執筆者
薬剤師
小椋香奈
薬剤師免許を取得後、内科・整形外科・皮フ科・泌尿器科を有する医療機関の門前薬局に勤務。局内で使用する患者向け指導せんの作成に関わるなど、調剤だけでなく幅広く薬剤師業務をこなす。現在は勤務の傍らでライターとしても活動中。
目次
イカリソウ(ホーニーゴートウィード)とは
イカリソウは男性機能を改善することが出来ると謳われる医薬品や漢方薬に含まれていることがあります。ここではイカリソウの効能、注意点について説明していきます。
1.医薬品に指定されている滋養強壮剤
花の形が4本鉤のいかりに似ていることから「イカリソウ」と言われます。別名をホーニーゴートウィードやインヨウカク(羊淫蕾)言い、角(ホーン)を持つ羊が食べる雑草という意味です。
イカリソウの効果が発見されたのは中国四川省の羊飼いと言われています。そこの雄羊は1日に何度も交尾をしたそうで、その精力の源は何か調べたところ、羊がイカリソウを好んで食べていたと言われています。日本にも自生する多年草で、東北以南の太平洋側から四国などの丘陵地や山林、山地にも生息しています。
イカリソウは滋養強壮に効果のある漢方薬・栄養ドリンクとして一般的に販売されていますが、一方でめまい、吐き気などの副作用例も報告されています出典[1]。
2.イカリソウの働き:PDE5の阻害&エストロゲン活性作用
イカリソウ(ホーニーゴートウィード)の有効成分であるイカリインは、バイアグラなどのED治療薬と同じ作用機序があります出典[2]。イカリソウのメカニズムは海綿体に多く存在するPDE5という酵素を阻害すること。
PDE5とは、勃起状態を促す際に重要な血管拡張作用のcGMPを分解する酵素です。このPDE5の働きを阻害することで海綿体に血液が充満し勃起が可能となります。このことから、イカリソウは勃起不全(ED)を改善する効果が期待されています。
また、イカリインはアロマターゼという男性ホルモンを女性ホルモンに変換させる酵素に作用することでエストロゲンを活性化させる働きもあります出典[3]。
イカリソウ(ホーニーゴートウィード)の6つの効果効能について
滋養強壮に効果があると言われるイカリソウですが、様々な作用が報告されています。ここでは詳しい効果について解説していきます。
1.勃起不全(ED)改善の可能性
イカリソウはPDE5を阻害することで、海綿体の血流が増大し勃起を促すと言われています。
マウスを用いた実験では、イカリソウ抽出物もしくは滋養強壮薬として使用されるオシャグジタケ抽出物を摂取した際の生殖器の変化と重さを比較されています。結果、イカリソウ抽出物を摂取したマウスの方が、有意に生殖機能を高めたことがわかっています出典[4]。
この実験結果は、ストレスや病気、加齢に伴う勃起不全(ED)に悩んでいる男性にとって魅力的に見えるかもしれません。しかし、生殖機能の向上は動物実験でのみ確認された効果であり、臨床試験は行われていません。過度の期待はしない方が良いと言えるでしょう。
2.テストステロン上昇の可能性
イカリソウは勃起への有用性だけでなく、テストステロンを上昇させる可能性もあります。テストステロンとは男性らしい筋肉質な肉体や性欲、ストレス耐性など男性にとって健康維持に重要なホルモンです。
実際にラットに有効成分のイカリインを50mg、100mg、200mg /kgの用量で35日続けて経口投与したところ、50mg、100mgの摂取したラットにおいてはテストステロン上昇の効果が確認されています出典[5]。ただし、200mg /kg摂取したラットではテストステロンは上昇できず、生殖機能への損傷の可能性も示されています出典[6]。
これは高用量のイカリソウを摂取すると、逆にテストステロン合成や性機能に悪影響を与える酸化ストレスが増加するためと考えられます。
このことから、イカリソウはテストステロンを上昇させる可能性はあるものの、摂取量に比例してより効果的になるとは言えません。副作用も確認されている成分なので、適量摂取を守ることが重要と言えます。
3.精子の質を改善する可能性
イカリソウは、老化したセルトリ細胞(精子の生成に関わる細胞)の働きを改善すると言われています。
イカリイン未摂取群と摂取群(2mg、6mg/kg)を比較した際、未摂取のラットよりも摂取したラットの方が精子数、精子生存率ともに上昇したことが分かっています。このことから、イカリインは高齢ラットの精巣機能低下を遅らせる可能性があります。出典[7]
