チョコの健康効果はテオブロミンのおかげ!? 6つの効果と適切な摂取方法
2023年8月14日更新

執筆者

薬剤師 / 公認スポーツファーマシスト / 研修認定薬剤師 / 健康サポート薬剤師 / アロマテラピー検定1級

大西 剛気

薬剤師免許を取得後、メディカルモール併設の調剤薬局で勤務。複数の店舗で1日400枚越えの処方せんに対応しながら様々な診療科を学ぶ。その後、全国展開の大手調剤薬局にて4店舗の管理薬剤師 、2地区のエリアマネージャーを歴任。新店舗開発にも携わる 。現在は 、新しく調剤事業を立ち上げた企業に仲間入りし 『医療と福祉の融合 』『新時代の薬局 』を目指し日々奮闘中。趣味はキャンプ、サウナ、食べ歩き。2児のパパでもある。

テオブロミンとは?

カフェインに似た働きがあるテオブロミンは、体にやさしい覚醒作用があると関心を集めています。まずは、テオブロミンについての概要や健康作用についてみていきましょう。

 

1.カカオに豊富な成分

チョコレートやココアには、主にカカオ豆から得られるテオブロミンが含有されています。テオブロミンは、お茶に見られるテオフィリンとともに、メチルキサンチンという分類に属しています。

テオブロミンは、自然界では主にカカオにしか存在せず、チョコレートやココアの特有の苦みを提供します。その名称はカカオの学名、「Theobroma」(これはギリシャ語で「神々の食べ物」を意味します)から派生しています。以下の表は、チョコレートやココアに含まれるテオブロミンの量です出典[1]

食材名

テオブロミン含有量

ダークチョコレート(25g)

229 mg

ミルクチョコレート(25g)

75 mg

ココア(5g)

105 mg

 

2.中枢神経に作用し覚醒に促す働きがある

テオブロミンには、アデノシン受容拮抗作用とホスホジエステラーゼ阻害作用の2種類のアプローチによって覚醒を促す働きがあります。

アデノシン受容拮抗作用とは眠気を誘発するアデノシンを抑制する働きを意味します。そもそも、私たちが活動量が増えるごとに眠くなるのはエネルギー(ATP)が代謝されアデノシンという睡眠欲を高める脳内物質がアデノシン受容体と結合するためです。テオブロミンにはこの眠気を強めるアデノシンとアデノシン受容体との結合を抑制する働きがあるため覚醒に導くのです。

またホスホジエステラーゼ阻害作用とは、神経伝達物質であるcAMPとcGMPを分解する酵素のホスホジエステラーゼの働きを抑制することです出典[2]出典[4]

この2種類の作用はカフェインと同じものであり、テオブロモンにおいても覚醒作用が期待できるのです。ただし、同じ作用機序でも覚醒作用が感じられるタイミングなどは異なります。次にテオブロミンとカフェインの違いについて見ていきましょう。

 

3.テオブロミンとカフェインの違いは?

テオブロミンとカフェインの違いについて以下の表に示します。カフェインはメチル基(CH3)が1つ多く、テオブロミンはメチル基(CH3)が一つ少ないです出典[3]

メチル基が多いカフェインは、脂溶性となり脳への移行がしやすく摂取30分後にピークを迎えます。アデノシン受容体にも結合しやすいため、適量であれば眠気スッキリやリラックス効果として働きますが、過剰摂取すると睡眠の質が低下したり不安が強まります。一方、テオブロミンは脳への移行はしにくく摂取2.5~3時間後にピークを迎えます出典[5]。アデノシン受容体に結合はしますが、リラックス効果までで止まっています。  

項目

カフェイン

テオブロミン

メチル基(CH3)

多い

少ない

溶けやすさ

溶けにくい(脂質性)

溶けやすい(水溶性)

脳への移行しやすさ

移行しやすい

移行しにくい

アデノシン受容体との結合

結合しやすい

結合しにくい

血中濃度

摂取30分後にピーク

摂取2.5~3時間後にピーク

以上のことから、カフェインに対しテオブロミンは 比較的覚醒作用が高まるタイミングが遅いと言えるでしょう。カフェインが苦手な方には代替案になるかもしれませんね。

 

4.テオブロミンは犬にとっては毒性が高い!?

