執筆者
薬剤師 / 公認スポーツファーマシスト / 研修認定薬剤師 / 健康サポート薬剤師 / アロマテラピー検定1級
大西 剛気
薬剤師免許を取得後、メディカルモール併設の調剤薬局で勤務。複数の店舗で1日400枚越えの処方せんに対応しながら様々な診療科を学ぶ。その後、全国展開の大手調剤薬局にて4店舗の管理薬剤師 、2地区のエリアマネージャーを歴任。新店舗開発にも携わる 。現在は 、新しく調剤事業を立ち上げた企業に仲間入りし 『医療と福祉の融合 』『新時代の薬局 』を目指し日々奮闘中。趣味はキャンプ、サウナ、食べ歩き。2児のパパでもある。
ローズマリーとは
自然の恵みとして、様々なハーブが私たちの生活に彩りを添えています。その中でも、歴史的に多くの文化で愛されてきたローズマリーは、特に注目のハーブの一つと言えるでしょう。古代ローマやエジプト、ギリシャといった古代文明でも使用されていたことから、その価値と効果は時代を超えて受け継がれています。
ローズマリーは、料理だけでなく、薬や化粧品、さらには宗教的な儀式にも使われてきました。その多様な使用法と、持つ効能の幅広さから、ローズマリーは今も多くの人々に愛されるハーブとして、私たちの生活の中に根付いています。
そんなローズマリーは、どんな栄養素で、体の中でどんな働きをするのでしょうか?詳しく解説していきましょう。
1.どんな栄養素?
ローズマリーは、地中海地域を中心に繁茂する常緑低木のハーブで、細かく裂けた針状の葉と、青または紫色の花を持っています。古代から現代にかけて、特有の香りとその効能からさまざまな用途で利用されてきました。
中でも、食材の防腐剤としての利用は非常に有名です。ローズマリーの有効成分は主にフェノール化合物によるものですが、いくつかの研究は、ローズマリー抽出物が肝保護、抗真菌、殺虫剤、抗酸化剤および抗菌剤などの生物学的生物活性により防腐性を示していると報告しています出典[1]。
これらの作用が食品の鮮度を保つのにはかなり効果的であり、現代では天然の防腐剤としての役割も期待されており、オーガニック食品や自然派コスメの分野での利用が増えています。
さらに、ローズマリーには強い香りがあるため、虫除けとしても使用されることが知られています。実際にハダニに対する調査結果によれば、ローズマリー・オイルベースの殺虫剤を1回散布しただけでツメハダニの個体数を52%減少させることが確認されました。出典[2]。
このように、ローズマリーはその歴史と多様な効果から、私たちの日常生活の中で多岐にわたる役割を果たしています。
2.体の中でどんな働きをする?
古くから民間療法での治療に用いられてきたローズマリーには、抗炎症作用、抗菌作用、神経障害への保護作用、肥満や糖尿病、メタボリックシンドロームのリスク減少などの多様な生物活性があることが研究により明らかにされています。
これらの効果は、ローズマリーに含まれるポリフェノール、特にフェノール酸とフェノールジテルペンといった成分によるものと考えられています。
ローズマリーの持つ化学的成分は多岐にわたり、ロスマリン酸やカルノシン酸、カルノソールなどが主なものとして挙げられます。また、エッセンシャルオイルに含まれる成分として、1-8-シネオールやカンファー、α-ピネンなども、抗酸化作用や抗菌作用に関連していることが知られています出典[3]。
このことから、ローズマリーは様々な方法で私たちの体や心に恩恵をもたらしてくれるのです。
ローズマリーの効果効能について
ローズマリーは、古くから料理や薬用として人々の生活に密接に関わってきました。その独特な芳香は、多くの料理に深みを与えるだけでなく、その中には多岐にわたる健康効果が隠されています出典[4]。
近年、医学や生物学の分野での研究が進む中、ローズマリーに含まれる成分が持つ潜在的な効能や効果に関する興味は高まってきています。アロマテラピーや民間療法での使用から、科学的なアプローチによる健康への影響の検証まで、ローズマリーの奥深い魅力を探求する旅は続いています出典[5]。
この章では、ローズマリーが持つ効能効果を詳しく紹介し、その歴史や背景、そして最新の研究成果をもとに、私たちの健康や生活にどのように役立つのかを解説していきます。
