トリビュラス（ハマビシ）の葉や果実、根から調製されるハーブ製品は、強壮剤、気分刺激剤として世界中で何世紀にもわたって使用されてきました。

海外ではサプリメントとしても販売されているトリビュラスですが、日本では医薬品に指定され、サプリメントや市販薬としての販売は認められていません。

まずは、トリビュラスの概要や体内での働きについてご紹介します。

1.国内では医薬品に指定されている

トリビュラス（ハマビシ）はアジアやアフリカ、オーストラリア、南北アメリカなど世界中の乾燥した地域に生息する植物です。トリビュラスの葉や果実（シツリシ）、根から調製されたハーブ製品は、強壮剤や気分刺激剤としてアーユルヴェーダなどの伝統医学で利用されてきました^出典[1]。

希少性の高いトリビュラスですが、採取のし過ぎや地球環境の変化によって近年ますます生息数が減少し、絶滅の危機に瀕していることでも知られています。

また、トリビュラス（ハマビシ、シツリシ）は国内では医薬品に指定されており、市販薬としての販売は禁止されています^出典[2]。

2.体の中でどんな働きをする？

トリビュラス、特に葉の部分には抗酸化作用や抗菌作用、抗炎症作用、鎮痛作用を示すフラボノイドが豊富に含まれます^出典[3]。

また、トリビュラスの有用成分として挙げられるのが、サポニンです。サポニンには体内のホルモンレベルや酵素活性に影響を与えることが知られており、特に男性ホルモン（テストステロン）の産生を促すとされています。

トリビュラスは、伝統的な民間療法として勃起不全（ED）の改善や性欲の向上を目的に使用されてきました。また、運動能力を向上させることからアスリートの間でも人気が高まっているほか、様々な効果が期待されています。

ここからは、トリビュラスに期待されている健康効果について見ていきましょう。

1.勃起不全（ED）改善の可能性

古くから媚薬として使われてきたトリビュラスは、勃起不全（ED）を改善させる効果がある可能性が示されています。

勃起は、副交感神経の働きによって陰茎の筋肉が緊張することで起こります。こうした副交感神経や交感神経の働きのサポート役となる物質が、一酸化窒素(NO)です^出典[4]。

体内にトリビュラスを投与すると、cAMPと呼ばれる物質が上昇することが分かっています。cAMPは一酸化窒素を合成する酵素（NOS）を活性化させる働きがあります。NOSはアルギニンから一酸化窒素(NO)を産生させる酵素であるため、結果的にトリビュラスは一酸化窒素(NO)の産生に関わっているといえます。

ウサギを対象に、トリビュラス投与による陰茎の海綿体への影響について実験が行われました。その結果、トリビュラスをウサギの体重あたり100mg/を1ヶ月経口投与したところ、海綿体の内部圧が20%以上向上したことが分かりました^出典[5]。

ただし、トリビュラスによる海綿体の内圧を高める効果はヒトを対象とした研究結果ではないため、同じ効果が人体に現れるかどうかは分かっていません。トリビュラスを使用する際は、過度な期待から摂取量を増やすことは避けましょう。

2.性欲の向上

トリビュラスは、性欲を向上させる効果も期待されています。

軽度または中等度の勃起不全(ED)を抱える18〜65歳の男性180名を被験者として、トリビュラスを経口投与した後のアンケート調査が行われました。被験者の半数ずつのグループに分け、片方のグループには毎食後にトリビュラス抽出物250mgを12週間経口摂取してもらい、アンケート調査を実施しました。その結果、トリビュラス抽出物を摂取したグループの方が摂取しないグループに比べて性欲、性行為満足度や国際勃起機能指数（IIEF）が有意に向上していました^出典[6]。

男性向けの精力剤にも使用されるトリビュラスは、男性の性機能の悩みを解決してくれるという理由から人気となっています。ただし、トリビュラスはサプリメントではなく医薬品であるため、安易に使用することは避けましょう。

3.運動能力の向上

トリビュラスは男性ホルモン(テストステロン)の分泌を促進させることで、運動能力を向上させることでも人気となっています。

男性ボクサーを被験者として、筋肉の損傷や無酸素運動パフォーマンスに対するトリビュラスの影響についての研究が行われています。

15名の男性ボクサーを2つのグループに分け、一方のグループにトリビュラス抽出物1日1250 mgを経口投与しました。その後、両グループは4週間の休息を挟んで3週間ごとのトレーニングを実施し、筋肉量や無酸素運動パフォーマンス、血液指標について分析しました。

その結果、トリビュラス抽出物を摂取したグループについて、トレーニング後の筋肉損傷が大幅に軽減され、無酸素運動のパフォーマンスが促進されたことが報告されています^出典[7]。

