シトルリンに期待できる4つの効果と摂取方法
2023年8月22日更新

執筆者

薬剤師

森本 涼太

薬剤師の資格取得後、調剤薬局に勤務。患者さんのQOLを高める服薬指導を目指して医薬品・サプリメント・運動など多方面から患者の健康を考えることに取り組んでいる。多くの人が自分の健康を考える機会を持つことに貢献したいとの思いから、大学時代の研究活動の経験を活かし、論文調査などのエビデンスに基づくヘルスケア関連のライティング活動も行う。

シトルリンってどんな成分?

まずはシトルリンの基本情報についてご紹介します。

そもそもシトルリンとは?

シトルリンは天然に広く分布するアミノ酸の一種です。アミノ酸は主に筋肉や臓器などを構成するタンパク質の素となる物質ですね。ただし、シトルリンはタンパク質を構成する20種類のアミノ酸には含まれず、単体で生体内で利用される遊離アミノ酸という分類に含まれます。同じように単体で利用される遊離アミノ酸にはオルニチンやGABAなどもありますね。

 

どんな食材に含まれる?

シトルリンはスイカやキュウリ、メロンといったウリ科の植物に多く含まれています。実際にシトルリンがはじめて発見されたのもスイカの果実からでした。発見元のスイカにはシトルリンが特に多く含まれ、スイカ1gあたり約1.8mgの含有量があります出典[1]

 

どんなはたらきをする?

タンパク質を構成しない遊離アミノ酸として体内で利用されるシトルリン。その主な用途はタンパク質を構成するアミノ酸の1つであるアルギニンの原料となることです。

アルギニンはタンパク質の材料となるほかにも体内で様々な役割を担っています。そのうちの大きな2つとして血管におけるNOの産生とアンモニア代謝があります。NOは一酸化窒素という単純な構造のガスです。

一酸化窒素は体内では血管を広げる作用を持っていて、主に血圧の調節に利用されているんです。アルギニンは血液中で酸素と反応してNO(一酸化窒素)を発生させ、血管を広げて血行を促進します。

また、アンモニアはアミノ酸の代謝などによって体内で発生する不要な物質です。毒性が高いので、体内で一旦害のない尿素という物質に変換されたのちに尿から排出されます。このアンモニアを尿素に変換する工程において、アルギニンは尿素を合成する中間の物質として役割を担っているんです。アンモニアの変換ではシトルリンも中間の物質としての役割を持っています。

 

アルギニンよりも効率的?

シトルリンは代謝後のアルギニンよりも消化管からの吸収率が高いことが知られています。つまり、シトルリンを摂取したほうが、アルギニンを摂取するよりも体内のアルギニン量が上昇することが期待できるんです。

2007年にドイツのハンブルグでは、20人の健康な成人を対象にシトルリン・アルギニンを被験者や投与者からは判別できない状態で摂取させる試験を行いました。この試験では、1日750mg×2回のL-シトルリンの摂取において1日1000mg×2回のL-アルギニンの摂取と同等のL-アルギニンのAUC(体内で利用される物質の総量の目安)が得られることが確認されています。

さらに、L-アルギニンは摂取量を増やしてもL-アルギニンのAUC(≒利用される総量)はほとんど増加しないのに対し、L-シトルリンは摂取量が増えるにしたがってL-アルギニン・L-シトルリンのAUCの両方が増加することが確認されているんです出典[2]シトルリンを摂る方がより効率的に体内のアルギニンを補える可能性が高いというわけですね。

 

シトルリンマレートとは?

ここまで述べた通り体内で変換されて多様な役割を果たすシトルリンは、現在サプリメントの成分として様々な形で配合されています。そんな中で特に利用価値が高いとされる形としてシトルリンマレートというものがあることをご存じでしょうか?

シトルリンマレートとはアミノ酸であるシトルリンとリンゴ酸という酸性化合物(マレート)がイオン結合した塩です。イオン結合しているリンゴ酸(マレート)は体内のエネルギー調節を行うクエン酸回路という仕組みにおいて利用される化合物として知られています。

このエネルギー調節の仕組みを介して、この後紹介するシトルリンに期待される効果を補助すると考えられているんです。またシトルリンは塩の形にすることで水への溶解性が高まります。溶解性が上がることでシトルリンの吸収効率が上昇することも期待できますね。実際にシトルリンの効果を検証する際にシトルリンマレートの形で投与を行っている研究も多くあります。シトルリンのサプリメントにより高い効果を期待する場合には、シトルリンマレートの形で配合しているサプリメントを選ぶとよいかもしれません。