1.認知力&記憶力の改善
日常の忙しさや情報過多な現代社会で、私たちは常に頭をフル回転させることが求められます。そんな認知力や記憶力の向上に、ローズマリーが大いに役立つことが示されています。
実際の研究では、750mgのローズマリーを摂取した場合、認知力が明らかに改善されることが確認されました出典[6]。
また、ローズマリーのエッセンシャルオイルが記憶力の強化にどのような影響をもたらすのかの研究が行われ、その結果が興味深いものとなっています。
ウクライナの都市部に住む中学生を対象に、ローズマリーのエッセンシャルオイルの影響を調査した結果では、ローズマリー群の生徒たちは短期のイメージ記憶と数字記憶の両方において、有意に高い成果を示しました。一方で、性別による差異は認められませんでした出典[7]。
これにより、ローズマリーのエッセンシャルオイルの吸入は、記憶力を向上させる可能性があることが示唆されました。このハーブの香りが持つ、認知機能に対するポジティブな効果を、今後もさらに詳しく探る必要があるでしょう。
物忘れを減らす、頭の中を整理する、集中力を高める...これらの日常の小さな悩みを解消する一助として、ローズマリーの恩恵を受けるのはいかがでしょうか。適切な方法と量での摂取を心がけ、自分の生活の質を向上させる手助けとして活用してみてください。
2.気分の改善
ストレスの多い現代社会では、日々の生活における気分の浮き沈みは避けられないもの。そんな中で、自然な方法で気分をリフレッシュしたいと思う方も多いでしょう。その際、ローズマリーが気分改善の助けとなる可能性があります。
実際の研究では、20~50歳の健康なボランティア22名が、10日間にわたってローズマリーティーを摂取し、その前後で血中のさまざまなバイオマーカーの濃度を測定した結果、うつ病と関連の強いバイオマーカーであるBDNFやTNF-αの濃度が有意に上昇しました。これは、ローズマリーが不安やうつ症状の改善に寄与する可能性を示唆しています出典[8]。
ローズマリーに含まれる成分は、心地よい香りを持ち、アロマテラピーとしても利用されてきました。この香りを深呼吸して感じることで、リラックス効果や集中力の向上を実感することができると言われています。
実際に、仕事中の短い休憩時や、家でのリラックスタイムにローズマリーのアロマオイルを使用すると、頭がすっきりとして、一時的な疲れやストレスから解放されることが期待されます。
気分の落ち込みや疲れを感じた際には、ローズマリーのアロマテラピーを試してみるか、食事に取り入れてみることをおすすめします。自然な方法で心と体を癒すローズマリーの力、是非、日常に取り入れてみてください。
3.眠気を軽減
日々の忙しさや生活のリズムの乱れにより、昼間の眠気やだるさを感じることは誰しもが経験するものです。そんな時、カフェインやエナジードリンクに頼るのではなく、ローズマリーの力を利用して、自然に眠気を軽減する方法があります。
最近の研究では、ローズマリーオイルの吸入が看護師の眠気や覚醒度にどのような影響を及ぼすのかが調査されました。
具体的には、ローズマリーを吸入したグループでは眠気が有意に減少し、一方で覚醒度が向上したことが確認されました。これらの結果を踏まえると、ローズマリーオイルの吸入は夜勤中の看護師の眠気を著しく軽減し、同時に覚醒度を向上させる効果があるということになります出典[9]。
昼下がりの仕事や長時間の勉強、ドライブ中の眠気対策として、ローズマリーの眠気軽減効果を活用するのはいかがでしょうか。
4.ストレスの緩和
現代人はストレスを感じやすい環境に置かれていることから、ストレスマネジメントが求められています。
最近の研究により、アロマテラピーとして人気のラベンダーとローズマリーのエッセンシャルオイルの吸入が、ストレスに対してどのような効果を持つのかが調査されました。結果として、ローズマリーの吸入はストレス指標として知られるコルチゾールの量を低減させる効果も持つことが確認されました出典[10]。
