チロシンとは?4つの効果と適切な摂取方法
2023年7月24日更新

執筆者

株式会社アルファメイル

NP+編集部

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チロシンとは

アミノ酸の一種であるチロシンは、体内で合成できるため「非必須アミノ酸」に分類されています。食事でチロシンを取り入れる場合は、チーズや大豆製品、バナナなどの食品から効率よく摂取することができます。

まずは、チロシンの概要や歴史、体内での働きについて見ていきましょう。

 

1.どんな栄養素?

1846年にドイツの化学者であるリービッヒは、チーズに含まれるアミノ酸「チロシン」を発見しました。チロシンは私たちの体内でも合成できる「非必須アミノ酸」の一つであり、必須アミノ酸であるフェニルアラニンからつくられています出典[1]

チロシンの多くはセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の材料として機能していますが、皮膚や髪の毛の黒い色素であるメラニンをつくる働きも持っています。例えば、リンゴを切った後しばらくすると茶色に変色する現象は、リンゴに含まれるチロシンが空気に触れることで酸化し、メラニン色素がつくられることで起きているのです。

 

2.体の中でどんな働きをする?

通常、食事から摂取されたフェニルアラニン約90% がチロシンに変換されます出典[2]。そのため、フェニルアラニンからチロシンを合成できない病気であるフェニルケトン尿症の治療の際には、チロシンの補給が行われるのです出典[2]

チロシンの機能として代表的なものは、神経伝達物質の原料となる働きです。神経伝達物質の一つであるドーパミンはポジティブな感情をつくるほかに、記憶力とも関わりが深いことが分かっています出典[3]

 

3.どんな食材に含まれている?

チーズから発見されたアミノ酸であるチロシンですが、大豆製品や乾燥させた動物性食品にも豊富に含まれることが知られています。

チロシンが豊富に含まれる食品の具体例としては、次のようなものがあります。

【チロシンを豊富に含む食品とその含有量(100gあたり)出典[4]

食品名状態含有量

パルメザンチーズ

-

2,700mg

かつお節

2,600mg

桜えび

2,300mg

高野豆腐

2,300mg

プロセスチーズ

-

1,400mg

きな粉

1,400mg

落花生

1,100mg

バナナ

9mg

また、チロシンは糖分と一緒に摂取することで、体内への吸収率が高まります。そのため、バナナでチロシンを摂取したり、果物と組み合わせてチロシンを取り入れたりすることはとても有効です。
 

チロシンに確認されている作用や効果

チロシンは神経伝達物質の材料として機能しており、記憶力やマルチタスク能力をアップさせる効果があるとされています。他にも、暑さの中での運動持久力アップや勃起不全の改善にもチロシンが大きく関わるといった研究結果が示されているのです。

ここからは、チロシンによる健康効果について詳しく解説します。
 

1.記憶力の改善

気温の変化などの強いストレスがかかる環境下では、記憶力が低下するとされています。こうしたストレスに対する記憶力の低下は、チロシンの摂取によって改善すると考えられているのです。

体内に補給されたチロシンは、脳内のドーパミンやアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌量を増加させ、記憶力のアップに繋げる作用があります。ラットを対象にした研究によると、チロシンの投与によって寒冷環境下でのストレスによる記憶障害が改善した可能性が示唆されました出典[5]

また、ライデン大学の女子学生22名を被験者として、2gのチロシンを摂取した場合のワーキングメモリー(作業記憶)について調査しました。その結果、チロシンを摂取した被験者にワーキングメモリーの向上がみられました出典[6]

仕事や勉強を頑張りたい方にとって、記憶力アップは重要なポイントです。環境の変化によるストレスを乗り切れるよう、普段の食事でチロシンを十分に補給しておきましょう。
 

2.マルチタスク能力の向上

体にストレスがかかった状態では、複数の作業を並行して行うためのマルチタスク能力も低下してしまいます。作業記憶をアップさせるチロシンの補給は、マルチタスク能力についても良い影響を与える可能性が示されているのです。

男性10名、女性10名の合計20名を被験者として、チロシン補給後のマルチタスク能力について分析が行われました。体重1㎏あたり150mgのチロシンを摂取させた1時間後、複数の作業を行った際のパフォーマンスを調べた結果、マルチタスク能力が大幅に向上していたことが分かりました出典[7]

また、チロシンはマルチタスク下でのタスク切り替え速度を速める効果も報告されています。タスクの切り替えにかかる時間が短いほど、認知能力の柔軟性が高いと考えられています。

ライデン大学の女子学生22名を対象とした研究によると、チロシンを補給した後に複数の作業を実施したところ、タスク切り替え速度が大幅に速まることが示唆されました出典[8]

さらに、チロシンは睡眠不足状態の作業での集中力・注意力アップにも役立ちます。

被験者を2つのグループに分け、片方のグループには体重1㎏あたり150㎎のチロシンを分割投与した上で夜間(19:30~翌8:20)に課題を9回繰り返してパフォーマンスを分析しました。その間、被験者は24時間睡眠を摂らない状態で分析が行われました。その結果、チロシンを投与した被験者は睡眠不足の状態でも集中力・注意力の改善がみられました。しかも、その効果は3時間継続したことが判明しました出典[9]

