アルギニンに確認されている7つの効果と推奨量や副作用
2023年1月12日更新

執筆者

薬剤師

田中 嘉尚

薬剤師免許を取得後、臨床治験モニター、医療ライター、病院薬剤師、保険薬局薬剤師を経験。現在病院薬剤師をしながら、フリーライターをしている。ITに興味があり、前職の病院で恩師との出会いにより「副作用発現リスク精査表」を開発し、特許を取得。現在も共同研究中。フリーライターになろうと思ったきかっけは、恩師が現役著者で論文や学会誌などの文書の書き方をご指導頂いたことが影響している。

そもそもアルギニンとは何か知っていますか?

ここではアルギニンの基本情報をご紹介します。

アルギニンとは

アルギニンは、ルピナスというマメ科植物の芽から発見されたアミノ酸の一種です。アミノ酸とは、私たちの内臓や筋肉などを作る20種類のたんぱく質で構成されています。そのうち9種類は必須アミノ酸といわれています。必須アミノ酸は、体内で作り出せないため必ず食べ物から取り入れなくてはなりません。一方、体内で作り出される11種類は、非必須アミノ酸といわれています。

アルギニンは体内でも構成されるため、非必須アミノ酸に分類されます。しかし体内で作り出される量が少なく、不足している分を食べ物で補う必要があるため、準必須アミノ酸と呼ばれています。

 

アルギニンを含む食品

アルギニンは、鶏肉、豚肉、大豆や大豆製品、かつお節、ナッツ類などに多く含まれています。​また、アルギニンをより効果的に摂取するには、クエン酸などを含む柑橘系や酢の物、またビタミンB₆を含むカツオやマグロと一緒に摂取したほうが良いといわれています。

 

アルギニンのはたらき

アルギニンは、疲労回復や成長ホルモンを分泌する作用や、免疫を向上させ血流を促進する効果があります。また、アンモニアの解毒や血管の拡張による血流改善効果もあります。アルギニンと類似効果があるアミノ酸にシトルリンがあります。シトルリンは体内でアルギニンに変換されます。その後、一酸化窒素(NO)を産生し、血管を拡張し血流を促進する作用が確認されております。アルギニンとシトルリンを同時に摂取することは、体内のアルギニン濃度を増強させることにつながります出典[1]

 

アルギニンが不足すると?

アルギニンが不足すると、体の成長が阻害されるだけでなく、動脈硬化などの生活習慣病の危険性が高まります。その他にも筋力低下や病気に対する抵抗力の低下、体脂肪の増加、傷が治りにくいなどのさまざまな症状が起こる可能性があります出典[2]
 

アルギニンに確認されている主な7つの効果

ここからはアルギニンの具体的な効果効能についてご紹介します。

1.運動能力の向上

運動による疲労は、乳酸が蓄積することによりひどくなると言われています。アルギニンを摂取すると、乳酸の蓄積が減り、運動能力の向上につながります出典[3]

運動能力が向上すると、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率や死亡率が低くなります。また、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことが認められています。一日アルギニン2gを45日間毎日摂取した男性サッカー選手56名を調べたところ、最大酸素摂取量が有意に増加しました出典[4]。これは、長時間激しい運動ができるということを意味します。

アルギニンはワークアウトしている方や生活習慣病により運動をしている方に、運動パフォーマンスをあげるため、おすすめです。

 

2.勃起不全(ED)の改善

EDは、NOの分泌量が減少することで生じる病気です。NOは性的な興奮を感じた時に神経から分泌され、陰茎の血管を拡張させ、血流を良くします。糖尿病や高血圧、高脂血症(脂質異常症)などの生活習慣病による動脈硬化症で、NOの分泌量が減少し、EDを引き起こすことが非常に多いと言われています。アルギニンはNOを産生するため、EDの改善にも効果が期待できます。

軽度から中等度のED患者を対象とした7件の臨床試験において、一日1.5〜5gのアルギニンを摂取した540名のED患者を調べたところ、有意な症状の改善が認められました出典[5]
また、一日1.5gのアルギニンを摂取した中高年ED男性32名を調べたところ、17%に有意な症状の改善が認められ、56%がわずかに改善を認めました出典[6]

EDではないかと悩んでいるが、受診には踏み切れない方に、まずはアルギニンのサプリメントからはじめてみてはいかがでしょうか。EDの症状が少しは改善するかもしれません。

 

3.高血圧の改善/血圧の最適化

アルギニンは血管の内皮細胞において、一酸化窒素合成酵素(NOS)という酵素の働きでNOに変わり、血管拡張作用などによって血圧上昇を防ぎます。血圧の調節にアルギニンは大変重要な働きをします。

内皮細胞が障害されるとアルギニンからNOの産生が低下し、血管が拡張しにくくなり血圧の悪化の危険性もあります。また、血管が拡張しにくくなると、血液が流れにくくなり、血管の弾力性が失われ、動脈硬化を引き起こす原因にもなります。よって、アルギニンを摂取することは、高血圧の改善につながります。

実際にアルギニン摂取による血圧変動を調べた7種類の臨床試験を解析した結果が報告されています。これによると、一日8〜25gのアルギニンを摂取した4,676名の高血圧患者を調べたところ、高血圧患者387名に最高血圧と最低血圧をそれぞれ2.2〜5.4 mm Hgと2.7〜3.1 mm Hg低下させました出典[7]