この研究から、ローズマリーのエッセンシャルオイルの吸入は、身体を酸化ストレスから守る効果とともに、ストレスホルモンを減少させる効果を持つことが明らかとなりました。これは、日常のストレス管理やリラクゼーションの手段として、ローズマリーを取り入れる価値があることを示しています。
日々のストレスに悩む方は、ローズマリーを活用したストレス緩和の方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。
5.鎮痛効果
痛みを和らげるための方法は様々ですが、自然な成分のローズマリーが持つ鎮痛効果にも注目が集まっています。
ローズマリーには、抗炎症作用の成分が豊富に含まれています。これが筋肉痛や関節痛の原因となる炎症を鎮め、痛みを和らげる効果をもたらしてくれるのです。
特に、運動後の筋肉痛や、寒さや湿気によって引き起こされる関節痛に対して、ローズマリーは有効です。
ローズマリーのエッセンシャルオイルを含むアロマテラピーは、最新の研究で鎮痛効果の一因として注目されています出典[11]。
人工的に作られた薬への依存を減少させ、自然な方法で痛みとの戦いをサポートするローズマリーの力をぜひ試してみてください。
6.血行促進の可能性
ローズマリーには血管拡張作用を持つ成分を含んでいることから、血行の向上が可能です。
実際に全身硬化症におけるレノイー現象(血行不良によって起こる症状)を患っている患者に対し、ローズマリー油を皮下投与したところ血管を拡張させる作用が示唆されています出典[12]。
ローズマリーの血行促進作用は、限定的な環境下でしか確認されていません。しかし、ローズマリーは料理やお茶など日常生活の中で取り入れやすいという利点があります。継続的に摂取することで身体の巡りが改善される可能性はあるかもしれません。
7.肌のコンディショニング
美しい肌を求める多くの人々の間で、自然な成分を使用したスキンケアが注目されています。
その中でも、ローズマリーは古くから健康や美容のためのハーブとして利用されてきました。ローズマリーは体調を崩した中世ハンガリーのエリザベート王妃が使用したところ元気と若さを取り戻し、ポーランド王に求婚されたことから「若返りの妙薬」「若返りのハーブ」などの別名があります。
特にローズマリーとグレープフルーツの抽出物の組み合わせを用いた研究では、摂取から2週間という短期間で、紫外線であるUVBおよびUVAによる皮膚のダメージが抑制され、しわや弾力性が顕著に改善することが明らかになりました出典[13]。
ローズマリーの持つ肌への効果は、化粧水やクリーム、マスクなどの美容製品にも取り入れられています。日常のスキンケアルーチンに、ローズマリーを取り入れることで、健やかで美しい肌を手に入れる一助となるでしょう。
8.薄毛を改善
多くの方が悩む薄毛の問題。そもそも、薄毛が起きる経路はテストステロンが「5αリダクターゼ」という酵素によって、抜け毛を引き起こすDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されてしまうためです。
毛髪の生育サイクルは、通常2~6年間続く成長期と、それに続く数ヶ月の休止期を経て、再び成長期へと移行します。DHTはこのサイクルを調整する役割があるのですが、DHTが過剰に働くと、髪の成長期が短縮し、薄毛の原因となる可能性があるのです出典[14]。
そのため、過剰なDHTの働きを抑制するためには、「5αリダクターゼ」を非活性化する必要があるのです。
ここで注目されるのが、ローズマリーの可能性です。動物実験によれば、ローズマリー抽出物が5αリダクターゼの活動を抑制する効果があることが示されています。実際、マウスを使用した実験で、ローズマリー抽出物の投与により発毛が確認されたのです。
具体的には、テストステロンが投与され、発毛が阻害されていたマウスに、ローズマリーの葉から得られたエキス経口投与する実験で、200 µg/mLで82.4%、500 µg/mLで94.6%という高い5α-リダクターゼ阻害効果を示しました出典[15]。
また薄毛対策としてAGA治療薬を利用している方も多いはず。しかし、副作用として頭皮がかゆくなり使用をためらう事もあるのではないでしょうか?
