執筆者
薬剤師
塩見 友香
大学卒業後、総合病院に勤務し、内科・泌尿器科・透析科・循環器科での服薬指導を経験。日本糖尿病指導療法士、栄養サポートチーム専門療法士、心不全指導療法士の資格を有する。現在は未就学児2人を子育てしながら病院薬剤師として従事、現場経験をもとに医療ライターを行う。
ルテインとは
最初に、ルテインの基本的な情報や含まれる食材を紹介します。
1.どんな栄養素?
ルテインとは、動植物に含まれる色素成分の総称「カロテノイド」に分類されています。
β-カロテンやリコピンも主要なカロテノイドです。
ルテインには抗酸化作用があるといわれています出典[1]。
ただし、ヒトを含む哺乳類は身体でカロテノイドを作れないため、食事やサプリメントにより外部から摂取する必要があります。
2.ブルーライトをカット網膜を保護
ルテインには抗酸化作用とブルーライトの波長を抑制する2種類の働きにより、目の健康維持に役立ちます。
ルテインの抗酸化作用について説明します 出典[2]。
抗酸化作用とは、生体内の過剰な活性酸素を抑制したり、活性酸素によるダメージを修復したりすることです。活性酸素は、外部からの様々なストレスを受けて増え、細胞を攻撃し、がんや生活習慣病を引き起こす要因となります。
また、ルテインはブルーライトの光の影響を抑制する働きがあります。
眼精疲労の原因の一つはブルーライトを長時間浴びることです。さらにドライアイや白内障、加齢黄斑変性などの病気になる可能性もあります。
ブルーライトは、人体への透過性が高くエネルギーの強い光線であり、活性酸素を生成する要因の一つです。長時間浴びることで目の様々な部分にダメージを与えます 出典[3]。
ルテインは、目の奥にある網膜に局在しており、ブルーライトを吸収するフィルターとして機能することで、網膜の損傷を抑制するのです出典[4]。
3.どんな食材に含まれている?
ルテインは生体内で作れないため、食事から摂取する必要があります。
ルテインが多く含まれている食材は以下表の通りです 出典[5]出典[6]。
食材(生)100g | ルテイン含有量 mg |
パセリ | 10.0 |
バジル | 8.11 |
小松菜 | 7.59 |
チンゲン菜 | 5.16 |
大根 | 4.73 |
摂りやすい野菜としては、小松菜やチンゲン菜、大根に多く含まれています。やや含有量は少ないですが、黄色のズッキーニ(2.07mg/100g)、かぼちゃ(1.50mg/100g)が食事に取り入れやすそうです。
ルテインに確認されている効果効能について
ここからは、現在研究でわかっているルテインの具体的な効果を紹介します。
1.眼精疲労を改善
ルテインは、パソコンやスマホなどのデジタルディスプレイの使用による眼精疲労とドライアイを改善することがわかっています。
前述した通り、ルテインはブルーライトをカットし、眼へのダメージを減らすためです。
実際に2020年に公表された臨床試験においてルテインは眼精疲労を改善すると報告されています。こちらの試験では、毎日6時間以上デジタルディスプレイを使用する18~65歳の男性または女性の被験者360名を対象に研究を行っています 出典[7]。
無作為に、ルテイン14mgを主成分とするゼアキサンチン、菊花エキス、クコの実エキス、カシスエキスを含むサプリメントを摂取する群とプラセボ群に分け、90日後に目の疲労スコアを評価をしました。
結果は以下の通りです。(0,90日後のルテイン摂取群のスコアより改善率を算出)
- ドライアイ: 48%(1.55→0.80)
- 視界のぼやけ: 61%(0.89→0.34)
- 疲労スコア: 50%(7.53→3.75)
いずれの項目もプラセボと比較し、明らかな改善が認められました。
ルテインは、仕事でパソコンをよく使い、目の疲れやドライアイにお悩みの方におすすめの成分です。
2.加齢黄斑変性症を改善
ルテインには加齢黄斑変性を改善することが報告されています。
加齢黄斑変性とは、目の黄斑部が加齢によるダメージを受けて視力が悪くなる病気です。そのダメージに酸化ストレスが関与しており、ルテインの抗酸化作用が目への負担を和らげます。
2018年に中国で、加齢黄斑変性と診断された被験者を対象に、ルテイン摂取による効果を評価したメタ解析*論文の結果をご紹介します出典[8]。
黄斑部にはルテインが局在しており、ルテインを含む黄斑色素密度が高いと加齢黄斑変性になりにくいことが他の研究でわかっています。
ルテイン摂取群は、プラセボ群と比較してその密度がより高く、加齢黄斑変性になりにくい状態であることがわかりました。
また、1日10mg摂取群は効果が見られるのに1年以上かかりますが、1日20 mg摂取群では、6か月未満から効果が得られたのです。
加齢黄斑変性の進行を防ぎたい方は積極的に摂りたい成分ですね。
3.白内障の予防
ルテインは白内障の予防にも期待ができます。
白内障の形成にも酸化ストレスが関与しているためです。
2013年に公表されたアメリカの大規模臨床試験をご紹介します出典[9]。