シトルリンの様々な性質について紹介しましたが、それではここから実際にどのような効果がシトルリンに期待できるのか、具体的に見ていきましょう。

 

シトルリンに期待できる4つの効果

ここからはシトルリンの具体的な効果効能についてご紹介します。

1. 勃起不全(ED)の改善

シトルリンは勃起不全(ED)を改善させる可能性が示唆されています。最近勃起の硬さに不安を感じるようになってきたという方に、シトルリンは役立ってくれるかもしれません。冒頭ではシトルリンから変換されるアルギニンが血管中で血管拡張作用のあるNO(一酸化窒素)を産生すると述べました。ED改善のメカニズムとして、このNOが男性器の血管に作用し血流を促進することで勃起の硬さや頻度を改善してくれるのではないかと予測されています。

2011年にイタリアで行われた研究では、24人の57歳前後の軽度EDの男性を対象として、効果のない偽の薬とL-シトルリンを混ぜ、被験者にわからないように投与する試験を実施しました。この試験において1.5g/日のL-シトルリン投与を1か月継続したところ、L-シトルリンを投与された被験者の50%において勃起硬度の評価の数値が3(軽度ED)から4(完全な勃起)へ改善されたという報告があります出典[3]

また、2018年に日本で行われた研究では、20人の29-78歳までの、勃起不全治療薬による治療を受けているにもかかわらずSHIM(性機能評価スコア)が16以下(EDと診断される数値)の男性に対して、効果のない偽のサプリメント(プラセボ)とシトルリンを含むサプリメントを被験者・投与者から判別できない状態で摂取させる試験を行いました。この試験ではシトルリンを含むサプリメントとして800mg/日のL-シトルリンと300mg/日のレスベラトロール(抗酸化物質)が1か月投与され、投与期間中は勃起不全治療薬も併用されました。その結果、L-シトルリン・レスベラトロールを投与された被験者は偽のサプリメントを投与された被験者に比べてSHIMがおおよそ2前後改善するという結果が得られました出典[4]

まだ更なる研究・検証の余地はあるものの、このようにシトルリンにED症状改善の効果を期待する要素は十分にあると言えるでしょう。自分の男性機能に不安を感じ始めた方はシトルリンのサプリメントを始めてみるのもよいですね。
 

2. 筋肥大をサポート

シトルリンは筋トレのパフォーマンスを向上し、筋肥大をサポートしてくれる効果が期待できます。トレーニングの効果を高め、高いパフォーマンスを発揮したいという人にシトルリンは助けになってくれることでしょう。シトルリンからアルギニンを経て産生されるNO(一酸化窒素)には、血管の拡張による酸素供給の改善や筋細胞の発達を促す効果が確認されています。このことからシトルリンの摂取で間接的にNOの産生量が上昇することによって筋肥大サポートの効果も得られるものだと考えられています出典[5]

2015年のアメリカで行われた一連の研究において、トレーニング前に8gのシトルリンマレートまたは効果のない偽の薬を被験者・投与者から判別できない状態で摂取させる試験が複数行われました。これらの試験では被験者はシトルリンマレートと偽の薬をそれぞれ1回ずつ摂取してトレーニングの成績を確認しました。それぞれの摂取後のトレーニング成績を比較したところ、シトルリンマレート摂取時に筋トレにおける最大試行回数の有意な上昇が確認されています。14人のトレーニング上級者の男性を対象とした試験において上半身の筋トレの挙上回数の向上出典[6]が、12人のトレーニング上級者の男性を対象とした試験において下半身の筋トレの挙上回数の向上出典[7]がそれぞれ確認されています。

また、2014年のアメリカで行われた研究では、8名の26歳前後の健康な男女を対象に、体重に合わせた用量でシトルリンのサプリメントまたは非必須アミノ酸混合物のサプリメント(比較対象)を被験者と投与者から判別できない状態で摂取させる試験を行い、それぞれのサプリメントの筋合成に対する影響を確認しました。被験者は3日間の低タンパク食の生活を続けてから各サプリメントを摂取したところ、非必須アミノ酸サプリメントを摂取した被験者と比較してシトルリンサプリメントを摂取した被験者において筋タンパク量の有意な増加が見られました出典[8]

以上から、トレーニング前のシトルリンの摂取はトレーニングパフォーマンスを改善し、トレーニング後の筋肉量の増加をサポートしてくれることが期待できます。現在筋トレに励んでいる方は、シトルリンも合わせて摂取してより効果的なトレーニングを行ってみてはいかがでしょうか?