しかし、200mg/kgと高用量のイカリインの摂取を続けると、酸化によって精子が傷つけられる為、生殖機能を低下させるとの報告があります出典[8]。
精子の質改善については臨床試験は行われておらず、動物実験でのみ確認されています。副作用の報告もされているので、過度に効果を期待しすぎないのが良いでしょう。
4.持久力を向上させる可能性
運動により血中に乳酸が溜まると、人は疲労を感じます。イカリソウは血中の乳酸量を減少することにより、抗疲労効果を示す可能性があります。
イカリイン100~400mg/kgを4週間摂取したマウスとイカリイン未摂取のマウスを用いて、持久力を評価する強制水泳テストが行われました。イカリイン摂取群では100mgで37.95%、200mg/kgで51.38%、400mg/kgで85.25%水泳時間が延長しました。また、100mgで18.74%、200mg/kgで26.58%、400mg/kgで55.12%の乳酸が減少したことが分かりました出典[9]。
この結果から、イカリソウには持久力を向上させる効果があり、疲労を感じにくくなる可能性が示唆されました。スタミナを付けたいと考えている方には意識的に摂取すると良いかもしれませんね。
5.寝付き向上の可能性
自律神経が乱れると、睡眠時間の減少や寝付きの悪さ、睡眠の質悪化に繋がります。イカリインには中枢神経を抑制し寝付きを向上する効果があると言われています。
マウスにイカリソウ抽出物(1μL/g)と鎮静効果のある医薬品のペントバルビタールを腹腔内投与し、入眠時間と睡眠時間を調べる実験が行われました。その結果、ペントバルビタールの効果が出る最低限の濃度以下でも、入眠時間の短縮と睡眠時間の延長がみられ、イカリソウ抽出物には中枢神経を抑制する可能性が示されました出典[10]%。
イカリソウは、睡眠の質改善にも一役買ってくれる可能性がある成分だと言えるでしょう。
6.女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を促進させる可能性
女性ホルモンであるエストロゲンは、骨量の維持や肌のハリツヤを保ち、アルツハイマー予防効果などがあります。イカリソウ抽出物には、エストロゲンの体内合成を促進する効果があるというのです。
イカリソウ抽出物はアロマターゼと呼ばれる男性ホルモンを女性ホルモンに変える酵素に作用し、卵巣細胞および骨芽細胞で作られるエストロゲン生合成を促進します出典[11]。
男性でもエストロゲンは一定体内で合成されており、骨量の維持に関与しているので、女性っぽくなるという心配は必要ないでしょう。
イカリソウ(ホーニーゴートウィード)の摂取方法と副作用について
イカリソウを摂取したことによる、数多くの副作用例が報告されています。ここでは摂取する際の注意点と対応について説明します。
1.どのくらい摂取すればいい?
現在、イカリソウについての臨床データは少なく、人体に有効な摂取量の詳細は分かっていません。しかし、市場にはイカリソウ抽出物が含まれる数多くの医薬品や漢方薬、サプリメントが出回っています。摂取する際の注意点として、記載されている用法用量を守ることはもちろんのこと、もし体調不良や不安な部分があれば直接メーカーへ問い合わせるのがオススメです。
2.副作用が確認されている医薬品成分
イカリソウは副作用が確認されている成分です。
マウスが高用量(200mg/kg)のイカリインを継続で摂取したところ、精子が傷つくことによる生殖機能の低下が報告されています出典[12]。
また、24人の健康な成人がイカリイン100~1680mg/日を5日間摂取した際に観察された副作用データでは、1680mg/日摂取した群で胃腸障害(21.4%)、眠気(17.8%)、食欲低下(10.7%)、筋肉の痙攣(10.7%)が報告されています出典[13]。
イカリソウの臨床データは乏しく、身体に思いもよらぬ効果を発揮する可能性があります。リスクを知った上で安易に摂取は控えることが望ましいでしょう。
まとめ:副作用のリスクを踏まえての摂取を!!
イカリソウは、男性機能の改善だけでなく、抗疲労効果や睡眠の質向上にも効果のある可能性が示されています。しかし、副作用も数多く報告されているので、それを理解した上で摂取しましょう。
出典
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