ちなみに、トリビュラスは世界アンチドーピング機構(WADA)の規定には該当しません。女性アスリートを被験者とした実験でも、トリビュラス500㎎を1日3回、連続2日間摂取した後の男性ホルモン量は、世界アンチドーピング機構によって定義された数値を下回っていました^出典[8]。

こうした研究報告から、トリビュラスはアスリートやボディービルダー、フィットネスに力を入れている方の間で知名度が高まっているのです。

4.筋肥大をサポートする可能性

トリビュラスによって分泌が促進されるテストステロンは、体内のたんぱく質を合成し、筋肉を強化する（筋肥大）効果がある可能性が示されています。

ラットを対象として、トリビュラスを体重あたり120mg投与して運動させた後、テストステロン量や筋肉のたんぱく質量について分析しました。その結果、ラットの筋肉が疲労するまでの時間が延長され、筋肉のたんぱく質レベルも増加したことが分かりました^出典[9]。

また、オーストラリアでは、ラグビー選手22名を被験者として筋肉量や筋力に対するトリビュラスの影響についての研究が行われました。 トリビュラス450㎎のカプセルを1日1回摂取後にトレーニングを実施し、5週間後に筋肉量と筋力を分析しました。その結果、筋肉量と筋力に大きな変化はみられませんでした^出典[10]。

筋トレ愛好家にも広く使用されるトリビュラスですが、筋肥大効果については、臨床試験で確認されている訳ではありません。トリビュラスを使用する際は、あくまでもトレーニングのサポートとして検討してみましょう。

5.肌のコンディショニングのサポート

トリビュラスに含まれるサポニンには、強い抗酸化作用や紫外線による肌の細胞死（アポトーシス）を阻害する作用があります。

このことから、トリビュラスには肌のダメージを軽減する可能性が示されています。

イタリアのサレント大学で行われた研究によると、皮膚の表皮を構成する細胞（ヒト表皮角化細胞）にトリビュラスの抽出物を取り込ませた結果、紫外線による細胞のダメージが軽減され、細胞の生存率が向上したことが報告されています^出典[11]。

紫外線による刺激は、日焼けやシミだけでなく肌の老化を引き起こします。そのため、トリビュラスは美容やアンチエイジングにも役立つ可能性があるのです。

6.免疫力の改善のサポート

トリビュラスは、運動後の免疫力低下を改善させると考えられています。

ラットの免疫機能に対するトリビュラスの影響について実験が行われました。雄ラット30匹を3つのグループに分け、1つのグループにトリビュラスを投与してモーター駆動のトレッドミルで負荷を高めたトレーニングを6週間行いました。その結果、トリビュラスを投与したラットは他のラットと比べてナチュラルキラー(NK) 細胞の数が大きく増加していることが報告されました^出典[12]。

激しい運動の後は免疫機能が落ちてしまうとされています。そのため、トリビュラスは運動後の免疫力をサポートする役割を担っている可能性があるのです。

激しい運動の後は免疫機能が落ちてしまうとされています。日常的にハードなトレーニングをされている方はトリビュラスを摂取することで体調維持に役立てられるかもしれません。

7.抗うつ効果の可能性

慢性的なストレスは、うつ状態を引き起こす恐れがあります。トリビュラスに含まれるサポニンは、こうしたストレスへの耐性を向上させる可能性が示されています。

中国の大学において、慢性的な軽度のストレスに晒されたラットに対するトリビュラス投与の影響についての研究が行われました。ラット30匹を6つのグループに分け、それぞれ用量の異なるトリビュラスを投与して慢性的なストレスを与えました。その結果、トリビュラス投与によってラットがストレスに晒されたときに発生する行動の量が有意にしたことが報告されています。つまり、トリビュラスによってラットのストレス耐性が向上したと考えられるのです^出典[13]。

トリビュラスは、ストレスを和らげる可能性があります。日常的にストレスを感じている方は、トリビュラスの使用も検討の余地ありです。

8.痛みを緩和する可能性

トリビュラスは、リウマチの治療薬としても使用されてきました。これは、トリビュラスに痛みを緩和する効果があると考えられているためです。

ラットを対象とした実験によると、グループ別にそれぞれ異なる用量のトリビュラスを投与した結果、体重あたり100 mgのトリビュラスを投与したマウスに対して、慢性的な痛みが緩和していることが確認されています^出典[14]。

