ホスファチジルセリン5つの効果とは?副作用や危険性はある?
2023年11月30日更新

執筆者

薬剤師

小椋香奈

薬剤師免許を取得後、内科・整形外科・皮フ科・泌尿器科を有する医療機関の門前薬局に勤務。局内で使用する患者向け指導せんの作成に関わるなど、調剤だけでなく幅広く薬剤師業務をこなす。現在は勤務の傍らでライターとしても活動中。

ホスファチジルセリンとは?

細胞膜は細胞の内外の環境を区別し、物質の出入りを制御する重要な役割を持っています。ホスファチジルセリンは細胞の膜に存在するリン脂質の一種であり、脳や神経に多く存在する成分です。
そして、細胞膜の機能を助けると同時に、細胞膜の流動性や柔軟性を保つのに不可欠な存在。そんなホスファチジルセリンは身体のどの部分に影響を及ぼすのでしょうか。

近年知られるようになってきたのは認知機能への影響。神経伝達物質の働きに携わっているので、脳の若返りによって記憶力、理解力が向上するとして注目を集めています。
体内でも作られていますが少量であるため、食事から追加摂取することで脳機能を改善する効果が得られるのです。

ホスファチジルセリンは肉、大豆食品である納豆、おから、豆腐などに含まれていますが、含有量が少ないためサプリメントから摂取するのが一般的。

ホスファチジルセリンの研究で認められた5つの効果

 

1.認知機能の改善

ふとした時に言葉が出てこない、何度も同じことを聞いてしまうなど身に覚えはありませんか?

ホスファチジルセリンは細胞膜を柔らかくすることで加齢による物忘れ認知機能の低下軽度であれば改善する可能性があると言われているのです。

実際に認知機能の変化を調査した論文があります。すると、認知機能が軽度低下した50~69歳の高齢者にホスファチジルセリン 300mgを6か月摂取させた際に認知機能低下と認知症に関連するスコアが改善したことが明らかとなりました。出典[1]

6か月と継続的に摂取することで、軽度の認知機能低下が改善するようです。

日常生活に支障をきたす程では無いものの、最近物忘れが気になる方はホスファチジルセリンを試してみてはいかがでしょうか。

 

2.ADHD症状の改善

脳の神経伝達が乱れることで起こると言われるADHD。ホスファチジルセリンにはADHD症状である「集中力低下」「注意力散漫」を改善するというデータがあります。

4~14歳の小児がホスファチジルセリン 200mgを2か月間続けて摂取した際の脳の変化を調べた論文によると、大脳新皮質が制御され注意力・衝動性共に改善したことが報告されています。出典[2]

ADHDは小児に多く、成人でも3~4%と決して低い数値ではないことが分かります。「じっとしているのが苦手」「1つの物事に集中しにくい」など悩みがあれば、ホスファチジルセリンを摂取すると脳の状態を落ち着け症状が改善するかもしれません。

 

3.集中力の向上

やらなければならない事があるのに、集中力が持続せず捗らないなんてことはありませんか?脳に栄養を与えるために糖分を摂取するのは有名な話ですが、実はホスファチジルセリンにも「集中力アップ」の効果があるのです。

18人のスポーツをしている男性がホスファチジルセリン 400mgを2週間摂取したところ、プラセボと比較して計算速度が20%上昇、誤答が39%減少、計算精度が13%上昇したことが分かりました。また、気分状態や疲労については変化がありませんでした。出典[3]

効率よく物事を終わらせたい最近なかなか仕事が進まない他のことに気が散るなどでお悩みの方!ホスファチジルセリンの力を借りて集中力の向上を目指してみませんか。

 

4.ストレスの軽減

ストレスによる不眠・倦怠感・食欲低下などで悩んだ経験はありませんか?
過度なストレスが継続的にかかってしまうと、ある日突然うつ病を発症してしまうなんてことも。
そこでホスファチジルセリンの出番!「ストレス軽減効果」をもつので、ストレスによる体調改善に一役買ってくれそうです。