テオブロミンはヒトに対しては有益な成分ではありますが、犬にとっては毒性が高いため注意が必要です。ヒトにおけるテオブロミンの半減期は2〜3時間です。

しかし、犬は肝臓での代謝と尿中の排泄前に肝外再循環があるため、吸収が遅く半減期がヒトの6倍の18時間と非常に長く中毒になってしまうのです。

犬にとってのテオブロミンの致死量は100mg/kgと言われており、小型犬では一般的な板チョコが2枚、中型犬では4枚となります。中毒の最初の兆候としては嘔吐、吐血、および多飲症が現れその後、興奮亢進、過敏性、頻脈、過度の喘ぎ、運動失調、筋肉のけいれんなどがあります出典[6]最悪の場合は死んでしまう可能性もあるため、テオブロミンが含まれるチョコレートやココアを犬に与えることは必ず止めましょう。

 

テオブロミンに確認されている作用や効果

ここからは、テオブロミンに期待されている作用や効果について見ていきましょう。

 

1.覚醒作用

テオブロミンはカフェインに似た覚醒作用があることが確認されています。

250人の健康な参加者を対象に、カフェインとテオブロミンの被験者内プラセボ対照試験を実施しました。結果、カフェインは覚醒感に期待される効果がありました。テオブロミン反応についても効果を示しました出典[7]

主なメカニズムとして、テオブロミンやカフェインが、ホスホジエステラーゼの阻害およびアデノシン受容体の遮断をすることにより、眠気を引き起こすアデノシンがアデノシン受容体に取り込まれなくなり覚醒状態になると考えられます。カフェインが苦手な方は、テオブロミンを摂取することをお勧めします。

 

2.認知機能の向上

テオブロミンは認知機能の向上にも寄与します。ある研究では、カカオを摂取した被験者が注意力と動機づけに改善が見られたと報告されています出典[8]。また、大規模な横断研究では、食事からテオブロミンを多く摂取していた群が認知機能に優れていたとの結果が示されています出典[9]。テオブロミンは、認知症予防におすすめの成分といえます。

 

3.気分の改善

テオブロミンにはセロトニンの働きを助け、自律神経を調整する作用があることから、心を落ち着かせ、リラックス効果やストレスを軽減する効果も期待できます。

250人の健康な参加者を対象に、カフェイン(500 mg)と、テオブロミン(1000、200、および80 mg)の被験者内プラセボ対照試験を実施しました。結果、カフェインは覚醒感や心血管パラメータなどの気分に期待される効果がありました。

テオブロミン反応は用量によって異なり、250 mgでは限られた主観的効果を示し、高用量では負の気分効果を示しました。ただし、通常の摂取範囲250mgでのテオブロミンはチョコレートのプラスの効果に寄与する可能性がありますが、より高い摂取量1000mgでは効果が負になる可能性があると報告されています。テオブロミンの用量には注意が必要です出典[7]

 

4.血流の向上

テオブロミンが豊富なカカオ製品は血圧を下げることが報告されています。テオブロミンの生理作用として,毛細血管を刺激して血管拡張を促すため血流が向上し血圧を低くする働きがあります。

天然または添加されたテオブロミンを含むフラバノールが豊富なココア飲料を摂取すると、末梢血圧と中枢血圧が低下するかどうかをテストした結果、テオブロミンが豊富なココアは、中心収縮期血圧を低下させながら、24時間外来収縮期血圧を有意に上昇させました。よって、血圧が高めの方におすすめの成分と言えます出典[10]

 

5.悪玉コレステロールの低下

テオブロミンは悪玉コレステロールの発生を阻害することがさまざまな被験者モデルで示されています。

正常コレステロール血症および軽度の高コレステロール血症のヒトにおいて、さまざまなレベルのココアパウダー(13、19.5、および26 g / d)を摂取した後の血漿LDLコレステロールと酸化LDL濃度を評価しました。結果は、ココアパウダー由来のポリフェノール物質がLDLコレステロールの低下、HDLコレステロールの上昇、および酸化LDLの抑制に寄与する可能性があることを示唆しています。

HDLコレステロール濃度の上昇はLDL酸化の抑制に寄与し、ココアパウダー由来のポリフェノール物質はHDLコレステロールの上昇に寄与する可能性が報告されています出典[11]

 