AGA治療薬による頭皮のかゆみでお悩みの方に、ローズマリーはおすすめです。
男性型脱毛症(AGA)の治療におけるローズマリーオイルの効果と、広く知られるAGA治療薬であるミノキシジル2%との比較をした最新の研究では、両グループともに毛髪数が有意に増加しました。この点で、ローズマリー油とミノキシジル2%の効果はほぼ同等であることが示されました。
そして、頭皮の健康状態に関する評価では、ミノキシジルを使用したグループでは、治療開始前と比べて頭皮のかゆみが有意に増加していましたが、ローズマリー油を使用したグループではそのような増加は確認されませんでした。
よって、ローズマリー油はAGAの治療において、ミノキシジルと同等の発毛促進効果を持ちつつ、頭皮のかゆみの副作用が少ないという特長を持つことが示されました出典[16]。
これらの研究結果は、ローズマリーが今までのAGA治療薬よりもかゆみを抑えながら薄毛改善に寄与する可能性を示しています。薄毛にお悩みの方は改善策としてローズマリーも選択肢に入れてみるのも良いでしょう。
摂取方法:目的に応じた摂取方法を
ローズマリーは、古来から多彩な効果が注目され、日常的に用いられてきました。その摂取方法は、求める効果によって異なります。
1,記憶力向上・集中力アップ:ローズマリーの香りには脳を活性化する効果があると言われています。勉強や仕事中に、ローズマリーのエッセンシャルオイルを焚くか、ドライハーブを手元に置くことで、集中力をサポートします。
2,リラクゼーション:バスタイムに数滴のローズマリーオイルを垂らすと、心地よい香りが広がり、日々の疲れやストレスを癒してくれます。
3,筋肉や関節の痛み軽減:ローズマリーオイルをキャリアオイルと混ぜて、マッサージオイルとして使用。痛む部分に塗布し、優しくマッサージすることで、その鎮痛効果を実感できます。
このように日常の中で、目的に合わせてローズマリーを摂取・使用することで、その持つ効能を最大限に引き出すことができます。
また、ローズマリーの摂取量は、その目的や使用方法に応じて変わることが考えられますが、一般的な目安として、多くの研究で「750mgの摂取」が推奨されています。
実際に、ローズマリーが高齢者の認知機能にどのような急性効果を持つのかを明らかにする研究では、750mgのローズマリー投与時には、プラセボと比較して記憶速度の有意な向上が認められました出典[17]。
しかし、ローズマリーを料理やお茶などの食品として750mgも摂取することは量が多くなってしまい現実的ではありません。そのため、日常的に摂取する際は、サプリメントなどの抽出したもので継続摂取することをおすすめします。
※<要注意>副作用が確認されている
先ほどの研究の中で、要注意な事例もありました。
最も高い用量である6,000mgでは、逆に有意な記憶速度の低下が確認されたのです出典[17]。
記憶速度は、加齢に伴う認知機能の低下の予測因子として注目されています。この研究の結果から、ローズマリーを摂取する際の推奨量は750mgであり、過度な量は避けるべきであることが示唆されています。
この適量を守ることで、高齢者の記憶能力の維持や向上に寄与する可能性があります。
まとめ
この記事では、ローズマリーの注目すべき8つの効果と、使用時の注意点を実際の研究結果を元に詳しく紹介していきました。
ローズマリーは多岐にわたる健康効果を持っており、日常生活の中でさまざまな形で取り入れることができます。自然な成分で身体を守り、健康をサポートするローズマリーの力を存分に活用してみてください。
出典
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Last updated July 27, 2023 - 15.
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