や注意点

一般的な食生活であれば、リジンが不足したり摂り過ぎたりする心配はほとんどありません。ただし、穀物がほとんどの食生活の人はリジン不足・必要以上にサプリメントやプロテインを摂取する人はリジンの過剰摂取となる恐れがあるため注意が必要です。

ここからは、リジンの適切な摂取量や注意点についてご紹介します。

1.どのくらい摂取すればいい?

1日あたりのリジンの必要量は以下の通りです。ちなみに、男女共通の必要量として算出されています。

【リジンの1日あたりの食事摂取基準(必要量)出典[17]

年齢リジンの必要量(mg/㎏)
6ヶ月63mg
1~2歳44mg
3~10歳35mg
11~14歳35mg
15~17歳33mg
18歳以上30mg

また、一般的な適切な食事をとっている成人において、リジンの摂取量は1日あたり4.0〜5.0g(4000㎎〜5000㎎)と推定されています出典[19]

食品の例としては、卵100g(2個)でリジン940㎎を摂取できるため、動物性食品や豆類を日常的に摂取していればリジンが不足することはありません出典[3]。ただし、食生活が偏って穀類ばかり食べている人や貧困地域に暮らす人は、リジン不足を引き起こす場合があります。

 

2.健康上限摂取量は?

現在、リジンを始めとするアミノ酸摂取量の上限に関するガイドラインは示されていません。しかし、食事に添加されたリジンの安全性を評価した調査によると、1日7.5g以上のリジンを継続的に摂取すると、吐き気や腹痛、下痢などの消化管に関する症状を引き起こすことが判明しています出典[18]出典[19]

通常の食生活を送っている人であれば、リジン単体での過剰摂取の心配はほとんどありません。しかし、サプリメントやプロテインでリジンを摂取している場合は、他の食事と合わせてリジンの過剰摂取とならないよう注意が必要です。

 

3.理想の摂取方法はある?

必須アミノ酸は、それぞれの必要量が確保されていることがとても大切です。そのため、リジンだけではなく、他のアミノ酸も合わせて摂取するようにしましょう。

特に、リジンはアルギニンと組み合わることで相乗効果が得られる可能性が高いアミノ酸です。サプリメントでリジンを摂取する際は、アルギニンも配合された製品を選ぶと良いでしょう。

 

まとめ

肉や魚などの動物性食品に含まれるリジンは、食事バランスの偏りによって不足しやすいアミノ酸といわれています。

リジンは身体機能の調整や不安の軽減、成長ホルモン分泌のサポートに関与しています。通常の食生活の中でリジンが不足することはほとんどありませんが、穀類ばかりをたくさん食べるような食生活の方は、肉や魚、卵、乳製品などの動物性食品や豆腐などの豆類を食事にプラスするよう心がけましょう。

また、サプリメントやプロテインでリジンの摂取を考えている方は、アルギニンと組み合わせて摂ることをおすすめします。ただし、必要量を超えた摂取は吐き気や腹痛、下痢などの症状を引き起こす可能性があるため、1日に適切な量を守ることが大切です。

 

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