 

3. 疲労回復の促進

シトルリンの摂取は筋肉の疲労感や筋肉痛の低減に役立つ可能性もあります。体を使うお仕事の方やハードなトレーニングをこなす方にとって、シトルリンは心強い味方になってくれるかもしれませんね。メカニズムについては明確になっていませんが、この疲労回復にまつわる効果も筋肉に対するシトルリンの代謝でできる物質の作用が関連すると言われているんです。

2016年に日本で行われた研究では、日頃よりトレーニングを行っている健康な男性を対象に試験を実施しました。被験者はランダムに割り当てられた2.4g/日のL-シトルリンまたは効果のない偽のサプリメントを、中身を知らされていない状態で7日間+トライアル1時間前まで続けて摂取しました。その後4kmのサイクリングのタイムトライアルを実施し、タイムや疲労度を比較しました。その結果、L-シトルリン摂取時にはタイムトライアルの結果が有意に向上すると共に、主観的な疲労度のスコアも偽のサプリメント摂取時と比較して有意に減少しました出典[9]

2020年に行われたシトルリン摂取の運動後の疲労などへの影響を調査したメタアナリシス研究(複数の研究結果をまとめて解析する研究)では、対象となった13の研究(参加者計206名)において、運動1時間前に3~4gのL-シトルリンもしくは8gのシトルリンマレートの投与が行われました。その中で24時間後と48時間後の主観的な筋肉痛の評価において、シトルリンの摂取は有意に筋肉痛を低減するとの分析結果が得られました出典[10]

シトルリンの普段からの摂取、特に運動1時間前の摂取は、筋肉の疲労や筋肉痛といったパフォーマンス低下の要因を予防してくれる可能性があります。普段から体をハードに使うという方はシトルリンを摂って疲労をしっかりケアするとよいかもしれませんね。 
 

4. 血圧の低下

シトルリンは血圧の低下作用も期待されているんです。こちらはシトルリンの代謝で産生する強力な血管拡張作用を持つNO(一酸化窒素)が血管を広げることで、血圧を低下させてくれるといわれています。健康診断などで血圧が上がってきたような気がする、と感じられている方は摂取を検討するのもよいでしょう。

2019年のL-シトルリンの血圧に対する効果を分析したメタアナリシス(複数の研究結果の考察)では、対象となった8つの試験からデータを抽出して分析を行いました。その結果、対象に含まれた22~71歳の成人に対し、3~9g/日のシトルリンの投与が1~17週間にかけて行われ、L-シトルリンの投与によって収縮期血圧では-4mmHg程度の有意な減少傾向が見られました。拡張期血圧でも有意ではないものの減少傾向が見られました出典[11]

血圧が最近気になってきたという方は、食生活や運動習慣の見直しに加えてトルリンを含むサプリメントも活用することで、よりしっかりと高血圧予防ができるかもしれないですね。
 

効果的な摂取方法と注意点

ここまでシトルリンに期待できる効果をいくつか紹介してきましたが、これらの効果を最大限に発揮するために効果的なシトルリンの摂取方法についても確認しておきましょう。

基本的にシトルリンは急速に吸収されます。2007年にフランスのパリにおいて行われた臨床研究でも摂取後1時間前後で血中濃度が最大になるというデータがあるほどです出典[12]。しかしシトルリンに期待される効果に関連性が高いと考えられるアルギニンはシトルリンから変換されるまでに時間がかかります。そのため、シトルリンの摂取から少し遅れて血中濃度が最大となるんです。先ほど述べた2007年のパリでの研究ではおよそ90分から2時間程度で血中濃度が最大となるというふうに示されています出典[12]ED改善や筋肥大の促進といった効果を最大にするために、シトルリンは性行為やトレーニングの90分~2時間前に摂取することを心がけるとよいでしょう.

シトルリンを摂取した際の副作用についても確認しておきましょう。結論から言うと、妊婦・授乳婦以外の適切なシトルリンの摂取では現在のところ明確な副作用は確認されておらず、安全だと考えられます。先ほどの2007年のパリでの研究では健康な27歳前後の男性8名に単回投与で最大15gまでシトルリンを投与しましたが、有害事象は確認されませんでした出典[12]。妊婦・授乳婦への投与については安全を担保する十分な根拠となる情報が確認されていないため、シトルリンのサプリメントを該当するご家族の方に勧めることは控えた方がよいでしょう。基本的には副作用が現れる可能性は低いと言えるので、安心して使用できると思われます。
 

まとめ

今回はED改善・筋肥大や疲労回復の促進などの効果が期待できるアミノ酸、シトルリンについて、期待できる効果や効果的な摂取方法、副作用の有無などについてご紹介しました。シトルリンの含まれているサプリメントを選ぶ際にはぜひ参考にしてみてください。

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