リウマチを発症すると、慢性的な痛みに悩まされることが少なくありません。こうした痛みを和らげる場合でも、トリビュラスが有効に働く可能性があるのです。

9.糖尿病の改善

トリビュラスは、血糖値の正常化をサポートして糖尿病（2型糖尿病）を改善させるとされています。

2型糖尿病の女性98名を被験者とした研究によると、1日1000㎎のトリビュラスを3ヶ月間投与した結果、有意な血糖降下作用がみられました^出典[15]。

糖尿病は、血管の健康状態を悪化させて全身に悪影響を及ぼす生活習慣病です。トリビュラスは、血糖値が気になる方にとっても強い味方になってくれるでしょう。

10.がんの予防

様々な病気に対する薬として使用されてきたトリビュラスですが、実はがんの予防効果も期待されています。

韓国の大学で行われた研究によると、水に溶かしたトリビュラスのエキスによって肝臓がんの細胞の増殖が抑制されたことが分かりました^出典[16]。

がんの発症には様々な要因が関わっていますが、その中でも乱れた生活習慣はがんのリスクを高めると考えられています。がん予防を考えている方は、トリビュラスについても詳しくチェックしておきましょう。

【番外編】実は…トリビュラスはテストステロン上昇が期待できない!?

トリビュラスは男性機能の向上を始めとした様々な目的で利用されていますが、テストステロン上昇の効果を期待して摂取する場合は注意が必要です。というのも、動物実験においてはトリビュラスはテストステロンを上昇させると報告する研究はあるのですが、人を対象とした臨床試験では確認されていないためです。

ラットを対象とした実験によると、体重あたり120㎎のトリビュラスを投与した30分後に高強度の運動を行ったところ、血液中のテストステロン濃度がトリビュラスを投与していないグループよりも150%、運動後の216%まで劇的に増加していたことが報告されています^出典[9]。

しかし、男性ボクサー15名を対象とした実験によると、1日あたり1250mgのトリビュラスを経口投与した後に3週間の高強度トレーニングと3週間の高ボリュームトレーニングを実施した結果、血液中のテストステロン濃度に有意な変化はみられませんでした^出典[7]。

これらの研究結果から、トリビュラスをテストステロン上昇のために使いたいと考えている方は、他の臨床試験で効果が確認されている成分を摂取することをおすすめします。

トリビュラスは、目的に合わせて摂取量を変えていくことで効果が得られます。

18〜65歳の男性180名が参加した研究によると、250mgのトリビュラス抽出物を12週間摂取した際に、性欲向上や勃起不全(ED)の改善が報告されています^出典[6]。

また、1250mgのトリビュラスを3週間摂取した場合、高強度のトレーニングによる筋肉のダメージが回復し、無酸素運動のパフォーマンスが向上したことが示唆されました^出典[7]。

ただし、トリビュラスは日本国内では医薬品に指定されているため、処方された場合は用法用量を守ることが大切です。海外からサプリメントとして輸入する場合は、製品に記載されている摂取方法をきちんと守りましょう。

世界中で使用されているトリビュラスですが、副作用の事例も報告されています。ここからは、トリビュラス摂取時の危険性についてご紹介します。

28歳のイラン人男性患者についての症例によると、トリビュラスを2日間摂取した後、発作を起こし、アミノ酸代謝などに働く酵素（アミノトランスフェラーゼ）が正常値の40倍以上まで上昇し、5～6㎜の結石を伴う左尿管拡張がみられ、7日間の入院が必要となりました。これらの症状は、トリビュラスの中止により改善しています^出典[17]。

また、スペイン消費食品安全栄養庁（AECOSAN）では、トリビュラスの草木成分について安全性を示すデータが確認できていないと報告書で公表しました。さらに、神経系や筋肉、肝臓、腎臓への副作用のリスクについても報告書で記載しています^{出典[18]出典[19]}。

日本でトリビュラスを医薬品に指定しているのは、副作用の危険性について報告されているためです。海外でサプリメントとして使用されているからといって安易に個人購入せず、処方された際の用法用量をしっかり守りましょう。

トリビュラスは勃起不全（ED）の改善や性欲向上、運動能力の向上など様々な効果が臨床試験で確認されており、主に男性から注目されている成分。

しかし、筋肥大の効果やテストステロン上昇の効果については臨床試験では確認されていないため、過度に期待することは控えた方が良いでしょう。

また、国内では医薬品に指定されている成分であるため、医療機関で処方された場合は用法用量を守って摂取。海外製サプリメントを輸入する場合は副作用のリスクを理解し利用しましょう。

ちなみに、テストステロンを上昇させる効果については他の成分で代替するのも一つです。以下の記事で紹介される「テストステロンブースター」と言われる成分は安全性が確認され国内でもサプリメント（健康補助食品）として摂取できるので検討してみましょう。

テストステロンブースターについて