納豆に豊富なスペルミジンで精子の質向上!? 7つの効果と摂取方法
2023年8月30日更新

執筆者

薬剤師

塩見 友香

大学卒業後、総合病院に勤務し、内科・泌尿器科・透析科・循環器科での服薬指導を経験。日本糖尿病指導療法士、栄養サポートチーム専門療法士、心不全指導療法士の資格を有する。現在は未就学児2人を子育てしながら病院薬剤師として従事、現場経験をもとに医療ライターを行う。

スペルミジンとは

最初に、スペルミジンの基本的な情報と含まれる食材を紹介します。

 

1.スペルミジンは精液の匂い元

スペルミジンは、すべての生物の細胞に含まれるポリアミンという物質の一つです。ポリアミンは分子内に2つ以上のアミノ基を持つ炭化水素の総称であり、細胞の新陳代謝に関わる成分です。

スペルミジンは体内で合成され、精液に多く含まれる成分で特徴的な匂いの原因だと考えられています出典[1]

ただし、生体内で作られる量は年齢とともに下がっていくことがわかっています。

 

2.体の中でどんな働きをする?

スペルミジンの特徴的な働きとしてオートファジー活性化作用があります。
オートファジーとは細胞が自身を分解し再利用することで、細胞の質を保つ仕組みです。
近年、このオートファジーがあらゆる病気の発症予防に関与していることが明らかにされ、多くの研究が行われています。

またスペルミジンは脂質代謝や細胞の新陳代謝のメカニズムにも関与することも確認されています出典[2]

このことから、スペルミジンは、全身の細胞における新陳代謝を上げ、健康や寿命を延ばすなどの効果が期待されています。

 

3.どんな食材に含まれている?

スペルミジンが多く含まれている食材は以下表の通りです出典[3]出典[4]

スペルミジンは大豆や乳製品の発酵食品や肉、きのこに多く含まれています。手軽にスペルミジンを摂る場合には、納豆やチーズがおすすめです。

食材

スペルミジン含有量(kg/mg)

チェダーチーズ(1年熟成)

199.5

マッシュルーム

88.6

牛ひき肉

71.7

納豆

56.1

シリアル(コーン)

43.2

ブロッコリー(生)

41.3

カリフラワー(生)

31.2

 

スペルミジンの効果効能について

ここからは、現在研究でわかっているスペルミジンの具体的な効果を紹介します。

1.精子の質を改善

精子の質悪化の主な原因は酸化ストレス。過剰な活性酸素は精子にダメージを与え、運動能の低下やDNAの損傷を引き起こしてしまうのです出典[5]

精液に豊富なスペルミジンには精子を酸化ストレスから守り、精子の質を改善する役割があります。イノシシの精子を用いた実験では、スペルミジンを含むポリアミンを人工的に加えた精子は酸化ストレスから保護されることがわかりました。出典[6]

また、精液中のスペルミン含有率が高いと、精子の運動性が向上することが報告されています出典[7]

スペルミンとはポリアミンの一つです。スペルミンとスペルミジンは生体内でお互いに変換し合うことで量を調整しています。つまりスペルミジンを摂ることが、スペルミンにとっても良い影響を与えるといえます。

現在妊活中の方やこれから妊活に励む方は、スペルミジンが豊富なチェダーチーズや納豆、またはサプリメントから継続的に摂取すると良いかもしれません。

 

2.認知機能の改善

スペルミジンは、認知機能の改善に役立つ可能性があります。そのメカニズムは十分に解明されていません。しかしハエの脳内におけるポリアミンの量が記憶機能の低下と関係していることがわかっています。

実際に、2018年ドイツのシャリテ大学が行った臨床試験で同様の結果が報告されています出典[8]。認知症リスクのある高齢者30名を対象に、スペルミジンのサプリメント(ポリアミンとして750mg/日)を3ヵ月間摂ってもらい、記憶能力を評価しました。その結果、プラセボ群と比べスペルミジン群の記憶能力が向上したのです。

物忘れが気になる方は、試しにスペルミジンを始めてみるのもいいかもしれません。

 

3.アンチエイジング

スペルミジンの特徴的な働きであるオートファジー活性化作用。

その効果はわかりやすくいえば、細胞の若返りです。スペルミジンは老化を防ぐ効果が期待されています。
実際にスペルミジンを摂取させたラットは、加齢に伴う心血管系リスクが低下し寿命が10%延長したと報告するデータもあります出典[9]

このことからスペルミジンは老化に伴う病気を予防する可能性があるのです。

 

4.皮膚の自然治癒をサポート

スペルミジンのアンチエイジング効果は疾患の予防だけではありません。皮膚にも作用することがわかっています。

2021年に岐阜大学の研究で、肌の自然治癒力を高めることが明らかにされています出典[11]
スペルミンおよびスペルミジンをマウスに4日間投与したあと、人工的に皮膚に傷をつけ、治り具合を確認しました。

傷の半分を塞ぐまでの期間が、無処置群と比較して2.5日(無処置群5.3±0.2日、スペルミジン投与群 2.8±0.5日)早いことが報告されています。

肌の自然治癒において重要なのはコラーゲンです。しかし、加齢によりコラーゲンの産生は減り、傷の治りが遅くなることはもちろん、肌のハリも失われてしまいます。スペルミジンは老化によるコラーゲン減少を抑え、自然治癒力を高め肌のコンディションを保つ効果が期待できるのです出典[10]

加齢による肌質の悪化が気になる方は意識的に摂取したい成分ですね。

 

5.加齢による筋力低下を抑制

筋力も、肌のコラーゲン生成と同様に加齢とともに低下していきます。スペルミジンのアンチエイジングと運動の相乗効果で筋力低下を防ぐといわれています。

その効果は2017年中国の武漢体育大学で行われた動物実験で報告されています出典[12]

人工的に筋肉を老化させたマウスに対して、スペルミジン(5 mg/kg/日)摂取と水泳(1日あたり60分を週に5日間)を42日間行わせました。体重に対する筋重量比を調べたところ、介入を行わなかった群と比較して、運動+スペルミジン摂取群は0.04%(未介入群1.201 ± 0.011%、運動+スペルミジン摂取群1.241 ± 0.008)上回る結果となりました。

つまり、スペルミジンは運動の効果を高め、老化による筋力低下を抑えたといえます。年齢とともに足腰の衰えを感じる方は、運動だけでなくスペルミジンも一緒に始めてみませんか?