また、54名を対象(健康な成人19名、高血圧患者35名)としたアルギニン摂取後の血液中濃度を調べたところ、高血圧患者で血中アルギニン濃度の有意な増加が確認できました出典[8]

血圧が気になりはじめた方や、高血圧と診断されてもまだお薬が必要ない方に、是非アルギニンを摂取してみてはいかがでしょうか。


4.免疫力の向上

アルギニンは、T細胞とよばれる免疫細胞の増殖や働きに必須の成分です。

体内にウイルスが侵入すると、マクロファージとよばれる免疫細胞が体内に侵入してきたウイルスをT細胞に伝えます。情報を受け取ったT細胞はキラーT細胞にウイルスに感染した細胞を探して破壊するよう命令します。次にT細胞は、B細胞に抗体をつくるように指令を出し、指令を受けたB細胞は、そのウイルスに対抗する大量の抗体を作り出します。この抗体が補体と協力して、ウイルスに感染した細胞を破壊します。

アルギニンが不足するとT細胞の機能障害を引き起し、風邪を引いたり、感染症やがんなどに対する抵抗性が低下します出典[9]。アルギニンを摂取することで細胞の増殖や、組織の修復に欠かせない物質であるポリアミンを合成し、傷の治癒に重要な成分の合成にも関わります。手術後の回復を促進し、感染症の合併の発症率を低下させるものとしてアルギニンが配合された輸液が利用されています。

免疫力は、年齢とともに低下してくるといわれております。特に働き盛りの中高年の方は、風邪を引いたりすると仕事に支障をきたすことが多いため、アルギニンを摂取することは免疫力アップにつながるかもしれません。


5.血糖値の最適化

アルギニンは、全身のグルコース(糖)の恒常性を保つうえで重要な役割を果たすグルコキナーゼに結合します。そしてグルコキナーゼの分解を阻害し、さらにグルコース6リン酸の合成を活性化することによりインスリンの分泌を促し、血糖値を低下させます出典[10]

18ヵ月間アルギニンを摂取した糖尿病発症リスクが高い(耐糖能異常、メタボリックシンドロームなど)中年の患者144名について、摂取後9年間にわたって糖尿病の発症を調べたところ、40.6%の患者に糖尿病発症リスクの減少が認められました出典[11]

糖尿病発症リスクの高い方や、糖尿病と診断され、食事療法や運動療法のみで治療している方は、アルギニンを試しに摂取してみるのも良いかもしれません。


6.成長ホルモンの分泌促進

アルギニンは成長ホルモンの分泌を促す働きがあります。脳下垂体から分泌される成長ホルモンは病気にかかりにくい体を作り、傷の治りをスムーズにしたりする効果が期待されます。

また成長ホルモンには食欲を抑える働きがあると考えられ、食欲抑制剤にもアルギニンが加えられています。さらに脂肪代謝を促して筋肉を強化する効果も期待でき、引き締まったプロポーション作りに役立ちます。

一日5~9gのアルギニンを摂取した時の成長ホルモンの分泌について、アルギニン摂取のみの人、アルギニン摂取後運動した方で調べたところ、アルギニン摂取後運動した方が成長ホルモンの分泌が促進されました出典[12]

アルギニンは運動能力の向上だけでなく、成長ホルモンの分泌促進で、筋肉強化にも有益な物質です。


7.疲労回復の促進

疲労物質であるアンモニアは、肝臓でオルニチンと反応し、その後アルギニンとなります。アルギニンは無害な尿素とオルニチンに分解されます。アルギニンには疲労物質であるアンモニアの除去をサポートする効果があります。

アルギニン摂取前とアルギニン1.5〜3gを摂取し、4週間後の運動による疲労改善効果を50名の大学生を対象にして調べたところ、アルギニン摂取4週間後の運動による疲労改善効果が有意に増加したことが報告されました出典[13]

ストレスの大きいビジネスパーソンには、疲労回復にアルギニンを試すのも良いかもしれませんね。
 

副作用のリスクと推奨摂取量

アルギニンは、安全性の高いアミノ酸であり、摂取可能な量であれば特に危害はないと言われています。しかし過剰摂取すると消化器官に影響が生じ、胃痛や下痢を引き起こすことが報告されています。

アルギニンの推奨摂取量は、1日1.4〜4.2gを2〜3回に分けて摂取することが目安となります。ED改善においては1日1.5〜5g程度、また高血圧の改善においては1日6g以上の摂取で有効性が確認されています出典[14]

アルギニンを長期で摂取した場合に問題のない摂取上限量は15〜21g程度と報告されています。
 

まとめ

筋肉を維持して脂肪を燃やしたい、免疫力をあげたい、生活習慣病を予防したいなど、そのような効果を期待したいならば、是非アルギニンを摂取してみて下さい。大豆や鶏肉、豚肉などにもアルギニンを多く含みます。サプリメントと一緒に摂取するよう心がけて下さい。また成長ホルモンの分泌を促進するためには、成長ホルモンが最も分泌されるのが就寝中であることから、就寝前の空腹時にアルギニンを摂取するのが効果的です。運動する人は、トレーニング前後に摂取することで、疲労回復につながります。あなたのライフスタイルにあった方法でアルギニンを試してみませんか?

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