6.テストステロンの上昇をサポートする可能性

テオブロミンの原材料はカカオですが、同じようにカカオを原材料としているサプリメントにテスノアという成分があります。


テスノアは、ザクロとカカオ由来の成分をベースに作られています。テスノアはザクロ由来のプニカラギンを3.5%、カカオ由来のテオブロミンを0.5%含むものと規格されており、安全性の高い天然素材として注目されています。この成分は男性の性機能や運動パフォーマンスの向上を目指す栄養成分として、国際的に高評価を得て注目を浴びてきました。
このテスノアが血中のテストステロン濃度を向上させる効果が得られることが明らかになっています出典[12]


テストステロンという男性ホルモンは、筋肉の発達、血液生成、性機能の維持、そして精神的な元気や積極性といった側面で、男性が充実した生活を送る上で欠かせません。しかし、この重要なホルモンは年齢とともに減少し、特に40歳を過ぎるとその低下が深刻な問題となります。


新たに開発された「テスノア」は、テストステロンが不十分になりがちな40代以降の男性だけでなく、30代の若者でもテストステロンの増加効果が期待できます。


36歳から55歳までの120人の健康な男性を対象に、テスノアを1日200mgまたは400mg、あるいはプラセボを摂取する二重盲検ランダム化比較試験を実施したところ、遊離テストステロンのレベルが、200mg摂取群では1.346%、400mg摂取群では1.411%増加したとの結果が得られました出典[12]


また、結合型テストステロンのレベルは、200mg摂取群では1.16%、400mg摂取群では1.315%増加し、テストステロン/エストロゲンの比率は200mg摂取群では1.085%、400mg摂取群では1.311%増加したとの結果が得られました出典[12]


テストステロンは、体内成分に結合して存在する「結合型」と、血中で自由に存在する「遊離型」の2つの形態があります。生殖機能の支援や活力の向上などの働きをするのは主に「遊離型」のテストステロンで、この遊離テストステロンのレベルが40歳を超えると特に低下することが知られています。

テスノアは遊離テストステロンのレベルを大幅に増やすことが確認されているため、テストステロンの濃度を高めるだけでなく、テストステロンが体にもたらす多くの恩恵を享受できることが期待されます。 

さらに、テスノアはエストロゲンの分泌量には影響しないことが明らかになっています。
男性においてエストロゲンが増えると反対にテストステロンは減少します。テストステロンは筋肥大ややる気、性欲、男性機能に深く関わるホルモンなので、分泌量が少ない場合は筋力の低下や男性器更年期障害、性欲低下、勃起不全などが起こってしまうのです。

したがってエストロゲンに影響せず、テストステロンのみ上昇できる点でテスノアは男性の心理的、性的、および一般的な幸福を改善し、筋力を高めストレスを軽減させる効果があり、健康維持に有益な成分と言えます。

 

テオブロミンの理想的な摂取量は?

テオブロミンの摂取量についての研究では、250mg、500mg、1000mgの3つの摂取量を比較したところ、500mgと1000mgでは倦怠感の増加や気分の低下などの副作用が報告されています(出典6)。この結果から、250mg以下がテオブロミンの理想的な摂取量と言えます。一般的にチョコレート・ココアなら40gとなります出典[7]

テオブロミンを摂取する最も一般的な方法は、チョコレートやカカオを食べることです。しかし、その他にも、カカオ豆やカカオパウダーを直接摂取する方法、またはテオブロミンを含むサプリメントを摂取する方法もあります。

まとめると、テオブロミンは覚醒作用や気分の改善など、体に多くの利益をもたらすことが科学的に示されている化合物であり、適切な摂取量であれば健康への利点を最大化しながら副作用のリスクを最小限に抑えることができます。それぞれの個体の体質や健康状態に合わせて適切な量を摂取することが重要です。

 

まとめ:カフェインが苦手な方はテオブロミンで覚醒しよう

テオブロミンはチョコレートやココアの原料であるカカオに豊富に含まれていて、カフェインに似た働きがあり覚醒作用に効果があります。カフェインに比べ覚醒作用は弱いですが、認知機能の向上、気分の改善、血流の向上、悪玉コレステロールの低下、テストステロンの上昇をサポートしてくれる様々な健康効果がある成分です。積極的に摂取してテオブロミンの恩恵を享受していきましょう。

 

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