加齢黄斑変性やその前兆がない50~85歳までの4,203人の被験者を対象に、無作為にルテイン10mgやゼアキサンチン、オメガ3系脂肪酸を含む製剤を毎日摂取する群とプラセボ群に分け、5年間の追跡調査を行いました。
食事によるルテイン摂取が少ない方は、ルテイン製剤の摂取により白内障手術、あらゆる種類の白内障、重症白内障のリスクを有意に下げる結果となりました 。
加齢による白内障が気になってきた方は、普段の食事にルテインを足してみてはいかがでしょうか。
4.認知機能の改善
ルテインの効果の一つに、軽度の認知機能低下に対する改善作用が報告されています。
ヒトの脳組織にもルテインがあることがわかっており、記憶を司る海馬だけでなく、小脳、前頭葉、後頭葉、側頭葉皮質にも存在します。
2021年にオーストラリアで行われた研究では、記憶力や注意力に問題があると自己申告した40~75歳の被験者90名を対象にしています。ルテイン10mg/ゼアキサンチン2mgを1日1回夕食後に摂取する群とプラセボ群に分け、180日後に認知機能を評価しました 出典[10]。
結果は以下の通りです。(0,180日後ルテイン摂取群のスコアより改善率算出)
- 単語をすぐに思い出せる:8.5%(5.41→5.88)
- 画像認識の正答率:2.4%(94.80→97.15)
いずれの項目もプラセボ群と比較し、明らかな改善が認められました。
物忘れが気になる方は、試しにルテインを始めてみるのもいいかもしれません。
5.乳がんの予防をサポート
ルテインは乳がんに対する研究が進められています。
ルテインの抗がん作用は、いまだメカニズムが十分に解明されていません。
体外の実験により、ルテインは正常な細胞には影響を及ぼさず、乳がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘発させることが報告されています出典[11]。
そのメカニズムのひとつが、乳がん細胞にのみ活性酸素を増加させることです。
将来的に、ルテインが乳がんに対する治療方法のひとつとなるかもしれないことが示唆されています。
6.肝機能の改善をサポート
ルテインは非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)予防に寄与する可能性が報告されています。
ルテインの抗酸化作用により、肝臓へのダメージや炎症を抑制します。
動物実験で、高コレステロール食を食べさせたモルモットをプラセボ群とルテイン補給群に分け、12週間後に肝臓を解析しました。その結果、ルテイン補給群では肝臓内の炎症を引き起こす因子が有意に低かったのです 出典[12]。
ルテインは抗酸化作用と炎症を引き起こす因子を弱めることにより、肝機能低下を防ぐ可能性があります。
外食が多い方や食生活に偏りがある方は、ルテインを摂ることで肝臓をサポートしてくれるかもしれません。
ルテインの摂取方法や注意点
最後に、ルテインの効果的な摂取方法と注意点について説明します。
1.どのくらい摂取すればいい?
これまでご紹介した研究や文献を踏まえると、ルテインは1日10~20mg摂取されています。
加齢黄斑変性に対しては、ルテイン10mg摂取群は効果が見られるのに1年以上かかるが、20 mg摂取群では6か月未満から効果が得られたとのデータがあります出典[8]。
毎日20mgを摂取できると、身体にとってより効果的かもしれません。
2.安全に摂取できる摂取量は?
ルテインはたくさん摂取しても人体に悪い影響はないのでしょうか。
経口摂取したルテイン量と血漿ルテイン濃度には用量反応関係が証明されており、つまり摂れば摂っただけのルテインが体内に吸収されることがわかっています 出典[13]。
ルテインの安全性については、米国栄養評議会(CRN)によると1日あたり20mgまで摂取しても安全だと示しています 出典[14]。
またアメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究では、40mgを9週間摂取しても健康への悪影響はないと報告されています 出典[15]。
基本的に1日20mgの摂取が安全と思われますが、海外のサプリメントでは1日40mgを摂取できるものも存在しています。高用量の製品を利用する場合には、自身の体調に気をつけて摂取するのがおすすめです。
まとめ:ルテインを摂取して眼精疲労や目の疾患を予防しよう
ルテインは、疲れ目や加齢黄斑変性の改善や白内障予防をはじめとする、目の効果でよく知られています。現在はそれだけでなく、認知症や肝機能の改善、乳がん治療の可能性など様々な研究が報告されています。
ルテインは安全性も高く健康を維持したい人には取り入れやすい成分といえます。ただし、ルテインは人体では生成できないため、食生活を見直し、野菜や果物で摂取しましょう。
不足していると感じたら、サプリメントを利用して、効率よく摂取してみるのがいいかもしれません。
出典
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