精神的ストレスを与える前に42日間ホスファチジルセリン 200mgを摂取した際に起こった脳の変化について報告した論文があります。すると、前頭右半球のβ1脳波がプラセボと比較して減少しました。これはリラックスをしているという判断となり、ストレスの軽減に役立つと考えられるのです。
出典[4]

また、オメガ3ホスファチジルセリンを一緒に摂取することでうつ病の症状が改善されたとのデータがあります。
うつ病を患っている高齢者がホスファチジルセリン 100 mg、DHA 119 mg、EPA 70 mgを含むサプリメントを1日3回、12週間摂取したころ、うつ病の評価スケール(HAM-D17)の点数が改善し、唾液中コルチゾールの数値が整いました。出典[5]

体内のコルチゾール分泌量が崩れることは、ストレス・うつ症状を感じる目安の1つ。そのため、ホルモン量を整えるホスファチジルセリンにはストレスによる身体への影響を改善する可能性があるのです。

日常生活では大なり小なりストレスを受けるものです。最近体調が悪いと思っている症状はもしかするとストレスの影響かも?ホスファチジルセリンを摂取するタイミングを増やし、ストレスに負けない健康な身体を手に入れましょう。


 

5.運動パフォーマンスの向上

次にお伝えするホスファチジルセリンの効果は、恒常性維持による「運動パフォーマンスの向上」です。

15人の男性が大豆由来のホスファチジルセリン 750mgを10日間続けて摂取した際の運動能力への影響について報告があります。すると、VO2 max(最大酸素摂取量)85%のサイクリングでは、疲労を実感するまでにかかる時間がプラセボと比較して平均29% 増加したことが明らかとなりました。
ホスファチジルセリンはイオンの恒常性を長く維持することにより、疲労の出現が遅くなった可能性があります。
出典[6]

運動するが、すぐに疲れてしまいなかなか続けられない。そんな方はホスファチジルセリンを摂取し、身体の調子を整えて疲労を感じにくい身体作りをしてみてはいかがでしょうか。
 

ホスファチジルセリンは危険と言われる噂は本当?

ネットやSNS上にはホスファチジルセリンは危険だという記事を見かけます。摂取するにあたり、危険だと言われる成分を身体に入れるのは不安ですよね。果たして噂は本当なのか見ていきましょう。

以前ホスファチジルセリンは牛の脳から抽出されていました。しかし、死亡率100%である牛海綿状脳症(狂牛病)が流行し、原因ウイルスが人の脳海綿状にするクロイツフェルト・ヤコブ病に関係するとの報告がされました。

牛から抽出するホスファチジルセリンも牛海綿状脳症の影響があるのではという懸念から「危険」という言葉が広がったようです。

現在、ホスファチジルセリンは大豆やキャベツ、ひまわりなど、植物由来の素材から製造されるのが主流。そのため、サプリメントから摂取したとしても危険性は低いと考えられます。

どうしても摂取に対して不安がある場合には、原材料が植物由来のものであるかを確認してから購入するようにしましょう!
 

ホスファチジルセリンの副作用は?

ここまで「ホスファチジルセリン」が身体にポジティブな影響を及ぼすことが分かりました。では摂取したいと思った際、どの程度摂取するのが良いのでしょう。

高齢者が大豆由来のホスファチジルセリン600mgを12週間続けて摂取した際の体調変化を調べた論文があります。すると、血圧・心拍数の変化、有害事象は無かったことが明らかとなっています。
出典[7]

体調や年齢など個人差はありますが、通常の食事では微量であり、サプリメントで推奨されている量を守って摂取すれば副作用は問題なさそうです。
 

ホスファチジルセリンは容量を守れば安全に摂取できる

ホスファチジルセリンは推奨量を守れば比較的安全に摂取できる成分であることが分かりました。
「脳・体の健康維持」「集中力向上」「物忘れ防止」など加齢による症状に悩んでいる方には特におすすめだと言えます。
少量を短期間では期待する効果が得られにくいため、手軽に購入できるサプリメントを用いて継続的に摂取しましょう。
 

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