 

6.肥満予防の可能性

スペルミジンの働きにはアンチエイジング作用だけでなく、脂肪生成を抑制する作用があることもわかっています。

動物実験で肥満のマウスにスペルミジンを投与することで肥満を改善し、脂肪肝を予防する結果が得られました出典[13]

また、スペルミジンを含むポリアミンはメタボリックシンドロームを予防する可能性も示唆されています。

メタボ体型が気になる方やダイエットを頑張っている方には、スペルミジンは注目の成分です。

 

7.免疫力の低下を抑制

体内のさまざまな細胞を若返らせるスペルミジンですが、免疫に関わる細胞も例外ではありません。老化による免疫力低下を抑える効果も報告されています。

免疫機能の司令塔であり、ウイルスや細菌から身体を守る機能をもつT細胞やB細胞。これらの細胞をオートファジー作用で若返らせ、免疫力の低下を防ぎます出典[14]。さらに、スペルミジンによりワクチンの効果が高まるとの報告もあります。

免疫力を高めたい方、風邪を引かない身体づくりにスペルミジンを役立てませんか?

 

8.抗がん作用

近年の研究では、スペルミジンに抗がん作用があることもわかっています。
作用のメカニズムは以下の通りです。

  • スペルミジンのオートファジー活性化作用でがんに対抗する細胞が若返り、がん細胞への攻撃力が上がる出典[15]
  • スペルミジンががん細胞に作用することで、増殖を抑え、がん細胞の細胞死を促す出典[16]

実際にスペルミジンの摂取量とがんの関連性については、2018年に公表されたイタリアの大規模臨床試験で報告されています出典[17]

イタリアのブルーニコという街の住民、45~84歳の男女829人を対象に食事に関するアンケートを実施。スペルミジン摂取量と死亡率の関連性について20年間追跡調査を行っています。

その結果、スペルミジン摂取量の多い群は少ない群と比較して、心血管系およびがん関連の死亡率の低下がみられました。また、それによりスペルミジン摂取量の多い群は全体の死亡率も低い結果となっています。

スペルミジンの抗がん作用については今後の研究が待たれます。

 

スペルミジンの摂取方法や注意点

これまでスペルミジンのさまざまな効果をご紹介してきました。

どのくらい摂ればその効果を得られるのでしょうか。最後に、スペルミジンの効果的な摂取方法と注意点について解説します。

 

1.摂取量について?

現在の研究では効果を得るために、どのくらいスペルミジンを摂れば良いかはわかっていません。

まず、スペルミジンはたくさん摂取しても体内の量には反映されないことが報告されています出典[18]

健康成人にスペルミジン1日15mgを5日間摂取してもらい、体内の量を評価した臨床試験があります。スペルミジンの代謝物であるスペルミンの量は上がったものの、スペルミジンの量は上がりませんでした。その理由は、生体内でスペルミンとスペルミジンがお互いに変換しあっているためと考えられます。

その一方で、少ない量では効果が十分に現れない可能性があります。

認知症のリスクがある方にスペルミジン1日0.9mgを摂取しても、認知機能に影響がなかったと報告があります出典[19]

参考にはなりますが、日本人における食品からのポリアミン摂取量は、1日200μmolと推定されています出典[20]。これはヨーロッパ諸国と比べると大幅に低い量です。スペルミジンはポリアミンの一つのため、同様の結果であることが推測されます。スペルミジンは加齢とともに生体内で作られにくくなるため、特に意識して摂る必要があります。

最後に、スペルミジンの安全面ですが、食品からの摂取は生体に対して過剰にはならないと考えられています出典[21]。ただし、サプリメントを利用する場合には既定の用量を守り摂取しましょう。

 

2.どのように摂取すれば良い?

スペルミジンは、野菜や果物、肉や穀物など多くの食べ物から安全に摂ることができます。
効率的に摂取する方法はあるのでしょうか。

バルセロナ大学は、調理方法が食材中のポリアミン含有量に影響を与えないかを調査し、2021年に報告しました出典[22]

ポリアミンは茹でることで13~64%、焼くことで20%以上、未加熱の状態から減少します。ただし、電子レンジ調理や低温調理は茹でるよりもポリアミンを保つことができることがわかっています。

したがってスペルミジンを効率よく摂るためには、なるべく加熱しないことが重要です。そのため、加熱しなくても食べられる納豆やチーズがおすすめです。もし調理する場合には電子レンジを利用しましょう。

 

まとめ:納豆やチーズを意識的に食べて精子の質の改善を目指そう

スペルミジンは、精液から発見され、アンチエイジングに効果があると考えられている注目の成分です。確認されている効果はさまざまで、精子の質・認知機能・筋力の向上、皮膚の新陳代謝、肥満の予防、抗がん作用などが報告されています。

納豆やチーズの発酵食品に多く含まれ、安全性の高い成分として知られています。スペルミジンを取り入れて、若々しく健やかな身体づくりを目指しませんか。

 

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