仕事や家事の効率をアップさせたい・大事な試験勉強の追い込みをかけたい方は、チロシンの多い食品やサプリメントを積極的に取り入れましょう。

 

3.持久力向上の可能性

チロシンを補給すると、暑さの中での運動の持久力がアップする可能性があります。

8名の健康な男性ボランティアを被験者として、7日間の間隔をあけて2つの運動試験を実施しました。被験者を2つのグループに分け、一方のグループには体重1㎏あたり150mgのチロシンが含まれた無糖飲料500ml、もう一方のグループには同じ飲料でチロシンが含まれていない物を摂取してもらい、1時間後に気温30°C、湿度 60%の環境でサイクリングを行いました。その結果、チロシンを補給したグループの方より長くサイクリングを継続できていることが分かりました。

こうした研究結果は、神経伝達物質であるドーパミンの材料であるチロシンは、暑さの中で長時間続く運動に耐える能力に影響を与えることを示唆しています出典[10]

暑い中での運動持久力アップには、チロシンの摂取が効果的と考えられています。また、熱中症対策のために水分・塩分補給を忘れずに行いましょう。

 

4.勃起不全(ED)改善の可能性

チロシンからつくられるホルモンの一つであるドーパミンは、男性の勃起機能に良い影響をもたらすことが近年明らかになってきました。

勃起不全 (ED) は男性にとって大きな健康問題です。ラットを対象とした動物実験においてチロシンに特異的に働く酵素の受容体(チロシンキナーゼ受容体)の投与によって勃起不全 (ED)の症状が改善する可能性が示されています。

海綿体の神経を損傷させた雄ラットを対象に、勃起機能と性行動に対するチロシンキナーゼ受容体投与の影響について研究が行われました。その結果、チロシンキナーゼ受容体を骨盤大神経節(IMPG)に注射したラットに対し、6週間後の勃起機能に改善がみられました。

この研究結果は、チロシンキナーゼ受容体が交感神経の再生を抑制し、副交感神経の再生を促すことで、ラットの勃起不全 (ED) を改善させる可能性を示しています出典[11]

勃起不全 (ED) を改善したい方は、食事やサプリメントでチロシンを習慣的に摂取することも検討してみましょう。

 

チロシンの摂取方法や注意点

チロシンは体内でフェニルアラニンから合成されるほか、食事によって不足する可能性はほとんどないとされています。また、チロシンをサプリメントで摂取する場合は推奨量を守り、過剰摂取とならないよう注意が必要です。

ここからは、チロシンの適切な摂取量や効果的な摂取方法についてご紹介します。

1.健康に摂取できる量は?

健康な人の場合、チロシンの1日の平均摂取量は体重1㎏あたり7mgと報告されています出典[6]

チロシンが不足すると、神経伝達物質の合成が妨げられ、集中力の低下やうつ状態を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。また、チロシンはメラニン色素の合成にも関わっているため、チロシン不足によって白髪が増える可能性もあります。

チロシンを食事で摂取する場合は、上限摂取量について心配する必要はないとされています。ただし、サプリメントの場合は過剰摂取によって吐き気などの症状が現れる恐れがあるため注意が必要です。

 

2.効果的な飲み方

仕事や勉強に集中力が必要になったら、1時間前に体重1㎏あたり150mgのチロシンを摂取することをおすすめします。

20名の男女を被験者として、チロシンの摂取と複数の作業に対する集中力(マルチタスク能力)について分析が行われました。その結果、体重1㎏あたり150mgのチロシンを摂取させた1時間後、複数の作業を行った際のパフォーマンスが大幅に向上したことが分かりました出典[7]

チロシンをサプリメントで摂取する場合は、製品に表示されている1日の推奨量を守るよう心がけましょう。

 

まとめ

ギリシャ語の「チーズ」から名付けられたチロシンは、神経伝達物質の原料であるほか、記憶力やマルチタスク能力を向上させる役割を持つ非必須アミノ酸です。

日々の食事に手間がかけられない場合は、サプリメントを使ってチロシンを補給する方法もあります。ただし、これらの製品は過剰に摂取すると腹部の張りや吐き気、頭痛などの症状を引きおこす恐れがあるため注意が必要です。それぞれの製品に設定された推奨量をしっかり守り、多量に摂取しないように気を付けましょう。

またチロシンのドーパミン分泌を促す効果を期待する場合は、より直接的にドーパミンを活性化させる「L-ドーパ」の摂取がおすすめです。L-ドーパは主にムクナ豆に豊富な成分ではありますが、加熱すると含有量が低下してしまうというデメリットがあります。その場合は、L-ドーパを規格化した素材「バイオドーパ」などから摂取することが効率的と言えそうです。

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